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デジタル田園都市国家構想実現に向けた地域幸福度(Well-Being)指標の活用促進に関する検討会(第6回)

概要

  • 日時:2024年6月24日(月)15時30分から17時30分
  • 場所:オンライン
  • 議事次第:
    1. 開会
    2. 議事
      1. 地域幸福度(Well-Being)指標 令和6年度全国調査結果
      2. 地方公共団体における地域幸福度(Well-Being)指標活用推進について
      3. リファレンスロジックツリー(案)に関すること
    3. 意見交換

資料

参考資料

議事録

司会(名倉): ただいまより第6回デジタル田園都市国家構想実現に向けたWell-Being指標の活用促進に関する検討会を開催いたします。

本日、採択団体の方を中心にご出席いただいておりますが、採択団体の皆様は、傍聴のみとなりますので、音声が入らないようにご配慮いただきますようお願いいたします。

最初に国民向けサービスグループ統括官の村上より挨拶を予定しておりましたが、今ちょっと席を外してございますので、また後程、ご挨拶をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

ここから先は座長であります前野先生の方に進行をお願いしたいと思います。

前野先生、よろしくお願いいたします。

前野座長: はい。今日もお集まりいただきましてどうもありがとうございます。
今日も盛りだくさんの非常に興味深いご発表をいただいて、ご議論の時間全部で2時間ほど取ってありますので楽しみにしていてください。

デジタル庁のホームページ、皆さん見られましたか。非常に各自治体のデータが見られるようになってきて、かなり、実は赤裸々に見えるんですね。どこの自治体はどれが高くてどこが低いみたいなのがわかりますから。これを本気で使うと、かなりもう日本中の人がどの町はどんな町だってわかっちゃうという、南雲さんとか村上さんが目指していた、その可視化することによってもういい町にせざるを得ないというまさにデジタル化でWell-Beingを高めるという準備が整った段階だと思うんですね。

そして、うちの井上なども協力してロジックツリーというのもかなり整ってきたというとこで、もちろん、議論して修正したりすることも多々あると思いますが、でも非常に重要なスタートを切る会議に今日はなると思いますので、ぜひ皆さんのご発表を楽しみにしていただければと思います。

それでは議事に入りましょうか。

村上さん、喋れる時が来たら喋って貰った方がいいかと思うのですけど、まだですか。宜しいですか。

村上統括官: 自分は質疑の中でお話させていただきますので、このままもう中身に入っていただいたら。

前野座長: はい、わかりました。

ではまずは1番目、地域幸福度指標令和6年度全国調査結果、これを南雲さんからですか。お願いします。

南雲委員: はい、今、資料を出します。

この1ヶ月間の間に今年度の調査が終わったので、そのご報告をさせていただければと思います。

(p.1)まず概観という形でExecutive Summaryです。今年は10万人を超える人数のデータを集めました。10万人をちょっと超えるところまできてまして、去年が8万5000人弱だったので、大きく増えたということ。サンプルが100以上の自治体の数も668、去年391というところにきましたので、それなりのカバレッジも順調に増えているということです。

今回のテイクアウェイのトップに来るのは、去年と比べて非常に安定的な回答を得られてるという意味でかなり信頼度は増すというとこについに来たかなと、0から1のところまできたかなと。これからは1から100というステージにまさに移行できるのだということと考えてます。

一方で、前回、前々回、広井先生とか太田さんにもいろいろご指摘をいただきましたけれど、やっぱり自然関連のところが低く出てしまうという認知バイアスの問題は相変わらず残っているので、これは引き続き検討課題という認識を持っています。

今回新しい試みとしまして、今日鈴寛先生いらっしゃらないかもしれないですけれど、Gross Domestic Well-being、GDWの計算にほぼ近いものを我々のデータで1回計算してみましたので、ご参考という位置付けですけれどご覧になっていただければと思っています。

それと今までは相関分析のところまでで止まってましたけど、一応重回帰分析までやってみたので、その結果が前野先生、内田先生、識者の皆さんの感覚とどのくらい合ってるのかなと。

多分そんなに大きくずれてないと思いますけれども、そういうところを確認ができればと思っています。

(p.4)まず今年度の調査結果という形になりますが、ご覧の通りヒストグラム、これ三本の線から成り立ってます。左側の幸福度セグメント別を見ていただきますと、2022、23、24と3回データをとっているので、3回分を並べて棒グラフで示していると。黄色い点が3年間の平均という形になってます。

これはもうご案内の通りですけれども、World Happiness Reportが3年間の移動平均をとっているということなので我々もボラティリティを少なくするという意味も含めまして3年分の平均値を黄色い点で示しています。

2022年だけ棒の高さが若干低めだとお気づきになるかと思いますが、これはデータを取るときの業者が違っているということもあって、サンプルがちょっと違うということもあって、高さは違っていますけれども、全体の波形はそんなに変わらないという形になっています。

去年と今年を比べるとほとんど同じという形で、安定性があると言えば聞こえもいいですし、あんまり日本って変わらない国なのかなというような印象もちょっと思ったりもしています。

こんな形で、いわゆるU字形の形をしている。生活満足度についても同じようなU字形ですけれど、若干なだらかという形をとっています。

(p.5)それから、こちら右側だけをご覧なっていただければと思います。左側は先ほど見ていただいた幸福度ですけれど、5年後の幸福度というのもとっています。

これ、2年分しかないのは、前はやってなかったからということなのですが、2年分で出ていてもあまり変わっていないというのはご覧の通りだと思います。

(p.6)それから、内田先生の協調的幸福として町内の幸福度の分布、それから周りも楽しい気持ちでいるか、笑顔が多いまちかみたいなものですけれど、これも大きな差はないという形で、データとしての信頼度はここも増しているのかなと思います。

(p.7)今回、こんなものをちょっと作ってみたのですが、668基礎自治体まで来たということもあって、日本地図にマッピングをしてみた。

どの程度のカバレッジがあるかというところと、あまりランキングというのは馴染まないのでランキングしないようにしてますけれども、幸福度の偏差値、幸福度の点の高低に若干の色をつけてみたという感じです。これが幸福度ですね。

(p.8)それから、生活満足度も同じようにやっています。

ちょっとデータの区切り方が、インターバルが違いますけれど、こういう形になっていると。
やっぱり東京とか大阪とか名古屋という都心部については、生活満足度の色が濃いというのは見て通りかなと思います。

(p.9)都道府県別にもやってみました。そうすると、幸福度がこんな形ですね。

何となく東北の方が、色が薄いというのは見てとれるところかと思いますけれども、つい最近消滅可能性都市の番組をNHKでやってましたけれど、そのデータとちょっと重なってるところもあるような気がします。

(p.10)同じように、生活満足度もこんな感じです。

ですので、今後、これら全体的に色が同じ色、つまり格差が少なく、色が濃くなっていくっていく、つまり全体が改善するとのが、正解という形になると思いますけれど、その起点といいますか、出発点としては、使っていただける可能性があるかなと思っています。

(p.11)今年度は24の因子について絶対値ですね、1から5の5件法で測ったときにどういう回答の分布になっていたのかというスパイダーチャートの作成をしています。これは日本人全体です。見ていただくと青い丸で囲ってあるところが平均の3、真ん中の3よりも高いところ、3.1みたいなのもありますけれど、顕著に高いところ。赤いところが中に落ち込んでしまっているところということになります。これもマズローや色々な幸福度指標に示される日本人の社会の特性を上手くキャプチャーしてるような気がします。

例えば、医療・福祉とか買物・飲食、住宅みたいなもの、これはOECDでも強いと言われてるところだと思いますけれど、それから初等教育、義務教育のところについてもPISAで出てくるように一番強い。それから公共空間、自然の恵み、健康状態、この辺はお馴染みの領域ということかなと思います。

逆に落ち込んでるところを見ていただくと、遊びと娯楽、時間貧困、特に女性の時間がないという問題がだんだんと大きく言われるようになってきましたけれど、ワークライフバランスみたいなのも含めて、自分の時間というのはなくて仕事に取られているというモードのところ、それから多様性、寛容性、これはもう言うまでもないかなと思います。

そして所得、雇用・所得。これは名声欲みたいなもので、お金を幾ら貰ってても比較的満足しにくいところかと思いますけれど、こことあと事業創造というところは中で落ちていると。

スパイダーチャートですが、濃いオレンジ色と薄いオレンジ色の2色で描かれています。

濃いのが今年度、薄い蛍光ペンみたいな色になってるのが昨年度という形になりますけれど、ほぼほぼ変わらないというのは見て取れるかと思います。

(p.12)それで、これが前回やったものの今年度版です。幸福度と24の因子がどういう相関の状況になっているのかということですけれど、若干右から左への、高いから低いの順番が変わったところはありますけれど、大きな違いがないまま、同じように推移をしているということです。

