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デジタル臨時行政調査会作業部会 法制事務のデジタル化検討チーム(第8回)

概要

  • 日時:令和5年(2023年)5月12日(木)10時45分から12時00分まで
  • 場所:オンライン開催
  • 議事次第:
    1. 開会
    2. 議事
      1. デジタル法制審査及び官報電子化の取組について
      2. 法制事務のデジタル化及び法令データの整備・利活用に関する調査・実証、AI利活用等について
      3. 質疑応答・意見交換
    3. 閉会

資料

議事録

事務局(山口): それでは、定刻となりましたので、「法制事務のデジタル化検討チーム」第8回会合を開催させていただきたいと思います。

本日、進行を務めさせていただきます、デジタル庁参事官の山口と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

本日も構成員、オブザーバーの皆様にはオンラインでご参加をいただいております。お忙しい中、ご参集いただきましてありがとうございます。

前回、この会合の開催が昨年11月でございまして、少し間が空いてございます。本日の議題は、ただいま画面に投影させていただいているとおり、大きく2つございますけれども、昨年の開催以降、このデジタル法制審査につきましては、例えば関連する法律案の国会提出があったり、あるいは官報電子化の取組については立法化に向けた検討が進んでいるといった進捗がございます。

それから、法制事務のデジタル化等につきましても、今年度実証に入っていく準備が整いましたので、本日は昨年の開催以降の取組の進捗についてご報告をしつつ、それぞれの課題について今後の取組方針をご説明し、構成員の皆様方から忌憚のないご意見を頂戴できればと思ってございます。

本日のオブザーバー参加の方々についてご紹介をさせていただきたいと思います。これまでも関係省庁の方々にオブザーバーとして参加していただいておりますけれども、本日より内閣法制局、それから内閣府からオブザーバー参加をいただいております。ありがとうございます。

早速ですけれども、よろしければ、まず内閣法制局長官総務室の北村調査官、一言ご挨拶をいただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

内閣法制局: 内閣法制局の北村でございます。お声がけいただき、今回からオブザーバーとして参加させていただきます。

私ども内閣法制局は、法制的な面から内閣を補佐する機関として内閣に置かれておりまして、各省庁が立案いたします法律案、政令案、条約案を審査する事務などを行っております。
法制事務のデジタル化につきましては、内閣法制局といたしましても、デジタル庁をはじめとする関係府省庁等と連携しつつ取り組んでまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局(山口): ありがとうございます。
続きまして、内閣府大臣官房総務課官報電子化検討室の吉田室長、一言いただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

官報電子化検討室: 内閣府官房総務課で官報電子化検討室の室長をしております、吉田と申します。よろしくお願いします。

官報の電子化については、昨年以降、議論を行っておりまして、今年の臨時国会に出すという方針の下で本年3月から有識者会議を立ち上げて検討をしております。第3回までを開催しまして、月内に第4回、年央には取りまとめを行って、何とか臨時国会に向けて努力をしていきたいと考えております。

そのために、今年4月1日から検討室を総務課の中に立ち上げまして、しかるべき体制を整えて取組を進めているところです。デジタル庁、印刷局をはじめ、関係機関と相談しながら進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

事務局(山口): ありがとうございました。

それでは、早速でございますが、議事の1つ目に移らせていただきたいと思います。デジタル法制審査及び官報電子化の取組について、事務局よりご説明をさせていただきます。中野企画官、よろしくお願いします。

事務局(中野): デジタル臨調事務局の中野でございます。

では、議題1について、早速ご説明させていただきます。

資料をおめくりいただきまして、まず、デジタル法制審査につきまして、2ページを投影していただければと思います。前回、11月の会合から、デジタル法制審査につきましても様々な取組を行っておりますので、これまでの経緯をご説明させていただきます。

デジタル法制審査につきましては、昨年9月の本会合におきまして、「デジタル原則適合性確認等のための指針」につきましてご議論いただきましたけれども、昨年の臨時国会提出予定法案を対象に試行実施を開始し、その後、内容を拡充して本通常国会提出予定法案についてもデジタル法制審査を実施中という状況にございます。

簡単に振り返らせていただきますが、下の小さなポツのところでございますけれども、昨年8月に2024年の常会提出法律案のうちから試行的に実施することとしていたデジタル法制審査を前倒ししまして、2022年秋の臨時国会の提出予定法案を対象に試行的にこの取組を実施したというところでございます。

そして、昨年12月にはアナログ規制に関係し得るとされた条項につきまして、デジタル技術が活用できる旨を明確化する通知・通達の整備時期と併せて、臨時国会の提出法案につきまして点検結果を公表したということになります。そして、昨年12月から、この臨時国会提出予定法案に係る点検を踏まえて内容を拡充して、通常国会提出予定法案につきまして、デジタル法制審査を実施中でございます。

具体的な拡充内容といたしましては、右側の図の黄色の塗り潰し部分でございますけれども、やはり法案の条文だけ見てもなかなかアナログ規制の実態というのは分からないというところがございまして、下位法令や通知・通達等を含めてフェーズの当てはめを行う場合においては、その工程を明確化、つまりは、いつこの通知・通達や下位法令を整備するのかといったところの工程を明確化するということと、テクノロジーマップ及び技術カタログを活用してデジタル化を実施するということ、そして、デジタル庁において今後横断的なデジタル技術等の検証に必要な支援を具体化するといった部分を拡充して、現在、通常国会提出法案につきまして、デジタル法制審査を実施しております。

1枚おめくりいただきまして、デジタル法制審査の今後につきましては、次のページとその次のページに法案の概要を載せさせていただいております、デジタル規制改革推進の一括法案を本年3月に国会に提出しております。こちらの中で、デジタル社会形成基本法の改正というものを盛り込んでおりまして、デジタル規制改革を国の基本方針として法定し、デジタル法制局のプロセス、このデジタル法制審査のプロセスでございますけれども、これに関連する規定を措置するという内容を盛り込んでございます。

当該規定では、デジタル社会の形成に関する施策の策定に係る基本方針としてデジタル技術の進展等を踏まえたデジタル技術の効果的な活用が規制により妨げられないようにするために必要な措置が講じられなければならないということを定めるとともに、この見直しを重点計画の記載事項に位置づけていくということになります。

今後でございますけれども、この法案の成立後、まさに法律に位置づけのある取組として継続的・自律的にデジタル法制審査の取組を行うこととさせていただければと考えております。

具体的には、各府省においては新規法令等の立案に際してテクノロジーマップ・技術カタログを適切に活用して、アナログ規制が新たに規定されることのないようにデジタル原則適合性確認等のための指針に基づき点検を実施し、その点検結果をデジタル庁へ提出する。そして、デジタル庁においては必要な体制を整備しつつ、デジタル法制審査を実施するといった内容で進めさせていただければと考えております。

