2024年9月27日発行 #神戸市 企画調整局 政策課 神戸市データラウンジダッシュボード 神戸市は、内部人材による行政データの利活用を推進しています。神戸市職員が各基幹系システムから行政データを抽出し、個人名を落とした抽象加工をしたうえでデータを保管・蓄積するなどして、90種類以上のダッシュボードを作成しています。また、それらのダッシュボードを全庁で共有する仕組みを構築しています。 ##ダッシュボード概要 ###確認したい分野と指標を表示 このダッシュボードでは、小学校区を選択することで、その地域の人口の状況を把握できます。他の地域と比較しながらその地域の施設の配置、公共サービスの充足状況等を簡単に分析することができます。 ###データを組み合わせて傾向に気づく 人口増減率と各指標など、データを組み合わせて項目別に表示することもできるため、状況把握がしやすくなり、違いにも気づきやすくなります。 ###神戸データラウンジ内にて90種以上のダッシュボードを共有 可視化された人口や世帯分布データを見ることができ、現在では約90種類のダッシュボードが実装されています。 -参考:<第7回>総務大臣賞「データ分析をDIY〜神戸データラウンジ〜」(2022年) -https://www.city.kobe.lg.jp/documents/56740/20230227_gaiyou.pdf ###住基データに基づく年齢階層別の移動状況 5歳階級の年齢別の転出入数や、転出入者が県外、県内、市内、区内のどの地域から移動しているのか把握でき、区単位での計画や施策立案に活かすことができます。 ###神戸市独自の小学校区別将来推計人口 区別や小学校区別での将来人口推計を把握することができるため、地域毎に必要になる公共施設や公共サービスの予測ができ、計画に役立てることができます。 ###建築確認申請に基づく新規住宅供給の見込み 小学校区分や用途別で建築予定の住宅戸数を把握できることで、新規住宅供給の見込みを含めた計画や施策を検討することができます。 ###固定資産税データを活用した持家率 特定の小学校区分別での最新の持家率や時系列での変化を把握できることで、今後必要な対策の検討を進めることができます。 ##ダッシュボード導入による変化 ###Before ####データの収集・加工・分析に多大な時間がかかる かつてはベテラン職員の経験値から情報を得たり、大量のデータ集計・加工作業を元に現状把握・課題特定を行っていました。 データの収集・加工・分析に多大な時間を要してしまい、チーム内での政策議論に割く時間が限られていました。 ###After ####データ収集や分析が効率化され、政策議論が充実 全神戸市職員は、業務用PCから「神戸データラウンジ」上ダッシュボードにアクセスが可能。わざわざ外部にデータを取り寄せる必要や集計・加工する必要がなくなりました。BIツールで作成した資料をブラウザ上で共有できるため、資料作成の時間が大幅に削減され、議論に長い時間を割くことができています。 ####詳細なデータを活用し、きめ細やかな政策を検討 人口の動態を区単位で見たり、さらに細かく小学校区単位で見たりすることで、きめ細やかな政策をしやすくなったという声もあります。人口減少時代のインフラの維持をどうしていくのか、将来推計人口や人口構成を見ながら検討を行っています。また、自らダッシュボードを作りたいという職員が全庁で増えてきました。 ##担当者の声 神戸市デジタル監(企画調整局局長(DX担当)) 正木 祐輔 さん ###ポイント 1.多くの職員が気軽に利用 2.まずは手を動かすことが大事 3.あらゆる事業に有効 ###どのように使っていますか? 例えば、保育所の最適配置の検討では、小学校区別将来推計人口と定員や実績を比較したり、子どもの年齢毎に利用率と共働き率を比較するなど、需給予測に活用しました。全庁で活用されそうなダッシュボードを準備しておくことで、データを政策議論の初期段階から誰でも簡単に活用できる環境が整ってきています。また、サーバ側で閲覧制限を設定できるようにすることで、収税業務のような機微な情報も扱えるようになり、日々の業務マネジメントに活用する事例も出てきました。 ###進捗をダッシュボードで管理するにあたり、乗り越えた障壁はありますか? 職員全員がダッシュボードに興味があったわけではありません。手を動かしてなにかしらの結果が出たという経験が重要であると思っています。何のデータをどのように用い、どういう分析をしたらどういう結果が出た、という成功体験を作れるように、取り組みました。収税業務の可視化・分析は、徴収に役立つ、と効果が説明しやすいので、企画調整局が提案し、まずは収税部門の職員に研修を受講してもらい、その後企画調整局のサポートを得ながら収税部門の若手職員が中心となってマネジメント用のダッシュボードを作成しました。 ###使われるためには、何が重要ですか? 共有しているダッシュボードを活用するというのは、あくまでも行政データ利活用の入り口にすぎません。例えば、実際の政策立案には、個別のダッシュボードも数多く作成し活用しています。ドメイン知識を持った現場の職員が自ら所管する行政データなどを使ってダッシュボードを作成できることが重要で、企画調整局では研修による人材育成や各局サポートを積極的に行っています。その結果、ライセンスを調達して、ダッシュボード作成に取り組む所属が着実に増えていっています。 ###どのような事業で使うべきですか? あらゆる事業で有効だと思います。政策立案であれ事業の進捗管理であれ、誰しも何らかの数字に触れながら仕事をしています。昨年のダッシュボードの作成研修では、研修後のフォローを企画調整局が行うことで、交通局や消防局をはじめ市役所の19局室すべてが現場の知識を生かしたダッシュボードを作成しました。また、ダッシュボードの利点は、対話型である点で、ビッグデータである住基データを見たい切り口でだれでも簡単に現状分析できるようにしたり、収税業務のように業務の進捗を管理するダッシュボードとして活用したりするなど、アイデア次第で、さまざまな分野や用途に有効です。 ###施策への活用事例はありますか? 交通局では、赤字の市バス路線を再編するために、バス路線の経営状態を表す「営業係数」という指標を、地図上にヒートマップで示しました。一般的には「系統別」に示すことが多いですが、黒字の路線でも赤字の区間があったりするので、「区間別」に細分化して表示しました。営業成績の悪い区間が可視化されたことで、系統別では分からなかった区間別の課題が浮き彫りとなり、非効率路線の再編に役立てています。交通量調査のデータを使用しており、利用者の年齢や目的から課題を分析することも可能で、路線の引き方や本数の見直しに活用しています。また、路線の延?や増便に関する市民からの要望が多いのですが、市民との意見交換の場などでもこれらを活用することで、説得力が高まり、よりよい議論につながると思います。