先ほど申し上げましたように、右の端に自然がきてしまうという点ですね。いわゆる自然はあって当たり前となってしまうのは認知バイアス的に出てるというこの課題は相変わらず残ってるという事です。

(p.13)それから、生活満足度は都市の機能評価に関するような側面があるので、比較的相関してるものが多いですね、という形になっていて、これは去年と顕著な差はありません。

(p.14)それから、今回は内田先生の協調的幸福についても同じようにやっています。

バランスは若干違うように見えますけれども、大きな差は出ていないと思います。

(p.15)それから、主観と客観の間、これが前回主要なテーマだったのですが、これも変わらないですね。自己効力感のところは主観が、自分は何かできると思うという質問、客観は投票率なので、主観と客観の組み合わせ方に課題を技術的に持っているということで、あまりいい結果が出てませんけれど、それ以外については前回と変わらずという状況になっています。

(p.16)今回は相関係数が0.4以上だった因子については、重回帰もやっているということです。見るとこんな感じで、多分、世の中で言われているような日本人の幸福感に大きく影響を及ぼすものというものの、本当に根幹部分みたいなものは取れてるのではないかと思うのですけれど、健康、自己効力感、地域との繋がり。それから公共空間というのは、我々のこのまちというところを入れてるという意味でいうと、普通の幸福度の因子とちょっと違うようなとこが出てますけれど、こんな構成になっている。

(p.17)それから、生活満足度なってきますと、もうちょっと即物的といいますか、日常生活の領域がでてくるので、雇用とか地域行政、医療福祉というのが入ってきますという構成になっています。

(p.18)それから、内田先生の協調的幸福も比較していますが、いわゆる幸福度と似てる構成かと思います。大きなサプライズはないのではないかなと思います。

(p.19)今のを言語で並べてみるということですけれども、幸福度、生活満足度、町内の幸福度について、相関係数の高かったトップ10を並べています。それで下線が引いてあるものはこの3つに共通してるものということですね。公共空間、教育機会の豊かさ、事故・犯罪、行政、地域の行政というのが共通していると。*マークが出てるのが、重回帰分析をやった時に優位だったものという形になっています。

(p.21)GDWですけれども、ちょっと試しということなので、今回は参考という形で見ていただければと思います。

これは鈴寛先生がWell-being学会とかいろんな所で発表されていらっしゃるものを参考に、我々のデータで計算してみたということですけれど、今年度の幸福度が7以上で5年後の幸福度が8以上だと答えた人の割合です。なだらかなUカーブになっているということです。

(p.22)逆サイド、今年度の幸福度が4以下、5年後の幸福度も4以下というのとると、逆Uカーブ、反対側になるということなので、当たり前なのですけれど、こういう形になります。

(p.23)これは純粋なGDWとは違いますけれど、似たような表をいつも先生が出しておられたので、我々持ってるデータで作ってみたということですけれど、幸福度が7以上、GDWはこれに加えて、5年後が8以上というのが出てくるんですね。

ただ我々のデータのとり方は幸福度の尺度と5年後の幸福度は持っているんですけれど、いわゆるGDWで使っている生活満足度と5年後の生活満足度のペアを持っていないので、その5年後というのはちょっと差っ引いた形で、幸福度と生活満足度で7以上の割合を上の方のオレンジのバーで描いていて、下のブルーのラインが幸福度と生活満足度の4以下の人の割合を書いていると、いうことです。

そうすると、鈴木寛先生達も書いてるものに似ているんですけど、東京とか奈良、それから長崎、沖縄辺りが、オレンジが上の方に高く、ブルーが下の方に低いという傾向は見てとれるということで、東京はちょっとモンスターという傾向は見てとれなくもないのですけれど、非常に高いという状況になってるということです。逆にこの表で言うと左側、東北はやっぱりちょっと低めというのが見て取れるかなと思います。

(p.24)域内GDPと幸福度、左が市区町村、右側が都道府県ですけれど、どのくらい相関があるのか。これはもともとの考え方が、成長と分配の両立と好循環という言葉が今政権内で使われてますけれど、これがどのくらい両立してるのかということの一つの試みとして、相関をとって見ているということですけれど、幸福度とそれから経済指標GDPというのは、そんなに強い相関はない。

(p.25)ただし一方で、生活満足度の方に行くとかなり強い相関が取れているということがわかっています。これは石川さんから1回これを作ってみてくれないかというご依頼を受けたことがあって、今まで何回かやってきたのですけれど、今回はもう少し綺麗なデータが取れているので、2回目ということもありまして、2年分含めて皆さんと共有できるところまできてるということです。

(p.27以降)あとは添付資料で、前回示させていただいたものの今年度版のデータという形です。これは年代別のブレイクダウンであるとか、各24の因子と様々な相関を可視化するものにしています。これを1枚1枚説明してもあまり意味がないということで1年前に説明をしていますので説明については割愛させていただきます。データに関してもこういう形でつけていますので、一般公開という形で市に絞っていただきたいと思っています。

私からのご説明は以上でございます。ありがとうございます。

前野座長: はい、ありがとうございました。

それではここで質疑でしたか。発表が先でしたか。

鈴木(デジタル庁): デジタル庁から引き続き資料3についてご説明させていただきます。

資料3をご覧いただければと思います。

(p.2)まず2ページ目でございます。

本日の議論のポイントでございますが、本日はロジックツリーの作成支援の部分が主になると考えておりますが、指標活用の広がりを見せる中で、活用の熟度に合わせた支援であるとか、提供データの改善についてもご議論いただければと考えておりますのでよろしくお願いいたします。

(p.3)指標の活用については3年目となりますけれども、この取組で引き続きデータの提供を行いつつ、活用の進化を支援していきたいと考えております。

本年度の取組のポイントを今日はかいつまんでご説明させていただければと思います。

まず3月29日に、冒頭、前野先生にもお話いただきましたが、指標サイトを公開させていただきましたので、デモンストレーションを簡単にしながらご説明させていただければと思います。

画面映っておりますでしょうか。こちらがデジタル庁で3月29日に公開いたしましたWell-Being指標サイトでございます。まず、デジタル庁の河野大臣のお膝元であります平塚市のWell-Being指標を画面展開しております。2023年度の数値で、件数は116件と少なくはございますけれども、レーダーチャートの形はこのような形になっております。レーダーチャートでは主観指標はオレンジ、客観指標はグリーンのラインで表示しています。平塚市では健康状態の客観指標が50.7と平均以上なのに対して主観指標が35.3と平均を下回っております。これは施策の充実度に対して、住民の実感が伴っていないのではというように読み取れると考えております。例えば健康状態の客観指標でございますが、オープンデータから得られた健康寿命になります。主観は身体的、精神的に健康だと思うかというアンケートの結果です。

それぞれの結果はタブを開いていただき、先ほど言った健康寿命の客観指標がこの辺りです。そして、主観指標はこのタブを開いていただきまして、精神的に、身体的に健康と思っている人たちがちょっと低いかなというところが見て取れるかと思います。このようにレーダーチャートの下の部分にブレイクダウンした、それぞれの質問やKPIのそれぞれの項目を掲載する形でサイトの方を作っております。このバックデータもCSV形式でそれぞれダウンロードができるようにしておりますので、お手元でデータを見ていただくことが可能になっております。

続いて、三島市をご覧いただければと思います。こちらが静岡県三島市のものになります。三島市のレーダーチャートは先ほどの平塚市のレーダーチャートと形が違っていることが見て取れると思います。全体的に主観指標が客観指標を大きく上回っているのが特徴です。中でも自然景観が主観指標、客観指標ともに高い状況です。三島市は富士山の伏流水が町中を流れまして自然景観のすばらしい街です。住民の皆さんも誇りに思っているということがこのレーダーチャートから見て取れます。他方、医療・福祉については、客観は高いのですが、主観が低いという形になっています。人口当たりの後期高齢者医療費が低く、また福祉施設の徒歩圏人口カバー率も高いのに対しまして、医療機関が充実している、介護福祉施設のサービスが受けやすいという設問のアンケート結果を見るとそれぞれが住民の実感に繋がっていないとも言えます。全体的に暮らしへの満足度が高そうではありますが、雇用・所得や事業創造については評価がかなり低く、買物・飲食の部分も評価が低いのが気になるようなレーダーチャートに見えるかと思います。

次に三重県多気町さんのレーダーチャートですが、こちら回答数がちょっと少ない状況ではございますが、これまでの2都市とレーダーチャートの形が大きく違うことが見ていただけるかと思います。多気町の自己効力感の客観は非常に高くなっておりまして、これは先ほど南雲先生からもお話がありましたが、投票率ということで、現状なかなかフィットする客観指標がなく、投票率にしているというところもあるかと思っています。全体的に主観的評価が厳しく、こうした評価が出てくる地域は全国的にも少なからず存在しているのではないかと考えています。

