デジタル臨時行政調査会作業部会 テクノロジーベースの規制改革推進委員会(第2回)
概要
- 日時:令和4年(2022年)11月16日(水)10時00分から12時00分まで
- 場所:オンライン開催
- 議事次第:
- 開会
- 議事
- テクノロジーベースの規制改革推進委員会 今後の議論の方向性及び論点(事務局から説明)
- 江崎構成員からの説明
- 技術マップに関する提案
~技術活用におけるセキュリティ等のリスク評価の進め方~
- 技術マップに関する提案
- 島田構成員からの説明
- 東芝が考えるAI品質保証について
- 意見交換
- 閉会
資料
- 議事次第(PDF/82KB)
- 資料1 テクノロジーベースの規制改革推進委員会 今後の議論の方向性及び論点(PDF/1,714KB)
- 資料2 江崎構成員説明資料 技術マップに関する提案 ~技術活用におけるセキュリティ等のリスク評価の進め方~(PDF/997KB)
- 資料3 島田構成員説明資料 東芝が考えるAI品質保証について(PDF/2,947KB)
- 議事録等(PDF/485KB)
議事録等
開催日時
令和4年(2022年)11月16日(水)10時00分から12時00分まで
場所
オンライン開催
出席構成員
座長
江崎 浩(デジタル庁 シニアエキスパート(アーキテクチャ))
構成員
- 岡田 有策(慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授)
- 小川 恵子(EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 バンキングキャピタルマーケットリーダー レグテックリーダー パートナー 公認会計士)
- 加藤 真平(東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授)
- 川原 圭博(東京大学大学院工学系研究科 教授)
- 川端 由美(自動車ジャーナリスト)
- 齊藤 裕(独立行政法人情報処理推進機構デジタルアーキテクチャ・デザインセンター センター長)
- 島田 太郎(株式会社東芝 代表執行役社長 CEO)
- 染谷 隆夫(東京大学大学院工学系研究科 教授)
- 豊田 啓介(東京大学生産技術研究所 特任教授)
- 中垣 隆雄(早稲田大学理工学術院創造理工学部 教授)
- 中村 修(慶應義塾大学環境情報学部 教授)
- 永井 歩(アスタミューゼ株式会社 代表執行役社長)
- 根本 勝則(一般社団法人日本経済団体連合会 参与)
- 登 大遊(独立行政法人情報処理推進機構サイバー技術研究室 室長)
- 松尾 豊(東京大学大学院工学系研究科 教授)
概要
事務局(須賀): おはようございます。時間となりましたので、第2回目の「テクノロジーベースの規制改革推進委員会」を開会させていただきます。
今回も構成員の皆様にはオンラインでご参加いただいております。
遠藤構成員、荻野構成員、久間構成員、鈴木構成員におかれましては、今回、所用によりご欠席となっております。また、川原構成員、染谷構成員は途中からご退席いただく予定になっております。
なお、本日の議事進行上、前半にご説明、後半に意見交換をまとめてということにさせていただいておりますところ、その間にチャットを活用して皆様からご意見・ご質問を承っていきたいと思っておりまして、チャットの媒体は極力委員会のスラックのほうをご活用いただければと思いますけれども、それが難しい場合にはWebExのチャット欄にもぜひご投稿いただければと思います。投稿いただいたコメントについては事務局で確認をいたしまして、適時拾わせていただけたらと思います。
早速でございますが、これより本日の議事に入らせていただきます。
以降の議事進行は、江崎座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
江崎座長: どうもありがとうございます。
それでは、議事に入らせていただきます。
第2回目の議事といたしましては、テクノロジーベースの規制改革推進委員会における今後の議論の方向性及び論点について、2つ目、テクノロジーマップ整備に向けた技術活用におけるセキュリティー等のリスクの評価の進め方について、3つ目、東芝が考えるAI品質保証についての3件を予定しております。
最後にまとめて構成員の皆様からご意見をいただく時間とさせていただいていますけれども、チャットにお入れいただければと思いますし、染谷先生、川原先生は先にお出でになるということで、適宜ご発言があればいただければと思います。
まず、事務局の須賀参事官から、テクノロジーベースの規制改革推進委員会における今後の議論の方向性及び論点についてご説明をお願いします。
事務局(須賀): 資料を1枚めくりまして、ここは復習ですが、デジタル臨調の取組の概要を説明しております。3ページも振り返りで、ゴールをまとめさせていただいております。特に変更ございません。
その次のページが目次になっておりまして、今回、3つの柱に沿ってご説明をさせていただければと思います。
1つ目が、先行公募を実施いたしまして、そこからの学びも踏まえまして、テクノロジーマップにどういった情報をどういった考え方で掲載していくのがいいかということについて、事務局からのご提案をまとめさせていただいております。
2つ目が、先行公募をやってみた学びも踏まえまして、今後、マップについて、まずはどういった対象領域と対象と考えて、しかも、それについてどういったプロセスを踏んで編さんしていくのがよさそうかということについてもたたき台をご用意しております。
3つ目に、残る論点といたしまして、編集の方針ですとか、使っていただけるインセンティブの設計をどうしていくかとか、掲載内容についてのトラストの担保をどうしていくかというような論点についても、一部しかかりでございますけれども、ご説明をさせていただければと思います。
まず、1つ目の柱です。次のページからが収載情報の在り方ということで、その次のページに先行実施をいたしました公募の概要をまとめております。ありがたいことに、短い期間でございましたけれども、24件の応募を大企業から中小企業、ベンチャーまで、様々な方からいただきました。現在、幾つかのクライテリアに沿って、事務局側で精査をした上で、20件をデジ庁のホームページで公表させていただいております。
次のページでございますけれども、カタログの掲載項目として、事前に規制当局の皆様とも深く会話をさせていただきまして、こういったことが気になるということを聴取した上で、それを必須の回答項目として盛り込む形で実施しております。黄色でハイライトしているところが当局からぜひ聞いてほしいとおっしゃっていただいたところのまとめでございまして、その次の次のページまでが全てカタログの掲載項目ですが、主に不正受験対策をしっかりできるのか、国家資格でございますので、そういうところが気になるということでございました。
その次のページに学びをまとめております。
1つ目ですが、当然のことではありますが、このカタログは規制当局との連携が必須であるということで、今回、対面講習の規制所管省庁との対話を通じまして、特になりすましやカンニング等の不正検知が必須だと考えていらっしゃることを把握いたしまして、そこは必須で回答を求めました。
必須の機能が一部備わっていない場合に、ほかの機能が幾ら充実をしていても劣って見えてしまうというようなご指摘も実は事業者さんからいただいたのですが、こちらについては、現時点では調達者側のニーズを踏まえると、やむを得ないのかなと考えております。
それから、いただいた公募結果を大変お手数ながら、もう一度規制所管省庁の方々及び試験や講習を実施していらっしゃる団体の方にお見せして、この結果はどうか、使えるかということを伺わせていただきましたところ、非常にポジティブなコメントをいっぱいいただいた上で、留意点として、技術の概要をぱっと見て分かるようにしてほしい、そこを自由記載にあまりしないでほしいというようなご意見ですとか、評価基準や技術水準をもっと明確にしてほしいとか、それから、今、簡易フォーマットで公表しており検索ができないので、比較とか検索がしやすいレイアウトを考えてほしいですとか、導入費用が気になるので事業者に一々個別にアクセスしなくてもいいようにある程度工夫をしてほしいといったようなご意見をいただいております。
いずれにしても当局との連携というのは、公募を実施する前からしていく必要があるということを改めて確認いたしました。
2つ目、大きな論点といたしまして、今回の公募に関しては、事務局が講習と試験を一つのプロセスと考えまして、講習の申し込みから手数料の支払い、講習の実施、試験の実施、修了証の発行までの一連のプロセスを全てカバーできる製品を対象として公募したのですけれども、多数の企業から、応募したいのだけれども、全件をフルスペックでカバーするのは無理なので辞退しましたという声をいただきました。
他方、一部の要素技術のみ、これは要素技術といっても大きいものから小さいものまでいろいろあるのですが、極端なところでは本人認証の技術だけをお持ちの企業とか、カメラで人の動きを検知できる技術をお持ちの企業とかが、事務局が設定した当初の公募要件は満たさないのだけれども、適当に必要事項欄を埋めてごまかして応募していただいたという例がございました。現在、これらの要素技術は、せっかく応募していただいたので別枠でホームページに載せているのですけれども、ここの扱いは事前に決めておく必要があるということを改めて思いました。
スタートアップ企業も含めた創意工夫を生かすとか、私たちが気づいていない新たな技術を発掘するとか、企業間で要素技術同士で協業していただくとか、そういったいろいろな可能性もございますし、技術探索の単位というのは、あくまで事務局が勝手に決定した便宜的なものだということも考えますと、一部の要素技術のみの応募というのも認めていくべきではないかと現時点では思っております。ご意見を賜れればと思います。
3つ目に、この2つ目の論点で広く要素技術もOKとしますと別の悩みが生じます。本人認証の技術などになりますと、今後、あらゆるカタログ整備の公募に対して要素技術として何度も何度も応募していただくということになってしまうのかなと思います。こういった複数の技術分野で横断的な活用が想定される共通技術については、個別分野の要素技術として何度も受け付けるというよりは、別途抽出してカタログを整備しておくべきなのかもしれない。この辺りも論点かと思います。
それから、その他に3点書かせていただいております。
今後、規制所管省庁との対話を通じまして、まず、応募していただいた技術をこのまま採用すればいいと思っていただけるのであれば、調達に進んでほしいと思っております。その手前で、規制上、対面でなければできないという規制が入っている場合、それを見直していただくことになります。他方、もし、この応募情報だけでは不十分であり、ここは検証が要るというような判断になりますと、技術検証を実施していくことになるわけですが、技術検証の要否も結局、規制所管省庁との対話を通じて判断していくということになるものと思っております。
2つ目は、事務局で精査して幾つか載せなかった案件があったと申し上げましたが、一つがリリース前のサービスです。宣伝になるのでマーケティング上ぜひ応募したいというニーズがあるのはすごくありがたいことなのですが、実際、それが確実にリリースされるのか追うような能力が事務局になかったり、ファクトチェックや検証が現時点で困難なので、今回は公表の対象から機械的に落とさせていただきました。
それから、公募期間が終了した後の応募が実は幾つかございまして、あまりフェアではないなと思いつつも、今回は便宜的に追加公表をさせていただいております。
次のページで、以上の申し上げたことも含めまして、主な収載情報について載せることのメリットとデメリットを整理しております。
1つ目が、先ほど申し上げた当局が考える必須要件を必須にするかどうか、これはするのではないかということで先ほどご説明をしました。それから、要素技術も載せていく、ただし、横断的な技術については別途カタログを整備するということでどうか。
