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デジタル臨時行政調査会作業部会(第3回)

概要

  • 日時:令和4年(2022年)2月22日(火)16時から18時まで
  • 場所:オンライン開催
  • 議事次第:
    1. 開会
    2. 議事
      1. 規制の見直しに活用できるデジタル技術を提供する企業等からヒアリング
      2. 意見交換
    3. 閉会

資料

議事録等

日時

令和4年(2022年)2月22日(火)16時から18時まで

場所

オンライン会議

出席者

座長

  • 小林 史明(デジタル副大臣)

構成員

  • 安念 潤司(弁護士 中央大学大学院法務研究科 教授)
  • 稲谷 龍彦(京都大学大学院法学研究科 教授)
  • 上野山 勝也(株式会社 PKSHA Technology 代表取締役)
  • 落合 孝文(弁護士 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)
  • 菅原 晶子(経済同友会常務理事・政策統括)
  • 根本 勝則(日本経済団体連合会 専務理事)
  • 増島 雅和(弁護士 森・濱田松本法律事務所)

議事録

事務局(須賀): それでは、定刻になりましたので、第3回「デジタル臨時行政調査会作業部会」を開会させていただきます。
午前に引き続きまして、よろしくお願いいたします。
今回も構成員の皆様にはオンラインで御参加をいただいております。
なお、落合構成員、増島構成員、上野山構成員におかれましては、途中から御参加いただく予定です。
まずは午前に引き続き、本作業部会の座長であります小林デジタル副大臣から、開催に先立ちまして、御挨拶を賜りたいと思います。お願いいたします。

小林デジタル副大臣: 午前中の第2回に続いて、第3回ということで、委員の皆さんは引き続き、連続しての開催になりますが、よろしくお願いします。
参加いただく民間企業の皆さん、ようこそデジタル臨調作業部会にお越しいただきました。
第2回を見ていない方もいらっしゃると思うので、共有をすると、第2回は既存の技術で、すぐにでも実装可能なものについてお話を伺いました。国交省が事前にやったカタログ的に技術を並べておいて、すぐにこれだったら使えますと可視化されているのは、とても参考になると思いました。
そして民間企業の方からの説明も、既存のやり方を前提にして、人で行っていた部分を機械やテクノロジーで代替するという考え方で、そこにチャレンジをしているというようなアプローチであったと思います。
今日、第3回のこの場にお越しいただいた皆さんは、むしろ人でやっていたとか、もともとやっていた手法すら取り払って、テクノロジーとか、そもそもマシンでやったらどうなのかというぐらいの観点で考えていただいているような皆さんではないかと思っていますので、先ほどの議論と頭を切り替えて我々も臨んで、新しい規制の在り方もこの中から少し見えてくるような議論ができるといいと思っておりますので、大変期待しています。今日はよろしくお願いします。

事務局(須賀): ありがとうございました。それでは、早速、本日の議事に入らせていただきたいと思います。以後の進行は、安念副座長、よろしくお願いいたします。

安念副座長: 司会役を仰せつかっております副座長の安念です。どうぞよろしくお願いいたします。
第3回の議事といたしましては、前半は東京大学大学院、江崎教授、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター、平山プロジェクト長、Vantiq株式会社、ソフトバンク株式会社の4方からヒアリングをいたします。
後半は、東京大学大学院、松尾教授、株式会社GRID、株式会社DeepXのお三方からヒアリングをさせていただくことを予定しております。
副大臣からもありましたように、一種のゲームチェンジャーの方々からのお話を承るのではないかと楽しみにしております。
早速ですが、まずは東京大学大学院教授、江崎浩先生より御発表をいただきたいと存じます。江崎先生、よろしくお願いいたします。

江崎構成員: 江崎です。私は、デジタル化とオンライン化というので、ルール設計をどのように外部環境が変化したのかということを最初に簡単にお話しさせていただきます。
最初にデジタル化というのは何なのかというと、基本的には機能がハードウエアから遊離をするというのがデジタル化です。したがって、今までの結合先が変化をするし、増えるかもしれないし、要らないものは取っ払われる、淘汰されると捉える必要があるというのは、本質的にはデジタル化という意味になります。
遺伝子と人間みたいな生存機械という観点からすると、プログラムとルールというのが遺伝子で、ハードウエアが生存機械と思って考えると、今回のCOVID-19は、RNAを自由に動けることになったおかげで物すごいことが起こったのがいたるところで始まるというのが、デジタル化という意味だと考えればよろしいと思います。
ルールの設定手順というのは下側に書いていますけれども、物理前提のルールからサイバー前提の設定で全ての手順を考えなければいけない。
かつ利益構造としては、今までの排他的構造から共有的、利他的構造へのルール、インセンティブ設計が必要になることと、単一KPIから複数KGIに変えなければいけないことを、ルールをメーキングするときに埋め込まなければいけないことになります。
さらにソフトウエア化が進むことは何を意味するかというと、今までのTech-Drivenのウオーターフロー型からIssue-Drivenという形のユーザードリブンの形に変わっていくことです。別の言い方をすると、今までの先端研究がReady/Advanceでも、ビジネス構造でなぜ我が国が負けたのかということと同じで、Tech-DrivenからIssue-Drivenに変わっていることを気づいていないので、できていなかったということになるのではないかと思います。
二つ目は、変化したこととしては、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングができるようなことで、データを取れるようになったことが大きな変化です。これを取り続けることをルールの中に埋め込むことがとても重要だということです。
ビジネスインセンティブとしては、SDGsというのが物すごく強いバイアスをかけていることから、短期の前提ルールから中長期の前提ルールへ、今までは廃棄を前提とした買換え前提からリサイクリングするということを考えた制度設計にしなければいけないということです。
外部の要求条件としては、技術が人前提のシステムから、先ほど副大臣がおっしゃったようなロボット前提に変えていくことができる。これが少子高齢化に非常にマッチするということになるし、多くの局面でデジタルテクノロジーを中心とした最先端テクノロジーが人の能力を超えるということで、これは超能力と見ていただいてもいいし、新しい能力を人間が手に入れることを意識した制度設計にしなければいけない。
つまりAS ISではなくて、TO BEが出てくることを前提にした制度設計を考えておかなければいけません。今までの買換え前提の環境設定からアップデートを前提にするということで、システムのアセット管理を考えた前提でルール設定をしなさいということになります。
一方で、変化していないことというのは、ハードウエアは速くて、ソフトウエアは遅いということが今までの常識だったのですけれども、物すごい勢いでハードウエアが進化していることは全く変わっていません。そうすると、重要なことは、移動する容易度というのは10年で大体1,000倍になっています。ここ40年、全く変化していません。ということは、人は重たいけれども、物は軽くなってしまったと考えることができるということで、移動することを前提にした制度設計をやっておかないと、物は動かないということを前提にしているルールが今まで非常にたくさんあるということがテクノロジーのおかげで起こっています。
下側に書いていますけれども、IoT、物がつながるという前提から事がつながるということを考える。これはインカムを前提にしていたものがデジタルシグネチャーに変わると見てもいいですし、今日お話がある目で見ていたものは、テクノロジーで見ることができるように変わってしまったこともここで出てきます。TO BE、つまり将来にイノベーションすることに対しての障害としては、AS IS、現在の規制と商慣習とモメンタムになります。
次にお話しいただくDig Onceは、今までの常識は、工事を減らすと怒られるし、単価を上げられないことを前提にしていたので、できないということですが、この前提が根本的に変わることになると思います。
そういうわけで、これを実現するための設計と調達ルールをどうやってBy Defaultするかということが重要で、私がトライして共有しようとしていますけれども、どうやってグローバルを前提にした、かつハードウエアとソフトウエアがアンバンドルされる形での制度設計をしつつ、その中では、ハードもソフトも移動可能にすることを前提にして設計していかなければいけないということが、私からの最初のイントロのお話になります。
私からは以上です。

安念副座長: 江崎先生、ありがとうございました。
皆さん、どなたからでも御意見をお願いいたします。どうぞ。

稲谷構成員: 京都大学の稲谷から質問させていただければと思います。
大変刺激的なお話をありがとうございました。今のお話の中でモノからコトへの話や、イシューベースとおっしゃっておられたことについて、規制のあり方との関係でお伺いしたいと思います。例えば午前中の話ですと、目視というやり方をデジタル技術で代替させるために、画像認識という方法、つまり、目に代わるから画像認識みたいな話があったと思うのですけれども、増島先生がおっしゃられたように、結局、欠陥を見つけたいとか、危ないところを見つけたいみたいな、規制目的の本質に即してアプローチを変えていくことがどんどん必要になるのだと思います。
そのときに今日の午前中の話の中でも若干思ったのですけれども、人間の得意なやり方とマシンの得意なやり方はずれている気がするので、マシンの得意なやり方をどんどん引き出すような形で規制目的の本質を定義し直して、それに即してルールをつくっていくみたいな、そういうやり方がいいというイメージを、今、お伺いしながら思ったのですけれども、そういった理解でよろしいのでしょうか。

江崎構成員: あることをやりたいということをどうやって実現するかという方法は、選択肢がたくさん出てくるし、それができるようなルール設定にしておかなければいけません。実はインターネットはそれが目的なのですけれども、ハードウエアが何にでも変われるように初めから設計しておく。そうすると、アプリケーションも自由にそれを選択できます。
お話しした遺伝子と生存機械の関係を書いたのはそこなのですけれども、遺伝子というのは、DNAはいろんな個体の中に入れます。あるいは個体自身というのが遺伝子から選ばれるし、個体が優れていれば、遺伝子を呼び込めるようなことを考えていきます。そうすると、プログラムと実行実態というのは、常に入替え可能にしておくというルール設計がとても必要です。そうすれば、新しいイノベーティブなハードウエアなり、ソフトウエアが出てくれば、非常に有効にリソースを使うことができることが発生するということで、その事例を3人の方が話してくれると思います。

稲谷構成員: ありがとうございました。

安念副座長: よろしいですか。
私はあまりにもショックで、あなたたち法律家の仕事はなくなるという話だったと思います。我々は所有権という排他的独占権をモデルにして施行してきたし、自他の違いというか、区別を自明の前提にしてきて、どうやらそれはなくなるらしいというすばらしい未来ということです。

江崎構成員: なるということではないのですけれども、その障壁が物すごく小さくなっていきます。

安念副座長: そういうことですね。なるほどと思いました。今日一晩、ずっとショックが続くと思いますので、江崎先生、また議論に御参加いただきたいと思います。本当にありがとうございました。
ひとまず江崎先生のお話を承って、続いて、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センタープロジェクト長の平山雄太様より御発表をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