このサイトにつきましては、過去の2022年度と2023年度、また本日、2024年度のデータも公開させていただきましたので、またご覧いただければと考えております。

この指標サイトには、指標の使い方についても掲載をさせていただいておりまして、中に動画等も掲載しておりますが、参考となるユースケースとして多くの団体の指標を活用した事例等も掲載しています。ぜひサイトを訪問し指標活用に有効に使っていただければと考えているところでございます。

資料3に戻っていただいて6ページをお願いします。

(p.6)6、7、8ページにつきましては、このサイトに今後追加する機能などについて、ご紹介しています。

(p.7)アンケート機能など自治体の活用を支援するツールを、このサイトに追加する形で、自治体の皆様の負担軽減や分析の高度化を支援する予定でございます。

(p.9)活用団体でございますが、6月6日時点で85団体の皆様に指標を活用していただいているということがデジタル庁で把握できているところでございます。実際はもう少し多いのかなというのは肌感として感じているところでございます。

(p.10)本年度はさらに活用拡大に向けて取組を進めていきたいと考えております。

赤字でNewと書いてありますが、NPO・住民を対象とするワークショップの開催、及び、ファシリテーターの養成・派遣制度の構築の二つを新たに取り組んでいきたいと考えております。これにより住民も指標の活用ターゲットに広げて参ります。議題2の説明については以上です。残りのページにつきましては質疑を挟んだ後にご説明させていただければと思います。よろしくお願いいたします。

前野座長: はい。ありがとうございました。ただいまの2点についてご自由にご質疑、ご意見等いただければと思います。どなたでもご遠慮なくどうぞ。

広井委員: ありがとうございました。たいへん素晴らしい成果がまとまりつつあると思い、印象深く伺いました。

質問の1点目は、南雲さんの説明のなかで、ラフに言うと大都市圏の方が幸福度や生活満足度が高い傾向や東北地方が低いといった傾向があるとの説明がありました。それはなるほどそうかなというふうにも思うのですが、解釈の仕方を一歩間違えると、大都市への集中を加速してしまうような方向に受け止められる恐れはないかと思いました。単純に集中を加速するような方向にならないためには、解釈上のポイント、あるいは対応策としてどういったことを考えておられますか。

2点目の質問はテクニカルな問題として、統計的な有意性について各自治体でどのくらいのサンプル数を確保すれば、より実態に近いものなるのでしょうか?

南雲委員: 広井先生どうもありがとうございます。

先生のおっしゃる通り、とりあえず地図にしてみますと2014年からやってきた地方創生の取り組みの効果が十分に出ていないと見えてしまうようなところがあって、経済格差とか出生率格差などを超えてウェルビーイング格差も生じているように見えなくもないという状況は、現実としてはあるのだと思います。それでもやはり地域のウェルビーイングを高めるような政策こそが、重要なんだという論陣を作っていかないといけないというのを改めて認識させる結果なのかなと個人的に思っております。地域の良さというものを控え目に考えがちで、言葉にしたがらない人たちの代わりにこの指標を使って、これだけ変わっているとか、これだけ面白いものがあるということを示すような努力が必要だろうと思います。ひとつ悩みどころとしては、自然の恵みや自然景観については仮にスコアが高くても、幸福度との相関性が低く出る傾向があるため、こうした認知バイアスを緩和するような策はないのかなということを今試行錯誤しております。

広井委員: なるほど。ちなみにこの地図でも以前から地域愛着度が高いといわれている北海道と沖縄のように大都市圏以外でも高い地域もありますので、そのあたりが一つ手がかりになるのかなと思いますがいかがでしょうか。

南雲委員: そうですね。あとは県民性みたいなものがデータとしてあると、県民性と幸福度との関係も分析できると思うのですが、そこまでのデータは日本にはないのかなというのが現状です。2点目の質問については、私というよりもこの分野の専門の委員の方に知見を共有していただければと思いますが、サンプル数でいうと、400を一つの目安にしてはいます。

信頼区間95%および標準誤差±5%を目標とした場合には、人口100万人規模の都市で384サンプルが必要という統計的な考え方があります。

とはいえ、限られた予算のなかで全国約1700の自治体をできるだけカバーするということを考えると優先順位をつけざるをえないという状況があります。今回はデジ田の交付金タイプⅡ・タイプⅢを受けられた自治体や人口の集中している政令指定都市などは比較的厚く、その他の都市については最低100サンプルを確保するという条件で調査を実施しました。その結果、100サンプル以上の自治体が668まで増えたというのが現在地になっています。もちろん、母集団に対して384なので、これを年代とか性別で割るとそれぞれまた400必要という議論が待っているのですが、他のいろいろな調査をみてもこのくらいのサンプル数が日本では標準になっていると認識しています。

広井委員: ありがとうございました。

前野座長: それでは他の方いかがでしょうか。

太田委員: 太田です。データの活用に関して2点ほど申し上げます。
データが活用されるための原則みたいな話が経験則でありますが、オープンデータと言いながら、いわゆる機械判読ができない形で公開されているケースが結構あるので、本指標はCSVでダウンロードできるという点はとてもいいなと思いました。今後もデータがどんどん活用されるために、公開するかどうかはともかくとして、データ公開の原則を明確にしといた方がいいと思います。

少し気になっている点としては、データを加工するという点です。海外も含めてデータが活用されているケースを見ると、あまり加工はせずにローデータに近い形で公開しているということが共通の特徴としてあります。ユーザーからのリクエストを聞いていくといろいろと加工したデータを出してくれといった話になりがちですが、経験則としてはできるだけ加工しないで出した方がいいと思います。国内の例としては東京都の新型コロナ感染症対策サイトを作りましたが、あの時もデータを加工してくれっていうリクエストがたくさん来たのですが、全部断って、ローデータだけを出しました。結果的にたくさんの方にデータ活用していただくことができました。そしてそれが他の市町村にも広がりました。何かそういうデータ活用されるための条件とか、原則みたいなものは、最初からある程度決めておいた方がいいのかなと思います。

小泉委員: 素晴らしいデータを公開していただいて、素晴らしいと思いました。

今までの方のご指摘ともちょっと重なるのですが、一つは母数(各自治体の人口)に対して何%のサンプルなのかということをダッシュボード上に示しておいたほうが良いかと思います。まだ発展途上のデータであり、これからサンプル数も増やしていって、より統計的な有意性を高めていく必要があると認識しております。

2つめは、地理的な違いということが僕もすごく気になったのですが、幸福度と生活満足度のギャップみたいなものが結構大事なのかなと思いました。東京は、生活満足度が高い割には、幸福度があがっていないというようにみた方がいいのかなとか。その辺り、解釈の仕方についてすこし注意が必要なのかなと思いました。

3つめは、太田さんが言われた点に私も同感していて、COVID19関係のデータは、オープンデータを使って、様々な分析をして新しい知見をたくさん出しています。論文もものすごくたくさん生産されているので、アカデミックなユースだけを考えてもできるだけローデータを扱えるようになっていると、いろいろな角度からの検証とか分析もさらに進み、それがちゃんとしたジャーナルペーパーなど出るので、そうすると、いわゆる学術的な知見としてもこの調査結果がこう認められていくというプロセスに繋がると思います。また企業が様々なサービスを考える際のネタにもなるんじゃないかなと思います。そういう意味でオープンデータ化ということで、なるべくローデータに近い形での公開というのをお願いしたいと思います。

村上統括官: サンプル数はまだ十分ではないと思っています。

それを引き上げる努力はもちろんするのですが、僕らとしては、とりあえずは暫定の数字であってもこれを、まずは今あるものを見て感じたことを、いろんな方に議論していただくことに注力していきたいと考えています。もちろん並行して、統計的な検証に耐えるかどうかの研究は、皆さんと一緒に続けられればと思います。

この結果の開示や、英語による公開は是非進めていくべきとは思いますが、私どもが一番恐れているのは、データをまとめてダウンロードして自治体間の順位づけを行うような動きが出てきてしまうことです。いろんな人が勝手に生データを使って、ランキングを作ったり、日本一不幸な県はどこだといった議論をされたりするのは避けたい。海外に対しても、いきなり英語で公開するより、例えば、先生方にこの指標を題材にした英語の論文を出していただくことに対してサポートするとか、少し引いたところからまずはスタートした方が良いのではないかなと思っているところです。

ただ、せっかく多くの人にみていただいて、非常にわかりやすいという評価もいただいておりますので、その活用の普及と悪用の防止の間のバランスを上手に取りながら、是非、さらなるレベルアップの仕方についてもご指導いただければと思います。