4ページ、5ページは法案の概要でございます。

次に、官報の電子化の取組につきましてご説明させていただきます。こちらはまさに本日からオブザーバー参加いただいております内閣府の官報電子化検討室の方々を中心に取り組んでいただいている内容でございます。まず7ページでございますけれども、こちらは昨年12月のデジタル臨調に提出した資料を一部更新したものでございますけれども、電子官報の実現ということで取組を進めているところでございます。明治以来紙で発行されてきた官報を電子化するという我が国のデジタル化において象徴的な取組となってございまして、法令公布の手段でもある官報の電子化というのは法制分野のDXの基盤になると考えているところでございます。

経緯としては、これまで本検討チームでも取り上げさせていただいておりますが、官報の原本が慣習で紙媒体とされておりまして、行政手続における書面の廃止やデータの再利用ができないということで、改革①として行政手続において紙の官報を提出することを不要にするということ、改革②としてそもそも官報の発行に関する新法によって電子官報を官報の正本として位置づけるという2つの取組を行っております。

具体的な工程の概要は左下の図にあるとおりでございます。ちなみに、諸外国におきましても、EU、フランス、ドイツにおいて官報の電子版を正本とするという取組が行われてございます。

具体的な改革①、②の実施状況について、P9に行っていただきまして、改革①でございますけれども、行政手続におけるインターネット版官報の活用に係る閣議了解というものを本年1月27日に行ってございます。今まで紙媒体でしか提出が認められていないものが商業登記法などにございまして、実際に官報を購入して提出することが必要であったわけですけれども、これについて閣議了解が行われまして、紙の官報とインターネット版官報の同一性が確保されたということでございまして、インターネット版官報の提出が認められるようになったという改革を既に実施しているという状況になります。

次のスライドでございますけれども、それと併せまして、改革②のほうでございますが、電子官報を正本として位置づけるために、まさに本日オブザーバー参加していただいております内閣府大臣官房総務課に官報改革検討チームというのをつくっていただきまして、官報の発行に関する新法の検討を開始していただいている。その際、官報電子化検討会議という会議を開いて検討を進めていただいているということでございます。

こちらは、下のボックスの2つ目に書いてございますけれども、官報に関する法律は存在せず、慣習法に基づいているという状況になりますので、この慣習法を変更して官報の発行を電磁的方法により行うこと、法令の公布を当該官報により行うことについて、官報の発行に関する新法を制定する必要があるということでございまして、この検討を行っていただいているということでございます。

次のスライドは、4月の官報電子化検討会議に提出された資料でございますけれども、現行の紙官報については、左側の図のとおり、虎ノ門の印刷局本局の掲示板に掲載されたことをもって官報の発行とされるということになっておりまして、全国の官報販売所に配送されて閲覧も可能になり、正式な官報として位置づけられていないもののインターネット版官報が同時に閲覧可能になるという現在の官報の仕組みを右側の図のように変えたいということで検討いただいているということでございまして、専用サーバーに官報の校了データをアップロードしまして、インターネットを通じてどこでも無料で閲覧可能になる。インターネット上でアクセス可能となった時点で官報発行とするということでございます。

さはさりながら、インターネットを利用できない方々への対応として、インターネット掲載と同時に官報掲示場所においてデジタルサイネージ等で官報について閲覧可能にする。ただし、これは官報発行時刻に影響しないということでございますし、官報記録事項記載書面について希望する方に対して配送・販売するといった仕組みを検討いただいているということになります。

次のスライドでございますが、特に本日は電子官報の利活用等につきましてご議論いただければと考えておりまして、我々で考えております今後の案でございますけれども、工程表で決まっておりますとおり、内閣府を中心に紙で発行されてきた官報を電子化する仕組みについて本年年央までに検討・論点整理を終え、できるだけ早期に法案を国会に提出する。先ほど臨時国会と言っていただきましたけれども、国会に提出するということでございます。

法案の検討に当たっては、以下の運用が可能となるような制度設計を行うということでございまして、これはデジタル臨調で総理もご発言されていることですが、将来的に紙の官報を廃止することを念頭に置く。現在の紙の官報を電子官報に単に置き換えるのではなくて、今後の技術革新に対応できる技術中立的な仕組みを構築するということでございます。
また、これまでも本検討チームでご議論いただいておりますけれども、官報データを利活用するために機械可読な電子官報のデータを提供する。やはり官報というものを長期保存ができる仕組みというのが重要でありましょうし、改ざんされていないということ、法令の公布等を行うわけですから、真正情報を提供する。あとは、まさにこの後ご議論いただきますけれども、e-LAWSとの連携などによって官報に関する事務のBPRを行うといったことを今後進めていくべきではないかと考えている次第でございます。この点、ご議論いただければと存じております。

私からは以上でございます。

事務局(山口): ありがとうございました。

それでは、質疑応答、意見交換の時間を10分ほど設けさせていただきたいと思います。ご質問、ご意見のある方、挙手のボタンでお知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、米田構成員、お願いいたします。

米田構成員: 鹿児島大学の米田でございます。

官報の電子化については、また、新法や改正法の審査についても同様ですけれども、精力的な取組をしていただいていることについて、一国民として非常に感謝申し上げたいと思います。

これまでの経緯から、私の考えている範囲で意見を言わせていただきたいと思います。3点、あえて強調したいことをコメントしたいと思います。

官報についてデジタル化を法制化するということで進められておりますけれども、デジタル化を前提とする以上は今後の技術の発展などを踏まえるということが非常に重要だと思っておりまして、法令の規定がベンダーロックインを生むとか、または技術的進歩への対応の足かせになるようなものになってはならないと考えます。そういう意味での技術中立性というものを確保されるように進めていただきたいと思っています。

それから、官報情報の利活用については、どう使われているのかということが実は十分に把握されておらず、あまり知られていないのではないかと思うのですけれども、官報には法令の情報だけではなくて多彩な情報が載っていて、その中でも人事情報、それから入札案件や落札情報などの政府調達情報、それから企業の決算報告や法定公告の情報などが掲載されていて、これらは非常に活発に使われているものと承知しております。

特に我々研究者としては歴史研究や社会科学的な研究に官報のデータを電子化したものを使えればという期待もございますし、既に先ほど申し上げましたような政府調達の情報や企業の決算公告などは民間で付加価値をつけた情報として利活用されているという部分があります。

その中では、破産者情報など、ある種不適切な形で用いられているものはありますけれども、それは利活用の結果を踏まえた事後コントロールというか、規制をかけたり、民事訴訟など司法制度の活用も視野に入れるなどの方向で対処されるべきものであって、今のところ、これまでどおりの情報提供が官報で行われるように、今までよりも情報が減るということがないように、これまでの固有の役割を守り、利活用の側面での発展を促す方向が必要であると思っています。