ここから先が新規ですが、ベストプラクティスが実は有用だというご指摘を随分いただいておりました。採用事例に当たるベストプラクティスは、掲載することによって、その技術自体に加え、適用、運用される文脈ですとか、事例というものがしっかり共有できる。自分たちも似た使い方をしたいから、これだったらいけそうだと判断していただけるということで有用性は非常にある。
他方で、デメリットとして、採用実績がないスタートアップが排除されるような結果になるのではないか、それから、実績を積もうにもそもそも規制があって市場自体が存在しないので、先に規制見直しによる市場開放が先行するべき場合があるのではないかというご指摘もいただいております。ここについては、まだ具体的にお困りの事例とかを私たちで把握できているわけではないのですけれども、現時点の仮説としては、テクノロジーマップにはベストプラクティスを収載していくけれども、ただ、それを必須の要件、実績がないと載せられないとはしないということなのかなと思っております。
その次の欄に、デメリットや制約条項をぜひ載せてほしい、技術でできることばかり華々しく説明をされても、実はできないことの情報のほうが使う側からすると有益なのですと、当然の指摘だと思います。
他方で、デメリットとして、今回、応募していただいた企業などとコミュニケーションをしましても、正直に言うと、留意すべき制約の情報提供までは技術を保有されている企業の側でもできますが、デメリットとか、できないことを書いて出せというのは、そもそも応募するかどうかも決定権が技術保有企業側にありますので、マイナスのマーケティングになるぐらいなら応募しないということになってしまいますので、難しいというようなコメントもありました。ですので、この収載の要否に関しては、企業に留意事項の表明をしていただく、他方で、規制所管省庁も含めたユーザー側が何らか使ってみたらこうだったということを情報として補完していただくような仕組みがあるといいのかなと思って△にしております。
それから、先ほど出ましたが価格の問題です。採用したい側は、現場での導入判断には価格情報が必須である、あまり高ければ無理なので、という話です。
他方で、これも企業と会話をしますと、まずは価格のみを重視した選定があまりにも政府の周りで先行しているので、ぜひ性能を評価して性能発注してほしいということももっともな指摘としてありました。また、ご利用される側の要件とか規模とかを把握した上で価格設定を柔軟に行っていくという場合が当然あり、一律で幾らですというのはなかなか難しいというようなお話もございました。ですので、こちらも当面掲載は任意としながら、臨調の本番でもご指摘がございましたけれども、デジタルマーケットプレイスが成立した暁には、そこと連携をしていくというようなことも考えてはどうかと思っております。
それから、その他ということで下に書いておりますけれども、サイバーセキュリティー上どういう認証を取っているのかとか、どういう基準に準拠しているのかとか、これはいつの時点の情報なのかとか、関連するガイドラインの情報なども載せていくべきだというご指摘は忘れないようにしたいなと思っております。
次の2ページは、1回公募して終わりということではなくて、今後も少し継続的にやっていけたらいいのかなということで、現時点のアイデアでございますので、ぜひここも忌憚なきご意見をいただけたらと思います。
1つ目が、点検や検査や診断といったものを実地でやるとか、定期でやるという規制がたくさんありまして、今回、先行7項目の改革の対象にしているわけですが、それに必要な技術をぜひ知りたいというニーズがございます。
点検、検査、診断の対象は非常に広く、陸海空の領域や区画内の事故や盗難や火災のリスクなどを診断していくという場合と、特定の構造物や自然物の状態を監視して、劣化リスクや災害リスクを診断して、予測をして、残りの寿命を推定して補修のタイミングを決定していく、こういったニーズもございます。2つ目に関しては特に、国交省がおつくりになっている既存のカタログが非常によくできていることもあって、そことの連携も重要になってまいりますし、これだけ広い中でいきなり探索してしまって、例えば2,000件とか3,000件を応募いただいてもちょっとハンドリングが難しいものですから、そういった辺りも含めて、まずはどういった範囲で技術探索を行うことがいいのか考えたいということで、論点になっております。
対象の技術、探索する技術のほうも、センサーモニタリング技術を今代表的に書いており、ほかにも画像解析といったことも対象になってくるのだと思いますが、センサー技術もあらゆるものがあるということで、下にカタログの掲載項目をイメージとして書かせていただいていますが、すごい複雑な選択肢になってしまうので、どういった形でやるべきか、アドバイスをいただけたらありがたいなと思っております。
2つ目が、ちょっと毛色が変わるのですけれども、プライバシーテックの企業から、実はプライバシーを保護する技術で秘密計算という技術があり、これを使いますと、個人情報を移管して直接移管された人が触るようなことをせずに秘密の計算処理ができる。そういった技術がせっかく出てきているのだけれども、現行の個人情報保護法の解釈ですと、どんなに秘匿化しても個人情報であることには変わりないとされてしまっている。ただ、運用上の工夫として高度に暗号化されている場合はそれを問題視しないというような解釈になっているようなのですが、この高度な暗号化をされているということに、この秘密計算を使うと該当するのかどうかが不明確なので、テクノロジーの実装が進んでいない、というような問題があるようです。こういったものも対象として考えられるのかなということでご紹介させていただきました。
このほかにも幾つか面白いテーマのご相談をいただいておりますので、ぜひ継続的にやってまいりたいなと思っております。
次のページからが2つ目の柱でございます。これが図示した状態ですけれども、縦に規制がある場合とない場合、横に技術がある場合とない場合とざっくり取ったときに、テクノロジーマップなりカタログが対象とすべき領域は一体どこかということを少し整理していければと思います。
1つ目、縦軸ですが、規制がない場合、下の空欄になっているところですが、ここはデジタル臨調の取組の趣旨からすると、一旦対象からは外すのでしょう。あくまでアナログ規制がある場合に、その技術を使っていいとなっている場合と、技術を使っては駄目だとなっている場合があり、駄目だとなっているものはなるべく規制を見直していただいて、技術採用の制約を解除していくということなのだと思います。
それから、横軸に関しては、当然技術がある場合を対象にしたいわけですけれども、あるとないの間は曖昧で、性能を確認しないと定かではないとか、性能未達の場合など、技術ありなしの間にそういったゾーンが結構あるのでしょう。なるべく技術がないと言われているものについても少し広目に取って、真ん中のエリアの変化を見逃さないようにしていくということが、技術探索の範囲の設定としては重要なのではないかということで、白抜きの点線で全体を示させていただいております。
その範囲のうち、確実に成熟した技術があって、しかも技術利用の規制面の制約がないものについては、いきなりテクノロジーマップ収載という茶色のエリアに行ける可能性があるでしょう。全部を載せていると破綻してしまうかもしれませんが、ニーズがあるのであれば、規制制約がなくてもマップには収載していいでしょう。制約がある場合に関しては、規制の見直しが行われたら制約なしという扱いで収載していくということになるでしょう。
技術に関して言うと、成熟技術が確実にあるエリアと性能を確認したいとか未達であるというエリアの区別は、完全に客観的な判断は難しいと思うのですけれども、何らかの形でそこを判断いたしまして、技術検証が要ると判断されたものについては、まずそれをしていただいた上で規制を見直して、マップに収載というプロセスを実施していく。さらに規制があって、ぜひ技術を使ってコンプライアンスを革新したいのだけれども、どうやらまだ技術がなさそうだという場合は、開発目標と一番右側に書かせていただいていますが、そういったものを当局が設定していけるといいのではないかということを概念上、整理させていただきました。
次のページですけれども、それを踏まえまして、テクノロジーマップを整備するときのプロセスとして4段階を考えてみました。
1つ目が、今、デジタル臨調でやっているように規制を類型化する、アナログ規制を抽出しまして、省庁横断でどういった趣旨でやっている規制なのかということで類型化をしまして、ある類型について当局が一体何を気にしているのか、規制遵守のための必須の要件とは一体何なのか、どのぐらいのリスクの許容範囲があるのか、これは非常に難しい会話になりますが、それを可能な範囲で明文化するということをやらざるを得ないと考えています。これを明文化したものが先ほどから申し上げているカタログ掲載項目に当たっていくわけでございまして、そういった要件が公募やカタログ掲載項目に反映されていくというプロセスが、まず要るでしょう。
その次に、類型化された規制の見直しに資する技術を公募しますというような形で、技術探索のフェーズに入っていく。そのときに出てきた技術を眺めながら、当局ともう一度対話をして技術検証が要るのかどうかということを判断していただかなければならない。ここは当局が不安かどうか、当局が検証がないといいと言えないと思うかどうかということが、今の時点では一義的にはクライテリアになっているのかなと思いまして、ほかの知恵があれば、ぜひ教えていただきたいなと思います。
逆に、検証不要だと思われる成熟技術については、最低限のファクトチェックを経て、いきなりマップ、カタログに掲載していくことになるのでしょう。
当局が検証が要るとおっしゃったものについては第3のプロセスに参りまして技術検証を実施し、性能不十分とか技術不存在とされたものは開発目標として設定をしていく。
そして、技術検証が終わりましたら最後のプロセスに参りまして、規制の見直しを実施することになります。規制を見直して終わりではなくて、マップ、カタログに掲載されたテクノロジーが具体的に官民によって調達されていくところまでつなげたいというのが今回の取組の趣旨なのかなと思っております。
次のページは、規制の類型化をするために、抽象概念としていろいろな規制の趣旨を大くくり化したときに、一体どんな技術があって、現在もう広く活用されているものと、技術検証中であるものと、活用の可能性があるけれどもまだアンロックされていないものの別を、事務局で把握可能な範囲で仮置きした表になっております。これは実はじっくり読み込むと情報量が多く面白いと思っているのですけれども、こういった作業をまずしていかないと、規制の類型化と技術探索のフェーズはこなしていけないのではないかなと思っております。
次のページ。規制所管省庁との連携がポイントになるので、まず、テクノロジーマップの整備にあたり、技術検証についてはデジ庁の側でお金を負担して各省横断的に検証していただくというような仕組みを構築すべく、現在、予算要求をさせていただいているところでございます。
次のページに、規制所管省庁から連携するべきということでいろいろなご指摘をいただいておりまして、必須要件の明確化とか、先ほどプロセス図に書かせていただいたようなことが必要になってくると思っております。
その次のページが3つ目の柱になります。編集方針については、江崎座長にまとめていただいたこれまでの議論のサマリを項目別に整理したものになっています。
まず一つが、カタログの編集、発行、保守、運用の主体をどう考えるかということだったと思います。それから、カタログに掲載された技術を利用したときの責任主体、責任の範囲です。これが一番重いかもしれないなと思っています。現時点では、ただの参考の情報としてカタログを提供しますとしておりますので、このカタログの編集主体は何ら責任を負わない形になっているのですが、それで本当にいいのかということも含めて検討していくということだと思っています。