小泉委員: 確認ですが、まだ公開していないということでしょうか。

南雲委員: 各自治体単位のスコアはダウンロードできるようになっています。ローデータをまとめてダウンロードするということに対しては、まだ行っておりません。これは先ほどの広井先生とかのコメントにも近いんですが幸福度のランキングを作って政策と逆の議論をやる人が出てきてしまうのではないかという点を恐れています。また問合せのなかには、不動産価格の形成のためにこれを使いたいという、主従逆転的な使い方についてのリクエストが来たりすることもあります。なので、やはり我々の目指してる政策の方向性とある程度合ってるということが担保できる前提があった方がいいということで、ローデータの全公開には慎重に考えているというのが現状です。

学術論文はもう本当にその通りで、以前この場で、内田先生がそろそろ書きましょうかというご発言されてらっしゃいましたが、できれば有識者のメンバーの中で論文を出していただき、こういう使い方でこういうことがわかる、みたいなことを発表していただけると、それをサイテーションする形で広がっていくというのが美しいかなと個人的には思ったりしています。

ただ、原則としては、太田さんと小泉さんのおっしゃる通りで、ローデータが広く公開されて、イノベーションに使われたり、新たな知見が得られたりするようになるというのが理想であるということはよく理解しています。

前野座長: ありがとうございます。自治体単位ではローデータがダウンロードできるので、1件1件やっていけば全データを取得できる状態ということなんですね。

鈴木(デジタル庁): はい、その通りです。

前野座長: 善意に期待する形式になっているのが本当にいいのかどうかという点はもう少し議論した方がいいかもしれません。

小泉委員: 今、村上さんや南雲さんが言われたようなデータ公開の趣旨とかデータの限界などについてサイトにちゃんと書かれてるといいのかなと思います。

村上統括官: はい。注釈のつけ方はよく考えます。

笹尾委員: 地域幸福度指標のウェブサイトを拝見させていただき、よくできているなと思ったのですがこのデータを各自治体が有効に活用していくためには、人中心の観点でこのデータを分析できるようなプラットフォームにしていくということが重要だと思います。今のサイトでは、属性の絞り込みの機能が年代と性別でのみ絞り込みをして結果を表示できるような機能になっていますが、これをやはりもう少し細分化して、例えば独身なのか家族持ちなのかとか、所得の多寡での分析とかあるいは幸福度が高い人と低い人とで各因子の状況がどう違うのかなど、複数の切り口から確認できるようにすると、より多様な視点から分析ができるようになってくると思いました。

もう1点は、やはりこれのアンケートの調査方法に依存してしまうんですが、20代以下の子供のデータがどうしても得ることができないという状況なのではないかなと思っておりまして、小さい子供たちがこれからその町で暮らしていって、幸福になっていくための計画を立てるという意味でそういったデータを集めていく別枠のプロジェクトといいますか、そういうデータも将来的なことを考える上ではすごく重要なのではないかというように思います。

子供のためのウェルビーイング調査みたいなのものができると、すごくいいのではないかと思いました。

南雲委員: おっしゃる通りですね。

広さと深さをそろそろ欲する段階にきているということでいいことだと思います。自治体において今そこまで本当に意識を持って分析をやれる人がいるかというとまだ少ないとは思いますが、いずれそうニーズが大きくなっていくと思います。今はまだ啓蒙期の段階でそこまでの整備は進んでいないのですが、将来像としては、笹尾さんがおっしゃったのはその通りという理解を持っています。

村上統括官: 因みに世帯構成のバリエーションについてきちっとした整理学を持っていないと、システム開発も非常に非効率になることがわかっています。補助金の種別ごとに、例えば子供が何人いるのか、そのなかで住民票が域内にいる子供が何人いるのかとか、障害者の方がいるのかなど、様々な給付条件があり、現状は、支援制度ごとにわざわざ分類を作ってアプリケーションを作りこむということが行われています。

こうした世帯分類がどの程度あるのか、本格的に分析してみたところ、700パターン近くに及んだという経験値があります。本当は、こうした世帯構成や、収入水準、他にもどのような分類が支援制度の執行には必要なのかを専門家も交えて議論してFIXして、Well-Being指標の調査ばかりでなく、いろんなサービスやシステムにおいても共通に使えるようにすべきだと思います。

古賀委員: 今年度からお世話になります東京大学の古賀と申します。

3点ほどコメントさせていただきます。最初の二つは発表いただいた資料に関してなのですが、現在各因子の分析結果について合算した結果をお示しいただいてると思います。例えば公共空間ですと、居心地と歩ける場所の2つの質問を使っていらっしゃると思うのですが、今後、これを個別に分析していく可能性はあるのかということをお伺いしたいと思いました。といいますのも、ざっくり公共空間とウェルビーイングとの間に関連がありましたというところまではいいことですが、より具体的にどのようなことが効いていたかということがわかると自治体の方が政策立案に生かしやすい結果となるのかなと考えました。

もう一つは先ほどの議論にもありましたように基本属性というところがやはり気になっていまして、年齢などが公開されていると思うのですけれど、これを取られてるかわからないのですけど、その地域にどれぐらい住んでいるのか、居住年数などを考慮されているのかというのがちょっと資料からわからなかったので、お伺いしたいと思いました。

3点目はサンプル数の問題にもなるので未来の話にはなるのですけれども、自治体の中の小地域ごとに比較ができるようになるとよりいいのかなと思いました。自治体の方がウェルビーイングの施策をやるとなったときに、地域の中でも格差があるようなことが生じているのではないかなと思うと、例えば小学校区ごとですとか包括区単位、さらに言うと町丁目単位でそういうことが分析できるようになると、より使いやすいのではないかなと思いました。以上です。

南雲委員: はい。回答申し上げます。

今、本当にいい点をおっしゃっていただいたと思います。まず3点目のご質問ですが、最初の段階から郵便番号までブレイクダウン的にしようということで制度設計になっています。デジタル庁のホームページ上でも、地図上のドットでアンケートに答えた人の住所をプロットしています。ただ、そこまでブレイクダウンすると、十分なサンプル数がとれているかという問題がついて回るというのはもうおっしゃる通りですね。

それから属性データに関しては、実は初年度の3万4千人の調査のときは今とは違う業者を使って調査したのですが、そのときはかなりの属性データももっておりました。ただそこにお金を使ったところで自治体の皆さんがそれを使いこなすところまでいくかというと、なかなかそこまでは一足飛びにはいかない。ということで、まずはサンプル数を増やして幅広くいろんな自治体さんに見てもらうことを優先しようということで1回舵を切ったという経緯があります。

1点目のもっと細かい分析というのは、これは実はこれを使って政策を作る自治体の方がやっているというのが実態です。デジタル庁ないしスマートシティ・インスティテュート、あるいはこの有識者会議で、シンクタンク機能を果たせるかというとそこまでの余力はないんですね。

自治体ごとに政策の目標に応じて、どこまで分析するのか、何を分析するのかというところについては、自治体の皆さんの判断に任せています。我々はそれに必要な支援、研修やファシリテーターの派遣などを可能な範囲で提供するというスタンスです。

鈴木(デジタル庁): デジタル庁から一点補足です。

先ほど南雲先生からご紹介のありました地区別、郵便番号区別の分析という点ですが、サイトにおいては地図上に回答者の住所がプロットで表示がされるようになっておりまして、地図上で範囲を指定して絞り込みを行うとそのエリアのデータが表示されるようになっています。

広井委員: やや個別の話で正確に理解しなかったかもしれないですけど、GDWのところで長崎県が1位という話がありましたがあまり長崎というイメージがなかったので、この背景について想像されてるようなことがあれば教えてください。

また一般的に域内GDPと幸福度との相関はあまり高くないという点は重要なメッセージだと思うのですが、この辺りで今考えておられるような点があるのか。

それから三重県の多気町で主観の結果が低いという説明がありましたが、この解釈としては客観的には良い面があるのに住民がそれに気付いてないみたいな解釈になるのかそのあたりについてご意見ありましたらお願いします。

南雲委員: GDWの件ですが、鈴木寛先生がやられているGDWと全く同じものはデータの制約上できなかったのですが、現在の幸福度と5年後の幸福度を使ってGDWに近いものを作ってみました。もし日本政府としてGDWを本格的に使っていくという方向性があるならば、我々としても今回のような分析を標準的なものとして装備すべきなのかという問題意識を私自身は持っています。現在は5年後の生活満足度の設問は聞いていないのですが、地域毎のGDWを調査すべきであるという判断をこの有識者会議で出てくる場合については、正式に5年後の生活満足度の設問を追加するということが選択肢として出てくると思っています。

長崎県がなぜ高いかという点については、我々もそんなに深い知見を持ってません。機械的に計算してみるとこうなったということでして、GDWのデータと比較するとほぼほぼ似たような感じになっているなというところまでは確認できたかと思っています。