最後に、長期保存の必要性ということをコメントしたいと思います。法令については当然ですけれども、国の振る舞いそのものを公に伝え、記録するという役割を果たしておりまして、記録文書として長期にわたって保存されること、それから閲覧可能な状況で保存されること、さらに利活用されるような形にすることと、3つの要件を満たすことが必要だと思います。ちょっとずれた表現かもしれないのですけれども、そういったこれまでの官報の情報にしても、これからの官報の情報にしても、「社会に実装された状態」にしなければならないと思っています。

現在、法制執務のデジタル化の議論は、デジタル化してその場で伝えるということに力点が置かれていると感じるのですけれども、今後の技術の発展も視野に入れながら、後世に残るものとして官報を考えるということが必要だと思っているところです。
以上でございます。

事務局(山口): ありがとうございます。いずれも重要なご指摘を大変ありがとうございます。

中野企画官、何かございますか。

事務局(中野): 米田先生、誠にありがとうございます。

官報電子化につきまして3つご指摘をいただきまして、まずは技術中立性というところでございますが、これは内閣府で開催いただいている官報電子化検討会議の中でも、官報の発行に関する具体的な技術や官報のデータ形式等については将来の技術革新にも対応できるように、法律上、技術中立化することとすると書いていただいておりまして、まさにこの方向で、米田先生のご指摘も踏まえて、内閣府におかれてはご検討いただければと考えておりますし、デジタル庁からも必要があれば、協力させていただきたいと思っております。

2つ目の官報情報の利活用につきましては、本日ご提出させていただいている資料の8ページ目にも載せさせていただきましたけれども、法令に関する情報のみならず、まさに先生がご指摘のとおり、人事異動や会社の決算公告といったものが載っておりまして、研究者や民間の方々による情報の再整理と言った形式での利活用がなされていると思っておりますので、まさにこういった情報の再利用が妨げられないような制度になるように、デジタル庁としても内閣府の担当者の方々と協力していきたいと思っております。

長期保存につきましては、ご指摘のとおりあまりこの検討チームでも取り上げてこなかったテーマではございまして、今後、内閣府の官報電子化検討会議でも取り上げられると承知しておりますが、我々としましても、関係機関とも意見交換をして、どのような状態が望ましいかということの検討を進めて、内閣府の方々と一緒に検討を進めたいと思っております。

貴重なご指摘、誠にありがとうございます。

事務局(山口): ありがとうございました。

構成員の方々から挙手をいただいておりますけれども、順次こちらから指名をさせていただきたいと思います。

まず、角田先生、お願いいたします。

角田構成員: 今、米田先生が論点を整理してくださいましたので、その順番で発言させていただきます。

第1点目は技術中立性の論点だったかと思います。私もこの点はもちろん、さきほどのベンダーロックインを防ぐなどのいろいろなお話がありましたけれども、そのほかにもデータというのは単純に解釈の多様性が生まれてしまいがちですので、そのようなときでもいろいろな解釈に合わせてデータの部分を特定できたり、意味づけができたりということが後づけで外側から取り外しもできるような形にして、適切な粒度で、そして余分なコントロール情報などがつかないような形で実現できるといいと思います。もちろんXMLのタグづけのような形で進めるのはいいのですけれども、そこに用いられる区切り方の点で、多様な用途に用いられやすい設計というものが必要だと考えています。そうすることで、技術中立性が保たれると言えるのではないかなと思っています。

それから、2番目の官報情報の利活用のニーズなのですけれども、これは私の周囲が学者であるということもあって、その観点で申し上げます。まず、例えば、私自身は10年くらい前から、ちょうど官報にこだわる機会がありまして、改正条文の書き方のためのデータベースとして実際に使ってきたという経験があります。

それから、法制史などの歴史研究ですね、公の人物の異動状況ですとか、個人情報などのような考慮しなくてはいけない問題もありますので、そういったときに、官報で提示されているデータに対してはその辺りが安心して用いられるものであるのはありがたいです。公の人物の公の状況がトレースできるとか、あるいは叙勲の情報などもトレースできますので、将来、歴史を分析する学者たちにとっては重要なものだと思います。そのほかにも、新規に政府への入札をする業者さんたちがこれまでどのように政府からの発注がかかったかといった状況などが一番正式な形で把握できるという点も有効だと思います。少なくとも、利活用のニーズというものは学者の立場ではあるように思っています。

最後に、長期保存の必要性の論点につきましては、私としてはここが一番強調して申し上げたいところでもあります。特に申し上げておきたいことが、私は近年所属していた研究プロジェクトでセキュリティーを専門に何十年とご研究されているような先生方と一緒に活動してきたという経緯がありまして、その時に先生方の議論にのぼったことが、セキュリティー上の問題で、暗号の危殆化の話でした。現在の真正性を保つような電子署名の技術というのは全部暗号技術でできているのですけれども、その暗号が危殆化して有効でなくなるという問題があります。危殆化というのはどういうことかと申しますと、技術が進歩してくると、その暗号技術自体が衰退してしまって、暗号としてそもそも意義がなくなってしまうということです。例えばアルファベットを1文字ずらすシーザー暗号という方式が大昔からありますが、これは暗号と呼ぶことはできても簡単すぎて、現在、セキュリティー技術として採り入れることはできません。現在の強固な暗号技術の方式もこのように陳腐化してしまうということです。陳腐化してから対応するのでは遅い原本のデータですから慎重に考える必要があると思います。

特に今、量子コンピュータの研究開発が盛んですけれども、それが本当に実用化してくると危ないと言われています。そうすると、5~10年ぐらいだったら大丈夫かもしれないのですけれども、20年、30年、40年、あるいは100年という超長期的な保存というものを考えたときには、危殆化する、つまり電子署名も無意味になるわけですから、そうなってきたときのことを考えると、固定的な署名の暗号化の方式だけではなくて、必要に応じて、例えば千年以上続いている制度で言うと伊勢神宮の式年遷宮みたいな形で、定期的に何十年かに一回は見直すだとか、あるいは、危殆化の可能性が見えたらその都度、使用する暗号技術や電子署名技術を見直すことができるようにする必要があると思います。そもそもまだ見ぬ新技術の話ですから、技術のほうではカバーしきれない問題ですので、法整備の面で先にきちんとカバーしておいて、新しいものにどんどん移行できるようにしておくという条項を1つでもいいので付け加えておいていただきたいと考えております。

もちろん過去のデータに関しても、改ざんなどが怖いので遡及的に電子署名化をしていくべきですし、今言ったような危殆化の可能性が出てきたときには、迅速に新しい暗号化の方式で上書きしていくことが必要だろうと思っています。

長期保存の必要性の話になってしまうと、さきほども申し上げましたように、学者としては歴史的に過去に戻っていろいろなデータを調べたいときに、真っ先に一番確実で証拠となるようなデータとしての官報ともいえますので、ここは確実に超長期保存していけるような頑健な制度的仕組みにしていってほしいと思っております。以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