それから、カタログの提供のターゲットに関しては、規制所管省庁の意思決定権者というのが、まずターゲットでしょう、ただし、それに続いて実際の調達にまで行きたいものですから、政府の組織、あるいは規制対象企業の組織の中で調達の意思決定をされるような方とか、登さんから前回ご指摘をいただいた実質的技術的決定権者といった方々へアピールする記事も増やしていく必要があるのだろうということで、論点認識をさせていただいております。
それから、テクノロジーマップに持たせたい機能として、いろいろ夢が広がるわけですけれども、ニーズとシーズのマッチング機能ですとか、技術が未来をこう変えていくというようなことが分かるような技術的裏付けを持って書かれたような文章ですとか、カタログを利用される方の求める軸とか範囲で自動でマップに生成するような機能ですとか、そういったものがあるといいということだったと思います。
それから、文章の編集方式についても、自動処理や二次利用がしやすい技術中立的な形式にしなくてはいけないということだったと思います。
次のページに続きますけれども、継続的な更新運用のインセンティブ設計ということでございます。当初はもちろんデジ庁が官主導で立ち上げるわけですけれども、門番として立ちはだかるのではなく、民主導でエコシステムとして発展できるものということをご指摘いただいていたと思います。その場合に、保守運用のためにどういった組織とかケイパビリティーが要るかということが検討事項です。
それから、技術保有者の更新しやすい仕組み、書きたいと思っていただく意欲をかき立てるような仕組み、これは登さんからのご指摘があったところですが、それもしっかり検討していくということです。
それから、マップをつくるだけではなくて利用もしていただきたいわけですが、この利用のインセンティブのほうで言いますと、規制所管省庁に関しては、まずテクノロジーマップを確実に参照して規制の見直しを行っていただくような仕組みをしっかり整備する必要があるだろうということで、現在検討しております。
それから、技術保有者に対しては、政府が直接調達する技術はなるべく政府調達に円滑につながるようにということで、先ほどご紹介したDMPとの連携といったことも考える。それから、事業者さんへのインセンティブとしては、規制遵守の必須項目をしっかり設定をするとか、技術検証の要否の判断をするときに、規制所管省庁とちゃんと連携をして、彼らの思いをしっかり引き出すことで、このカタログの価値が上がっていくということなのだろうと思って、現時点ではそのように書かせていただいております。
長くなりましたが、最後のページにトラスト担保の仕組みということで、現在こうなっていますということで書かせていただきました。
1つ目が、先行公募においては技術カタログというのはあくまで参考情報であって、国が認証・認可を行うものでありませんという整理をさせていただいておりますけれども、それに加えて規制所管省庁と連携をすることで、そこに意味を持たせていくというような工夫をしていると思います。さらに、セキュリティー認証も含めた各種の認証取得の状況などをアピールできるようにして、それを今後、調達要件に反映させるかを判断していくというようなことが考えられるのかなということで書いております。
ほかによき仕組みがあれば、ぜひご意見いただければと思います。
事務局からは以上です。
江崎座長: どうもありがとうございました。
あと2つ後ろにございますけれども、先に、あるいは非常に厳しい状況でご出席いただいている委員の方もいらっしゃいますので、先ほどのかなり整理された部分が多数だったと思いますけれども、事務局からのご説明に関しましてご質問、あるいはご意見等があればお願いいたします。
島田さん、お願いします。
島田構成員: 大変まとまった資料でよかったと思います。
1点だけ、インセンティブのところなのですけれども、実態の現象としてどういうことが起こっているかといいますと、例えばガスの会社などからすると、結局、IoTを導入してコスト削減しても、その分の利益は抑えられて自分たちの利益にならないというような現象がありまして、そういうようなことをすると、そもそも会社としてリスクを冒して努力する意味が、こういったような課題がありますので、そういった制度設計も含めて考えていただけるといいのかなと思います。
以上です。
江崎座長: ありがとうございます。
まさにそうですね。利益が出ないと皆さん投資はしないので、その辺りのインセンティブ設計の部分もプラクティスを共有できればというのはあります。
中村さん、お願いします。
中村構成員: いろいろまとまってよかったなと思います。
1点、規制を変える、法律を変えなくてはいけない部分のフィードバックの話なのだけれども、どうしても逆になっているような気がしていて、規制をしなくてはいけない目的、何のためにどういう規制があるのか、その目的の明確化と、目的をアチーブするためにどういうクオリティーが必要なのかというブレークダウンができていなくて、単純に年3回、何かテストすればいいとか、5年に1回やればいいとかいうような、それも筆記試験をしろとか、講習を何時間しろとかいう手法が多分法律に書かれてしまっている。そこが改革をしなくてはいけない本質なのだろうなという気がするのです。
今、マップをつくるときにもどのぐらいとか、規制をしている省庁といろいろお話をして、これはどういう目的なのですかというような議論を多分されているのと思うのだけれども、そこは全ての規制に対して同様にできると思うのです。すなわち何の目的で、何をしなくてはいけなくてということをもう少し明確化していく。その手法に関して、手法が先にできているのだと思うのです。
試験を何回しろとか、このぐらいのテストをちゃんとやれとか、例えばセンサーでこういうものを年1回は検査しなくてはいけないとか、目視しろとか、それはそれぞれの目的をもう少しブレークダウンする、何を検査するために何をやっているのか、いわゆる目的をブレークダウンすることがマップを書く上でもすごく大事、いわゆるこういう目的を満足するための検査なのだと、では、どういう方法があるのですかというようなストーリーになっていかないと、どうしても回らないのではないのかなという気がするのです。そこは多分、デジ庁が旗を振られる部分なのではないかなという気がします。
江崎座長: ありがとうございます。
須賀さんも頷いていますけれども。
事務局(須賀): 今までの規制が合理的だったと仮定をしたときに、デジタルという時代の波が来たので、もう一度デジタルを前提にしても本当に合理的な規制か見直しましょう、という対話を各規制当局とさせていただいているのが、今のデジタル臨調の取組です。気が遠くなるほどコストがかかるプロセスだなと思う一方で、そこが肝だなとも思います。例えば車が人と接触せず安全に走ることを目的にスピード制限がかかっているわけですが、自動運転技術を前提にしてもスピード制限がベストな手段だったのという会話まで到達するようにということだと思いますので、心してやっていきたいなと思います。
中村構成員: 多分カタログをつくるというのは一つの手法で、その手法でカタログをつくるというコミュニケーションの中で、そういうような部分を規制省庁にもう1回考え直してもらう。いわゆるブレークダウンしていくという作業をサポートできればいいのではないのかなという気がします。
事務局(須賀): ありがとうございます。
江崎座長: 多分、そういう方法で見直した事例というのがプラクティスとして載ってくるといいですよね。これを参考にして皆さんにやっていただくように誘導する。
ほかにご意見はございますでしょうか。
それでは、また最後にお時間をつくっておりますので、ご意見のある方は、最後のほうに頭の整理、あるいはご発言の整理等をいただいて進められればと思います。
続きまして、私のほうから、テクノロジーマップの整備に向けた技術活用におけるセキュリティー等のリスク評価の進め方についてということで、資料2に沿って簡単にご説明させていただきます。
重要なことはカレントプラクティスというわけで、ずっと変わっていくということ、それは先ほど須賀さんからも話があったとおりで、どうやって民と官が応援していくかというところを考えることも忘れてはいけなくて、官だけの問題ではない。
それから、導入・運用されなければ意味がないので、どうやって導入・運用したかというところも技術マップ、いわゆるテクノロジーだけの問題ではなくて重要ではないかと思っております。このプラクティスを共有する、先ほどの中村先生の話にも関係すると思いますが、こういう方法があってという形ではなくて、見直すというようなところの運用の導入の手法をどう持つか、さらにマイグレーションというところも非常に重要な共有すべきプラクティスになるだろう。
それから、インセンティブ、これは島田社長もおっしゃったとおりで、やらなくてはいけないということだけではなくて、デジタル化でかえってコスト増、あるいはコスト削減につながらないという場合に対して、どのように対応できたかというプラクティスを多分共有して、それが可能であれば、それを政策に落としていくというようなところが必要だろう。そうすると、業界をまたいだ知見とか知識とか経験をどうやって共有するかということも、このマップの中に入れたほうがいいのではないかなというところになります。
3番目は、須賀さんもおっしゃった過剰な要求、規制、足枷にならないようにということを考えなくてはいけないということだと思います。
次のページは当たり前のことを話していますので、こういうことを避けようというのが本質的な技術の話なので進めなくてはいけない。そうすると、須賀さんも言っておられたサイバーセキュリティーのような必須となる要求条件をちゃんと見込まなくてはいけないと考えます。
そうすると、先ほどのところ、もう一つ、言い直しも含めて書いていますけれども、どういうカレントプラクティスを共有するかということにおいては知識だけではなくて、運用の経験も非常に重要な共有すべきプラクティスになるだろうと思います。知識としては当然勉強すればというか、書きやすいものになりますけれども、さらに運用というところでの手法をどうすべきか、これは当然、導入、運用に向けてのお話が入ってくるし、先ほどのインセンティブというところでも、これもお金を含めたインセンティブの設計をどうするのかというのが非常に鍵になってくるだろうと思います。
それから、検証の話も出てくるわけですけれども、これを官がやるというのは非常にコストが大きすぎるわけで、これをどうやって産業化するかというところに導いていくような情報の提供も多分必要だし、それがうまくいった事例を紹介するのは非常に有効ではないかと考えます。そうすると、官が応援をして民主導でアジャイルにこういう検証体制がつくられていくのではないかと思います。
それから、基本的にはAS ISのお話がマップとしては入りやすいわけですけれども、To Beにしていく、つまり新しい機能とか、あるいは新しい構造に変えるということも、このマップで一緒に考えなくてはいけないところだろうと思います。
そうすると、それをつくる場合のうまくやる方法としてはKPIからKGI、今日の事務局の資料の中から言うと、価格だけで決められているのを変えていかなくてはいけないというところを問題意識として書いていただいているわけです。そうすると、KGIというのを調達の要件にするということもプラクティスとして必要だろうと思います。
そうすると、この4つのものを1つでできるというのを政府としてうまくドライブできたのが、このCloud by Defaultになっています。
Cloud by Defaultの議論に私も参加させていただいていましたけれども、単純にデータ共有を進めるということだけではなくて、2番目のところは専門家に任せることによって人件費としての経費の削減、あるいは人材の育成、確保にかかるところが下がる、さらにCAPEX と OPEXが下がりつつ、4番目、5番目でCSR、BCP等のところまで入るという形で、これが満足できないと、Cloud by Defaultとしての効果がないので、これを要求条件にしていくというような方向にやっているというようなことになるかと思います。このようなプラクティスとしてのKPIではなくて、KGIというのをちゃんと共有するというところが必要ではないかと思います。