平山構成員: よろしくお願いいたします。資料の共有をさせていただきます。皆さん、見えていらっしゃいますでしょうか。それでは、始めさせていただきます。御紹介に預かりました、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターの平山と申します。
本日は、先ほど江崎先生からお話のあったDig Once Policyについてと道路管理の日本の現状についてということでお話をさせていただければと思います。
最初に、私ども、G20グローバル・スマートシティ・アライアンスなのですけれども、2019年に日本がG20の議長国だったときに立ち上がったプロジェクトでして、今、世界の36自治体とともに、世界で一緒にモデルポリシーをつくっていく。スマートシティはセキュリティーにしても、プライバシーにしても、一人で抱え込んでは解決しない問題ですので、そういったところを一緒にやっていこうという取組プロジェクトです。
その中で、私どもが2020年に発表しましたものDig Once Policyというモデルポリシーでして、これはオーストラリアとか、アメリカなどで非常に広まっている考え方、概念なのですけれども、広大な土地を有している国ですと、例えば光ファイバーのケーブルを引こうと思っても、1軒のために工事をしていくことが難しい。そのときに、通常、道路の地下には水道とか、電気の線が入っていますので、そういったもののメンテナンスで工事をする際に、行政が強制的に工事の情報を取って、光ファイバーを引くようにということを事業者に義務づけるようなポリシーです。そうすると、公共工事で何回もみんなが道路を掘るのではなくて、1回で済むということで、Dig Once Policy、まさに1回掘るというポリシーなのですけれども、こういった政策があります。
日本の現状を見てみますと、道路の状況は非常に難しいといいますか、いまだに道路台帳や道路台帳付図と言われる紙で管理されているということが現状でして、紙で管理されていることが問題かというと、その精度が高ければ問題ではないのですが、実際に現場の声を聞きますと、台帳付図に書いてあるとおりに穴を掘っていくと、実は1メートル下にあると思ったら、50センチ下にあって管を傷つけてしまった。管を傷つけてしまうと、例えばそれが光ファイバー網だったら、その辺りのインターネットが止まってしまうとか、結構甚大な被害が及びますので、非常に問題なのです。
2022年現在、日本全国で大体126件の事故があったということで、それだけ聞くと少ないと思われるかもしれないのですけれども、実際にこれを見てみますと、埋蔵物の周囲50センチ以内の手堀りの指示がなかったと記載があります。つまりなぜ事故が起きないかというと、現場では1メートル下に物があるかもしれないから、50センチ手前までは重機で掘るのだけれども、残りの50センチは手で掘ろうということで、手掘りをされているわけです。これが日本中の道路工事で行われています。この非効率な状況を考えますと、これはさすがにもう少し整備したほうがいいのではないかということを考えているわけです。
今、グローバルで参考になる事例がたまたまあったので、御紹介差し上げるのですが、これはフランスのPCRSというもので、plans de corps de rue simplifiésとなります。発音が難しいので、私は言えないのですけれども、フランスのPCRSと調べても、PCR検査の情報しか出てこないので、調べる際は全ての文言を打ち込んでいただかないと出てこないのですけれども、何を言っているかといいますと、フランスの市区町村の基礎自治体とユーティリティーと言われる電気とか、ガスとか、下水道とか、そういった地下埋設物などを扱っている事業体に対して、台帳にデジタルデータで納品することを義務づけている法律といいますか、ルールになります。
これを2019年までにまずはフランスの都市部で実装が完了していまして、今、これを2026年までにフランス全土に広げるということでスタートしていると伺っています。これはライカさんの発表によりますと、これをすることでフランス全体の効率化が60%ぐらい進むということが出ています。実際のところ、どこまで効率化が進んでいるかというのは確認できていないのですけれども、日本にとっては非常に参考になる事例だと思っています。
それを踏まえまして、私どもで御提言といいますか、お話を申し上げたいのは、まさにデジタル太閤検地の時代が来ているのではないかということです。今、地下埋設物のそういった情報を紙でやり取りしているわけですけれども、実際に現場に聞きますと、測量の技術は上がっているので、デジタルや三次元の情報で測量しています。ところが、納品する際にわざわざそれを紙に書き起こして、各自治体等道路管理者に納品しています。その納品も、国道があって、県道があって、市道があって、場合によっては私道みたいなものがあって、全く管理方法も異なるので、それぞればらばらになっています。
こういったものは、可能であれば、デジタルプラットフォームで一つに統一してしまったほうが、当然効率的ですし、そうすると、無理なものがなくなります。デジタルデータというのも、私がデジタルデータと書くと、まるでPDFにして納品するみたいなイメージに映ってしまうかもしれないのですが、できればバイナリーデータと言われるような0と1の羅列で、人が見ても分からなくてもいい、まさに機械が見れば分かる状態で納品されることが極めて重要ではないかと思っております。
資料の②③にも書いておるのですけれども、今まさに政府の中でも不動産ID、空間ID、ビルOS、いろんな議論が並走的に走っているかと思います。これらを統合的に台帳整備というところで、デジタル情報で紐づけていくベースレジストリをつくっていくことをデジタル庁様にしっかりと音頭を取っていただいて、先ほど江崎先生からもハードとソフトウエアのアンバンドルというお話がありましたけれども、道路管理者は今までどおりでいいと思うのですが、台帳の管理はデジタル庁でというようなことが実現できると、世の中が非常に効率的になるのではと思っております。
最後、こうした取り組みは官民連携で進めるのが重要かと思いますが、私どもの組織ではアジャイルガバナンスを標榜しながら、組織全体で取り組んでおりますので、何かのお役に立てましたら幸いです。以上です。

安念副座長: 平山プロジェクト長、どうもありがとうございました。これもとてもショッキングなお話で、すごいと思います。御発言がおありの方、どうぞ。稲谷先生、どうぞ。

稲谷構成員: 本当におっしゃるとおりというのが率直な感想でして、これは一元的に規格化されたデータにしないと、効率化の問題があると思います。あと、そのようなデータを作るインセンティブも結構あるのではないかと、今、お伺いしながら思いました。というのも、要するに工事する側からすると、変な形で損害賠償責任などを負いたくないということはきっとあると思うのです。そういうところを考えると、先ほどデータの共有の話があったと思うのですけれども、コモンズとしてのデータをどんどんつくっていくことになるのではないかと思います。その際ちゃんとデータを出してもらって、そのことによってみなさんに利益を生み出してもらうことは大事なポイントだと思うのですけれども、この事案だと割とそこは明確なのかという気もしていますので、どんどん進んでいけばいいと思いながらお伺いしていたところです。ありがとうございました。

安念副座長: ありがとうございました。根本構成員、どうぞ。

根本構成員: 今のお話は、安念先生が言われたように、規制改革でも取り上げていただいている案件だと思います。地上空間のみならず、地下空間のデジタルツイン化という形でぜひやっていただきたいということです。
あと、説明の中のポイントで一つだけ追加するとすれば、道路工事は、住民の皆さん方が迷惑しているわけですけれども、同じ箇所を何度も掘り返すという作業が繰り返されるために、国民生活上、非常に無駄が生じております。デジタルデータが整備されることによって、相当程度緩和され、国民生活にとっても非常に有益だという点をぜひ強調させていただきたいと思っております。御提案はデジタル庁ということですが、いろんなところがいろんな形でやっておられますので、政府部局内でぜひお取りまとめをいただきたい。
ついでに申し上げると、道路占用の申請はオンラインでできるのですけれども、許可証は取りに来いという話で、あるいはそれをメールで送ってあげるからというと、プリントアウトして現場に紙のコピーを貼り出さないと工事しては駄目と言われるということで、副大臣、何とかしていただけるとありがたいと思っております。

安念副座長: ありがとうございます。
私は法律家なので、登記簿のことをちらっと思い浮かべました。初めから作り直すほうがいいかもしれません。
どうもありがとうございました。議論に御参加いただければ幸いです。平山プロジェクト長、本当にありがとうございます。駆け足になってしまいますが、続いて、Vantiq株式会社代表取締役の川北潤様より御発表をいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