2点目のご質問で、客観に比べて主観が非常に低かった場合は、2つのパターンがあると思っています。一つは今おっしゃられたように、町のよさをあまり認識していらっしゃらないというか、例えば市がいろんな政策をやっているけれど、市民の方にはあまり知られてないという時もありますし、もう一つは、自然景観みたいにそこに住んだ人たちにとって当たり前になり過ぎてしまっていて、ありがたさをもう感じなくなっているような状況という認知バイアスというのこの2パターンがあると思っています。それによって政策の打ち手も変わってくるということで、知られてないということに関しては、コミュニケーション戦略が極めて重要になってくると思います。

逆に客観的にあんまり良くないのに主観だけすごくいいと思い込んでいるというのは、地震とかが起こると安全安心が一気に崩れたりするんですよね。なので、その場合は客観の状況を改善していくような施策をやっていかないと、主観がだんだん結果の方に、低い方に落っこちてしまうということもありえる。そういう解釈をみんなでしながら、個別の議論をやっているのが実態です。

広井委員: ありがとうございました。

今のお話を伺って、いろんな解釈や発展的な議論の余地があるということがわかりました。

小泉委員: 今、自然資源の評価の話がありましたが、確かに認知バイアスというか慣れてしまっているからという側面もあるのかもしれないですが、地方の場合は、自然的資源が災害などと結びついてるようなイメージを持ってるかもしれないですね。自然的な資源が多いということは、例えば獣害があるとか、その自然的な災害が多いとかそういうことに結びついている可能性がある。

例えば人口集中地区(DID)の中だけで取り出してサンプルを見てみたら、ちょっと変わるのか、それとも変わらないか、このあたりを分析するのも研究としては面白そうな感じがしました。都市の中に緑がある場合と違って、中山間で緑が溢れているところの緑はむしろリスクとして認識してる可能性もあるので、その違いが出たりするかなと。その辺り、詳しく調べてみると、非常に面白いなと思って聞いてました。

南雲委員: おっしゃる通りだと思います。

例えば、鎌倉市は、客観データで見ると空気や水の質はあまり良くないのですが、都会のなかの自然ということで緑が非常に目立つし、感謝されるということで主観の評価が高くなっています。レファレンスポイントが何なのかによって評価が全然違ってしまうというのは、実感として私も持っています。どうもありがとうございます。

前野座長: では後半戦で、リファレンスロジックツリーの案に関することというのがあります。これは井上さんからご発表ですか。

鈴木(デジタル庁): まずデジタル庁から少しお話させていただいて、その後、井上先生とバトンタッチしていきます。

資料3の12ページお願いいたします。今画面の方、準備いたします。

お待たせいたしました。

(p.12)昨年度から先生方にご相談させていただいております、ロジックツリーの作成とその支援についてでございますが、5月にタイプ2/3/Xデジ田採択団体に対して、協力の依頼をしたところでございます。

今年度、令和5年度補正のデジ田交付金の採択団体については、明示的にこの分野で作成してくださいということで、この資料の右下にあるように分野を指定して作成を依頼したところでございます。

デジタル庁で今後検討を進めた後、秋頃にロジックツリーの作成についての進め方などをお示しします、ということを5月に説明をしたのですが、それを待たずして、自治体の方で独自に取組を進めるとご連絡を頂いているところもあるといった状況でございます。

多くの自治体においては、ロジックツリー作成について、なかなか単独で進めていくのは難しいというような状況の中、今、

石川県の能美市様のご協力を得て、作成手順について整理をする取組を始めたところでございます。

これが資料の左側に「自治体における作成手順(仮説)」と書いてある部分でございます。

能美市さんでは、長時間、この写真にもありますように皆でこのロジックツリーを作成にあたって議論をしていただきました。

(p.20)今現状、こういったリファレンスロジックツリーとして、井上先生や白坂先生の研究室の皆様、先生方にご尽力、ご協力いただきまして、公開をしているところでございます。

第1水準から第3水準までは国が示し、ここは動かさず作ってくださいということで、一旦第1水準は「医療・介護環境の改善」ということで置かせていただいております。

これをMECEに分けるというのが通常のロジックツリーかと思いますが、今回は第2水準においては「医療サービスの改善と拡充」、「介護サービスの改善と拡充」、また「市民の健康増進」と、第2水準を設定をしました。

第3水準についてはこの第2水準をさらに細かく分けていったわけなのですけれども、例えば医療の分野では「医療従事者の確保」、「医療・介護関連業務効率の向上」、「特定疾病・認知症のケアの拡充」といった医療と介護がほぼほぼ被るような部分もありつつ、被らないところもあるというところを明示しつつ、第3水準の方を整理したところでございます。

そして、第4水準・第5水準については自治体の政策を当てはめるという形で、まずは考えていただけないかというところで、整理をしてお示しをしたところですが、第5水準は実際にすでに自治体で実施している事業を並べ、それをまとめた形で繰り出したものを第4水準に書いていく。

ただ、ここの第3水準と第4水準をどのように繋げるのかというのはなかなか悩ましく、今回お示ししているものでは、自治体の皆様への分かりやすさという点を重視し、線の数を減らしておりますが、第3水準と第4水準をどのように繋げるかというところ、ご議論いただきながらここを繋げていただきたいと説明をしたところでございます。

(p.12)今のロジックツリーは能美市様に参照していただきながら議論を進めたわけですが、能美市においては第1水準の部分、或いは第1水準を含む領域の予算事業や業務棚卸表では、1500の事業がありました。その中から60事業まで絞り込み・洗い出しをしていただきました。

それを踏まえて、1、2回ブレストを実施しましたが、そのブレストのミーティングの中で、第4水準・第5水準の事業を当てはめるというブレストにはならず、実現したい価値観、能美市で考えているものとしては採択事業としているが、安全安心のまちづくりというところ、スマートインクルーシブシティということで、医療・介護を含めた安全安心なまちということを取り組まれようとしているわけですが、その実現したい価値観について第2・第3にどのように当てはめるかというようなことが主に議論になりました。

この辺りの第2・第3水準を、デジタル庁が示ししたロジックツリーと照らし合わせて、合うか合わないか。国が第2・第3水準は変えないでというところでお示しをしたのですが、やはり各自治体でロジックツリーを作っていくには、第2・第3も自分たちの考え方・価値観に合う形に照らし合わせ、修正をしていく必要性がありそうだというところを感じているところでございます。

⑤から⑧については、仮説でございますけれども、今後、第2・第3水準に照らし合わせてフィットするような重要な施策を第4・第5水準にプロットしていくと。この場合、既存の事業をただ分類的に並べるのではなく、目的に整合するようなものを何なのかということを議論しながらプロットしていくのが重要ではないかというような議論になりました。

そこで仮置きしたツリーを見た上で、KPIについても選定をしていくところまで話を進めているところです。

ここから先については現時点では仮説でございまして、能美市様に次回のミーティングに向けて作業を進めていただくようにお願いをしているところでございます。今後どのようにロジックツリーができていくのかというところについては、まだまだこれから進化していくべきところかと考えております。

今日、このように説明しておりますが、実際にこの場に参加していただいた能美市様からご発言いただけるようにお願いしておりますので、実際作業してみての感想であるとか、今現時点で感じておられるところを能美市様からぜひご発表いただければと思います。

嶋崎課長入ってらっしゃいますか。

能美市: はい、お願いします。

先日もありがとうございました。長時間、いろいろと勉強になりました。

その中で、ロジックツリーというものはストーリーを語るためのツールということであり、今ほど鈴木さんが言われた単なる分類するわけではないと、分類学ではないという話もありました。

言いたいことを述べやすくするための道具であるということもありましたし、これを作成するプロセス、第4水準であったり、第3水準であったりを行ったり来たりするというところが大事なんじゃないかというところがあったと思います。

大変有効なツールであるということは理解できたのですが、実際、今部署内でいろいろ話し合いを行っているところでもあるのですが、正直、ちょっとまだ自分たちの中でどういうふうに進めていくというところが落としこめていないという状態です。

ただ、今後デジ田の事業だけでなく市の施策を進めていく中で、必要な考え方であるとことは理解できましたので、今後、この課内での体制づくりを含め、今議論しているところであります。

井上先生からいただいた資料をもとに今後共通認識を深めて、先生の方にまた資料をお出しできるように作業を進めているところであります。

今週中には何かできないかなという想いで進めているところでありますけれど、ちょっとまたお力添えいただきながら進めていこうと思います。
以上となります。

鈴木(デジタル庁): はい、ありがとうございます。

デジ庁パートは一旦ここで終了させていただいて、井上先生の資料の方、井上先生からお話いただいてもよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします

井上委員: わかりました。資料共有します。

(資料4 表紙)先日、能美市さんにお伺いして、お話をしてきたのですけども、当初はどういうステップで作成いただくかというワークショップの形を一定頭に置きながら持っていったところなのですけれど、それ以前の、最初の握りの部分で、この主旨だとか或いはどこまでやるのかとか、この辺りの体制の部分も含めていろいろとブレストさせていただいたと。そこに多くの時間を割いたというのが先ほど鈴木さんからお話あったところだと思います。

(p.2)当初はこの4回ぐらいの会合数で仕上げていけるのではないかという想定で設計をしまして、今回がワークショップの1という認識で行ったのですけれど、実際はここの部分で今後の進め方を含めて議論をしたということになります。

でも、ここの部分をおざなりにして進めてしまうと本当に形だけのものになってしまうと思いますので、この方向性の確認とか趣旨・体制あたりを十分ブレストしていただくというのが、まずは大事な試みなのかなというのを再確認したというのが今
回でした。

(p.3)その際に、プロジェクト体制というものを整えていただくという話をしました。

ここではプロジェクト憲章なんて固い言葉を使っていますけれど、いわゆるプロジェクトの目的であるとか、そこにどういうスケジュールでどういう人がどういう役割で関わっていくのか、この辺りを明確にしておいてくださいという話をしました。
そして、ステークホルダー・このプロジェクトに関係する人たちというのも明確にしてくださいという話をしました。これは別表の方でもお付けしているものです。

何も細かい、いわゆる大規模プロジェクトのプロジェクト憲章とかステークホルダー分析みたいなことをしてくれという話ではなくて、大まかでも結構なのできちんと明確にすべき点は明確にしておくということをお伝えしたところです。

なので、ここには図にはしていませんけれど、ステークホルダーの部分は体制図のようなものでもいいのではないかなと改めて感じた次第です。そこに役割が明確になっていればそれで結構なのかなと思っています。

(p.5)最初にお話したのは、このロジックツリーの位置付けのお話を簡単に振り返りました。

この辺り、後程、村上さんからも説明あるかと思うのですけれど、市民の体験と行政側、これをこれまで作ってきた総合計画とか基本計画、こういったものを捨て去るのではなくて、これを活かす形で整理していただくという話をいたしました。

(p.6)それぞれのこの水準というのがありますけれど、第1水準から第5水準まで、この水準の考え方みたいなところも少しお話をいたしました。ここに第5水準であると「公共サービスの提供」とか、「市民体験の変化」は第4水準です。こういうふうに言葉を入れていますけれど、これはきちんとコンセンサスがとれているものではありません。一定程度こういう整理でもいいのではないかということで能美市さんに対してお見せした資料です。

なので、今後議論をして、ここの言葉というのは変わってくるのだろうというものです。

考え方として、ストーリーでつなぐということが大事だという話をしたときの資料です。

(p.7)実際こういうツリーを作っていただくわけなのですけれど、今回は第2水準のところにも手を入れていこうという話になっているのかと思っています。

実際にワークショップの中では、第5水準を整理してくださいという話をしました。第5水準を出してみて、第4水準を自分たちなりに第3水準とつなぐような形で作ってみると。一旦、今動いている施策、これを出し切った形でつなげてみるという話をいたしました。

なので、第5水準から上に上っていくというプロセスです。

その次のステップとして、ワークショップの第2会合目、ないしは3会合目になると思うのですが、今度は第1水準から下に落ちていって、整合的であるのか、或いは他にも増やすべきところはないのかとか、統合すべきところはないのか、こういったところを見直していただく。下から上っていったものを今度は上から下りていく。

こんなことを繰り返しながら、行ったり来たりして、形にしていかれると良いのではないかという話を想定しております。

(p.14)事前にやっていただいた部分、繰り返しになりますけれど、能美市にはこういった総合計画とか事業が整理されていましたから、その中で今回のテーマに沿いそうな部分というのを絞ってきておいてくださいという相談・お願いをいたしました。

当初は漠然とした形で一定程度絞れるだけ絞ってみてくださいという話をしたのですけれど、その時点では150ぐらいですかね。それをもう一段掘り下げて絞っていただいたのが、先ほどの60件程度という形になっていました。

なかなか全部1件1件その場のワークショップで内容を確認していくのは難しいものですので、一定程度絞った状態のものを事前に準備しといていただけると作業が進めやすいかなと思った次第です。

(p.15)その際にはこのようなエクセルシートを今後お渡ししていこうと思っています。

今回能美市様には前回お渡ししたのですけれど、事前課題という形ではなくてワークショップの中でこれを開示させていただいて、次回までに少し整理しておいてくださいという話をお願いしたところです。

少々細かいかと思っているのですけれど、a)のところに今動いている事業、そして位置付け。そしてc)のところで、それはどういうものなのかという概要。そして、それのサービスの受益者。ここまでは一定程度、整理がつくのではないかなと思います。

ただ、e)のところ、受益者の課題とかその実現に対してもたらされる価値・バリュー。ここの部分まで詳細に書こうとすると結構手間暇がかかるだろうなというところが前回お話をしたところです。

なので、e)とf)については、よほど絞ったところで整理していくのがいいのかというのは、今後能美市さんとも作業していただいて、そこでの作業負荷と相談しながら検討していきたいなと思っているところです。

一旦、私から、今回ワークショップでやろうとしていることの、第1会合の部分、お話をいたしました。

前野座長: はい。ではここから質疑応答に入ります。皆さまいかがでしょうか。

太田委員: 太田です。ご説明ありがとうございます。

ご説明を聞いて、結構柔軟性があるということが理解できました。今のご説明だと第2第3水準も変えてよいとのことだったのですが、資料をみただけで、それがちゃんと伝わるようにしていただきたいと思います。またロジックツリーを一旦作ったとしても、1年、早ければ半年とかで見直し・改善をするケースが多いと思います。1回作ってロジックツリーを金科玉条のように3年とか5年守るというものではないということが伝わったほうがよいと思います。

もう一つ、井上さんの説明でもいいなと思ったのは、第5水準の事業の部分に結構フォーカスして、この事業が目指すべきゴールに向けてどのようなインパクトを与えているのか、そのエビデンスを取っていこうという考え方をされている点です。やはり、やる気がある事業とかやる気がある課にフォーカスした方が変化が出てくると思います。もちろん横断的網羅的なものを1回みんなで作るということも大事ですが、避けたいのはロジックツリーを作る作業に1年近くかってしまって、出来上がったときには作った担当者が異動している。そうすると、新しく異動してきた人はよくわからないということで動きが止まってしまうと残念なことになってしまいます。

変化ができててその行動変容とか社会の変化というものを第2第3水準辺りで見えるようにしていただくのがいいかなと思います。その意味ではアウトカムについても3年後とか5年後にわかるようなものだけでなく、すぐに変化が現れるような初期的なアウトカムも見ていけるようになるといいなと思います。そうすれば、いわゆるEBPMにも繋がって、フィードバックが早くかかるので、そういった運用イメージが湧くように資料の表現を工夫したり、研修に実施したりしていただくといいんじゃないかなと思いました。

井上委員: ありがとうございます。

今回、能美市さんとは、8月までに形をつくり、8月の末とか9月の頭には、市長さんにもレビューしていきましょうという話をしました。また、1回作っておしまい、ではなく、年度の途中で更新していくというコンセプトでやっていきましょうという話をさせてもらってましたので、そこは、太田さんのおっしゃる通りだと思っています。

柔軟性を持たせるという点も、今回の能美市さんにはプロトタイピング的に関わっていただいていますけれども、すべての自治体さんに、我々が個別に関わるというわけにはいかないですから、そこはおつき合いのあるコンサルさんですとか、いろんなところに伴走してもらう必要が出てくると思っています。なので、その方々にも扱いやすいような自由度というか、柔軟性を持たせる形で、進められればいいのではないかなと思ってはおります。

関委員: まず感想としては、このロジックツリーは、非営利団体とかでもよく作るもので、Code for Japanでも結構やっているのですが、非営利団体が作るときは、まずはビジョンから入って、そこから掘り下げていくみたいなやり方をするのですが、自治体の場合は個々の事業があって、そこからボトムアップで作るということで、順番が違ってて面白いなと思って聞いてました。自治体の場合には、そうならざるをえないし、その方がやりやすいんだろうなということで納得しました。作るにあたっては部局横断的に集まって議論しなければならないのですが、そういう議論を行うこと自体に意味があるのだと思います。

この取り組みを広げていくときに、コンサルに丸投げするみたいな行為が出てきそうだなというのが、すごい感じたところです。正直結構作るのが大変だと思います。みなさん忙しい中、何のためにやるのかといったところが腹落ちしないと、多分そうやってみんな時間作ってやること自体が相当難しいし、それを仕切る職員の腕が相当求められるといったところがあるので、よくある総合計画丸投げみたいにならないようにしないといけない。議論することそのものが大事なのに、そこが外注されてしまうみたいな危険性があると思います。