それから、デジタル化というところが、この手段である手作業という一人称のものをデジタルという三人称に持っていくことを考えると、基本的にはデジタル化とオンライン化でデータの忖度、改ざんができなくなる。監査業務も非常に簡単になる。これは本当になるかどうかというのが、島田さんがおっしゃった本当にコスト的にメリットが出てこなければ、民間としては入れるインセンティブがなくなるので、ここをどう考えるか。
もう一つ、責任の所在が人ではなくコンピューターに行くことを考えると、さらにWeb3が入ってくると、心理的安定性というのが従業員の皆さん方に出てくるというのは、一つのデジタル化の効用として、KPIとして出てくるのではないかということも、うまくインクルードできればいいのではないかなと思っております。
最後のページで、技術マップの一つの重要要件としてセキュリティー要件というのは、ちゃんとワンストップで情報を提供、把握できるようにするべきだろうと思いますし、システム的に言えば、いわゆるサイバーセキュリティーだけではなくて、運用安定デザインというところでの評価も一緒にやっておかないと、人でやっていたところに対して、それと同等のものが出てこないとというのが重要だろう。
もう一つ、運用も重要なところで、単純な要素技術とかシステム要件に加えて、どうやって運用をうまくできているのかという手法の共有と、それをうまくやったインセンティブの共有が必要だろう。
それから、技術の検証体制に関しては、どうやって民でその検証ビジネスを産業化するかということも考えつつ、この事例をちゃんと提示して産業化を進められるように誘導していくのも重要な仕事になるのかなと考えます。
それから、価格だけというところの問題に関連して、KPIからKGIにしつつ、新しい手口とかインセンティブとしての、今、考えるところとしては経済安全保障、あるいはカーボンニュートラルというところが一つの軸として出てくるわけですけれども、これに限らずどのようにインセンティブを増やすか、価格だけではないところに持っていくのかというところも技術マップとしてカバーすべきところではないかなと考えましたので、私からのご提案でございました。
以上でございます。ありがとうございました。
続きまして、島田構成員のほうから、東芝が考えるAI品質保証について、ご説明のほうをお願いいたします。
島田構成員: それでは、私のほうから、東芝が考えるAIの品質保証について、これを言う前に、今、皆様からいろいろ指摘された運用もよく考えないといけないという話を言いたくて、私もこれを用意してきました。運用というか、では、運用がちゃんとできるようにするためのプロセスは何であるのかということを言おうとしております。内容を見ていただければご理解いただけると思います。
結局のところ、検査とか、そういうものを自動化するということは、その品質を担保するということであります。要求された性能が満たされているかどうか、確認できるようにしなければならないわけであります。しかしながら、AIというのは品質保証が簡単ではありません。AIというのはロボットと考えるよりは、人間と同じように扱ったほうがいいと私は思っております。すなわち役に立つのだけれども、ちゃんと訓練してあげないと安定的な品質を出すことができないというのが問題点であります。
具体的には、ここにいらっしゃる方は皆さんよくご存じの話だと思いますけれども、予想精度を100%にする、それはできません。非常に困難であります。また、なぜそんな結果になったのかもよく分からないわけです。また、運用開始後に動作を保証するのが難しいという点があります。後ほど説明しますが、時間経過で腐ってくるとよく言うのですけれども、精度が下がったりとか、想定していない使われ方をすると、全く結果が予測できないというような問題があるわけであります。
そこでAIの品質保証です。いいツールなのですけれども、ブラックボックスの透明性みたいなものを確保しないといけない。さらには学習データの品質、バイアスを取り除く公平性みたいなことを考えないといけない。また、誤認識、フェールセーフなどで保護しないといけないことに注意してデザインする必要があります。それが学習データの品質とAIモデルの品質に非常に重要に関わっておりまして、学習させるデータそのものの透明・公平性・精度、頑健性などを見なければなりません。それでも答えは正しくないことがある。とても大切なのはシステムとして品質を保証することでありまして、私はもともと航空機の設計をしていたのですけれども、航空機を設計している人たちはコンピューターを信用しておりません。ですから、フライ・バイ・ワイヤーにしようと思うと四重にしないと駄目なのです。それと同じようなことがAIにおいては起こることを考えなければなりません。
例えば車の自動運転などを考えた際、現在、いろいろな方法でこれをAIで取り組もうとしておりますが、例えばAIが変な出力を出したときには、人がオーバーライドできますとか、こういったような自動制御で補正しますとか、そういうようなことが考えられる。
AIの中でも様々な手段が取られておりまして、例えばAIも二重化すると、二重化でいいのかというのは航空機エンジニアの私としては微妙なところなのですが、なぜならば、どっちが間違っているかよく分からない。3つ以上ないといけないのではないかと思いますけれども、それから、透明性のあるAIとの併用、これはルール型のAIで必ず同じ答えを出すようなAIと併用させることによって、この問題を解決する。また、異常な出力とかをやったときに、それをプロテクトするような監視システムにすることによって、自動運転の高い画像認識のAIシステムにおいて、非常に安定的で運転手に最後はマニュアルでアウトプットするにしても、頑健性を高めるということをやっているわけであります。
こういったようなことを使いまして、例えばプラントのメンテナンスにおきまして、異常予知検知AIとかなのですけれども、最初に、大体こういうプラントの場合にはインデント品、インデントというのは専用品という形が非常に多いことになりますので、専用のAIになるのですが、今ひとつAIの性能が高まっていない状況が多く見られます。ですから、保守員がメンテナンス等の必要性などを判断しながらAIのデータをフィードバックし、もっとこういうデータを入れないといけないねというようなことを加えていくことによって、徐々にAIと人間が一緒になって機能を高めていくというようなことがやられているわけであります。実際、我々はこういうものを提供していることになります。
この辺りはほかの例なので簡単に申し上げますが、東芝キヤリアにおきましても、冷媒漏えいの早期確認みたいなのに、今言ったような仕組みを使って、これを実際に実施していたり、栗田工業さんの水処理や沈殿槽自動監視サービスなどにも、こういったやり方が採り入れられているわけであります。
マニュアルの品質保証としては、顧客の期待に応えるAIシステムの性能によって品質が決まってしまう。AIのシステム性能は学習データ、AIモデル、制御システム、運用が重要な要素であり、AIの品質保証とは顧客の期待値に応えるためにAIシステムの性能を保つことであります。すなわち学習データ、AIデータ、制御システム、運用の品質を全体で保証することが必要である。しかも、それでもAIの品質は十分ではなくて、システムとしての品質保証としては、ほかのものと組み合わせて行う必要があるということであります。
そのために、当社ではAI品質保証のガイドラインをつくってまいりました。まず、品質保証の指針を定めまして、それを行うための品質保証のプロセスを決めております。それに基づいてモデルの品質を保証し、さらに顧客が運用していったときに、それが困らないように品質カードといったようなものを提供することによって、一体としてAIが活用できるようにしていくというのを提案しようとしております。
ガイドラインというのは、全体として皆が何に気をつけないといけないかということを基本的な知識として得るというところであります。観点リスト、どういう観点がありますかとか、何を気にしないといけないのですかという基礎的な知識です。言ってみれば、AIは先ほども言いましたように人間みたいなものなので、導入したらそのまま動くというようなものは残念ながらほぼないと思ったほうがいいと思います。一部あるかもしれませんけれども、そういうような監視とかに使う場合には、人間なのだから、ロボットだと、どうも我々は何で動かないのだとかと文句を言いがちなのですが、人間は学校を出た人が入ってきて、ちゃんと仕事できないのは当たり前なわけでありまして、教育システムも含めて考えなければならないということであります。
そのためのプロセスをつくりました。これは一般的なプロセスですので、そのプロセスに従ってこういうことをやれば、安定的に運用まで持っていけますというようなことになっておりまして、これは一例ですが、例えばビジネスの課題は何なのかとか、入手したデータは大丈夫なのかとか、不確実性をちゃんと考慮しているかとか、再学習ができているかとか、こういうものがあります。実際に運用する際には、データの品質があるとか、モデル品質カードが顧客の手元にあって、これをちゃんと見ておかないといけないなということを常に考えながら運用していくとことになるわけであります。これは例なので後でご覧になっていただければと思います。
こういうものを活用しまして、我々は送電線の点検におけるドローンの映像でAIを活用して解析するようなシステムの導入と運用、さらに製造プロセスでの製品の画像診断、この辺も中身については後で見ていただければいいかと思います。
最後に、MLOps、これはマシンラーニングの継続的なアップデートですけれども、基本的にAIというのは腐るという言い方をよくしますが、性能が低下することがあります。精度の低下が多くなったり、もしくは装置の特性変化によって全く違う答えを出してしまったりということが起こるのがAIであるということを理解しなければなりません。なので、開発フェーズから運用・保守のときにも、それをちゃんとフィードバックして、使っている最中に人間のようにどんどん賢くなっていく、こういうようなことができる運用の保守をちゃんと考えなければならないわけであります。AIのモデルの保守は、AIモデルの再学習を伴うことになりますので、こういったようなことは継続的にできるような仕組みを考えなければならない。
ということで、私が言いたかったのは、運用まで考えなければならない。中村さんも先ほどおっしゃっていまいしたけれども、全くそのとおりなのですが、それをやるためのプロセスみたいなものを定義して、多くの人が理解できなければ、結局、そのとおりなのだけれども、実行していくことができないということだと思っています。
せっかくなので、Appendixも少し説明したいのですが、実は私はAIの品質保証に関して日本は世界をリードしているのではないかと考えております。日本の動向や国際社会のルールづくりとかを丁寧に見ておりますが、どちらかというと欧米から出てきているルールは、いかにして個人をリスクからプロテクトするのか、規制をかけることによって適切に運用できるようにしようかという観点に集中しているような気がするのです。
日本の学会の研究所で特に私が注目しているのはQA4AIというグループがあります。これはAIのプロダクト品質保証コンソーシアムでありまして、本当に好きな人が勝手に集まってやっている感じがあるのです。一方で重要なのは、AIの人ではなくて、半分以上、品質保証の人が入ってやっているということです。実は日本というのは品質保証について先進国であり、今まで世界に冠たる日本の製品を出してきたのは、いろいろな品質保証の仕組みやメカニズムに知見があるような方々が多くいらっしゃったことが私は重要なポイントだと思っております。一時期、それを世界中が研究したこともあったわけであります。
AIの発展においても、これを取り入れることによって、我々は世界に、AIだけではないのですけれども、デジタル技術の適用を推進できるのではないかと考えております。
もう一つ、蛇足的に申し上げますと、恐らく規制の前に、こういったプロセスについてちゃんと勉強しましょうみたいなガイドラインとか、こういうようなものを政府側から出したほうがいいのではないかなと僕は思っておりまして、そのガイドラインが出来上がってきて具体的なものが見えてきたときに、初めて規制へと移行していくのが理想的ではないかと思っております。