川北構成員: こんにちは。Vantiqの川北です。
Vantiqは、イベントドリブンアーキテクチャーという部類のプラットフォームを提供しております。これはデータベースにデータがたまってからアプリケーションが動くのではなくて、ストリームデータ、データがどのように流れてくるかということをあらかじめ見張っておりまして、データの形がどのようになったら、どんなアクションを起こそうかということをあらかじめ決めておくのです。なので、イベントドリブンアーキテクチャーというシステムのつくり方になります。
アメリカの会社でして、私は日本の子会社の代表になります。
この2人がファウンダーでキーマンでして、注目するべきは、彼らはイングレスという会社のバイスプレジデントとチーフアーキテクトだった2人になります。イングレスがオープンソースになるときに、ポストイングレスでポスグレというデータベースができています。つまり彼らはデータベースの権化たちなのです。そのデータベースの権化たちがIoTの時代を迎えて、データベースを中心に持ってくる、システムはうまく動かないということを指摘して、Vantiqを提案してきている流れになります。
Vantiqを含め、イベントドリブンアーキテクチャーがなぜ必要かということを簡単に御説明すると、まずIoTの出現でデータが多過ぎるので、全部しまい切れないことが一つです。
やはりIoTなのですけれども、センサーのいろんな発してくるデータの形がそれぞれですから、データベースというのは、スキーマーというデータの入れる形を設計してからでないと入りません。なので、設計し切れなくなってきていることが一つです。
スマートシティに代表されるように、ステークホルダーが多過ぎて、皆さんのセキュリティーポリシーは違いますから、データベースを共有することは難しい。
あともう一つ、スマート何とかという言葉がありますけれども、例えば交通量をビッグデータで分析して、時間割をつくっているだけではまだスマートではなくて、そこに車椅子のおじいちゃんが現れたら、渡り終えるまでに青にしておいてあげる、これができて初めてスマートなのですが、おじいちゃん情報はデータベースに入っていません。こういったことをデータベースを中心に解決できないことは、イベントドリブンにシステムをつくることによって、解決できるということになります。
ところが、イベントドリブンアーキテクチャーにはウイークポイントがあって、過去にもEDAは言われてきたのですけれども、まともなアプリケーションがありませんでした。理由はデータベースの共有ができないからなのです。データベース側には、一つのデータベースで複数のアプリケーションが連携しながら動くことができますけれども、EDAの仕組みというのは、真ん中にブローカーというものがあって、センサーであるとか、もしくはレガシーのデータベースの更新情報とか、いろんなイベントがありますけれども、データを使いたい人は、自分が使いたいデータの形をトピックとして、イベントブローカーの中に書いておきます。そうすると、雨、あられと降ってくるイベントデータの中から、トピックに合致すると、自分のところにプッシュがくるわけです。
例えば上のサブスクライバーは、温度をトピックにして、30度以上になったらエアコンのスイッチを入れるみたいな感じで、アプリケーションは簡単につくれます。真ん中のサブスクライバーは、湿度をトピックにして、50%以上になったらエアコンのスイッチを入れるということをつくれました。ところが、これができないのです。気温が30度以上、湿度が50%以上で、60秒そろい踏みしたら、エアコンのスイッチを入れるということがないので、お互いが確認できないので、できません。
そこで、Vantiq以外の過去のEDAのベンダーはどうしてしまったかというと、結局、データベースを使いたくないと言っているのに、マイクロバッチと呼ばれるデータベースをここに持ってきて、温度データと湿度データを書き込み続けて、60秒間のそろい踏みを確認しようとしてしまうわけです。こうすると、悪夢の再来が起きてしまうことになります。
Vantiqは何をつくったかというと、イベントバスというメモリー空間をつくりまして、そこにデータの発生タイミング、フリクエンシーもデータのペイロード、形もそのままでいいので、とにかくどんどん流し込んでください。そうすると、Vantiqのイベントバス上にルールを書くことができるルールエンジンを持っておりまして、そこにいろんな道具があるのですけれども、串刺しでこれらを見ていくことができます。例えばルールエンジンの中に時計もありまして、今、温度が30度以上になって、今度は同じ時計で湿度が50%以上になった、当然同じ時計ですから、60秒のそろい踏みが確認できて、エアコンのスイッチを入れるという動作がいとも簡単につくれるのがVantiqの仕組みになります。
ビジーなページで申し訳ないです。他社のEDAの仕組みはこちらになりまして、一旦、マイクロバッチに入れるので、I/Oを経由するので、遅くなっております。バッチが回りっ放しになっておりますので、遅いです。また、データを入れるのにスキーマーの設計が必要になりますので、アジリティーが欠如していく。どんどんセンサーが増えるのに、どうやってやるのかということになってしまいます。
Vantiqの場合には、繰り返しになりますが、イベントバスの中にルールを書けます。このルールの書き方なのですけれども、アクティビティーと言われる今はやりのローコードの開発環境が用意されています。
例えばアクティビティーの一つには統計がありますので、先ほどの例でいきますと、1分間に一遍、エアコンのスイッチを入れればいいのであれば、いろんなタイミングデータがばらばら来ているけれども、全部1分間の平均値にしてしまおうみたいなことができたり、データの意味づけもストリーム上でできるのです。例えばセンサーの機械番号はAの部屋とか、この機械番号はBの部屋ということをエンリッジしてしまうことができます。
エンリッジができると、今度はジョインです。Aの部屋の温度計とAの部屋の湿度計のデータを10にしました。ジョインすると、データは汚くなってしまうのですけれども、ストリーム上でそれらをトランスフォームします。整えたり、要らないデータをなくしてしまったり、削除します。
先ほどの例でいきますと、30度、50%以上が60秒続いたらという条件式を入れて、スクリーニングをしていきます。これらのデータ処理は、データが入ってからアクションするまで、全部イベントバス上のストリーム上で処理してしまうのです。なので、データベースのようにスキーマーを設計したり、それを呼び出すようなものを設計したりする必要がないわけなのです。
データはとにかくそれぞれのフリクエンシーデータ、ペイロードのままで構わないので、流し込めば、複合イベント処理というのですけれども、それらを串刺しで見ることができまして、様々なアクションにつなげていくことができるという仕組みになります。
これはアマゾンさんのことを駄目というわけではないのですけれども、非常に著名なEDAのエンジンなので、比べさせていただきました。
紫色のKinessisというのが先ほどのマイクロバッチになります。ラムダでいろいろなアルゴリズムをつなげていくのですけれども、Kinessisがあるたびにマイクロバッチの処理がありますので、処理をどんどん数珠つなぎにしていくと、遅延が発生いたしますし、設計もすごく複雑になっていきます。
Vantiqの場合には、オレンジ色の一つが先ほどのアクティビティーになります。先ほどの例でいきますと、こちらで例えば外気温3度差も仲間に入れたいとなると、こちらですとデータベースを設計し直さなければいけないのですけれども、Vantiqの場合、オレンジ色のアクティビティーを1個増やして、1本の線を引くだけで、プログラムが自動的に変更されていくのです。
全部つなげていきますと、バックエンドでローコードを使い、これをつくりますと、JAVAのプログラムが自動的に生成されます。それが一つの環境でランするのです。なので、数珠つなぎパターンと一つの環境で複雑なプログラムがランするスピード感、圧倒的なパフォーマンスの差が出てきます。
これは手前みそで速いと言っているだけではなくて、米国では、ベライゾンさんの5Gのメック環境でアプリケーションを開発するプラットフォームが提供されています。シングスペースという環境ですけれども、これはVantiqのOEMになります。最初はアマゾンさんでやっていたのですけれども、5Gだけ速くて、アプリケーションが遅くて、どうしようもなくて、Vantiqが採用されたという経緯になります。
あともう一つ特徴的なのは、データベースが真ん中にありませんので、先ほどの例でいきますと、クラウドで30度、50%が60秒続いたら、エアコンのスイッチを入れる。エアコンのスイッチがうまく入らなかったら、メンテナンスを呼ぶとか、全部ここにプログラムを書いてしまいます。
その後、今度はEdgeにもVantiqをインストールすることができます。温度計と湿度計はここにあるので、30度、50%が60秒続いたらというところまではここで動かします。エアコンの横にサーバーがあるので、うまくスイッチが入らなかったら、メンテナンスを呼ぶのはここで動かそうみたいな形で、一筆書きのようにデプロイをしてしまうことができます。これもデータベースを中心に持ってきていないVantiqの特徴になります。
つなげていくものはおおよそ4通りあると考えておりまして、例えばウーバーみたいな仕組みで、誰かがオーダーを出します。場所も時間もダイナミックな情報になります。その瞬間、3キロ圏内にどの空車があるか、これもダイナミックです。ルールを書いておくことによって、ひもづけをすることが最も得意な分野になります。
その空車は誰が運転していたのかというのは、毎朝のようにドライバーが登録されていきますので、これはレガシーなデータベースになります。スタティック情報とダイナミック情報とも連携させていきます。
先ほどからの情報については、ウェブサービスとも連携して、最後は、ドライバーの方にあなたが適任者なのだけれども、乗せることはできるのか、本人がオーケーというと、このワークフローが進んでいきます。つまりワークフローを先に書いてしまって、つなぎたいものは全部どんどんつなぎこんでいけば、データベースの上にアプリケーションをつくらなくても、いろんなことができるのがVantiqの仕組みになります。
まとめになりますけれども、EDAが出たのですが、EDAはマイクロバッチのデータベースでは欠点もあったのですけれども、それをVantiqが解決したことと、IoTからレガシーまで、様々なデータソースをつなげにいくことができるプラットフォームになったということです。
日本ではダイキンさんも御導入いただいています。この後に発表を御予定されていますソフトバンクさんのプラットフォームは、ソフトバンクさんはいろいろ御投資をされていまして、様々なデバイスが出てきます。これらのデータのデータベースを毎回設計してから、アプリケーションまで持っていくのはすごく大変ですけれども、Vantiqがあると、そのまま全部データを突っ込めば、アプリがつくれてしまうということで、2期連続の使用を宣伝していただいているところです。
駆け足でしたが、EDAの世界で既にいろいろな事例も出てきているというお話になります。ありがとうございました。

安念副座長: 川北社長、どうもありがとうございました。
ショッキングな話が次から次へと出てきますが、御発言は御遠慮なくお願いします。どうぞ。

小林デジタル副大臣: 先ほどVantiqのバスとおっしゃっていたところには、どれぐらいの期間が残るのですか。

川北構成員: すばらしい質問です。先ほどの例でいきますと、温度計と湿度計の一定時間をクリアしなければ、エアコンのスイッチを入れる必要ないわけですから、要らないデータということになります。先ほどの例だと1分なのです。Vantiqのプラットフォームとしては、基本的にはそこから2分あれば十分だと考えております。2分以上待機しなければいけないようなものは、外部のデータベースに聞きにいけばいいだけなのです。なので、リアルタイムのワークフローをつくっておいて、待たなければいけないことは2分以上発生することはまずないだろうと考えています。答えになっていますでしょうか。

小林デジタル副大臣: ありがとうございます。

安念副座長: そうすると、速やかに次々と捨てていくのですか。

川北構成員: そうです。ためるべきプラットフォームとリアルタイムで反応すべきプラットフォームを一緒にしているから遅くなってしまうのです。データベースが不要だとは言っていません。いろんなことを分析して、傾向値が分かった。傾向値が分かったのであれば、アクションをしましょうということです。こういう天気図になれば、雨が降る。だったら、傘を差したほうがいいと、そこにいるGPSの端末に対してちゃんと指示を出せるか、この二つの関係になります。

小林デジタル副大臣: ちなみに、判断したキャッシュというか、この三つがここで60秒の間にそろったので判断しましたという履歴というのは、別の場所に残すのですか。

川北構成員: おっしゃるとおりです。履歴を残すというよりは、アクティビティーを用意して、どんどん外に書き出していけばいいということです。

小林デジタル副大臣: そういうことですね。ありがとうございます。

安念副座長: ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

稲谷構成員: 今の御質問とほぼ同じ趣旨なのですけれども、何かトラブルみたいなものが起きたときに、このデータを誤解したのかとか、ここがうまくいかなかったということを検証できるのかというところだけが若干気になっていたところだったのですがそこだけ確認できるようにすればよいということですね。要はそこら辺をうまく組めばいいと。

川北構成員: おっしゃるとおりです。

稲谷構成員: 分かりました。ありがとうございます。

安念副座長: プライバシー情報などの捨てるべきものは、次々に捨てていきたいのですけれども、それと非常に適合的でしょうか。

川北構成員: そうです。データベースはそれぞれでいいわけです。だから、ワークフローが必要とするものだけをアクセスします。データベースにアクセスすれば、何か答えてくれるわけではないですか。その答えてくれる形はそれぞればらばらで構わないのです。バンテックが成形してしまいます。例えばマイナンバーと連携させたい外部のアプリケーションは、従来の考え方だと、データベースとどうやって連携させようかという話から入ってしまうので、予算ばかりが膨らみますけれども、何も設計する必要はないです。

