2024年9月27日発行 #特許庁 総務部 総務課 特許庁財政管理ダッシュボード 特許庁は、必要な資金(特許特別会計の剰余金)を十分確保すべく、財政状況を管理する必要性があります。特許庁財政管理ダッシュボードは、歳入の主要指標である特許等の出願件数、審査請求件数等を可視化し、財政運営についての判断を間違えないようにするための仕組みです。 ##ダッシュボード概要 ###特許の出願・審査状況等を把握 特許庁内の予実管理のため、歳入の主要指標である特許及び商標の出願件数、審査請求件数、剰余金の状況等をダッシュボードで管理。 ###実績値とシミュレーションを比較表示し、その乖離状況を確認 各指標について、「実績値」とシミュレーションによる想定をグラフ上に表示。実績値とシミュレーションに乖離がある場合、関係者や外部有識者とも議論しながら、特異な事象が発生している可能性や、シミュレーションの見直しの必要性を調査。 ###外部有識者も交えた委員会での説明にダッシュボードを活用 財政管理ダッシュボードは、半期に一度開催される審議会にて使用されています。ダッシュボードから得られる示唆をもとに、今後の財政運営の見通しや、健全な財政運営のために必要な対応を議論することが可能。 -参考:特許特別会計の財政運営状況について -https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/zaiseitenken_shoi/document/07-shiryou/01.pdf ##ダッシュボード導入による変化 ###Before ####中長期での財政計画が困難 特許・商標等の出願動向等に関する月次のデータは存在していました。しかし、それデータだけでは、足下の財政状況が適切なものであるかや、将来必要となる資金の確保に向けた見通しなど、中長期的観点で財政運営を検討することが困難でした。 ###After ####中長期的予測により関係者との議論が活発化 中長期的な財政状況について、シミュレーションを行ったうえで、データを把握し、共通認識を持って議論を行うことができるようになりました。また、審議会で毎回提示することで、外部有識者からも財政状況についての見解や今後注視すべき点に関する助言を多数いただけるようになりました。 ####異常を検知し調査・分析につなげる 最新の値とシミュレーションを比較することで、差異を検知しています。差異がある場合は、担当部署に確認を取り、何が起こっているのか、一時的な事象なのかを検証し、それによる将来の財政状況への影響や、シミュレーションの見直し要否について検討しています。常に最新のデータに基づく財政運営しています。 ##担当者の声 特許庁 総務部総務課 課長補佐(当時) 川邊 智史 さん ###ポイント 1.財政状況の管理に利用 2.不断の検証と改善の文化醸成 3.PDCAサイクルを回すのに有効 ###ダッシュボード導入のきっかけは? 特許庁では、かつて、システム刷新や大規模庁舎改修等の影響もあり、特許庁として必要な資金(特許特別会計の剰余金)を十分確保すべく、慎重に財政状況を管理する必要性が高まりました。財政運営について「判断を間違えない」ためのツールとして、歳入の主要指標である特許等の出願件数、審査請求件数等を可視化した「ダッシュボード」を作成しました。 ###どのように使っていますか? 財政状況の定期的な点検のために、利用しています。特許や商標等の出願・審査状況にこれまでのトレンドと異なる動きが見つかれば、関係者の御意見を伺い、詳しい状況を確認します。また、半期に一度行われる審議会である財政点検小委員会の説明資料としてダッシュボードを利用し、今後の財政運営や施策に関する議論を行っています。 ###進捗をダッシュボードで管理するにあたり、乗り越えるべき障壁はありますか? 進捗状況の可視化にあたって、想定とのずれが確認された際に、「結果についての説明責任を果たすこと」と「結果を受け止めて改善すること」が必要と考えています。ダッシュボードはある意味「答え合わせ」ですので、結果を分析し、見直すべき点があれば見直す、という努力を繰り返していく必要があります。失敗を恐れず、こうした検証を当たり前のように行える文化を醸成することも重要と考えます。 ###よりよくするために何をしてますか? データを正しく読みとることが最も重要と考えています。具体的には、実績とシミュレーションの違いを結果だけではなく詳細な変数まで丁寧に分析することが重要です。 将来の財務状況をより精度高く予測し、タイムリーに施策を打てるようにするためには、足下の事象とシミュレーションの前提条件の両方を正しく理解する必要があります。 ###良くしたいところはありますか? 例えば、出願動向や特許庁の歳出は、物価や為替、料金の値上げ等、出願人を取り巻く環境の影響も受ける可能性があり、業種や規模によっても状況は異なると思いますので、こうした周辺情報もタイムリーに把握できると、より深い分析が可能になると考えられます。他方、入口としては、現状のような簡易的なダッシュボードで大枠を議論することが重要とも考えています。 ###どのような事業でダッシュボードは使っていけそうでしょうか? ダッシュボードは、長期スパンで状況を予測し、モニタリングし、次のアクションにつなげるという、基本的なPDCAサイクルのツールと捉えられますので、どのような事業でも有用かと思います。特に、一定程度時系列のデータが存在し、また、タイムリーにデータを把握し、透明性を持って不断の見直しをしていく姿勢があることが重要と考えています。