以上、簡単ではありますが、私からの発表とさせていただきます。どうもありがとうございました。
江崎座長: 島田さん、どうもありがとうございました。
運用というところで、AIと品質保証というところに焦点を当てていただきましたけれども、プロセスというところも単純な技術ではない。これは極めて重要なので、これをどのように共有するかというのが必要だと、その事例として、非常にデジタル化と関係の深いAIのお話をいただいたと思います。
最後に4点目、意見交換は大体1時間ぐらいお時間がございます。お時間の都合で退席される皆様方から先にご意見をいただきたいと思いますけれども、挙手機能で手を挙げていただければ、その方にご発言いただきたいと思います。
染谷先生、お願いします。
染谷構成員: 東京大学の染谷です。江崎先生のご説明について、2点ばかり質問させていただきたいと思います。
最後のまとめのスライドの4点目で、カーボンニュートラルと経済安全保障のことを挙げておられまして、カーボンニュートラルについてのご説明もあり、大変によく理解できたのですけれども、経済安全保障について、このKGIの中で、どのような視点で検討していく必要があるかという、これは非常に重要なポイントだと思っているのですけれども、本件についてご説明いただきたいというのが一つです。
もう一つは、デジタル化でかえってコスト増になる可能性もあるため、インセンティブは大変に重要だというご指摘はそのとおりだと思っております。そういう中で、どうしても例えば過渡的にデジタル化とアナログが併存するような場合、どう考えてもコスト増のほうにしか行かないようなところを、どういう道筋で乗り切りながらインセンティブを入れるといいのかなど、この辺りについて、ぜひ先生のお考えをお伺いできればと思いました。よろしくお願いいたします。
江崎座長: それでは、私の経済安全保障に関して言えば、サプライチェーンチェックというのは、既に皆さんが認識されている一つの重要なポイントになってくると考えますし、リスクマネジメントとして、どういう構造でビジネスができているのかというようなこと等を含めて、それが技術だけではなくて、運用に関してもどのような関係になっているのかというところが今、サービスのサステナビリティーという観点から非常に重要になってくる。ただ、これは外部状況によってかなり変わってくるような状況がございますので、これも継続的に、どこにリスクがあって何を考えなくてはいけないかというところを評価するべきです。
それから、経済安全保障の観点から、どこにフォーカスを当てていくかという大きな方向性というのも多分出てくるだろうと思います。それに対しての考え方をどうつくっておくかというのも、ある意味、政府が干渉しすぎないようにというところも意識しつつ、ここは非常に慎重にやっていかなくてはいけないことだと思っております。
それから、インセンティブに関しては、一つの方法があるとは思えないので、うまくいった事例をどれだけ共有できるかというところになるのではないか。そうすると、例えば政策として支援金みたいなもの、あるいは研究開発の支援みたいなところも、うまくいった例と、残念ながらうまくいかなかった事例があるだろうというところを共有しながら、間違いのない効果的な施策に資する、それから、ビジネスとしても同じように、こういう利用法でうまく難しい問題を乗り切ったという企業の方々はたくさんいらっしゃるだろう。これをどう共有するかというのがポイントかなと思っております。
染谷構成員: 大変よく分かりました。ありがとうございます。
江崎座長: ほかに皆様方からございますでしょうか。
チャットのほうでは加藤先生からネーミング、とても重要なのでというご意見をいただいております。
加藤構成員: テクノロジーマップとググると、テクノロジーロードマップという全然違うものが出てくるのでもったいないなという感じです。せっかくレギュレーション、サーティフィケーションの話をされていると思うので、テクノロジーマップと言ってしまうと私は見ないのです。私のほうが詳しいと思うので、だけれども、レギュレーション、サーティフィケーションと言われるとやばいと、国の話ではないかって思ってどれどれと、結局、俺のほうが詳しいと思いますけれども、少なくとも見るかなという感じです。名は体を表すので、このタイミングで検討する価値はあると思います。
技術というのに多分、今回は規制の話が入っていると思うので、一般的に技術と言ってしまうと、特に日本だと本当の技術屋さん、本当のハッカー屋さんが多いので、ある意味、結構誤解を招くと思います。だから、認証とか規制ということが今回非常に大事だと思うので、それは分かるようにしてあげないと、ターゲットユーザーに見てもらえない。少なくとも私はこれのターゲットユーザーの1人だと思うのですけれども、政府からテクノロジーマップが出ましたとプレスリリースしたとして、私はそれを見るかというと、結構客観的に考えて、多分見ないです。少し分かりやすく規制とかサーティフィケーションとか、それも連想させるほうがいいのかなと思います。
あと、登さんが挙げているように、逆もまたしかりかなとは思います。
企業視点で見ると、割と使えるか、使えないかというところで、ここはもうポリシーなのかなと思います。単に技術の話だと、自分で調べればいいみたいな、アクセンチュアさんとか、マッキンゼーさんはすごいレポートを持ってるし、でも、規制とかは、こういうデジ庁から出てこないと、やれ経産省、やれ国交省、やれ警察庁みたいなのがあるので、それがちゃんと整理されていると、私はすごい価値のあるマップ、カタログになるのかなと思います。というのが、最初の私のネーミングの話でした。
江崎座長: やはり規制という漢字とレギュレーションというニュアンスも多少あります。
須賀さん、これに反応しますね。
事務局(須賀): はい。この委員会の名称を決めるときも、ここでそもそも何をやるのだという本質的な議論をしていただいたと思うのですが、このテクノロジーマップも同じでして、今はプレーンな何のエッジも立っていない名称になっていますが、規制というキーワードを入れていくのかとか、認証という機能を持たせるのかとか、重要な本質的な論点だと思いまして少し事務局の資料でも書かせていただいております。認証まで行けなくても、どうやってトラストを担保するのか、どう責任を取ることにするのかということを、まず議論としてこなさないといけないと思っています。
それから、登さんにご指摘いただいた規制に興味のない方にも参照していただけるものにしたいという点、私たちもそう思っているのですが、他方、今回、事務局資料で少し書かせていただいたのは、先行公募してみて、規制当局の考えを可視化する、言語化する、といったところに付加価値の大きな部分があると再認識したという点です。マップの想定ユーザーの一番上にいる規制当局のお考えを可視化して、合理化したり、抽象化したり、類型化したりという、この作業と切っても切り離せない面があるなとも思っているので、あえて規制と距離を置くのかどうかというのも検討事項だなと思います。
江崎座長: 規制の心がどうなっているかというのはとても重要だという話も中村さんから出てきました。規制の単純なルールの説明ではないところをどうするかということです。
中村先生、お願いします。
中村構成員: やはりこれは立ち位置の話で、江崎先生も民主導という言い方をしてしまうのだけれども、例えば何か試験をしましょうというような、今回公募しているような案件は民間でもいろいろな試験をやっている。そういうような成功事例があったら、それをこのマップに載せて、それでそういう使えるものがあったら政府も使いますよというような感じになるのか。それとも逆に、いわゆる政府が率先してこういう技術を使って世の中を変えていくということを先導するためのマップなのだという位置づけにするのかによって名前が変わってくるのではないのか。
単純に今回の技術マップと言っているような話は、世の中にはいろいろな技術があります、ぜひ教えてください、それを政府も参照してデジタル化しますという意味に聞こえてしまう。それは僕的に言うと、腰が引けているのではないのと、いわゆる政府が率先してデジタル化をして、その成功例をみんなで共有していくようなカタログになるのであれば、外からの見え方も違ってくるのではないのかなと思うのです。先ほどの要素技術をカタログに入れるのかというような話をしたときに、その要素技術がこのように使えたというところまで書かれているとすれば、それはすごく興味深いし、多くの人たちがそこにぜひ載せて、政府と一緒にやっていきましょうというような形になるとは思うのです。
でも、単純に規制当局が、いわゆる世の中でこういうことができるらしい、こういう実績あるのだと、だったらうちもやろうかなという参照するためのドキュメントと思ってしまうと面白くなくなってしまうというか、あまり意味がない。単に情報収集してまとめたサイトになってしまうのではないのか。そこはデジ庁が官主導で、僕はそこは民主導ではなくて、官と民が一緒になって、官の規制に関連するようなテクノロジーをこれでデジタル化したのだというようなことをどんどん載せていけるような、本当はそんなカタログになるといいのではないのかなという希望を持っています。
江崎座長: ありがとうございます。
幾つかの出口がある中で、需要を利かせなくてはいけないところというのをしっかり意識する必要がある。その中で政府が先導して変わるというところをしっかり見せなくてはいけないのではないかというご意見ですね。
根本さん、お願いします。
根本構成員: 中村先生と同じことを申し上げることになると思うのですけれども、調達者側のリクワイアメントの目的そのものを明確化していくことが重要で、どういうことを担保するためにこういう技術が使えるのですというカタログにしていく必要があるのだろうと思います。
須賀さんに最初にご説明いただいた資料の11ページに、デメリットや制約事項についての記載というような表現があったのですけれども、実はこの話がよく分からなくて、リクワイアメントは行政庁のほうからちゃんと出ているはずのお話で、それが達成できるということで十分なのではないか。何でもかんでも全部できますというように求めるのは求めすぎではないかなという気がいたします。それが1点です。
あと、留意事項でいろいろなところで問題が発生していますけれども、業務独占が行われている分野へのテクノロジーの導入をどうするのだろうということがございます。相当数の業務独占が行われていて、これも一つの規制の形として行われていますので、その分野に新しい技術が使えますよ、でも、それは○○士という資格を持っている人しか扱ってはなりませんというのが、現在の行政庁の基本的なスタンスだと思います。そうなりますと、資格を持った人がやっている分野については技術の導入はいたしませんと、最初から宣言してしまうような形にもなりますので、この部分は相当程度、デジタル庁に頑張っていただきたいなと思っております。
さらに前回の議論で出ておりましたけれども、機械がやるときだけ100%の保証を求めるという傾向がどうしてもございまして、先ほども出ておりましたけれども、試験をやるときに居眠り防止機能がついているかというようなことが例として挙がっていました。人間が試験監督官であっても居眠りを100%防止できるわけではありません。どのレベルで認めるのかというところも、きちんとリクワイアメントの中に入れていただかないとカタログが完成しない気がいたしました。
以上でございます。
江崎座長: 須賀さん、反応しますか。
事務局(須賀): 規制当局と対話をさせていただいて設定した必須要件以外にデメリット情報が要るのかというのは、確かに言われてみればそうですね。何のデメリットの話をされていたのか、詳しく見てみる必要があるなと思いました。当局がこれは必須だと思われていることを必須だと、まずは言っていく。他方で、先ほどチャットのほうに豊田さんからもいただいていましたが、そもそもそれが必須ではない可能性みたいなことも本当は議論したい、そこがまず1つ目の悩みなのだなと思っていたのです。必須が十分広いと想定したときに、それに加えてさらにデメリット情報の必要があるかというのは確かにポイントだなと思いました。