安念副座長: そうなのですね。

川北構成員: 皆さんに目からうろこだと言っていただけるポイントです。

安念副座長: どうぞ。

小林デジタル副大臣: 我々はこどもデータ連携基盤などをつくろうということで、それこそ何かしらのインシデントが重なっているリスクを発見したいとか、もしくは子供だけではないと思うのですけれども、一方で、個人情報に配慮しなければいけないし、自治体ごとにデータベースを持っている場所がばらばらであることが課題なのですけれども、つなぎ込むというのは、どういう作業をやってつなぐことになるのですか。システムの実装の話になってしまって、恐縮です。

川北構成員: データベースは複数のデータベースをそのまま置いておきます。Vantiqのようにワークフローを書きます。例えばあるお子様が下校時間に誰か知らない人と3分以上話していたら危険なので、近くの親、もしくは先生に通知をするみたいな、そういうアプリケーションを書いたとします。そうすると、例えば誰かと今、会っているというところはリアルタイムの情報になるのですけれども、それは誰なのかということはレガシーのデータベースになります。

小林デジタル副大臣: そういう意味では、もう少しシステマチックなレイヤーの話が聞きたくて、既存のデータベースとVantiqを接続するというのは、設定をするということで対応できるということなのですか。

川北構成員: Vantiqは、IoTのデータの一般的なインターフェースは持っていますので、標準的なものは持っています。また、ウェブアプリケーションとはレストでもつながります。SDKも用意されていますので、つくり込んでも構いません。

安念副座長: 江崎先生、コメントがおありであれば、お願いできますか。

江崎構成員: 補足をすると、面倒くさいデータの違いは、吸収できるようなインテリジェンスを持ったコンパイラーを持っているという構造なので、今まで絶対にできないとみんな言っていたものが動いてしまったというのが正しいということです。

小林デジタル副大臣: よく分かりました。ありがとうございます。すばらしいです。

川北構成員: ありがとうございます。

安念副座長: 行政にとって、あるいは行政が行うレギュレーションにとって、つまり我々の当面の課題なわけですけれども、この仕組みがどういう意味を持っているのかを解釈し、消化しなければなりません。これ自体が大きな課題だという感じがいたしました。

川北構成員: 考え方ががらっと変わってしまいます。

安念副座長: そうなのです。

小林デジタル副大臣: 複数のデータを扱って判断しなければならないことを非常にローコストで、しかも、データを保持せずやれるということですね。

川北構成員: そうです。しかも、それが物すごい高頻度で更新されていくIoTのデータもあれば、穏やかに更新されるデータベースもいろいろあるわけなのです。それを全部ワークフローベースにつなげてしまうということです。

江崎構成員: あと、書き出すデータベースの先も複数に選択できるようにつくってあるということです。フロントエンドのシステムの中には、基本的に記録されたデータは存在せずに、外部に存在するデータベースからリードライトできるようにつくってあるということです。

小林デジタル副大臣: 先行的にプラントでやりましたけれども、常時監視系とか、稲谷構成員の得意分野だと思うのですけれども、事後チェック型にするときにこういう技術があると、非常に簡易に導入ができるという道が見えた気がいたしました。ありがとうございます。

川北構成員: ありがとうございます。

安念副座長: いろいろ御発言をいただきました。ほかにいかがでしょうか。もう一方ぐらい何かありましたら、お願いします。どうぞ。

稲谷構成員: 今のお話に重ねてということになるのですけれども、本日の江崎先生のお話との関係も踏まえると、規制のあり方そのものが根本的に変るわけですね。規制対象とされている事柄の問題の本質をつかまえて、こういうイベントにこのように対処するということが決まってくれば、完全に自動的にやれてしまう。しかも、その際にプライバシー侵害や間違いが減らせるし、間違いが起きても、後から検証可能になります。さらにEBPMドリブンでやれるということなので、ルールの書き方を工夫して、うまくIoTをつなげ合わせれば、全く違う法の実現の仕方ができることは現実のものになりつつあるという感覚を持ったのですけれども、今のお話というのは、そういう理解でよいということですね。

川北構成員: おっしゃるとおりです。既にいろいろとコミュニケーションの分野でも、セキュリティーの分野でも、また、製造業さんの現場のお話とか、様々なところで始まっています。

稲谷構成員: ありがとうございます。めちゃくちゃ面白かったです。

川北構成員: ありがとうございます。

安念副座長: 大体よろしいですか。
川北構成員、非常に刺激的なお話をいただきまして、本当にありがとうございました。

川北構成員: ありがとうございました。

安念副座長: それでは、本当に駆け足になってしまいますが、続いて、ソフトバンク株式会社先端技術開発本部次世代ネットワーク部長の船吉秀人様より御発表をいただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。

船吉構成員: よろしくお願いします。ソフトバンクの船吉と申します。
このたびはこういう機会をいただいて、ありがとうございます。
今日はインフラ点検の技術です。我々の会社としても取り組んできた経緯も含めて、皆さんに技術を御紹介したいと思います。今、ここまでできているというところまでを皆さんに御理解いただいて、その先の活用のところを考えていただきたいと思っております。
今、資料を投影しましたが、御覧いただけていますでしょうか。
始めさせていただきます。もちろん時間も限られるので、大分駆け足になると思うのですけれども、御了承ください。
ここら辺は言わずもがななのですが、少し古い3~4年前のデータになります。こういうインフラの老朽化は、建築50年が一つの時点だと思いますが、向こう10年、15年のところは、どちらかというと、未点検、今の労働人口の減少に伴って、そこのところに手が届かないものの数がどんどん増えてしまうことが、今の直近の課題だと考えています。
橋梁は国内だけでも72万橋あります。これは結構驚く数字なのですが、それ以外にもインフラと呼ばれているものは様々ありまして、これだけの数があるというところが今の取り巻いている環境だと考えています。こうした状況の中で、我々はどうしようかというところを何とか解決したいと思っていました。
我々は通信事業者でもありますが、デジタル商社として一生懸命頑張っていますので、通信とデジタルで何とかここが解決できないかと考えておりまして、ひとまず我々もモバイル鉄塔を持っていますので、インフラ点検も日々やっております。この辺も手が回っていない状態で、我々も同じ状況にありましたので、その辺を少しユースケースに技術をしっかり整えていこうという活動を2019年から行ってまいりました。
実際にインフラ点検で我々は何を課題として抱えているのかというところを1回見直してみた際に、左と真ん中です。ここはコストの話ではなくて、鉄塔の高さは30メートル、高いもので50メートルあります。そこに人がセーフティーロープをつけて、ワイヤーをつけて上っていくのですが、安全を期していても、時々、不慮の事故みたいなところはどうしてもありまして、こういうところの危険を回避していくことができないかということと、点検工数の削減と書いていますが、実際に人が上って、目視で確認をしているのですが、現場に行っただけではなくて、そこに行くまでの準備とか、移動時間とか、また、帰ってきてからというところのトータルの点検工数は、人にすごく頼っている状況ですので、ここを何とかデジタルで解決できないかというところです。
三つ目は、その先としてAI等々を使って、過去や今を見るのではなくて、先を見ると、作業自体も計画をうまく効率化できますので、そういったところで手が回らないところを回したり、経済的にさらによくなるのではないかというところをタスクとして、目的として進めてきました。
その際に、我々としても手がないので、そのときにいろんなパートナーやベンチャーをいろいろ探したのですが、いまだに継続していますけれども、開発パートナーとして、アメリカのベンチャー企業になります。5x5 Technologies、フロリダにある会社なのですが、彼らとうまく協業してやっていこうというところを考えていました。2019年から始めております。
彼らは、インフラ点検のユースケースを対象にデジタルツインを早めに着手して、デジタルツインに現状の分析だけではなくて、未来予測をしっかり重ねて、それをウェブ上で顧客に提供していくところを目指していましたし、今時点ではそのようにできていますので、そういうところの強みを持っている会社でした。
サービス概要としては、プロセスになるのですが、まずは監視をしなければいけない、保守をしなければいけないというところのインフラを撮影します。それをサイバー上にモデリングをして、それを先ほどの解析をかけて、未来予測をかけて、ウェブ上で提供するという形になっています。
これが御覧いただいて、実際のサイバー空間で全部モデリングした形です。これは視感評価なのですけれども、今の実力で、もう一回繰り返しますが、これだけ目視しても、実際と相違ない形になっています。
ここは客観評価ですが、実際に我々のアセットをしっかり見てみたのですけれども、寸法誤差は、何十メートルのものに対して、5ミリ以下の偏差であったり、あと、ブルーのものはアンテナなのですけれども、角度をつけて地表面にカバーをかけるのですが、この角度はすごく重要なのですけれども、そこが変わってしまうと問題があるのですが、そこの誤差は1度以下のところまで出ていますので、今の技術だけでも十分にサンプリングできるというところは分かっております。
こういうことができますと、従来、左側になります。今回、お出しできなかったのですけれども、完成当初で紙に書いた寸法を見たり、左の静止画を見ながら点検者が事前に確認して、こういうものを見にいくというものを現地で確認して、終わった後も2Dの写真と完成当初の図面を見ながら確認するのに対して、こういうサイバー空間では、範囲が広がりますので、すごく効率的になることと、その辺の寸法を出せたりしますので、鉄塔だけではなくて、歴史的な文化財みたいなところは、意外と詳細な設計図はなかったりもしますので、災害のときにいろいろと問題になったりするところもあります。こういうところをデジタル化する技術にも使えるのではないかと考えています。
今までは、どちらかというと、実際にあるものをサイバー空間にコピーする。実際はどうなのだというものをウェブ上で見るところだったのですが、それにさらにAIをうまく活用して、未来予測をしていきます。デジタルツインということを考えています。
そういうことをしていくこととしては、これはさびです。鉄でできていますので、結構さびます。特に海辺はすごくさびてしまいます。さびの度合いのよって、早めに点検に行かなければいけないところとゆっくりでいいところがあるのですけれども、今は分からないので、行ってから補修が必要とか、その場で判断することになるのですが、このデータを取って未来予測をしておくと、割合に応じて計画的に点検保守に行けることができます。
あと、ボルトであったり、橋梁のクラックです。目で見えないもの自体がカメラというセンサーを使って、かつAIのサイバー空間でシミュレーションされることによって、リスクのレベル度をしっかり判断して、計画的に保守に行けるという形になります。こういうところのデータをうまく組み立ててやっていくこと自体で、いろんなところにも適用していけると考えています。
残った時間で、少しオーダーがあったので、AIではないのですけれども、モデリングの技術を御紹介したいと思います。今、我々がやっているのは、普通の可視光カメラを使って、かつ座標情報を使ってモデリングしています。実際にそれだけやればうまくできるのかという話になると、意外とノウハウがありまして、ドローンの飛行方法であったり、撮影方法が一つのみそになってきます。
一つは飛ばし方です。飛ばし方はここに書いてありますけれども、モデリングしたいアセットの特徴点と使うカメラの特徴点をうまく組み合わせて、これは機械的に数字が出てきます。その数字を実際にプロファイルとして飛行データを投入していけば、自動的に飛びますので、できるのですけれども、この辺は事前にしっかりやらなければいけないことがあります。
今のカメラの性能自体は、4200万画素になりますが、皆さんのスマホだと1000万画素ぐらいになります。その4倍ぐらいの能力があるのですけれども、これは市販のカメラになるのですが、これだけの粒度ができます。
あと、撮影方法なのですけれども、先ほどの普通に売っているカメラをそのまま載せると、例えばこれはロケットのモニュメントになるのですが、透けてしまったりするのですけれども、この辺も近くで撮ったり、遠くで撮ったり、映像を重ねることによって、うまくモデリングできたりします。
そういうところはノウハウがあり、既にそういうものを蓄積していますので、そういうものをうまく適用していくことによって、これは全部実際にサイバー空間でつくったデジタルツインのモデルなのですが、いろんな多種のものができていますので、すぐに実用に入る状況になっています。
これは最後になりますけれども、我々としては、今、これだけの技術はそろっていますので、新しいものというよりは、もう当たり前になっています。これを先ほどのデジタルツインで未来予測をしていくところに関しては、今、始めて、あしたに予測することはできないので、いかに過去のものを現在まで積み上げていくか、そして、このシミュレーションを一生懸命することによって、正しい未来が予測できますので、早く適用していくことによって、安心・安全な保全にもつながりますし、その数をこなしていくことで、経済的なところへ行くと信じております。
大分駆け足で申し訳なかったですが、以上になります。