それでは、順次ご発言をいただきたいと思います。よろしければ、藤原構成員、お願いいたします。

藤原構成員: 藤原でございます。ありがとうございます。

私からは2点、私も官報関係でコメントしようと思うのですが、1つ目はフォーマットの話で、既に先生方がいろいろお話しされた技術中立性というのはあるのですけれども、載せるものの内容自体が改正法の内容を含めて縦書きの書面というのを前提に今までやってきたので、油断していると縦書きのPDFをただ載せるということになってしまいそうな気がしていて、それは多分やめたほうがいいのですけれども、作るものの実態自体を変えないと、普通皆さんが思い描くようなXMLなどにならない可能性があると思っているので、そこはちょっと気をつけたほうがいいのかなと思っています。

もう一点は、既にいろいろなところで議論されているのが個人情報関係とか、要は公開することのメリットとそのデメリットの話なのですけれども、有名な破産者マップの話などがいろいろあったと思うのですが、これは官報だけではなくて、最近話題になっていた会社の法人の登記の代表者の住所などもありますけれども、結局特定性のために記録しておく必要があるし、いざというときには到達できなくてはいけないのだけれども、その情報をずっと出しておく必要がないかもしれないという意味で共通なので、官報を電子化するときに一緒に解決してしまうといいのかなと思っています。仕組みは同じようなことになるはずだと思っていますので、今、どうすればいいというところまで解を持っているわけではないのですけれども、そこは考えてもいいのかなと思っています。

以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

続きまして、渡部構成員、お願いいたします。

渡部構成員: お世話になっています。私からは3点です。

一つは昨年11月から今に至るまでの経緯に関してと、2つ目は今回に関する利活用の評価、3番目に実務家として法務部門からどう見えるかという点についてお話をさせてください。

まず、1番目です。11月から期間が空きましたけれども、この間、事務局におかれましては、一括法案の取りまとめ等、本当にご苦労さまでございました。今回も内閣法制局の皆様、それから内閣府の方がオブザーバーとして加わっているということで非常にありがたく思っております。

2番目です。今回の電子官報の利活用については、これまでの検討会でまさに話し合っていたこととかなり整合しておりまして、私としては高く評価したいなと思っております。特にデジタル臨調とこのようなほかの動きを連動させて、実際に改革が形になっているというところは非常に高く評価されるべきだと思っております。

また、たまたま4月に京都大学のアジャイルガバナンスシンポジウムで東大の宍戸先生とまさにこの話を議論させていただくことがあったのですけれども、この電子官報は今、慣習法をまず確定して、それから法制化ということで、これは2段階の非常に複雑な作業を行われていらっしゃると認識しておりますので、この点も電子化という形で4文字になってはいるのですけれども、そのご苦労やそのご検討については本当に大きな敬意を持っているということをお伝えさせてください。

最後に3番目です。法務部の観点から言いますと、先ほどの藤原先生のご意見もありましたけれども、これまで官報になかなかアクセスがしにくかったというところがあったのですけれども、この電子化によってタイムリーかつリアルタイムに、よりアクセスしやすいものが出てくれば非常にありがたいなと思っています。まさに米田先生の研究で、今の日本の法務部門の第1位の課題が法務事務の効率化・IT化というところで、非常に多くの企業が悩んでいるところでございます。この電子官報が多くのデータベースの一つとして利活用されることを私も願っている次第です。

以上のとおり、本当にいろいろなリーダーシップの下にこの改革を進めていただいていくことを強く期待しておりますので、今後もよろしくお願いいたします。

私からは以上です。

事務局(山口): 大変心強いコメントをいただきまして、ありがとうございます。
続きまして、安野構成員、お願いいたします。

安野構成員: 安野でございます。お世話になっております。

今回の話で申し上げると、事業者やエンジニアの立場からすると、官報がデジタル化されて、また、機械可読性にもかなり配慮をいただくという話なので、こちらはすごくありがたい話だなと認識しております。

1点質問と、1点意見というところで申し上げさせていただきますと、1点、これは素朴な質問として、P11の右上のところで、官報がインターネットを通じてどこでも無料で閲覧可能というところと、2点目のポツで一定期間ダウンロードも可能というところで、閲覧ということとダウンロードということを区別されて書かれているのかというのと、あと、一定期間というのが、先ほど米田先生もおっしゃっていましたけれども、長期で見られるというのは大事なことかなと思っている中で、期間というのはどういうふうに考えられているのかというのを、もしご想定がありましたら、お伺いしたいというのが質問のところでございます。

2点目のサジェスチョンというところで言うと、角田先生のおっしゃったとおり、長期保存に際して暗号化の部分の電子署名の危殆化のところは一つの課題になるのかなとは私も思いまして、電子契約の分野では長期署名という形で順次電子署名を連続的にかけていくみたいなことがやられていたりはするので、そこら辺は参考になるのかなというところと、あとは緊急的な暗号化アルゴリズムのクリティカルな脆弱性があったときのアップデート体制みたいなものは事前に議論しておくとよい場面というのも出てくるのかなと考えているので、検討いただけるといいかなと思っております。

以上でございます。

事務局(山口): ありがとうございます。

今いただきました11ページのご質問の点について、中野企画官、コメントをいただければと思います。

事務局(中野): 様々なご指摘をいただきまして、ちょっと時間も押していますので、恐縮でございますけれども、11ページの無料で閲覧可能というのと一定期間ダウンロード可能というところは、官報を発行して法令等を公布する場合に、その公布のタイミングで閲覧することができるということはもちろん必須でございますし、現在のインターネット版官報もそうですけれども、一定期間過去のものが見られるということでございまして、この情報を基に法令を立案するなどしております。こういった過去の情報と申しますか、それが蓄積されている情報がどれだけ見られるのかという点、例えばこの一定期間をどうするといった論点がございます。また、電子官報の発行機関等がどういった仕組みでこれを運用していくか、システム更改等も場合によって必要になるでしょうから、どうしていくのかというのは今後詰めていくべき議論なのかなと思っていまして、非常に貴重なご指摘をありがとうございます。

安野構成員: よく分かりました。ありがとうございます。

事務局(山口): ありがとうございます。

続きまして、八木田構成員、お願いいたします。

八木田構成員: よろしくお願いします。Legalscapeの八木田でございます。ありがとうございます。

先ほど安野さんにおっしゃっていただきましたとおり、当方も事業者目線といいますか、エンジニア目線で非常に官報の電子化というのはありがたいことだなと考えております。本当にありがとうございます。

先生方にいろいろと大きめの論点をご指摘いただきましたので、私からは少し具体の話を1つコメントさせていただければと思っています。12ページの改ざんされていない真正情報の提供という下から2番目のところで書かれているところについてなのですけれども、これは大きく2つの話があるのかなと思っています。

一つは、インターネット版官報を提供しているサーバーが正しい情報を提供しているかどうかという話と、2つ目は、インターネット版官報を提供しているサーバーからダウンロードしたファイルが正しい情報になっているかどうかという2つの話が今ちょっと混ざっているような気がしています。