あと、業務独占の話は15ページに書かせていただいた規制なしと書いているところに、事実上規制がある場合があるという趣旨でおっしゃっていただいたと思ってよろしいでしょうか。
根本構成員: 端的に言うと、リーガルテックのように違法の可能性があるというグレーゾーンの回答が出てしまうと、機械でやってはいけませんというのを行政庁が言ってしまっていることになります。業務独占が行われている分野全般にわたって機械に置き換えては駄目ですという理屈にどんどんなっていくのを恐れているということです。
事務局(須賀): 今、根本さんがおっしゃっていただいたケースは、この図の左上に入ると思っております。つまり、テクノロジーがあるのかは要確認かもしれませんが、少なくとも規制面では、人間しかできない、資格者しかできないというアナログ規制があり、テクノロジー利用の制約が非常にガチガチにかかっているというカテゴリーに入るので、対象として考えていくものと思っております。
根本構成員: よろしくお願いします。
江崎座長: その辺りのターミノロジーを上手にちゃんと整理しないと、業務独占という意味がどういうところを指しているのかというのも人によって違うので、慎重にやらなければいけない。それから、デメリットというのは、もしかしたらこれは留意点とか、そういう意味で書いているかなというところもあります。それが非常に悪い方向に使われる可能性があるところかなという感じです。
島田さん、お願いします。
島田構成員: まさに今のことで、私が先ほどプレゼンしようとしたのは、デメリットというよりは、留意点でこういうのがありますよということを言いたかったのです。AIを魔法の杖みたいに思っては駄目です、AIは人間みたいなかわいい子供なので、ちゃんと教育しないと有効に使えませんよとか、そういうようなことかなと思います。
事務局(須賀): 島田構成員にご提案いただいたように、デメリットの話は、使う前にまず必ずこれを読めというような、使う方の心得ですとか、こういうことはできない可能性がある、こういうエラーが出る可能性があると思って使ってくださいというディスクレーマーを同時に用意するべきだという議論の中で、それをちゃんと読んでくださいということを当該テクノロジーについては留意点として書いておくということになるのかもしれないです。
島田構成員: そうですね。今後のほとんどの新しいデジタルテクノロジーは何らかの形でAIを使っていくことになると思いますので、買ってきたらそのまま使えるという期待値をまず外さないといけない。
それから、自分たちがそれを適用するときのプロセスみたいなもの、それを私が申し上げたかったのです。ガイドラインであってちゃんと勉強して、運用の際には運用カードがあって、全体としてこうやって品質を保証しますというようなことを始めることが、もう当然、ここにいらっしゃる方はみんなご存じだと思うのですけれども、そういうことを丁寧にプロモートしていくことによって、初めて一般の人たちも、こうやって使えばいいとなるのではないかという私の主張であります。
江崎座長: ありがとうございます。
運用というところとか、そういうところのガイドライン、ガイドブックは、加藤さんのほうからガイドラインとガイドブックも正確に使い分けてという書き込みもございます。
それでは、川原先生が11時25分ぐらいまでなので、よろしくお願いします。
川原構成員: 私自身がいろいろなDXに関わってきて一番困ったケースとしては、ルールがこう書いてあるので、これをこのままコーディングで実装すればいいだろうと思っていると、実は最終的に総合的に判断しているみたいな例外処理がいっぱいあって、それも書いているルールどおりにやろうとしても、なかなかそうもいかなかったりするので、自動化できるけれども、最後は微調整をしなくてはいけない部分をガチガチに決めてしまいがちなAIとこのように共存させることができますというような、むしろ理想的にガチガチに決めるものと柔軟な運用をどうシステムの中できれいに扱っていくかという話が、本当に知りたいベストプラクティスなのではないのかなという気がしました。これが1点です。
もう1点がインセンティブづくりですけれども、染谷先生のコメントにもありましたが、短期ではデメリットになるものが少なからずあると思うのですが、長期で見てみると、それを頑張ってコスト負担をみんなですることによってメリットになるようなことがあると思います。ワクチン証明とかはまさにそうだと思います。海外に行くのにも使えるし、ほかにも使えるしということで、そういうものを思い切って政府のほうで、これは必ずみんなにコスト負担してもらうことによってよくなると自信があるようなものに関しては、強いリーダーシップでルールづくりをしていくことが、インセンティブづくりではあるのかなと思います。
私からは以上です。
江崎座長: どうもありがとうございます。
インセンティブは本当に難しい問題で、これは行政官の腕の見せどころになりますけれども、そういう情報収集というのもここでうまくできればというところです。
チャットのほうではガイドブックを読めというガイドラインをちゃんとして、ガイドブックをちゃんと整備しろと、その中には運用も含めて、それから、インセンティブのところもちゃんと書けということになるのですね。
加藤構成員: 僕はこれを見たときに、ガイドブックとガイドライン、どちらかよく分からないからやめたほうがいいと言った派なので、ネーミングは重要かなと思います。普通の人は違いが分からない話だと思います。ガイドラインとガイドブック、ロジックはそういうことです。
江崎座長: そこは整理しておくと、ここでつくるウェブページなりアウトプットというのをカテゴリーでしっかり区別して表示するというのはすごく重要ですね。
加藤構成員: 日本人がガイドラインとガイドブックの違いをみんな分かったら、すごい強い国になる気はします。
江崎座長: ほかにご意見はございますでしょうか。
中垣さん、お願いします。
中垣構成員: 早稲田大学の中垣です。私は今、NITEさんとスマート保安というようなことをやっておりまして、その中で少し懸念点と思っているところがあります。
先ほどAIの運用の一体化、まさにそのとおりだと思うのですけれども、競争領域と非競争領域のデータが誰のものになるかというところが一つ大きな問題としてありまして、例えば保安・保全といいますと、対象となるのは何かのアセットです。その対象となるアセットのオーナーが例えば土木とか電気設備のように公的な機関を持っているようなものであれば、それはいいのですけれども、ある個社が持っているとなってくると、その会社さんが持っているデータとなります。
さらに難しいのはメンテナンス・サービスを供与するのは事業者さんになる。それは往々にしてなのですけれども、そのプラントを納めた会社さんが引き継いでやることになると思います。そうすると、そこのデータを囲い込んで自社の優位性を確保するために使いたいわけで、そうなってくると、そのデータを公開するとか横展開するということは、結局は他を利することになるので、そこは秘匿性を確保したいという話になると思うのです。こういったものはお金がなくて時間もなくて、できるだけ省力化したいと考えていくと、全体の底上げとかが目的としてあると思うのですけれども、一方で、その会社の事業性も確保していくべきだなと思っています。
一例を挙げると、例えば風力などは特にいい例で、海外のメーカーさんが入れているのですけれども、例えばコンディションベースメンテナンスをやろうとして、データをそこから収集しようとしても、海外のメーカーが全部確保してしまっていて、アセットのオーナーすら全部にアクセスできないとか、そんなような状態で広がっていかないというような事例があるのです。ですので、そういったところは非常に我々としても悩みとして持っているところです。
問題提起というよりも、今抱えている課題ということで発言させていただきました。
以上です。
江崎座長: ありがとうございます。
僕がしゃべるのはあれかもしれませんけれども、そういう問題だということが共有されて、ほかの業界ではこういう手法でそれを解決したというのは、多分幾つか存在していますよね。例えばコンピューター業界の場合、ログは全部ユーザーが取るという話がありますし、医療業界でも最初病院が全部情報を持っていたというのを個人が取れるようにルール改正をしたというようなこと、これがグローバルな領域で起こっていくというのは、それこそ監督省庁と産業界が組んでグローバルのコンセンサスをどうつくっていくかというところが問題として出てくる。
そうすると、デジ臨のアウトプットとして、それをちゃんとやりなさいというのがアウトプットで、ここから上がってくる。つまり、実際のデジタル化を進めるという検討の中で、どうしても超えなくてはいけない仕事が出てきているというのをエスカレーションして政策に打ち込んでいくというのが、この委員会の一つの目的としてあるのではないかというのが、多分、中垣先生のお話から出ていたのです。
須賀さん、どうですか。そんなことはやりたくないとかということもあるかもしれないですけれども。
事務局(須賀): 中垣先生には、初めにこの委員会の構成員に就任をお願いしたときから、ご懸念としてその点をご指摘いただいてもっともだなと思っていました。
あるテクノロジーを導入できるように規制改革をしていただくということをデジタル臨調としてお願いするのですけれども、ただテクノロジーを使っていいこととするだけでなく、例えばリアルタイム・モニタリング技術を採用できるようにするのであれば、他方で、モニタリングのデータはしっかり施設のオーナーがアクセスできるように、必要であれば当局もアクセスができるように調整することとセットだというようなことをガイドラインとしてお示しするということがあり得るかなと思いましたけれども、その辺りもぜひコメントやアドバイスがあればいただければと思います。
江崎座長: ご意見はございますか。個人的には、ぜひやらなくてはいけないと思いますけれども。
中垣構成員: ほかに、こういったようなところを超えている事例があるのであれば、ぜひご教示いただいて、私自身もこの辺りは非常に悩んでいるところなので勉強させてもらいたいと思います。
江崎座長: まさにそういうのが共有されて解決方法というのが、ガイドラインからガイドブックのほうに、つまりこういう方針で、プラクティスがあるので、具体的にはこう進めていくというようなところに持ってければいいですね。
それから、中村委員のほうからチャットで、今回のマップにベストプラクティスや運用プロセスなどの情報も記載されていくのですかというクエスチョンですけれども、今日、島田委員からのご意見もそうですし、私からもありますが、これはやったほうがいいのではないかというのが複数出てきていると思います。
須賀さん、これはどうですか。
事務局(須賀): はい。まず、ベストプラクティスに関しては論点で具体的に書かせていただいたとおり、それがスタートアップの参入障壁にならない形で掲載できるようにしたい思います。
それから、追加で今回、島田構成員からもご提案いただきました、運用のプロセスに関する情報もしっかりひもづける形で出していく必要があるということを理解いたしました。
他方、ガイドブックを誰がどのように編さんするとよいのか、公募の段階で一体何を聞けばいいのか、その辺りもアドバイスをいただけるようであればお願いしたいと思います。
江崎座長: 島田さん、お願いします。
島田構成員: やはりインディペンデントな団体であることが非常に大切だと思うのです。要するに一部の人たちが自分たちの都合のいいようにガイドライン、ガイドブックを書いてはいけないと思います。そういう意味では業界を横断したような団体をうまく取り込んで、みんなこれが使えるようになりたいというモチベーションはあると思いますから、そこを有識者の方々が見て、これはガイドブックとして政府として認めてもいいのではないかとか、そういう指針を出すみたいな方式がいいのではないかと私は思います。