ロジックツリーは、伴走して作るものであって、作ってもらうものではないとか、これを作ることが、行政経営の中でとても重要なものである、ということを明確にしておかないと、すぐに形骸化してしまうリスクを感じました。またロジックツリーを作るために集めてくる資料やKPI、さらには作業を行う時期についても、予算の作成や事業の評価など既存の枠組みのなかに上手くアドオンすることで、これのためにだけにやる作業みたいなものが減っていくので、より現実的になっていくのかなと思いました。

井上委員: 能美市さんについて申し上げると、当初は、ワークショップのときに作業していただくというつもりでお伺いしたんですけれども、まず自分たちで話し合ってやってみます、と引き取っていただいたので、そこの部分のやる気についてはとても心強く感じています。ただ、進め方のところで迷ったりされることもあると思うので、そういう時には、ご相談くださいと申し上げています。あくまで作成主体は能美市さんという形で作業を進めております。

広井委員: 私も、政策提言AIというもので似たようなことやったことがあり、また苦労もしてきたので、それも踏まえてのご質問ですが、これはいわゆる社会的インパクト評価で使うロジックモデルと違いあるのかという点を確認させてください。

2点目は、因果関係の矢印について、これは矢印で終わるのか、それとも定量的な評価(因果関係の強さや弱さ)やタイムラグについての評価まで行うつもりなのか、また、行政職員だけで作るのか、あるいは、住民も参加するとか或いは有識者、専門家の知見も借りて作成するのか、いろいろ考えるときりがないとは思うのですが、そのあたりをどのように考えておられるかお伺いできればと思います。

村上統括官: この辺で、スライドの13を見ながら今の広井先生のご質問も含めて説明させていただきます。

一点目については、ご指摘のとおりです。本プロジェクトは、社会的インパクトを計測するロジックモデルを、更に各KPIと照合させながらロジックツリーにしていく取組であります。まずは、ウェルビーイング指標で分析を行い、課題の残る政策分野を抽出できたら、次の段階として、この課題に関わる取組を、ロジックツリーの形で整理する。そのプロセスで改めて、本当に必要な取組が何なのかを、市役所職員、住民が同じ目線でブレストし、議論していったら良いのではないかと思います。

紙の方をご覧ください。作業を行う上で留意して欲しい点として、第一に、分類学に陥らないようお願いしています。一般論なので例外はあろうかと思いますが、役所の事業は組織の数だけできてしまって、多分課があると課長の数だけ、係があると係の数だけ事業ができる傾向があります。それぞれの担当が自分の所掌のできる範囲内でできることを提案する。それを財政課のような調整部局が市役所全体の予算枠の中にはめ込み、例えば八割方カットオフして何とか治め、議会に持ち込む。これが多くの自治体で見られる「政策企画」の標準的なありようではないかと思います。

よくある総合計画の類はこの枠の中を綺麗に整理する分類学であり、このロジックツリーが目指すところとは少し違います。人口も需要も伸びており、税収も伸びている時代は、公平な分配を行うことが重要な取組でした。このため、フェアな分類学にも意味がありましたが、人口も減り、税収も減るなか、今必要なのは、資源や注力する取組の選択と集中です。どの分野に選択と集中を行っていくことが住民のウェルビーイング向上につながるのか。知りたいのはそこです。だから、新たな分類学をつくるためにロジックツリーを綺麗に書きますということでは意味がない。大切なことは、「公平な分配」ではなく「選択と集中」に行政の頭を切り替えていくことです。そのためにウェルビーイング指標を頼りにしながら、今解決すべき課題は何なのかということを、部局を超えて行政内部でも徹底的に振り返る機会にしましょう、というのが、強力にお伝えしてきたメッセージです。

具体的な作業の仕方ですが、とりあえず第1、第2、第3水準については、一旦はトップダウンで、国が示したリファレンスをそのまま使ってください、とお願いします。おそらく、最初から全部を自由に作るようにお願いすると、何から手をつけて良いかわからないという事態に陥る恐れがあるからです。実際、関さんがおっしゃられたとおり、また民間では普通にそうであるように、この作業は、トップダウンで入らないと意味がありません。リファレンスモデルにある第1から第3水準のセットを見て、その上で、第4、5水準のところに、今市役所がやっている取組のうち、そこにフィットしそうな重要なものをはめてみてください。

ただし、それではめ込んで終わりでは意味がありません。第4、第5水準をはめてみた後、振り返ってみると、うちの街にとってはこの事業が大事だったはずなのに何かこの第3水準が変だよね、という話に発展してきたら、国が提供したリファレンスにある第1から3水準自体も変えてしまっても構わない。そうお伝えしています。このように第2、第3水準と第4、第5水準を行ったり来たりしてるうちに、だんだんと関係者の相互の理解が深まり、選択と集中すべき事項が何かが見えてくると思っています。

ロジックツリーには正解はありません。ロジックツリーの正解を探し出す作業なのではなく、ロジックツリーを議論するプロセス自体に意味があると思っています。この作業プロセスの中で、是非、市役所の方には、入庁したときの、純粋に市政に役に立ちたいという思いを思い出していただき、大事な取組を見つけ出していただければありがたいと思っています。

僕は個人的に、「芯を喰った各論を探す」ことをお勧めしています。解決すべき課題を突き詰めて考えると、実はこの取組が全ての取組の基点や突破口になる、そういう具体的な取組がある。様々な課題や取組とにらめっこしながら、試行錯誤している中で、実は、これが本当に一番大事な鍵となる取組なのではないか、なんだこれをやればいいんだ、という突破口のような取組を見つけることができる。そういう話です。

例えば、地域包括ケアを進めつつ、エリアの健康増進、未病対策を進めようと色々議論していたら、要はデジタル公民館を立ち上げ、そこに生活機能を集約する動線を作ることにつきるのではないかと言う話に、徐々になっていった、なんていうケースも考えられます。というのも、デジタル公民館にある賑わいの場のイベント等に参加しようと、高齢者が一生懸命外出することが、結果的に、在宅死亡率の向上に繋がり、それが一番医療費の削減に対してインパクトを持つ、といった隠れた因果関係があるからです。

ただ、そうなってくると、実は社会福祉部とは全然関係がない交通担当部署が日曜日運休しているコミュニティバスを再開してくれることが、デジタル公民館で行うイベントへの出席率を高め、結果的に医療費削減に対して一番わかりやすく効果が出る取組となる、みたいな関係性が見えてきます。なんだ、コミュニティバスってこんなに大事だったんだという評価になる。こんな風に、鍵だと思っている取組と本当の社会的インパクトのつながりを明らかに出来たら良いなと思っています。

今先行して作業を進めてもらっている能美市の場合、1500くらいの事業の中から、まずは60くらい関係しそうな事業を選んでもらって、それらのうちどの取組が、リファレンスロジックツリーが仮に定義した第2、第3水準のロジックにフィットするかどうかを再検証してもらっています。その結果、そこにはまりそうな第4、第5水準の取組や指標が明らかにしていくと、次に、もとい戻って、リファレンスツリーが定義している第2、第3水準との間の関係性が本当にこれでいいのかという議論になる。この往復活動を繰り返すと、だんだんと、部局を超えて大事な取組が何なのか、それが相互にどう繋がっているのが見えてくる。

ついては、この往復作業を実際にやってみてくれないかという作業をお願いして帰ってきたのが、前回の能美市の会議です。
来月また能美市に行ってまいりますが、社会的インパクトに対して本当に関連性の深い取組は、それが役所の事業ではなく市民主導の取組であっても、このロジックツリーの中に入れても良いと思います。ただ、最初からそれも入れると言うと、むしろ役所の方が、市民活動の方を洗い出し直してパンクしてしまうので、とりあえず市役所の予算事業の中からピックアップして、第2、第3と第4、第5の間を行ったり来たりしながら、ロジックツリーに書くべきものをだんだんと絞り込んでいきましょうと言っています。このことに途中で気づいた人がいれば、別に市役所が金を出していない事業であっても、市民が独自にやっている取組を含めても構わないと思います。

次に、その議論のプロセスが大事になります。ロジックツリーは、市長部局とか知事部局とかが頑張れば何とか書けてしまうかもしれませんが、その結果、部局を超えて浮き彫りにした因果関係を踏まえて、医療の話に直接関係のない交通担当部署を引きずり込もうとしても、現場や担当の巻き込みは、そう簡単にはいきません。