安念副座長: 船吉部長、どうもありがとうございました。また、大変刺激的なお話を伺いました。私から伺ってもよろしいですか。既にある技術で実用化できるというお話でしたが、現実を見ると、鉄塔はもちろん大切なのですけれども、電力などの場合、電柱、電信柱は鉄塔と比べると数が2桁とか、3桁とか、多いわけです。そういうものも全部点検しなければいけないわけですが、機械で見て、AIで未来を予測する方法が汎用化されているようには見えないのですけれども、船吉部長の御認識はいかがでしょうか。もしそれほどされていないのであれば、どこにネックがあるとお考えでしょうか。

船吉構成員: 大きく2点あると思っています。一つ目は、先ほどの電柱、電線みたいな、どちらかというと、線があるがためにドローンをうまく飛ばし切れないということもありますし、場合によれば、手が届くところ、目が届くところは、実際にドローンでなくてもいいと思うのですが、ドローンでやるとすると、電線が邪魔になってしまうところで、確かに環境的な一つの要因はあります。
二つ目は、DXの商材を含めて共通だと思うのですけれども、これを使う側が使っていこうというところがありません。従来の職人の技みたいなところで、それを正攻法だと思ってしまって、人がトランスフォームしないのです。実際に弊社もこれ以外にもうちょっとレガシーなドローンサービスで同じようなものを出しているのですけれども、完全に2Dの写真だけを撮っています。モデリングはしていません。なぜかというと、モデルを見るのが手間だということです。
実際に1割の人は、モデリングをしっかり見た中で、こちらのほうが性能はいいと言っているのですけれども、マジョリティーは職人の人たちの声が大きくて、なかなか使われていかないところに問題があると考えています。

安念副座長: なるほど。深い洞察です。ありがとうございました。稲谷さん、お願いします。

稲谷構成員: 先ほど、最後にスケールメリットが経済性との関係で必要であるということをおっしゃられていた気もするのですけれども、今、使う側が育っていないようなお言葉もありましたが、そうすると、うまくスケールメリットを得て、こういった取組がどんどん広がっていくためには、需要を喚起するようなことも必要になってくるということなのでしょうか。

船吉構成員: おっしゃるとおりだと思います。その辺の喚起をしていただかないと、多分使われていかないですし、使われていくことによって、先ほどのデータベースもそうですし、ドローンもそうですし、人の育成費も必要ですし、初期投資は必要だと思うのですけれども、そこの起爆剤みたいなきっかけがあれば、初期投資さえされていけば、後は人が育っていきますし、数をこなされていくことがメリットだと思っていますので、その辺の経済性は出てくると思っています。最初が重要です。その辺を国の取組としてきっかけをつくっていただくとか、そういうところがすごく大事だと個人的には思っています。

安念副座長: そこのガバメントの役割かもしれません。ありがとうございました。ここでひとまず休憩を挟ませていただきたいと存じます。前半の終了に際しまして、副大臣から一言ありましたら、お願いいたします。

小林デジタル副大臣: ありがとうございます。
後半戦にふさわしい新しい技術の話をたくさん出していただいたと思いますし、それを応用して、どのようにルールの体系を変えられるのかということに我々が知恵を絞る必要があると思いました。
それをできれば、先ほどソフトバンクさんがおっしゃっていただいたように、マーケットをつくるというか、需要をつくるという実証実験のような取組が必要になってくるというイメージがすごくできました。
すごく勝手ですけれども、Vantiqさんのお話は、例のこどもデータ連携のところなどは得意なところだと思いましたし、先ほどのソフトバンクさんのものは、デジタル田園都市国家構想実現会議で、正直、キャリアのアンテナで、地方のアンテナタワーを共同化できないかみたいな話をしているのですけれども、キャリアの共同で建てたものは、あのような形で3Dモデリングして、データベースにするといったことにすれば、国としても需要喚起はやりやすいと感じたところです。いずれにせよ、この使いこなし方をもう少し考える必要があることと、今日、提案をいただいた皆さんにも少し複雑なルール系統に関心を持っていただいて、ここだと自分たちが輝きますというところを御提案いただけたらいいのではないかと思いました。ありがとうございます。

安念副座長: 副大臣、ありがとうございました。5分間、休憩いたします。

(休憩)

安念副座長: それでは、皆様、よろしいですか。17時2分になりましたので、再開をさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
何度もすみません、ここでまた改めて副大臣から一言いただきます、お願いします。

小林デジタル副大臣: 分かりました。よろしくお願いします。
とてもいい話ができていると思いますし、運営上もこのようにかなりフランクにやり取りができ、第3回も非常に有意義な会だと思っております。増島弁護士も参加していただきましたので、ここからさらに改めて勉強して頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

安念副座長: ありがとうございます。それでは、続きまして、東京大学大学院、松尾豊先生より御発表をお願いしたいと存じます。松尾先生、よろしいでしょうか。

松尾構成員: お時間をいただきまして、ありがとうございます。少しお話しさせていただきます。
お話ししたいことは、短くなりますが、AIの技術が今後進んでいきますということと、今までAIを使った様々な試行錯誤がある中で、人間のいろんな活動の目視とか、点検とか、そういったことも含めて、いろいろ分かってきたことがあるので、それをお伝えしたいと思います。
まず御存じのとおり、AI、特にディープラーニングで非常に技術が進展しています。日常生活の中にもどんどんと入り込んでいるというような状況だと思います。最近出たものとしては、ディープマインドからアルファコードが出まして、それは何かというと、自動でプログラミングするのです。競技プログラミングの平均的なプログラマーと同じぐらいの実力を持つらしいのですが、左側にプロブレムディスクリプション(問題の記述)と書いてあって、それを右側のプログラムに直しているような感じです。
そういうことで、どんどん技術が進んでいるということなのですが、まだまだ一部というか、今のAIの技術は序の口にすぎません。なぜかといいますと、例えば自動運転はいろんな人が一生懸命やっているのですが、実用化されていません。どのようにやっているかというと、非常にざっくりと言いますと、現在地から目的地までの経路計算をするのですけれども、詳細な地図情報と照らし合わせて経路計算をします。しかも、GPSなどを使って数センチ単位で計測します。そうしますと、基本的には経路上を正確にたどっていけばいいだけの話なのですが、そこに障害物があると困るので、対向車とか、歩行者の認識をしています。ここに画像認識のディープラーニングを使っている感じです。
実はディープラーニングを使っているのはごく一部なのです。今のAIの一番の根本的な問題というのは、今の自動運転のようにシステム全体を人間がつくって、一部だけをディープラーニングを使っています。逆に人間が運転を学習するときにどうするかと考えると、認識だけを学習していますかというと、そんなことはなくて、認識も学習するし、ハンドルやブレーキ操作も学習するし、何をいつ確認すればいいかも学習するし、そういうものを組み合わせて、運転という行為全体を学習しているわけです。学習した行為を組み合わせて、大きな行為を学習することが今のAIの仕組みだとできないです。なので、ここがいろんなボトルネックになっていて、部分的なタスクを内包するようなタスクは、AIは苦手ですけれども、単一のタスクでいいものに関しては、めちゃくちゃ精度が高いといういびつな構造をしていることになります。
顔認証とか、翻訳とか、そういう単一のタスクでいい、データをたくさん集めればいいというものに関してはすごくうまくいくわけですが、対話システムとか、自動運転とか、あるいは建築とか、農業とか、タスクを内包するようなものに関しては、まだうまく行っていないということです。ただ、ここの技術的なブレークスルーはいずれあると思っていまして、私自身はこれを日本から生み出したいと思っているのですが、できたときにはすごいことが起こるということになると思います。
そういう意味で、現状は、例えば目視の点検とか、外観検査などは、単一のタスクなのでやりやすいので、今すごく進んできているということです。そこで、外観検査で熟練の技を自動化しますとか、そういうもので分かってきたことは、人間はいいかげんだということです。人間は偉そうにしているのですが、結局、非常に明確なOKゾーンと非常に明確なNGゾーンがあるのです。これはAIも人間も間違いませんということなのですが、その中間の領域が微妙な判定の境界領域になっていまして、それを人間の場合は非常に自信を持って間違うというか、ここが権威とか、マウンティングの対象になりやすいところで、私が長年の経験で培ってきたものとか、自信満々に言いながら、結構間違っていて、そういうものが例えば外観検査でもそうだし、将棋とか、囲碁もそうで、今、若い人がすごく生き生きとしているのですが、偉そうな人がこう打つものだと言っていたものが実は間違っていたみたいなことが分かって、すごく面白いということなのですけれども、要するにそういう領域があるということです。
ここの領域をきちんと整備することができれば、実はすごく可能性がありまして、分野が変わって医療の分野ですけれども、今、認知症の薬が出にくいのです。なぜかというと、がんだと細胞が小さくなれば効果があると分かるのですが、認知症は評価軸がないので、薬が効いたかどうか分からない。ところが、AIによってきちんと定量化することができれば、創薬がすごくしやすくなるということで、このようなAIによる計測、スコア化をちゃんとすることによって、伸びていく産業とか、技術がたくさんあると思っています。
アマゾンの採用でAIを使った女性に関しての差別が入っていて、やめましたという話がありましたけれども、結局、あれも人間がいいかげんだということの表れで、私は他人のふり見て我がふり直せではなくて、AIのふり見て我がふり直せということだと思っているのですが、そこをAIがそのまま鏡として写してしまって、そこを見て、人間側が直していくというプロセスが必要なのだと思っています。結局、法律はAIで実現していくことに関しても、今まで明確になっていなかった人間のいいかげんなところを改めて洗い出しながら、もう一回議論して、提起していく作業をアジャイルにやっていくことが必要なのかと思っています。
以上になります。