要するに、1個目というのは、国のサーバーがクラッキングされてしまい、それでうその情報を発信してしまうという政府のウェブサイトのセキュリティーの問題というので、2個目は、ダウンロードしたときには正しい情報だったのだけれども、そのPDFファイルみたいなものは後から変更されてしまいますよねという2つの問題があると思うのですね。もしここでいわゆる真正情報という情報を必要としている人が直接国のサーバーからダウンロードする、直接情報を取得することができる仕組みを構築できれば、そもそもPDFファイルが改ざんされてしまうという問題は特に考える必要がなくなるのではないかなと思っています。

先ほど角田先生におっしゃっていただいた問題というのはまさに②のPDFファイルが電子署名されているのだけれども、その電子署名のセキュリティーといいますか、暗号の強度が20年後には下がってしまうので、改ざんされてしまうではないかみたいなことだと思うのですね。

なのですが、国のサーバーは、今日だろうが20年後だろうが50年後だろうが、常に正しい情報を発信してくれるのですというところが担保できさえすれば、長期保存ということ自体をしなくてもよいのではないかと思いまして、すみません、やや素人考えかもしれないのですが、もしかしたら既にご検討されているところかと思うのですけれども、この点についてどのような感じでお考えなのかというところをお伺いできればと思っておりました。

事務局(山口): ありがとうございます。

この点、簡単に中野企画官からコメントをいただいてよろしいですか。

事務局(中野): ありがとうございます。

基本的に今、インターネット版官報で用いられている技術としましては、電子署名とタイムスタンプということだと思っておりまして、例えばこれがアクセスした際に改ざんされているということであれば、国民がそれを閲覧した際に緑色が赤色のランプになって、それをもって改ざんされていることが認知できるといった仕組みが導入されておりますが、実際に法律が公布・施行された後に電子官報がどういう仕組みになっていくかについては、今、まさにこの検討会議で検討いただいているということでございます。頂いたご指摘で、ファイルをダウンロードした後でもサーバーが正しいということが担保できていれば、長期保存が不要ではないかというのは、少し私も不勉強で、新しい視点のご指摘だと思いましたので、少し内閣府様や国立印刷局様と議論してみたいと思います。この場でお答えを持ち合わせていなくて大変申し訳ございません。

八木田構成員: 承知しました。ありがとうございます。

事務局(山口): ありがとうございます。

米田構成員、角田構成員、再度挙手をいただいているかと思いますが、よろしければ米田構成員から順にお願いいたします。時間の関係上、ご発言はコンパクトにおまとめいただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

米田構成員: 簡単に申し上げたいと思います。

一つは、保存の問題はデータだけではなくて、これまでも国会図書館や公立公文書館など、ほかの組織で紙で保存されているわけですけれども、データになった場合でも保存についての責任分担のようなことを考えに入れて、本当にデータのみでよいかも含めて検討し、関係組織のとの連携を進めることをご検討いただきたいと思います。

もう一つは技術の発展への対応というところで、暗号などのレベルまで行かなくても、最近ですとブラウザの仕様が変わってしまうことによって、これまで保存していたものが読めなくなるということが、現実に国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WebArchivingProject:WARPプロジェクト)でも問題になっているのですけれども、その面の配慮も必要であるということをコメントしておきたいと思います。

以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

それでは、角田構成員、お願いいたします。

角田構成員: 少々誤解がありましたようなので、八木田構成員の話で言うと、私の言ったのはPDFなどでの配布後の話ではなくて、大元の大元が変えられないようにしておかなかったら、政府が正しいと思って出しているもの自体が間違っていたらどうするのだという話です。大元となる原本データなので、そこの真正性は長期的視点で真剣にやりましょうねという話でして、強調したいのはその点です。

もちろん八木田構成員も正確に切り分けて前半の話としてご意見下さったのですが、まさに前半のほうのお話でございます。

以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

多岐にわたるご意見、ご指摘を賜りまして、本当にありがとうございます。いただいた本日のご指摘等を踏まえて、今後、検討の具体化をしっかり進めてまいりたいと思います。
恐縮でございますが、時間が押してございますので、次の議題に移らせていただければありがたいと思います。議事の2つ目でございますけれども、法制事務のデジタル化及び法令データの整備・利活用に関する調査・実証、AI活用等について、ご議論いただきたいと思います。

まず、担当の山内補佐からご説明をさせていただきます。

事務局(山内): 事務局の山内でございます。資料2に基づいて、「法制事務のデジタル化及び法令データの整備・利活用に関する調査・実証、AI利活用等について」、ご説明させていただきます。

2ページ目以降、しばらく振り返りが続きますけれども、今回の会合では、前回会合からの進捗と今後の方針についてご説明させていただきたいと思います。進捗としては大きく2点ございまして、1点目は、調査・実証事業についての調達が完了し、いよいよ開始する段階になったこと、2点目は、この数か月で大規模言語モデルを用いたAI製品が急激に進展しまして、法制事務への適性等について検証する必要が生じたことでございます。本日、この2点についてご説明いたします。

7ページ目に参ります。まず1点目、法制事務のデジタル化及び法令データの整備・利活用に関する調査・実証についてでございます。8ページ目をご覧ください。前回会合までにご議論いただきました要求条件、それから法令データの利活用に関する方向性に基づいて、前回会合以降、左側のような実施項目としてまとめまして、仕様書の検討、それから調達手続を進めてまいりました。先月末頃に調達が完了しまして、右下にございますけれども、第一法規株式会社を幹事会社として調査・実証事業を実施することになってございます。左側の実施項目をそれぞれご説明させていただきます。大きく3つのグループがございます。

1つ目が、法制事務・法令等データの調査等でございます。法制事務・法令等データの現状や事例、ニーズ等を調査・分析、それからワークフローやデータ構造を設計・シミュレーション。これによって、右側でございますけれども、法制事務システムの設計・評価を行うための基礎を確立することとしております。

左側の2つ目のグループでございますけれども、法制事務システムの調査・検討・プロトタイピングでございます。ここで3点を挙げております。全体アーキテクチャー、法令等データの編集・チェック機能、法令等データの公開機能・利活用でございますけれども、一瞬次の9ページ目をご覧いただきますけれども、色を分けて表示しております。全体が全体アーキテクチャー、左側が法令等データの編集・チェック機能、右側が法令等データの公開機能・利活用に対応するとご理解いただければと思います。

8ページ目に戻ります。左側に戻りますけれども、真ん中の法令等データの編集・チェック機能に際しては、実際の法令立案の現場でのユーザーテストを想定して進めたいと考えております。