事務局(須賀): 例えばですけれども、技術探索のために公募するというプロセスを今後も続けていくことになると思いますが、そのときに参照するべきガイドブックとか、運用プロセスが明確になった何らかのドキュメントという欄を設けておいて、公募に応じていただく方に、まずはそれをご提案いただいて、それが複数出てくると、非常に中立性が高く業種横断、サービス横断で参照する価値のある文書なのかもしれないと仮定をし、それをしっかり見ていくというプロセスはいかがかなと思いました。
島田構成員: 私は先ほど申し上げたのですけれども、業界団体みたいなのでQA4AIみたいなものが立ち上がっていますので、それを使ってみてはどうかとは思います。そういう公募で出していくと、多分、業界横断の団体というよりは各個人の企業が売り上げとかを目的に、いろいろ自分たちの都合のいい提案、東芝だって結局同じなのですけれども、果たして本当にみんなのためによいものになるかというのは、どうだろうなと正直思います。
江崎座長: そういう意味で言うと、経産省で私が関与している産業サイバーセキュリティーは、あるエリア・業界に関しての共通のガイドラインのようなものをまずつくっておいて、業界ごとにそのガイドラインを見ながらガイドブックをつくりなさいと、それでガイドブックが出来上がっていいものであれば国が公表するガイドブックのほうに昇格しましょうという体制で進めつつあります。大体そんな感じができればいいということですか。
島田構成員: おっしゃるとおりです。
江崎座長: これも多分ベストプラクティスの一つかもしれないですね。
そういうことがいろいろな産業で起こっていくと非常にいい。そのときにグローバル視点を忘れずにやっていくというところも、もう一つ出てくるところになっています。今、書き込みでミシュランガイドの話が書いてあります。
川端さん、何かお話になりますか。
川端構成員: 何かすごく高度な議論をここでちゃんとした上で、例示としてミシュランガイドは利用者にこのように情報提供をしています、それは利用者のメリットになるような情報提供をしていますガイドブックですよというのと、ガイドラインは例えば1つ星から3つ星に対してはすごく分かりやすい規定がありますというのを例示しているのです。
それと同時に、レストランを選定するのは非常に厳格な内部基準があって、基準をつくる人の育成、先ほどのAIと全く一緒なのですけれども、ミシュランガイドは間違ってはいけないのです。レストランの人たちにとって世界中で、レストランが3つ星から落ちたりすると死亡に値するみたいなレベルなのです。そうすると、機械並みに厳格さを求められていて、その人たちの育成というのは世界的に基準をつくって厳格にやっていて、しかも社員で全部育成しているみたいにやって、あれは真似ができるかなと思っていて、100年続いているだけあって結構いいなと思うのです。
あと、大事なのが、その主体であるミシュランがレストラン事業と全く関係ないというのが重要で、何でつくっているのかという目的を聞くと、ミシュランはモビリティを安全・安心に使ってもらうことを目的としてガイドブックをつくっているという言い方をしているのです。何でというと、モビリティが安全・安心に使われると、たくさんの距離を走ってくれたり、遠くに行ってくれるようになるので、結果、タイヤが売れるからいいですみたいなやり方なのです。
先ほどインセンティブ設定が難しいと言っていたのが全くここにあって、何でそんな高度なレストランとか、非常に快適なホテルをつくろうというモチベーションになっているかというインセンティブは、最終的にミシュランに評価されることなのです。そのガイドブックに載るということなのですけれども、それをミシュランは結果的に自分たちのタイヤが最終的に売れればいいという、すごい遠いルートだけれども、結構正しいルートをつくっていると思うのです。こういうインセンティブ設計が長く続いているガイドブックとか、それに付随するガイドラインとかには結構いいところがあるので、そういったものを少し分析してインセンティブ設計されると、今までの議論というのが現実的になったときに、スムーズに進むのかなと思って聞いていました。
江崎座長: ありがとうございます。
それをまとめると、もしかしたら霞ヶ関とか自治体の役人の方が一番参照されるドキュメントになるかもしれないです。インセンティブ設計はすごく重要なとこですから、いろいろな例が本質的に整理されるといいかもしれないです。
川端構成員: こういう例は結構いっぱい、私は世界の中でうまくいっている仕組みを結構取材しているので、デジタルではないけれども、仕組みのつくり方は実は一緒で、それをデジタルにしたらうまく早くできるという感じでいいのではないかなと思っています。
江崎座長: 島田さん、お願いします。
島田構成員: 私はインセンティブの話をしたので、インセンティブの実態的なことを言うと、例えば会社が支払われる金額が、もうけがリミットされていて、規制業界で多くあるのですけれども、自分たちでコストダウンをしても自分たちの会社に再投資できる形にならないという制度設計がされているとか、例えばそういうことを申し上げています。
江崎座長: いろいろ多面的なインセンティブのお話が当然ございますので、どうやったらそれを解決しているかというのは、表に出せない企業としてのノウハウのところもあるでしょうけれども、可能なところで共有できるものがあれば、うまくいった事例として上手に参照できると、皆さんがハッピーになれるかという感じですね。
小川さん、お願いします。
小川構成員: 小川恵子です。よろしくお願いします。
非常に参考になるお話がいっぱいあったかと思います。ガイドラインの話もありましたが、最後のペーパーにありましたトラストの担保の枠組みについてすこしお話させていただければと思います。この枠組みを考えるとき、ロール・アンド・レスポンシビリティーの観点から、デジタル庁と各規制当局の役割を明確にすることが非常に重要と考えています。
例えばトラストを担保する枠組みとして、上位のガバナンス方針について、きちんとデジタル庁のほうでルール化をする。モニタリング検証するかも含むことになります。この上位のルールに従って各省庁がきっちりと定められた統制責任も負っていく。たとえば、各省庁は、デジタル庁が定めるリスク識別の基本方針などに習って、具体的にリスクを識別していくなど、それぞれの役割を明確にしたガバナンス体制の構築が非常に重要かなと思っています。
そのときのリスクとは何なのかといったところですが、混乱をしないように整理していかなくてはならないとおもっています。例えば技術的観点のリスクとしては、先ほど島田委員から非常に参考になるお話がありましたが、AIのブラックボックス化、もしくはバイアスデータといった課題があります。そのほかRPA、ロボティクスの課題や、クラウドを使うのであればサードパーティーリスクの課題など、最新技術そのものの特有なリスクをすべて識別し全て押さえ完璧だとしても、そもそもの目的を阻害するリスクの識別が欠けていると、最終的な規制の目的は達成できないと思っています。
なので、リスクの定義をどういった形で整理していくのかといったところが非常に重要です。また、そのリスクをどのように対応していくか意思決定していかなければなりません。リスクを完全にゼロにするというのは非常に難しいと考えています。不正対応は特にそうですが、常にその対応と、いたちごっこの状況にあります。なので、最終的には先ほど他の委員からもルール、プロセスの明確化が非常に重要といったお話がありましたが、それが最終的に説明責任を果たしていく上でも非常に重要だと思っています。
一般的なリスクアプローチというのは想定されるリスクを網羅的に識別して、顕在化した場合の重要度を分析して、そのリスクの重要性に合わせて、今までだってそこまで対応していなかったとリスクをテイクする、もしくは統制を整備しリスクを低減する、回避する、さらに移転する、といったそれぞれのアプローチがあります。そういったリスクアプローチをきっちり可視化して説明ができるようにしておく。さらに、常に状況は動的に変化しますので、PDCAでアジャイルに対応していく枠組みも必要だと思っています。
特に今回考慮すべき点は、中小企業や、新しいスタートアップも入ってくる。となると、やはりコストの問題もでてきます。これについては、インセンティブの話もあったと思いますけれども、コスト以外にそもそもリスク対応できるのかといったフィージビリティの話も十分出てくると考えています。リスクとのバランスでどこまでリスクテイクして、国民にも説明責任を果たしていくのかといったところが重要になってくるでしょう。したがって、リスクもそれほど高くなく、リスク対応コストもそれほどかからない分野から、優先順位を図っていくのもありかなと思っています。
あと、先ほど安全保障の話もあったかと思うのですが、リスクにもそうした全般的なリスクと、それぞれ案件ごとの固有のリスクの2種類があるでしょう。例えば先ほどのサプライチェーンを含めた経済安全保障の問題や、サイバーセキュリティリスク、情報リスクといった全般的に関わってくるリスクと、今回先駆けて行った案件の場合カンニングしては困るという案件固有のリスクは性質が異なります。特に全般的リスクは、案件を横断的に整理していくことで、重複感なく行う必要があるでしょう。
先ほど委員からもお話があったように、ほかでもいろいろ施策が動いていると認識しています。6月のゼロトラストアーキテクチャでしたか、ああいったものなどもいろいろ動いてくるとなると、全般的なリスクのところは、そういったところの議論と重ね合わせて重複、もしくは整合が取れないようなことがないような形で進めていく必要があるだろうなと思っています。
あと、今回、一つ引っかかるのがデータです。デジタルガバメントの推進標準ガイドラインを拝見しましたけれども、データ戦略が掲げられています。今回、アナログ行政の自動化、デジタル化というのが第一義的な目的であると思いますが、一方で集まってきたデータ、もちろん誰の所有かという問題以外に、どのように政府としてそれを利活用していくのかといったデータ戦略の観点での整理も無視できないと考えています。
実務界では、どこもDXでデータ戦略を掲げ始めていますが、いざやろうと思っても、そもそも使えるデータがない、親和性が担保されていないといったところが非常に多いのです。ご承知のようにAIということで今、どこもすごくチャレンジしていますが、AI人材がマーケットに非常に足りないにも関わらず、実態として、AI人材の業務の大体75から80%、これがデータの収集とクレンジングをやっているのです。なので、データ戦略は今回のスコープではない、他がやればいい、後でいいではないかと進めていって、後々データ戦略をやるといったときに、非常に重たい業務になっていくことが容易に考えられると思っています。なので、生成されたデータの例えば親和性ですとか、相互運用性ですとか標準化、どのデータを対象にするかといったところも含めて、ある程度少し考えたほうがいいのかなと思っています。
最後に、例えば検証や、監査をやるといったときに、もう一つ後で非常に揺り戻しが起きるのが、実はデジタル化をしたけれども、監査証跡、デジタル証跡が取れないといった点で、留意が必要です。証跡はあるけれども、一定期間で監査証跡のデータが消えてしまうとか、タイムログが十分な期間残っていないとか、検索などで取り出せないとか、事後的に検証ができないケースがありえます。そういった後々のモニタリングのことも含めたところでの条件設計というのも重要になってくると思っております。
江崎座長: 監査という非常に大切なところで、非常に多岐にわたるご示唆、ありがとうございます。
まだご発言されていない方がいらっしゃいますけれども、IPAの齋藤さんとか、松尾先生もいらっしゃるのかな、もしご発言を希望されれば、お願いできればと思います。
松尾構成員: 島田さんがお話しされたAIについて、まさにそのとおりだと思います。こうした点をしっかり把握していくことは、AI活用していく上でも非常に重要な点だと思いました。