安念副座長: 松尾先生、どうもありがとうございました。御発言ください。どうぞ。

小林デジタル副大臣: 松尾構成員は、政府の取組も知っているし、実社会もよく御存じなので、あえて聞くと、これを日本から新しいものを解けるようにしたいという御発言があったとおりだとすると、この分野だったらチャレンジして、取れ高も高いのではないかと思っている具体的な分野とか、このタスクはありますか。

松尾構成員: ありがとうございます。
非常に重要なところを御指摘いただきましたが、今の日本のAIの研究開発戦略的には、まともにやっても勝てる気が全くしなくて、やり方自体を考えないといけないと思っているのですが、おっしゃるとおり、ここはかなり逆転の目があるところだと思います。
どこから行けばいいかというと、これも研究室の中ですごく議論をしているのですが、一番やりやすいのは、GAFAそのものなのですが、インターネット上のサービスが速いし、スケールするので、そういうもので要するにタスクを内包するものをやっていくほうが立ち上がりは速い感じがあると思っています。

小林デジタル副大臣: インターネット上でタスクを内包しているものは例えばどのようなものですか。

松尾構成員: 一般的なホワイトカラーの仕事です。これをどこからいくのかというのはいろいろあって、リーガルテックなのかもしれないし、販売とか、営業なのかもしれないという感じですけれども、そういう系のところだと思います。

小林デジタル副大臣: ありがとうございます。

安念副座長: リーガルテックなどは大した産業ではないから、面白くはないのだけれども、いいかげんの蓄積で全て権威だから、結局、全部いいかげんだったのが、非常にあからさまになるだろうと思います。私はいつも学生には、法律は学問ではなくて、芸能と言っています。それはどうでもいいですね。

松尾構成員: 一応OKとNGはちゃんとしているのです。

安念副座長: それはもちろんそうです。

松尾構成員: 中間のところがいいかげんなのです。

安念副座長: そうです。その中間のところで我々は飯を食べてきました。その自覚はあるのです。後に議論のチャンスがあったらさせていただきましょう。時間が押しておりますので、松尾先生、取りあえずどうもありがとうございました。

松尾構成員: ありがとうございました。

安念副座長: 続いて、株式会社GRID代表取締役社長、曽我部完様より御発表いただきたいと思います。曽我部社長、よろしいでしょうか。

曽我部構成員: よろしくお願いいたします。
松尾先生、御紹介いただきまして、ありがとうございます。大変御無沙汰しています。
今日は、我々の取組の御紹介ということで、手短にお話をさせていただければと思います。株式会社GRIDと申しまして、AIの開発等をやっている会社です。最近だと量子コンピューターのアルゴリズムの開発とか、そんなことも手がけています。
我々のメンタリティーですけれども、社会インフラにAIの技術を適用していきましょうということで、かなりインフラにフォーカスしたプロジェクトばかりをやっていて、ソリューションの提供も社会インフラにかなり特化したものになっています。
事業展開している中身に関しても、電力・エネルギーとか、物流・サプライチェーンとか、都市交通・スマートシティなど、こういう領域でお仕事をさせていただいていますが、さらにその中でもインフラの計画業務を高度化しようということで、ここにいっぱい書いてありますが、最適化問題を大量に解いているということをしていまして、AI技術を使った最適化問題を解くというような取組をしています。
技術的なトレンドということで、機械学習から始まって、ディープラーニングが2010年代前半に出てきて、強化学習が出てきて、量子アルゴリズムが出てきてということで、様々なアルゴリズムがどんどん進化していると理解しています。
AIの利用は、画像認識とか、音声認識が広く普及しているという理解をしているのですけれども、我々はこれから自動化・最適化みたいな領域にも今後拡大していくと思っていますし、画像認識の議論とか、2015年とか、そのぐらいの時期の技術の話の延長で動いていると思うので、こういうものは、先ほど松尾先生から御提示いただきましたけれども、プログラムを自動でつくっていくとか、何か自動化していくような仕組みであったり、最適化していくところにもAIの技術が使われてくるだろうと思っています。
ビッグデータに関しても、今、日本中はデータを大量に集めているのですけれども、結構意味のないデータを大量に集めているところもあって、我々はシミュレーター技術みたいにコラボレーションしながら、物事をつくっていくみたいなことをしていて、自分たちでデータをつくり出すみたいな取組をしていたりします。
技術的なアーキテクチャーをまとめたのですけれども、ビジネスルールとか、物理モデルをシミュレーターに起こして、アルゴリズムで学習させていきながら、業務上のシステムの中に入れていきますみたいなことを我々はやっています。
概念的にはこういう社会インフラをデジタルツインで再現して、AIで最適化していきましょうというコンセプトです。
こういう流れも世界的な動きとしてありまして、昨年、テスラさんがAI DAYを夏頃にやりましたけれども、この中でもシミュレーターを使って自動運転のところを補完していきますみたいなことで、仮想空間の中でシミュレーターを使って、デジタル上で自動運転のトレーニングをしていくみたいなことを大量にやられていますので、デジタルの空間の中でシミュレーター技術を駆使しながら、データを補完しながらAIを利口にしていくみたいなことが世界的なトレンドとしてはあると思っています。
ユースケースを幾つか御用意しました。我々は発電所の運転の最適化みたいなことをやっていまして、電力会社様の運転の計画をAIで自動化するみたいな取組でして、仮想空間上に電力システム網を全部デジタル上に再現して、AIでどのように発電所を運転したらよいのかということを学習していきます。どのタービンをどの順番でどのようにつけると経済的になるのかということをAIに覚えさせていき、日々変動する需要のパターンに従って、どういうように発電所を動かせばよいのかということを、AIが自動で考えてくれるような仕組みになっています。
発電所を動かすに当たっては、やってはいけないことだらけなのですが、これを全部理解しながら、このタイミングはこれでいきませんみたいなことを理解しながら、どのように発電所を動かすのかということを考えていく、こんなようなシステムで、電力会社様が発電所をどう動かすかみたいなことを考えてつくった計画を採用して、実際に発電所を動かしていくみたいなことをやっていたりします。
続きまして、AIの配船の最適化ということで、日本の石油会社様相手にやったプロジェクトなのですけれども、デジタルツインでこのように石油会社様の石油をつくっている場所と船、石油をためるような場所を全部デジタル上に再現して、これも様々に100個ぐらいやってはいけないことがいっぱいあるのですけれども、そういうものを守りながら、船の運転の計画を向こう数週間先まで、1時間単位で細かく100隻近い船の運航の計画を自動で立てていきます。天候情報を加味して、波が高いと日本側を避けたり、船員さんの働く時間みたいなものの制約があるので、そういうものを守りながら、100隻近い船の運航計画を自動で立てていくみたいな仕組みをつくっていたりします。
スマートシティの文脈で、街を丸ごとデジタルツインで再現して、これを街ごと最適化していきましょうということで、仮想空間上に街を再現して、人の動きみたいなものを全部シミュレーターし、デジタルツインを使いながら街全体の動きを最適化していくみたいなことをやっていたりします。
あと、シミュレーター技術との融合ということで、化合物の生成もAIでいろいろつくり出すみたいな時代になっていまして、化学物質の配合パターンを探索したり、我々は独自で半導体のパラメーター設計、半導体を設計するためのデジタルツインのシミュレーターをつくって、半導体の設計を自動化していくことをやって、効率を高めていくようなAIをつくるみたいなことで、研究者が考えるようなパラメーターよりも、アルゴリズムのほうが成績よかったり、そういうことが起こっていたりします。
そういうことで、最後、まとめになるのですけれども、今まではビッグデータが中心だったと思っていますが、先ほどのテスラの事例も含めて、デジタルツインを含めた仮想空間上のシミュレーター技術をうまく使いながら補完していくみたいな動きがあると思っていますし、実際に我々の御紹介したプロジェクトも、右と左の技術を両方組み合わせながら、社会インフラの計画問題を解いていたりしています。
最後は規制の緩和という視点で、先ほどありました音声認識とか、画像認識です。先生がおっしゃるように、人間よりもお利口になっているのは事実でありますので、時代と技術に即した規制の在り方を考えられる必要があると思いますし、あとは今後ということで、音声認識、画像認識にかかわらず、もうちょっと進化していくと、先ほどの自動化の話だったり、最適化するところにもAIが使われていくことが今度数年間で起こると思いますので、将来を見据えた規制の在り方みたいなものも御検討いただくと、この先に先手を打てると思いますので、そういった視点で考えていただくことも面白いのではないかということで、こんな御提言を出させていただきました。
私の御紹介は以上になります。ありがとうございます。