それから3点目ですけれども、法令等データの公開機能・利活用に当たっては、API等の利用者を交えた双方向型の設計・試用を想定しております。これは例えばAPIのプロトタイプを用いて実際にサービス開発を行ってみたり、そこで得られた気づきを設計にフィードバックするといった検討を行いたいと考えております。これにより、右側でございますけれども、来年度以降見込まれます実導入を想定したPOCやシステム開発に向け、システムの実現性や基本設計を確立、また、システムの利用者、法令等データの利用者を交えた検討により法制事務システムへの理解を醸成し、建設的な設計と将来の円滑な移行を可能とする環境確立といったことを目的としております。

最後に、左側の3つ目のグループでございます。デジタル法制の現状・未来に関する調査・研究でございます。先端技術活用の未来像、それからデジタル法制ロードマップの精緻化に関する調査・研究を行うこととしておりますけれども、ここではぜひ大学等の研究者や学生等を交えた調査・研究を行いたいと考えております。これにより、右側でございますけれども、法制事務デジタル化の長期的な効果を明らかにし、システム高度化の意義や長期的目標を確立すること、それから、将来的な法令等データ利活用による効果的な政策立案の実現に向けた方針を確立し、研究開発・人材育成に向けた関心を醸成したいと考えております。

以上が実施項目の3つのグループをそれぞれご説明させていただきました。

次のページは、先ほど一度ご覧いただきましたけれども、システムの全体像のイメージをご参考までに整理してございます。

その次の10ページ目が、それぞれの実施項目のスケジュールのイメージでございます。前々回の会合でも議論頂きましたけれども、法制事務システムの検討に当たっては様々な検討課題がございます。そのため、一度でつくり切るのではなくて、全体を何サイクルかに分けまして、プロトタイピングと評価のサイクルを繰り返すという手法を取りたいと考えております。

11ページ目から15ページ目までは参考資料でございますけれども、実際の仕様書から詳細な項目を抜粋しております。口頭でのご説明は割愛させていただきます。

以上がこれから開始する調査・実証の概要に関するご説明でございました。

それでは、16ページ目に参ります。続いて、前回会合以降の検討の2点目、AI等を利用した法制事務補助の短期的検証についてでございます。

17ページ目に参ります。左側の1ポツ目でございます。前回会合、11月9日でございますけれども、その後の数か月で大規模言語モデルLLMを用いたAI製品、それも性能が飛躍的に向上した製品が次々と発表されまして、広く話題になってございます。この中でも、ChatGPTについては発表後2か月で月間利用者数が1億を突破したとの報道があるほど注目を集めております。

2ポツ目ですけれども、性能の観点では、例えばGPT-4は米国司法試験のシミュレーションで上位10%の成績を出したと報告されております。また、3ポツ目ですけれども、ユーザビリティーの観点では、ChatGPTはコードを書かなくても自然言語による入力(プロンプト)のみで操作でき、そして出力も自然言語として得ることができる。まさにチャットのように使えるといった操作性が特徴となってございます。

右側に参ります。これらの製品の進展を受けまして、産・官の分野でも反応がございます。1ポツ目、自民党のAIの進化と実装に関するプロジェクトチームでは、4月にホワイトペーパーをまとめまして、そこでは短期間で成果の見える複数のパイロットプロジェクトに直ちに着手することと提言されておりまして、その具体例の一つに法制執務補助が例示されております。そのほかの諸会合でも取り上げておりまして、ちょうど昨日、新たにAI戦略会議というものも開催されております。

そのほか、下から2つ目でございますけれども、中央省庁・地方公共団体による利活用の検討も報道がされておりますし、最後のポツ、リーガルテック企業においてもChatGPT等を活用した新サービス発表の動きが確認されているところでございます。

こういった動向を踏まえまして、法制事務のデジタル化との関係を考えますと、デジタル技術の活用、それから業務の効率化などが法制事務デジタル化の目的ですので、LLMを用いたAIについても法制事務への適性などについて検討する意義があると考えております。

18ページ目に参ります。LLMを用いたAIについては、便利な点の一方で幾つか注意すべき点があることも知られております。左側の1点目でございますけれども、言語モデルでございます。本来、自然な文章ややり取りを生成するよう訓練されたモデルでございます。柔軟で多様なタスクに適応することが注目されておりますけれども、単体では計算、論理的な推論は確実ではなく、検索も行いません。ただし、プロンプトの工夫や外部APIとの組合せで改善する手法も研究されております。

こういった特性を踏まえて、右側に法制事務観点の考慮事項を書いてございます。要約などの言語的タスクでは効果を期待する一方で、法令や条文の検索・分析などのタスクでは、よりどころとなる法令データベース・APIが必要となると考えております。その上で、APIを組み合わせた処理などが考えられるとしております。

左側の2点目でございます。原理上、出力結果が事実であるか、妥当であるかは別問題ですので、出力を利用する場合は使い手に内容の正確性・妥当性を分析・判断する十分な知識と技術が必要ということを考えております。

右側に参りますけれども、法制事務の観点でもこういった十分な技能が必要と考えられますが、その前提で気づきにくいアイデアを出力するブレスト用途では効果を期待するとしております。

左側の3点目でございます。もっともらしさに惑わされない注意力が必要とも考えております。客観的・批判的な分析を働かせるよう特に注意が必要と考えておりますけれども、右側に参ります。特に法制事務のタスクでは、複雑な場面での厳密性が特に求められますので、適切に注意を喚起する仕組みが必要と考えられます。また、厳密にルールを適用するためには、言語モデルだけに限らず別の決定論的なチェック機能等を併用することが有効である可能性があると考えております。

19ページに参ります。以上のことを踏まえまして、LLMを用いたAI等による法制事務補助の短期的検証を行いたいと考えておりまして、素案としてご説明させていただきます。左側に目的と概要がございますが、LLMを用いたAI等の法制事務への適性やすぐに実現できそうなこと、中長期的に検討を要することを整理するといったことを目的としております。これにより、望ましい活用の在り方について検討したいと考えております。

具体的には、2つ目のポツにありますが、利用アイデアのうちすぐに実現できそうなものについて、実際に既存製品を用いて実証するといったことを検討いたします。これにより、3ポツ目、使った結果の問題点や課題などを収集したいと考えております。これを踏まえまして、4ポツ目、課題整理の結果、まずはデータ整備が必要、それからこういったタスクは言語モデルでないアルゴリズムが向いている、または組合せがよいといった結果も十分考えられます。これによりまして、法令等データ整備や分析・技術開発の必要性についても整理したいと考えております。

右側は検証観点のイメージですけれども、繰り返しの内容でございますので、割愛させていただきます。

次のページに参ります。20ページ目から22ページ目までが、ご参考として実際に実験利用したタスクを試したものを挙げております。例えばこのページは要約のタスクでございますけれども、左にありますような法令案の概要を右側の要約のようにしまして、資料作成に活用するといった場面が考えられます。