テクノロジーマップについてなのですけれども、須賀さんにきれいに整理していただいて、非常によく分かりました。これをうまく成功させていくには多くの人の協力が要るというか、ソーシャルな側面が結構強いので、どうやって使ってもらえるシステムにしていくのか、サービスにしていくのかという辺りが多分大事な観点で、そういう意味では、早いうちにPDCAを回し始めるというか、いろいろなトライアルをしていきながら、多くの人がこのテクノロジーマップを利用したり、参加してもらえるような工夫を積み重ねていくことがとても大事かなと思いました。
以上です。
江崎座長: ありがとうございました。
IPAの齋藤さん、お願いします。
齋藤構成員: 先ほどからいろいろ聞いている中で、ちょっと気になる話があるので言っておきます。基本的には今回、デジタル庁で活動しているデジタル臨調というのは、あるエコシステムをつくって、そこでうまくガイドライン、ガイドブックをつくりながら回していくという話をされています。ある意味ではプラットフォーマー的な発想でいうと、インセンティブを与えてどう活性化するかみたいな話でいいと思うのです。
島田さんの話が出てきて、品質保証の話まで入っていったときに、そのフレームワークをちゃんとつくってきちんと回していくという、そこまで含めて、例えばいわゆる通常の規制をやっているところに新たな技術を適用したときに、どういうフレームワークでそれを実際にやったらいいのかというとこまで踏み込んで、逆に言ったら、ここの委員会の中でつくっていきましょうみたいな話をされました。
そうすると、ある意味では今回のエコシステム自身が、今の品質保証のようなデータをどう扱うかみたいなところのフレームワーク、プロセスまで含めて考えていかなくてはいけないというイメージになってきました。そして、先ほど小川さんの話では、今度は逆にデータをここで集めて、それをどのように扱うかみたいなことまで考えるようなところまで話が発展してきたので、一体今、デジタル庁はどこを考えているのかなというのをもう1回確認しないと立ち位置がわからなくなりました。どこまで検討していったらいいのかよく分からなくなったので、ちょっと確認したいのですけれども、よろしいですか。
江崎座長: 先に私からお答えすると、いわゆる欠けている領域があるとすると、それは担当の多分省庁があるだろうというところで、そこにちゃんと働きかけるというアクションだと思います。デジタル庁がつくるというのは、デジタル庁の管轄であればそうだと思いますけれども、ほかの領域に関してはその監督省庁なり、あるいは業界でちゃんとつくっていく。それで産業サイバーセキュリティーの話はご紹介したわけですけれども、そういうガイドラインなり、ガイドブックというのが多分つくられると、そのガイドブックの中に運用、品質保証は運用にすごく関係するわけですけれども、というのがデジ庁で用意するレポジトリーか技術マップか、まだ名前は決まっていませんけれども、そこからちゃんとワンストップで参照可能にするという形かなと、私としては思っています。
齋藤構成員: 今の江崎さんの話を受けて、もう一つ追加します。そうすると、例えば実際に運用を始めたときに、各省庁側で何かガイドラインを見ました、それで運用しましたといったときに、トラブルが出ました、何かインシデントが発生しました、そのときに逆にここに戻ってきて、いわゆるプロセスとかフレームワークを修正するという話はあるのですか、ないのですか。
だから、デジ庁がどこまでやるかという話は、ある意味でデジ庁が、全体を統括して、いわゆる最終的に利用した場合の共通の部分は、デジ庁の責任だと整理して、そこまで自分たちが抱えるという話であるのだったら多分いいと思うのです。今回、つくった後のいわゆるライフサイクルを想定して、今のガイドライン、ガイドブックを運用とか保守みたいな話と併せて、そのフレームワーク自体をもうちょっときちんとした形で整備していかなくてはいけないとしたら、それもデジ庁マターでやるのであれば、先ほどの運用組織自体を外のQA4AIでしたか、そういうところに任せるという話があると思います。そういったところを外部に任せながらもデジ庁はオーナーシップを持っておくような話が多分必要になるのではないかなと私はイメージしました。この辺はいかがなのかなと思いました。
江崎座長: 須賀さん、どうぞ。
事務局(須賀): この場では私今はまだ存在しない機能の創設的な議論をしていただいていると思っていますので、まずはこういう機能が政府の中には必要だという議論をしっかりしていく。その機能を担う主体は、こういった責任をセットで負わなければいけないという議論もする。それは一体誰が担いうるのか、という順番でしか議論し得ないかなと思います。
ただいたずらにテクノロジーを導入してくださいとだけ言って、あとはご自由にというわけにはいかないので、ある程度この場で責任を持って検討する必要があるだろうなと、現時点では思っております。
齋藤構成員: 了解しました。
江崎座長: とても難しい問題をちゃんと解きなさいという齋藤さんのご指摘だと思いますし、チャットのほうで、それに関連する登さんから出ていますけれども、それが非常に強い組織的な構造では多分、多様性を持った人たちだと動かないので、もう少し自立的に動けるような構造にしないと、非常に大きな枠、非常にファームな枠をつくるのは危険ですというお話をいただいていると思います。
最後に非常に難しい宿題をデジタル庁のほうではいただいたということだと思います。
登さん、お願いします。
登構成員: チャットに投稿させていただきましたが、この2回目の会議も自分が過去にIPA、経産省でプロジェクトもやりまして、最初、これはまずいなという状況になりそうだったのが、大変うまくいった例もあります。何が重要かというと、すごく多様性に富んでいる貴重なメンバーが集まっている。そして、皆さん、専門の意見をお出しになるだけではなくて、恐らく述べられたこと全部、自分で手を動かして実装される意欲のある方々のすばらしい集まりだと思います。
ただ、その思想や専門分野は決して一致しないようにも思います。それを全員の一致に基づく計画主義で進めますと、最小公倍数的な実装になってしまい、各自の能力があまり生かされずに、特筆すべき社会的価値が出ないおそれもあるリスクがあると思います。総論的に、こういうのはどうかと思ったのですが、今のような会議は引き続き2から3か月、この面白い会議をすると、最大公約数的な領域枠が自然に定まるのではないかと思います。これを我々が一つのカンパニーだとすると、目的というか、やっていい範囲で、ただ、致命的にやっていけないことなどの行動規範も定めるべきなのではないかと思います。
その後、3か月ぐらいたって、その後、1から2年かけて、各自が先に述べたことを自分の責任で自分の判断で自立的に進めるのがいいのではないでしょうか。これは先に枠を決めましたら、その中では包括的に大体やっていいのだという合意があるわけですから、一々許可、合意を得るとか、私と別の方とは意見が合わないから調整するということもあまりなくても、各自思い思いにやってもいいのではないかと思うのです。これが(2)の段階です。
(4)なのですけれども、そうすると、豊富な成果が皆さんから出てくると思います。それは計画主義に基づいていないのでちぐはぐかもしれないのですけれども、広い範囲を深くカバーする成果になると思います。そして、皆自然な協調能力をお持ちなので、実はちぐはぐに見える成果が自然に結合して、有機的に動くすばらしいデジ庁としての成果に自然になるのではないかと思います。自分の経験上、このようにやったほうが全部合意形成を経て進めるとかいうやり方よりもうまくいく確率が上がるのではないかと思いました。
以上でございます。
江崎座長: ありがとうございます。
そう意味では、幾つかの委員の方からも、まず動かすことが重要ですよねというお話もあったかと思いますので、できる部分はどんどん待たずに動かしていく、動かしながら修正をかけていくということだと思いますし、そういう過程の中で齋藤さんがおっしゃったような、どういう大きなフレームワークの中でエコシステムをつくっていくかというのを留意していくかということではないかと思うのです。
須賀さんは大変ですけれども、皆さんにご協力いただき一緒に頑張りましょう。
事務局(須賀): 今、事務局が楽になる方向のご提案をいただいたのかなと思って、ちょっとぬか喜びをしておりました。ありがとうござい
江崎座長: ほかはございますでしょうか。ご発言いただいていない委員の方で、もしいらっしゃれば。
事務局(須賀): 豊田構成員からコメントをチャットでいただいているようです。
豊田構成員: では、簡単に、今の議論と少しずれてしまうかもしれないです。メタにはつながってくるかもしれないのですが、大きなたてつけというよりは、今回例えば試験的に公募して出してもらうというのが、どうしても個別のアプリケーションとか、粒度の小さい各社で実装できるものになってしまうので、今やっている議論とその粒度がなかなかつながらないなというのは感じています。
あと、出す側の視点で言っても、各社で出せるもののリストアップになってしまうと、結局、今できるものを並べるだけになってしまって、新しい産業とか技術が生まれないということになってしまうので、それをつくるための社会的なサブレイヤーとしての情報共有の仕組みとか、もしくは情報だけではなくて、むしろ環境側というか、ハードとしてのいろいろなシェアとか共有の仕組みというのが、恐らくここの中から生まれてこないと、それを利用した本当の情報とか、産業レイヤーの再編集とか、再価値化が本質的に生まれてこない気もしています。
これも鶏と卵になってしまうのですが、このテクノロジーマップと呼ばれているものをやることで、それを一つの水盤の上にマップとして並べてしまうと粒度がなかなかそろっていないのがバラバラと並んでしまうので、縦のレイヤーをどうサブカテゴリーとしてつくっていくかというのにこれを使うという視線でしっかり集めるということと、できれば、そういうのが出ますよというのを最初にフォアキャスト的に出しておいて、そういうのが欲しいですというリクエストとしても出してもらえるような双方向の仕組みが必要なのではないかなと思いました。
以上です。
江崎座長: ありがとうございます。
そういう意味では、チャットで出ていたレポジトリーだけではなくて戦略的、あるいは経験的にレポジトリーの中から抽出される山みたいなものを定義しつつ、つくり出していくという作業が多分この委員会に必要ではないかということかもしれないです。ご意見として、単なるレポジトリーでは駄目なのでというのも共通したご意見です。
事務局(須賀): 事務局の資料で言いますと、17ページに、それをやり始めようとしていますということが書ければと思ったのですが、うまく説明ができていなくて恐れ入ります。講習とか試験という個別のアプリケーションレイヤーの話がしたいのではなく、それを含めて大くくり化、抽象化したときに、一体それは何の機能を果たすテクノロジーのことを言っているのかというようなことが構造化していけるといいなというモチベーションを持っております。
江崎座長: ありがとうございます。
まだ議論はいっぱい、アルコールを入れながらやると、すごいことになるのではないかなと思いますけれども、いただいたお時間になりましたので、本日の議事は以上とさせていただきます。
最後に、事務局のほうから次回の委員会のご説明に関してお願いいたします。
事務局(須賀): 次回委員会は年内最後となりますが、12月1日の10から12時で予定をさせていただいております。詳細は改めて事務局よりご連絡をさしあげます。
本日の議事につきましては、後日、事務局からご出席いただいた皆様に議事録案のご確認をいただいた上で、ホームページに公表させていただきたいと思います。また、本日の資料も特段ご異議がないようでございましたら、全てデジタル臨調のホームページにて公開をさせていただきたいと思います。
今しばらく、こういった抽象度の高い議論におつき合いいただけましたら幸いでございます。本日は委員会にご出席をいただきまして、誠にありがとうございました。
江崎座長: どうもありがとうございます。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を閉会とさせていただきます。どうもお疲れさまでございました。