安念副座長: 曽我部社長、どうもありがとうございました。それでは、どうぞ御発言ください。お願いします。

落合構成員: 御説明ありがとうございます。お話をお聞きしていて、非常に重要な視点だと思いました。
画像認識や音声認識は、今日の午前中にも議論しておりました目視などの様々な作業について、人間の手でやりましょういうこととなっている部分を代替する技術だと書いていくことで、基本的には解決ができると考えております。そのほかの視点で、こういう部分で規制があると聞いたことがあるというお話があれば、伺いたいと思ったことが一つです。
もう一点は、実際に分析をしていく中でということなのですけれども、例えばアジャイルに物事を変えていくとしたときに、プログラムや医療機器とか、蓄電池とか、そういう話の中でアップデートが難しいという話などが出てくることはあると認識しております。例えばこれを現実世界で使っていくとなると、都市計画だったり、いろいろな計画に基づいて変更して、事前認可であるものを容易に変更できるような形に規制を変えていくことが必要なのではと考えるのですけれども、理解として正しいでしょうか。

安念副座長: 曽我部社長、いかがですか。

曽我部構成員: 御質問ありがとうございます。
画像認識とか、音声認識の文脈において、規制の話などは大量に御議論されていると思うので、十分にいろいろな事例は出尽くしていると思うのですけれども、1点気になるのは、2015~2016年ぐらいのタイミングでこういう議論を本当はしていたほうが望ましいのだろうと思っていまして、画像認識とか、音声認識は、我々としたら相当枯れた技術になりつつあるので、一歩先を見据えた御議論をぜひ考えていただくことがいいのではないかというのは、1点目の御回答になります。
2点目ですが、計画業務みたいなことでいくと、いろいろな会社様はほとんど人が何か計画して、事業を動かしていて、物を幾つつくるみたいな話もそうですし、物流をどのように動かすみたいな物を含めて、社会全体が何かを計画して、それによって運営されているのはそこらじゅうで行われているのですけれども、見ていると、人が考える計画の限界がありまして、相当無駄なことをしているということがあって、1回で動かせばいいのに、2~3回で輸送しているとか、そこらじゅうで無駄なことだらけが行われていて、そのままそれがCO2の排出量として出ていくみたいなことになっていきます。
新しい技術を使って、もうちょっとうまくそういうものをスマートにこなしてくるといいのではないかというのは前提としてあるものの、いろんなところで最適な状態になろうとしたときに、それが制御できるものとすぐに変更できるもの、そうではないもの、先ほどの都市の話みたいなものは、投資もありますし、10年単位で物事を考えなければいけないことになると思うので、変更できるもの、変更できないものは同時にあるのですけれども、比較的柔軟に変更できるものの要素が多いほうが、柔軟に変更できて、再経済になりやすいという側面があるので、意味のない規制みたいなものがあると、それを守らなければいけない前提で計画するのですけれども、そうではないものも当然あります。
先ほどの船の事例だと、船員の働く時間みたいなものは守るべき規制だと思うので、働く人たちを守るという意味で、そういう規制はあったほうがいいと思いますし、そうではなくて、全く意味のないみたいなものもあってしまうと、それを法令上で守らなければいけないので、無駄なことをしてしまうみたいなこともあると思うので、いい規制と悪い規制は当然あると思うので、そういう目線で行政の方々はいつも意識されていると思うのですけれども、そういう影響をつくってしまうと、事業者がみんな守らなければいけないというメンタリティーになってしまうので、柔軟な政策を取っていただくと非常によいと感じます。

安念副座長: ありがとうございました。根本さん、お手が挙がっていましたか。どうぞ。

根本構成員: ありがとうございます。
御紹介を本当にありがとうございました。実用化・利活用されているのが発電所であったり、船舶の運航であったり、民間分野に限られているという印象を受けました。
ただ、一つだけ街の事例を出していただきましたが、私の知る限り、行政関連あるいは公共分野関連のデータは、日本では極めて取りにくいというか、ほとんどない状況です。この点、日本に事例的なものがおありでしょうか。また、交通量関係でも非常にデータが取りにくいのですけれども、規制以外の問題はどう解決したらいいかというアイデアがあったら、ぜひお伺いしたいできればと思います。

曽我部構成員: 御質問ありがとうございます。
我々は交通分野でスマートシティの取組としてやっているのですけれども、交通量を取るのは非常に大変でして、鉄道会社さんと組みましょうということで、駅前ターミナルなどで一緒に仲間として鉄道会社さんに入っていただいたり、そんなような取組で、データを持たれている事業者様と一緒に組むみたいなことをやっていますし、あと、別件でネクスコさんと一緒に渋滞の予測みたいなことをやらせていただいているのですけれども、ネクスコさんが道路のデータを持っていますので、そういうデータを保有されている方と一緒に協力してやるということ以外、道はないと思っていますので、それがオープンになると、全く違うベンチャーの人たちがそれを使って勝手にやるみたいなことはできると思うのですけれども、そういうものではデータフォルダが限定されていますので、何かやろうとすると、そういう方々と一緒に手を組まないと、そもそもやりたいこともできないことが実態としてはあると思います。

根本構成員: ありがとうございました。

安念副座長: あるでしょうね。ありがとうございました。稲谷先生、申し訳ありません、簡潔にお願いできれば幸いです。

稲谷構成員: 非常に端的にお尋ねしまうと、シミュレーションを使って最適化問題を解けるという話だと思うのです。そうすると、リスクマネジメントとか、そういった問題も結構典型的な最適化問題だと考えられると思うのです。今、規制を事前規制から事後規制に変えていくとなると、企業さんの中でリスクマネジメントはどうやればいいのかという問題がよく起きることになると思うのですけれども、そういったところに御社の技術を活用できると考えてよろしいのかということをお尋ねしたかったことでございます。

曽我部構成員: ありがとうございます。
シミュレーター技術があると、例えば需要の高ぶれ、下ぶれみたいなことを疑似的に起こすことができるので、最悪のシナリオみたいなもので、よく金融工学の中でVRとか、ERを話しますけれども、そういうことを疑似的に起こして、収益はどれぐらい悪化するのか、資産がどれだけ目減りするのかみたいなことを考えながら、計画を立案する技術を我々は取り組んでいて、やっているのですけれども、需要の変動だったり、市場の変動だったり、そういうものに強いような計画を立てると、リスクマネジメントした、かつ最適化みたいなことで、再経済が一番いいと我々は考えていません。今、リスクをコントロールした上での計画をつくる技術ができていますので、そのような使われ方は当然できますし、今後もどんどん広まってくると理解しています。

稲谷構成員: ありがとうございました。

安念副座長: ありがとうございました。原発の規制などは、典型的にリアルタイムに置き換えることができそうな気がしているのですけれども、私の頭では分かりません。曽我部社長、本当にありがとうございました。