ウェルビーイング指標等から導き出される解決すべき課題と、今ある市政の重点政策の間を行ったり来たりしながら突き詰めると、今解決すべき課題、及び関係の深い施策群の間の因果関係があぶり出され、「芯を喰った各論」が見えてくる。そのプロセスを、それぞれの担当部局を巻き込んだ形で再現する必要があります。

まちづくりは行政の施策と市民の取組の掛け算が起きるところから動き出します。公民館だけ作っても、その中で活動する市民がいなければ意味がありませんし、市民が活動しようと思っても、その場なければ動き出せません。例えば、デジタル公民館を核にした高齢者が生き生きと元気に最後まで楽しくやってくれる活動があって、その副次効果として医療費も下げてくれるような地域コミュニティを、地域の生活の中にどれくらい浸透させていくことができるか。そういう取組のハブとしてのデジタル公民館が見えてくる。ソーシャルインパクトに対して確実に因果関係があるパーツを取り上げて、ロジックツリーにすると、こういう取組の形が見えてくるのではないか。

それを、ロジックツリーの各第1から5水準の中で整理していくとともに、各水準の中で必要なKPIを設定し、そのインパクトをロジックでつないだロジックツリーに落とし込んでいただければ、全体としての施策価値が見えてくる。

またその際には、KPIを計測する手段があるかどうかも重要です。現在、デジタル庁の方でツールを作っていますが、健康増進教室に参加したときの出欠管理、健康料理教室どおりの料理の写真をポストなど、一つ一つの取組の出欠、参加率の計測ツールを整えていきます。ですので、それも活用しながら、部局横断的に関係者を巻き込んで、ロジックツリーが体系化した施策の効果をリアルタイムで計測しつつ、より効果の高い施策実施体制を考えていただきたい。

縦割り行政のなかで、どうやって動かない部局を巻き込んでいくという話になると、そこでだんだんと、カギとなる取組ばかりでなく、何を取り上げても共通に出てくるデジタルツールだとか、モビリティの整備の必要性などもだんだんと見えてきています。また、それをリアルタイムで計測することによって、外部からの支援だけでなく、内部の他部局や現場のモチベーションを少しずつグリップするための重要な手段にもなるでしょう。また、関係施策やその効果をロジックツリーでつなぎ、最終的にKPIの体系を整えていければ、結果的に、外部の民間企業や投資家からのソーシャルインパクトファイナンスとの接合もしやすくなるのではないか。こんな仮説で今議論しているところです。

小泉委員: 今の説明でさらに理解が深まったところなのですが、古賀さんがチャットでも書いてありましたが、私も同じことを思ったのですが、今回の資料の中で会津若松の主観的な指標と客観的な指標の比較みたいながありましたよね。

あのレーダーチャートを見ると、両者のギャップがある因子や両方が低い因子がわかるので、これを頼りにしながら重要な政策領域をまず一つとか二つ選んでみる、そういう流れだと理解していいのでしょうか。

もう1点、我々も含めて少し頑張らなければいけないところは、今村上さんが言われたように、例えば、外出行動は健康に結びつくみたいなエビデンスがあると高齢者の医療や介護施策のロジックツリーを作る際にもより具体的かつ作りやすくなるということかと思います。

政策領域によってはそのあたりの因果関係がまだブラックボックスになっているケースもあるので、そのあたりを詰めていくことが重要なポイントになりそうだと思いました。

村上統括官: 1点目の質問ですが、そのとおりです。ロジックツリーにすると、たぶん、第2水準あたりにウェルビーイング指標の分析を見て、重要な政策課題・領域を入れていただくのが理想かなと思っています。場合によっては、一部第3水準に混ざるケースもあるのかもしれません。

そういう形でウェルビーイング指標から、あるいはウェルビーイング指標を通じて、できれば市民とも対話を進めていくなかで第2水準、第3水準にいれるべき「実現すべき価値」は何かという議論が行われるように、うまくファシリテートできればいいなと思っています。

2点目は、今日は紹介していませんが、実はこのリファレンスロジックツリーの第1から第3水準の各項目のそれぞれに、KPIとしてこれが使えるのではないかというリストを用意してあります。そのうちの3分の2くらいはウェルビーイング指標で採用されている客観指標と、それから主観指標でもこの質問の答えがこの項目のKPIの候補になるんじゃないかということで、整理しています。最終的にロジックツリーのどの部分にどのKPIを選択するのかは、各自治体の皆さんに選んでいただければいいのかなと思います。

先行する自治体の取組のなかで、足りないKPIが欲しいとか、KPIの計測方法がわからないとかいった相談も受け、補ったり作ったりしていきながら進めていこうかと思っています。井上先生から補足があればお願いします。

井上委員: ウェルビーイング指標の分析から、我々の町としてここに注力したいというものがあり、それが交付金申請に繋がっているというのが望ましい形だと思っています。

ただ今回はそこまで分析した上での交付金の申請ではないと思うので、今村上さんがおっしゃっていただいたプロセスで進めていけばいいのかなと思っています。

あとKPIは、リファレンスロジックツリーのところでセットでご提示はするのですが、完璧なリファレンスにはなっていないので、改めて言い訳というか補足をすると、ご自身たちでお持ちの指標でより適したものがあれば、それを使っていただくという柔軟性を持たせているつもりです。

南雲委員: 南雲ですがよろしいですか。1回止まりませんか。これはかなり誤解を招くというか、混乱を招いてると僕は思います。

すでにウェルビーイング指標の主観と客観の指標から、クリティカル トゥ ウェルビーイングの領域がどこなのか、スポットライトを当てるプロセスをOASIS研修という形で進めてきており、前々回の有識者会議でも説明しております。それと違うものを同じ自治体にお願いするというやり方については、私は反対です。すでに有識者会議に諮って進めているのに、それとは違うやり方をここで議論するということに違和感を覚えます。また、もともとはロジックツリーを作るというところだけだったのが、その先の方法論にまで拡張するのであれば、全体整合を考えるべきではないでしょうか。

まずウェルビーイング指標から始まってトップダウンで、どの領域にスポットライトを当てるべきなのかという、比較的ミッションとかパーパスに近いところから来る部分と、逆に第5水準から来る、プロセスエンジニアリングに近い、非常に細かい部分と、これを全部くっつけてやれといっても、おそらく自治体の方々だけでは対応できず、外部業者に丸投げになることが見えてると思います。なので、そこはもっと慎重に考えるべきで、この一事例をもって、これでいけるというように語るのは危険だと思います。

村上統括官: 南雲先生、また後で話しましょう。よくすり合わせたいと思います。

前野座長: どっち側から攻めるかという話は非常に重要なことだと思います。僕がやっている働き方改革とか企業の製品開発も同じことをやっていますが、非常に難しくて。ですから今の議論の白熱はその通りだと思います。

南雲委員: 鈴木先生にご相談ですが、今回完璧ではないですが、GDWの数字を作ってみて、今後どうしようかと考えているのですが、地域幸福度指標のなかでそれを作ることをやるべきかどうか、ご意見をいただければと思っているのですが、いかがでしょうか。

鈴木寛委員: いやまず非常に興味深いというか、いい感じのものができているなと思います。今日は、僕が最初出られなかったこともあって、ちゃんと理解できていないところもあるので、詳しい資料を拝見したうえで、南雲さんとご相談したいと思います。

南雲委員: はい。わかりました。1回打ち合わせをセットさせていただきます。

前野座長: 前半から本当にいい議論が続いていて最後は緊迫したように見えるかもしれませんが、でも真っ当なことですね。トップの理念からやる方も大事だし、政策の方とつなげたいという考え方もわかるし、それが白熱するというのは本当に大事なことが起きていると思います。村上さんの熱い思いと、南雲さんがこれまで尽力されてきたこと、井上も頑張っていますし、本当に皆さんのご意見も非常に重要な話が続いていて、本当に時間が足りないですね。

前回も思ったのですが、前半で思ったのはこのメンバーみんなで論文書きたいなと。後半は本当にこのメンバーでちゃんと話し合って語りまくって合意するとこまでやる、これをやらなきゃいけない。本当に大切で、本当に難しいことを目指してるわけですから、でもこれをやらないと日本の地方はよくならないし、ウェルビーイングの世界はつくれないんですよね。本当に今日の議論は素晴らしい議論だったと思っております。

私も座長なのであまり喋ってないのですが、皆さんがそれぞれの立場で本当に心を込めてやられてることに感謝していますし、これからも是非大議論をしながら、日本を良くしていければと心から思っています。皆さんありがとうございました。

鈴木(デジタル庁): 皆様、本日は大変貴重なご意見をいただきましてありがとうございます。

引き続き、先生方ともご相談をさせていただきながら取組を進めて参りたいと思います。この会については、次回は9月頃をめどに開催を予定しております。

本日はお忙しいところご参加いただきまして誠にありがとうございました。これにて終了したいと思います。本日はありがとうございました。

以上