21ページ目では、アイデア列挙のタスク、要はブレストのタスクでございます。シンプルなプロンプトで実験しておりますけれども、こういったブレストやアイデア出しはChatGPTの用途としてよく取り上げられるタスクであるかなと思います。

22ページ目、大規模言語モデルの課題としてよく挙げられるもっともらしい誤りの例を書いております。左側のプロンプトは条文の具体的内容を質問しておりますけれども、右側の出力は実際の条文と異なる内容が出力されております。言語モデル単体では条文検索などを行いませんので、こういった出力は仕方のない結果でありますけれども、一方で、こういった言語モデルの弱点を外部のAPIを活用することで補う手法も研究されております。

左側はそのような手法を実験しております。ここでは、公開されている実際の法令APIを活用しております。こうしますと、右側の言語モデルでの処理と組み合わされまして、実際の条文を取得することができました。この例はまさに法令APIや法令データベースがあったので実現できておりますけれども、こういった高度なサービスや技術活用に当たってAPIやデータベースが重要であるということを裏づけるような実験結果も得られると考えております。

以上に幾つか実験例を挙げておりますけれども、実際に検証してみまして、法制事務への適性やすぐに実現できそうなこと、中長期的に検討を要することを整理するなど、望ましい活用の在り方について検討したいと考えております。

以上がAI等を利活用した法制事務補助の短期的検証についてでございまして、最後に、24ページ目でございますけれども、最後のまとめといたしまして、法制事務デジタル化に係る今後の方針の案をご説明させていただきます。

1点目ですけれども、法制事務デジタル化及び法令データの整備・利活用に関する調査・実証を着実に実施したいと考えております。

2点目ですけれども、法令等データについては、デジタル法制ロードマップを踏まえ、過去分データ、告示データ等への対象データの拡充やAPIの機能拡張について検討したいと考えております。

最後の3点目ですけれども、上記の検討においてはAI等の技術による法制事務の補助についても検証を検討してまいります。

以上のことを今後の方針といたしまして、着実に検討を進めてまいりたいと考えております。
資料2のご説明は以上でございます。

事務局(山口): ありがとうございました。

それでは、この後、15分ほどで恐縮でございますけれども、質疑の時間を取らせていただきたいと思います。ご質問、意見のある方は挙手にてお知らせをいただければと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、角田構成員、お願いいたします。

角田構成員: 本件、簡単に一言発言させて頂きます。ちょうど官報が先の話題でしたので、官報に法令が掲載される際に、「法令のあらまし」という要約みたいなものが付されていて、これは既に存在するものですから、それとの比較で生成系AIの要約結果をテストできると思いますし、結構秀逸な正解データが存在していることになりますので、この際ですのでそういったものの利活用もして頂いてもよろしいのではないかと思いました。
以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

山内さん、何かコメントはありますか。

事務局(山内): ご指摘いただきありがとうございます。ぜひ挑戦してみたいと思います。ありがとうございます。

事務局(山口): それでは、藤原構成員、お願いいたします。

藤原構成員: 藤原です。

私からは1点だけで、まずはご指摘いただいたとおり、結局APIなどを使って外部のデータベースと連動したりしないと、要約などは別として、この分野においてはChatGPTなどは単体ではそこまで有用ではないのかなという印象を持っており、何とくっつけるかというのが結構重要だと思っています。今までの話を思い返してみると、皆さんが一番苦労しているように見えた点の一つが用例の検索のところでしたので、何をどう読ませるとうまくできるかというところまでアイデアがあるわけではないのですけれども、用例の検索の辺りで活用できるとすごく便利なものになる可能性があるので、その辺りをやってみるといいのではないかなと個人的には思いました。

以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

続きまして、安野構成員、お願いいたします。

安野構成員: 安野です。

山内様がおっしゃったとおり、LLMがどう活用できるのか探るというのはすごく意義があって、かつ、クイックに動かれていてすばらしいかなと思っております。

ただ、1点難しさとしてあるかなと思うのは、この分野はすごく技術の進展が早くて、半年前はChatGPTもなかったところから今はここまで来ていて、この後半年でもいろいろ新しいモデルや新しい手法が出てくるかなということは思っております。なので、検証はこの時点でこうで、ここまではできてここまではできないというのはありつつも、それが検証結果として発表されたときには実はまた新しい検証したいことが出ているということになるかなと思うので、結論というのはある種の留保付で現時点ではこうでしたというものになるのかなというのと、発展し続けるものに対してどういうふうに取り組んでいくのかというのは結構検証のやり方が難しいなと思いながら聞いていたというところでございます。

ただ、すごく意義があると思うので、ぜひ進めていただければと思っています。

以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

山内さんから何かコメントがあれば、お願いします。

事務局(山内): ありがとうございます。

確かにこの分野はかなり進展が早くて、かなりキャッチアップするのが大変ということはありますけれども、法制事務のデジタル化という観点で申し上げますと、例えばAPIの利活用みたいなところがありますけれども、これは例えば高度な技術活用にとっても重要であり、それに着実に取り組むというアウトプットにつながると考えておりますし、技術がどんどん進展していっても、将来のそういった技術をトライアルする際のAPI利活用にもつなげられるのではと考えておりますので、そういったところにつながるような検討、それから最後の取りまとめみたいなものをできたらと考えております。

ありがとうございます。

事務局(山口): ありがとうございます。

ほかにご質問、ご意見などはいかがでございましょうか。

米田構成員、お願いいたします。

米田構成員: 私もこの分野は興味だけはいっぱいあって、これからの期待をすごくしているところですけれども、我々のミッションというか、目標としては、法制事務というところに焦点を当てると、そもそも法律用語というものは普通の自然言語とは違う形で規範化された形でコントロールしてきたということがあるので、そういう意味ではこれまでつくってきた法令や例規とか、角田先生がおっしゃったようなあらましに関するデータなどに集約して元のデータベースをつくったほうが、もしかしたら自然言語よりも効率が高いかもしれないといったこともあって、より広い観点で比較をして進めていただけるとよいアウトプットというか、社会実装できるものができるのではないかと思います。

逆に、法令用語の難し過ぎるというところを壊していくという点でいくと、自然言語を動員していくような流れというのもありかなという印象を持っています。

以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

続きまして、渡部構成員、お願いいたします。

渡部構成員: ありがとうございます。重ねて、これは非常によい取組だと思います。
私からのお願いとしては、これは実は国、行政官の方だけではなくて、民間にとっても非常に大きな財産になるのではないかということを少しお伝えしたいなと思っています。

具体的には、例えば私の今所属しているAirbnbが2017年の住宅宿泊事業法に関していろいろディスカッションしているときに、例えば民間の側からもっとこういういい条文のアイデアというのがもしかしたらご検討いただけるのではないですかというのが提案できるときも、私は弁護士としてちょっと少し恥ずかしかったのですけれども、我々弁護士は条文は読めるのですけれども、ここにいらっしゃる行政官の方と違って条文を作ることというのはトレーニングも受けていませんし、我々がきれいなきちんとした用例に従った条文というのは作れない状況にあると思っています。