安念副座長: それでは、続いて、株式会社DeepX代表取締役社長の那須野薫様より御発表いただきたいと思います。那須野社長、よろしいでしょうか。

那須野構成員: ありがとうございます。DeepXの那須野です。よろしくお願いします。
私の紹介ですけれども、那須野薫と申しまして、株式会社DeepXの代表取締役CEOをしております。会社として、あらゆる機械を自動化して、世界の生産現場を革新するというミッションを掲げておりまして、Society5.0における新たなガバナンスモデル検討会の委員もさせていただいておりました。
2016年に創業した会社でして、今、40名ぐらいの体制で事業を取り組んでおります。先ほど申し上げましたとおり、当社としてあらゆる機械を自動化して、世界の生産現場を革新するというある意味野心的なミッションを掲げておりまして、AIで機械を自動化して、現場の作業に実用化することによって、例えば労働力不足であるとか、熟練作業者の不足、大変な作業、危険な作業、こうした生産現場にあるような課題を解決していくことができればと考えて、取り組んでいる次第です。
早速、事例の紹介になりますけれども、当社で進めております重機自動化の事例でして、当初、AI技術であるとか、サイバーフィジカル融合技術と言われるような技術を活用して、重機自動化技術開発を推進しておりまして、油圧ショベルを自動で動かして、掘削であるとか、ダンプ積み込みであるとか、そういったところを自動で行っているようなデモ映像になっております。
右上に映っておりますのは、いわゆるAIが認識している空間でして、角度センサーであるとか、そういったものを油圧ショベルにつけまして、その周りの土の状況とか、ダンプの位置をリアルタイムで自動的に把握して、それに応じて臨機応変に動くということを実現しているような形になっています。
今、紹介したものをこちらに書いておりますので、飛ばします。
こうした油圧ショベルに加えて、メーカーなどと連携して、建設現場で使われるような移動式クレーンであるとか、工場であるとか、プラントであるとか、そういったところで使われるような天井型のクレーンの自動化の技術開発も推進しております。
ここら辺で技術的な特徴について御紹介させていただきたいのですけれども、AIの学習や検証をサイバー空間、いわゆるシミュレーションで行えるようにしておりまして、その場合、フィジカル空間、物理空間で必要な実データや収集の時間を大幅に削減することをしております。
こちらは制御の話になっております。一般的なAIの学習方法は、現場からデータを集めてきて、AIに学習させて使いますみたいな流れはよくあると思うのですけれども、そうした形ですと、作業者が実際に機械を動かしてデータを集めるということに対して、コストが大きいところがありまして、油圧ショベルでいうと、機械を動かすのにそれなりに時間がかかることもありますし、掘って戻さないと送り直せないとか、燃費がかかったり、そういった課題がありまして、そうしたいろいろな課題を克服するために、シミュレーションで多様な条件を準備して、その中でAIを学習させて実現させることをしております。
下に具体的にどういうシミュレーションの要素を構成しているのかという映像を映していますけれども、例えば油圧であるとか、土反力であるとか、土量であるとか、あるいはいろいろな機械をシミュレートすることによって、実際に現場でいろいろな条件が来ても対応できる形にしております。
そのほか、FAでも一般的に言われる物体認識をしてつかむであるとか、そういったところの取組をしておりまして、そうしたプログラムにおきましても、一部ではあるのですが、先ほどと同様にシミュレーションの中でデータを生成して、AIに学習させる。それによって実際に必要なデータを作成するというような取組をしております。こうすることによって、もともと工場に行って、カメラとか、照明とか、そういったものを設置して、データを集めて、自動化する前に煩雑な前準備が必要だったのですけれども、そうした作業を大幅に減らせるようなことを狙って、こうした取組をしております。
今、幅広い機械を対象に技術を開発しておりまして、例えば作業ロボットであるとか、油圧ショベルといった機械を対象に技術開発をしておりまして、幅広い産業の社会実装をしていく。そのようなところを取り組んでいく予定になっております。
なぜやるのかというところを御紹介させていただきたいのですけれども、ある種個人的なものでもあるのですが、あらゆる機械の自動化は非常に面白く、大局的なビッグなチャンスなのではなかろうかと思って取り組んでおりまして、①②③④の要素をこちらで列挙しているのですけれども、それぞれについてお話をさせていただければと思います。
一つ目は、日本の生産年齢人口についてですけれども、釈迦に説法ではありますが、2020年から2060年の40年にかけて、生産年齢人口は約3000万人に減少すると発表されておりまして、人手が必要な生産現場は、そのままでは医療が困難だろうと推察しておりまして、自動化ニーズが技術開発を牽引するだろうと考えております。
人が機械で行う作業とか、人による手作業を列挙しているのですけれども、こうした作業が難しくなってくると見ておりまして、どう支えるのかというところで、自動化は鍵になるのではないかと考えているところです。
こうした作業を自動化するような話ですと、機械を自動で動かすという話になりますけれども、これまでに難しかったような自動化に必要なハードウエアの改善であるとか、最適化ができるような素地があると、ハードウエアメーカーがいろいろの機械を対象に存在しているところがあります。
それに加えて、これはAIの話ですけれども、先ほどの事例の紹介でもお話をさせていただきましたが、AIの認識と制御で、人間の目で見て、状況を捉えて、臨機応変に動くことがいろんな機械で可能になりつつありまして、潜在的な幅広い作業が自動化できるようになってきているところがあります。
左側にこれまでと右側に現在から将来にかけてというところと、上に既に自動化されているところといまだ自動化されていないところを書いているのですけれども、基本的に従来に自動化されてきたものというのは、同じ環境、同じ形、同じ動きに限定されておりまして、屋外環境で環境コントロールができないであるとか、形が不明であるとか、柔らかいとか、動きが変則的であるとか、そういったものについては、環境であるとか、対象物とか、作業内容によって臨機応変に動き分ける必要がありまして、そういうものは自動化が難しかったところです。
AIが出てきまして、周辺環境を認識するとか、状況に応じて柔軟に動き分けるということは可能になってきておりまして、そうした技術を組み合わせることによって、広く自動化されてくるだろうと見て、こうした取組をしているような形になっています。
そこの話と、こちらの日本政府が出しておりますけれども、日本は課題先進国と自称しておりまして、将来、日本の課題はグローバルに顕在化してくるだろうというようなことがありまして、日本の生産現場に人口動態に起因する課題があるところと、時間的に予測や最適技術、AI技術が盛り上がってきて、その二つのかけ合わせで国内の課題解決をするところをしつつ、将来的にはグローバルに顕在化してくるような課題に打って出ることができると、国内課題を解決するだけではなくて、グローバルに展開できるような大きなチャレンジができるのではないかと思って、こうした取組をしております。
以上がなぜ取り組んでいるかというところなのですけれども、最後にAIによる機械自動化の取組の中で、法律などの関係で当社であるとか、当社の連携会社が感じた課題やそのエピソードについて、共有させていただければと思います。
こちらに五つのポツを書いておりまして、一つ目は、建設現場での実証実験に際してのところで、二つ目、三つ目、四つ目が自動化の運用検討に際してということで、最後は技術開発に際してというところになっています。
一つ目ですけれども、建設現場で当社が実証実験を試みる際に現場から安全第一で、万が一の事故が起きて指名停止になったら、損失は計り知れない、絶対に事故を起こさない装置、オペレーションでなければ、現場では使えないというような声をいただいておりまして、一方で、現在の人のオペレーションを維持して、そのまま自動化をしようとすると、絶対に事故を起こさないというのは難しいだろうと見ているところがあります。
こちらに出てきている指名停止という措置なのですけれども、建設産業では、指名停止措置があるようでして、重大事故が起きると、行政から指導で一定期間受けられなくなります。そうしますと、1件当たりの案件が数十億とか、それ以上の金額になりますので、一定期間の営業ができなくなると、それぐらいの経済的な損失を被る可能性があるということで、そうした損失を被る可能性があるところと、重機が自動で動いているところのバランスを考えたときに、自動化を推進するところに力が働きにくいことを感じているところに一つとしてあります
二つ目については、いわゆる免許の話でして、現在の免許ですが、基本的に人が操縦室で操縦することを前提としているところがありますけれども、自動化の際に人が乗る必要があるのかとか、リモートの操縦室でもいいのかとか、あるいは物理的な操縦室がなくてもいいのかというところは不透明です。
そうした不透明なことがあるところに、自動化の実証研究を行う場合は、取組内容を厚生労働省の所轄の方に安全性とか、適切性などについても打診をするようなオペレーションがなされておりますけれども、地域であるとか、担当者によって判断が異なるところもあることも話としては伺っております。
また、クレーンを作業ロボットとして捉えますと、自動クレーンの作業に人が立ち寄らない環境でないと動かすことができない、そういうような形になろうかと思っておりますけれども、建設現場ではクレーンの荷揚げとか、荷下ろしのときには、人が介在することがほとんどでして、そもそもそのように産業ロボットと当てはめられている安全性の規制を適用すべきかどうか。適用したときに自動化できるかどうかは不透明であります。
最後は、国内外の取組の差ですけれども、欧州で議論されているAIは、ハイリスクAIというところに分類されておりますが、AIベンダーの手続とか、体制の指針が示されている一方で、国内には方針が見えておらず、技術開発目標の設定には懸念があることを感じております。
以上、駆け足となりましたけれども、DeepXからの発表は以上になります。ありがとうございます。

安念副座長: 那須野社長、どうもありがとうございました。いただいた時間も大体尽きかけておりますが、お一方ぐらいは大丈夫です。落合先生、どうぞ。

落合構成員: 落合です。御説明ありがとうございます。フォワードルッキングな話で参考になりました。自動化に関する議論をいただいたので、これも原則2の後半とか、3以降になると思いますけれども、非常に参考になるものだと思いました。
一つ目は、今、映していただいている中で、技術開発に際してということで、将来的な規制の在り方が見えないことも御指摘のところだと思います。また、どちらかというと、医療・介護の公的資金が入っているような領域だったりしますと、投資が行われるか、すなわちどのように政府として産業育成をしていくかという計画が見えないと計画が立てづらいという話も出たりております。し規制に限らず、どのように配置していくかについて、政府としての計画も立てたほうが分かりやすいのかとも思いましたが、両面で進めるということでよろしいでしょうか。
二つ目は、自動化の点については、責任関係のところは明確にしていたほうがいいというのは、デジタル原則にも入っております。ここは終局的に民事上の責任関係を定めるかどうかは別にして、業法上、こういう形で対応すればいいというものを仮に置いていくだけでも、実証実験などはまず進みやすくなるかもしれませんのでできる限り早くこのような検討を行う必要があると考えました。
最後に、実証実験に関しては、無謬性の原則みたいなものが日本は強過ぎることがあると思います。そういうものの緩和ができる領域とできない領域とが安全の関係であると認識しておりますが、できる限り合理化をしていく必要があると感じました。コメントになりましたが、御意見いただけるところがあれば、ぜひコメントをお願いたします。

安念副座長: 那須野社長、いかがですか。何か御見解がありましたら、お願いします。

那須野構成員: 2、3については、ありがとうございます。
1については、指摘いただいたとおり、両面に踏み込めると、当社としてはありがたいところです。

安念副座長: ありがとうございました。
これで今日の予定のプレゼンテーションは全て終わりました。プレゼンターの皆さま方、本当にありがとうございました。それでは、議事はひとまずこれまでとさせていただきまして、最後に小林副大臣より一言頂戴したいと存じます。

小林デジタル副大臣: 皆さん、どうもありがとうございました。
松尾構成員の紹介で、どちらかというと、AIの分野の方々に出てきていただいたということで、本当にありがとうございます。
ここまでシミュレーションの世界で相当精度が高められるという前提で物事を考えなければいけないということを打ち込んでいただいたと思っています。そういう意味でいくと、事前に求めている規制があったとしても、シミュレーションの世界でより最適なチェックポイントが発見できるとか、これを乗り越えていただければ大丈夫という判断もできるような時代がやってくると思いましたし、私はどうしても先ほどの船の最適化とか、タンカーの最適化の話がありましたけれども、いろいろ条件を基にデジタルツインでシミュレーションして、最適化をすることができるならば、法改正をすると、どのように社会に影響が出るのかということも、デジタルツインでシミュレーションできる時代が間もなくやってくるのではないかと改めて思ったところです。
そうすると、法改正をシミュレーションできるようになると、よりたくさんの試行実験ができるようになるわけですから、より柔軟な法改正、よりスピーディーな法改正を実現できる日本社会へと転換できる可能性があると思っていますので、そこは諦めずにもう少し追ってみたいと思った次第です。
最後のところは、ルールが曖昧であるということでなかなか踏み出せないという話もありましたし、これはまさに稲谷構成員のところなのかもしれないのですが、先ほどの指名停止については、大事故を1回起こしてしまうと、指名停止といった話なのかもしれないのですけれども、車のログではないですが、建設現場の動画が残っていて、事故の要因も含めて開示をしてくれるならば、いきなりの指名停止にはならないといった規制の執行の在り方も検討できるのか、蛇足ながら思った次第です。
いずれにせよ、今日の前半戦は、明確にアナログな規制をデジタルやテクノロジーで代替するという議論をいただきましたし、後半はよりサイバーの世界でシミュレートできる時代になってきている中で、ルールの在り方や規制、執行の在り方をどう考えるのかということを非常に考える機会になったと思っています。
事務局も頭が整理できたと思います。今日の議論を踏まえて、各省庁との調整の議論に入っていきたいと思っていますので、引き続き委員の皆さん、よろしくお願いします。また、事務局の皆さん、頑張りましょうということをお伝えして、締めの御挨拶にしたいと思います。今日はありがとうございました。

安念副座長: 副大臣、何度もお言葉を賜って、本当にありがとうございました。プレゼンターの皆さま、本当にありがとうございました。あまりにも学ぶことが多かった、率直な感想です。最後に事務局より次回の作業部会について、御説明をお願いいたします。

事務局(須賀): 次回の作業部会は、まだ詳細は決定しておりませんで、今後、事務局より追って御連絡をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議事及び資料の扱いについては、第2回で申し上げたとおりで、特段、公表になじまないものがない限り、公表させていただくという段取りで進めたいと思います。
本日は御参加をいただきまして、どうもありがとうございました。

安念副座長: 副大臣はじめ、各構成員に心から御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。