したがって、将来、これはまさに一義的には行政の財産なのですけれども、最終的には例えばいろいろな国民、それからいろいろなマルチステークホルダーがこういう条文、こういうアイデアがあるのではないかというアイデアを持ち寄るときにも使えるようになったらいいのではないのかなという将来の期待もお伝えさせていただければと思っております。
ありがとうございます。

事務局(山口): ありがとうございます。

いただいたコメントについて山内さんからコメントがあれば、お願いします。

事務局(山内): ありがとうございます。

渡部先生のご指摘にお答えさせていただければと思いますけれども、アイデアが出てきたときに条文を作るということは、我々行政官の立場というところはもともと考えてございましたけれども、確かに民間の方々のアイデアを条文に反映するというところでも可能性を考える価値があると考えております。

一方で、AIの利活用という観点で言うと、直ちにこの言語モデルを用いて条文作成までできるかどうかというのは慎重に考える必要があると思っていまして、これは先ほど米田先生のご指摘もありましたけれども、例えば法令用語はかなり厳密性がありますし、これが例えば自然言語的な出力ではうまく出力されていないという例も確認しております。この点については、例えば私どもはデジタル法制ロードマップというものもご提案していますけれども、こういった自然言語的な取組に加えまして、例えば法令用語みたいなものが適切に処理できるような技術を開発するだとか、それを開発するためにいろいろな法令関係のデータが分析できるような環境づくりが必要であるというところにもつながってまいるかと思いますので、おっしゃっていただいたユースケースがぜひ未来では実現できるように調査をしたり、必要な基盤整備みたいなところを検討していきたいと考えております。
以上でございます。

渡部構成員: ありがとうございます。

事務局(山口): ありがとうございました。

ほかはいかがでございましょうか。

安野構成員、お願いいたします。

安野構成員: クイックに1点だけ。
先ほど米田先生がおっしゃっていた自然言語と法律言語は全然違うよねというお話もかなり重要なご指摘だと思っていまして、今のLLMだと、実は機械言語みたいなものもかなりうまく取り扱えている部分がありますので、ある意味人間の自然言語以外のものも結構取り扱えるという特性は確認され始めているかなと思っています。

一方で、法律言語に関してはコードというものと比べてトレーニングデータに全然入っていないということがあるので、現時点のChatGPTなどでどこまでうまく扱えるのかというと、結構個人的には疑問だとは思っているのですけれども、今後、そういったところが強化されていく可能性というのはなくはないかなと思っています。

事務局(山口): ありがとうございます。

米田構成員、お願いいたします。

米田構成員: たびたび申し訳ありません。

最初のほうのPOCを進めるところとか、今のLLMを使ったようなものについての実験について、教育機関や研究というものをつなげてやりたいというデジタル法制の現状・未来に関する調査研究というコメントがあったのですが、これを具体的にどうやっていくのかということが大変重要であると思っています。

今、大学の研究機関でこれを我々が必要なレベルでやっているところは実際にはないわけで、この部分を受け継いでいく人材そのものがいないということになっていくことが心配です。官僚の方々はどんどん人事異動をしていきますし、担当が変わっていってしまって知識が蓄積されないという問題がありますので、そういった意味では、大学のどこかに拠点を置くとか、幾つかのところで教育プログラムをつくって展開するといったことを具体的に、早急に考えていかないと恐らく人が獲得できなくて、ついていけなくなるという可能性を感じます。今はすごく熱が上がってやっているので、どうにかなりそうな気になっていますけれども、しばらくすると後継者がいない問題に直面するような気がしますので、この中では議論しきれないと思いますが、意識を持って全体として取り組んでいただければと思っています。

事務局(山口): そうですね、ありがとうございます。人材の育成・継承を念頭に置いて、行政内外のネットワークをしっかりつくっていくということも念頭に置いて取り組んでまいりたいと思います。

山内さんから何かコメントはありますか。

事務局(山内): ありがとうございます。

今、山口から申し上げたとおりであることに加えて、法令データとデジタル技術の利活用というところを考えるに当たって、私自身もコンピュータサイエンスを学んだ観点から、法令の実務をやっている中で面白いなと思って、こういった法令データの分析に取り組んだということもありますけれども、そういったように、法令データを公開したり、APIを公開したりすることでそれに興味を持っていただく人がぜひ増えていただいたらうれしいなとも考えております。こういったことを踏まえて、例えばAPI等の利用者を踏まえた双方型の設計・試用みたいなものも考えたところですけれども、外部の方々も含めた関心の醸成に取り組んでいきたいと思っております。

以上です。

事務局(山口): ありがとうございます。

ほかにご質問、ご意見などはいかがでございましょうか。

よろしければ、今日様々いただきましたご指摘、激励といったものを踏まえて、いずれも大変チャレンジングな課題を設定しておりますけれども、今年度も意欲を持って取り組んでまいりたいと思います。

それでは、よろしければ、最後に本検討チームの座長でいらっしゃいます大串デジタル副大臣から閉会のご挨拶をいただければと存じます。副大臣、よろしくお願いします。

大串副大臣: デジタル副大臣の大串正樹でございます。本日も活発にご議論いただきまして、ありがとうございます。

本日は、デジタル法制審査や官報電子化の取組と法制事務のデジタル化及び法令データの整備・利活用に関する調査・実証、AI利活用などについて、構成員の皆様に大変貴重なご指摘をいただきまして、ありがとうございます。

今後、デジタル庁におきまして、各府省からの点検結果を踏まえてデジタル法制審査を着実に実施してまいります。また、官報電子化につきましては、本日からオブザーバーで参加いただいております内閣府におかれて、本日のご議論を踏まえての法案の検討を進めていただければと考えております。デジタル庁としても必要な協力は行ってまいります。

また、法制事務のデジタル化及び法令データの整備・利活用に関する調査・実証については、これまで長きにわたり本検証チームでご議論いただいた内容をいよいよ実証するものであります。改めて皆様のこれまでのご支援についてお礼を申し上げます。この調査・実証と、昨今話題になっております大規模言語モデルの法制事務への活用の検証に当たっては、高い専門性を持つ皆様のご支援が欠かせませんので、引き続きご指導いただければと思っております。

また、本日からオブザーバー参加いただいております内閣法制局におかれましても、引き続き御協力をよろしくお願いいたします。

改めまして、本日は誠にありがとうございました。

事務局(山口): 副大臣、ありがとうございました。

それでは、よろしければ、本日の議事は以上とさせていただきたいと思います。

本日の議事でございますけれども、ご異論がなければ、議事録を作成し、皆様にご確認いただいた上で公開、資料につきましても公開とさせていただきたいと思います。

以上をもちまして、本日の会議を閉会させていただきたいと思います。お忙しい中、本日はご参加いただきありがとうございました。