デジタル交通社会のありかたに関する研究会(第1回)
概要
日時:令和4年4月13日(水) 10時から12時まで
場所:オンライン開催
議事次第:
- 開会
- 本研究会の進め方について
- ご発表、討議
「住民起点の道路“資産活用”-デジタルとリアルの融合-」国際経済研究所 宮代様
「茨城県境町におけるNAVYA ARMAを活用したまちづくりについて」 茨城県境町町長 橋本様 - 閉会
会議動画
会議の様子はYouTube(デジタル庁公式チャンネル)にて公開しています。
資料
関連政策
議事録
瀧島参事官: 皆様、お集まりいただいて恐縮です。朝方からありがとうございます。
私、デジタル庁でモビリティ担当の参事官をしております瀧島と申します。よろしくお願いします。
Teamsのチャットでいろいろと書き込みもできたりしますので、議事進行上不明な点があればチャットでも書き込んでいただければと思いますし、皆様に御発表いただいている中で気になる点とか面白いなと思う点があれば、遠慮なく書き込みをしていただければと思いますので、よろしくお願いします。
最初に、統括官の村上から挨拶をさせていただければと思います。村上さん、よろしくお願いします。
村上統括官: 村上でございます。
始めての方も、お久しぶりの方も、超お久しぶりの方も、御参集いただいてありがとうございます。
2つ、僕からお願いしたいことがあります。
今回の研究会では、出口は官民ITS構想・ロードマップというものなのですが、ぜひ、社会システムから逆算したロードマップにしたいと思っていますので、空間や生活をこのように高付加価値化したいという打ち込みを皆さんにこの場でどんどんお願いできればと思っています。
官民ITS構想・ロードマップとして、どちらかというと技術のサプライサイドからどういうふうに技術を進展させていくかとか、制度をどう変えていくかとか、それももちろんとても大事なことですが、それはある程度、歴史と積み上げがありまして、IT室の時代からの積み上げをデジタル庁としてちゃんと引き継ぎまして、それはベースとして、ちゃんと官民ITS構想・ロードマップとして各省の意見を伺いながら仕上げていくつもりなのですが、せっかく今回、デジタル庁として引き取りましたので、どちらかというとサプライサイドの工程表をきれいに書いているという感の強かった官民ITS構想・ロードマップに対して、需要サイドや社会システムサイドからのリクワイアメントをどれだけ乗せられるかということにチャレンジしたいと思っています。
そういう意味で、今回、名前も「交通社会のありかた」にさせていただきましたし、出口が官民ITS構想・ロードマップであるとしても、そのロードマップにも多分に需要や社会システムや空間の高付加価値化というサイドから出てくる実需の議論をうまく溶け込ませていきたいと思っていますので、その辺の強いインプットを期待しているというのが1点目でございます。
1点目は、半分僕のこだわりというか、デジタル田園都市のほうでしている議論とも関わるのですが、共助のビジネスモデルの姿を上手に探していきたいと思ってございまして、これはこの研究会のメインの主題とする必要はありませんが、皆さんの頭の片隅に置いていただければということでございます。
言葉を選ばず言えば、人口が7~8万の都市で、バス会社が2つあって、タクシー会社が2つあって、それぞれがばらばらに自動走行車両に投資をする未来というのは、全員が赤字しか待っていないので、そもそも理想を言わなくてもあり得ないと。加えて言えば、業界の方にははっきり申し上げているのですけれども、タクシーは苦しいのだよねと。会社が倒れそうだと。けれども、家族経営だし、うちは夜6時以降、車は出しませんからみたいなことが起きていて、片方でドライバーズライセンスを返してしまって、移動する手段がないと困っている人は物すごくたくさんいるので、需要は明らかにあるのに供給側が倒産しそうだという話になっているということは、明らかにサービスの提供の仕方が悪い。
でも、そのために必要なシステムや技術やデジタルのベースに対して、恐らく今の事業体のバランスシートのままでは、チャレンジをしても誰もリターンが取れないとすると、提供の組替え方を変えるしかないということだと思うのです。それが端的に言えば、デジタルの基盤的な部分については、みんなが協調領域として共同で投資をして、そのベースの上にそれぞれが差別化されたサービスを展開するということ、前から言われている話ですけれども、いよいよそれを実践に移す時期がやってきたという意味では、どこまでを協調領域として切り出すのか、切り出した協調領域を一体誰が幾ら出し合って、どう支え合うのかということを、理屈だけではなくて具体的に話し合わなければいけない時期にやってきたのではないかと思います。
皆さんが考えていることは8割方一緒だけれども、そこの出口が見えないから簡単にうんとは言えないのだよねという空気感が盛り上がってきていると思いますので、それをきれいに共助のビジネスモデルということで、協調領域で切り出したところをサーキュラーと呼んでもいいし、シェアードエコノミーと呼んでもいいし、呼び方はいかような形でもいいのですが、そろそろ切り出して実践に移すべき時期であると思っておりますので、そんな視点も混ぜながら、需要サイドから、社会システム側から、空間の高付加価値側からということで議論を落とし込んでいただけると、サプライサイド中心に丁寧に積み上げてきた工程表としてのロードマップがさらに迫力のあるものになるのではないかということで、あとは瀧島君、よろしくと言ってありますので、ぜひ、やっていて楽しい議論になるようにというお願いも込めて、数回、お付き合いいただければと思います。
私からは以上です。どうもありがとうございました。
瀧島参事官: 村上統括官、ありがとうございます。
それでは、ここからの議事は石田先生にお願いしたいと思います。
石田先生、どうぞよろしくお願いいたします。
石田座長: 座長を務めさせていただくことになりました筑波大学の石田でございます。
最初ですので、今の村上統括官の挨拶に全て含まれているとは思うのですけれども、自分なりの考えもちょっとだけ申し上げたいと思います。
官民ITS構想・ロードマップをどういう形で引き継いでやっていくかということで、物すごく広がったわけです。ある意味、自動車と道路の世界からデジタル交通社会に広がりましたので、そこではいろいろなモビリティ資源とか、あるいは制度とか、パブリックアクセプタンスとか、まちづくり、生活の仕方、暮らし方というところを包含する必要があろうかと思います。そういうことを含めてロードマップ的なことをつくっていくのは本当に大変難しいことだと思いますけれども、やりがいのある非常に大きな仕事だと思っております。そういう意味で、できることは限られておりますけれども、皆さんと一緒に頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
そのときに、ビジョンをどう共有化するかということは大事なのですけれども、そこのことを称して着眼大局と言っているのですが、それだけであればほら吹きになりますので、非常に大事なことで、ビジョンの中で位置づけた上で、できることを小さいことからしっかりやっていく。ですから、着眼大局と着手小局というのは極めて重要だと思っておりまして、そういう意味で、皆さんから現場現場のプレゼンをいただいて、それをどうまとめていくかということだと思っておりまして、まとめ方や粗筋に関しましても、それとともに、細かい小さなすぐ現場の実践につながるような話も大歓迎でございますので、よろしくお願い申し上げまして、簡単ではございますけれども挨拶とさせていただきます。
ここから議事に入らせていただきまして、本日の進め方でございますけれども、今日は議事次第に沿って進めたいと思っておりますが、研究会の進め方について、まず事務方からお願いできますでしょうか。
瀧島参事官: ありがとうございます。
まず、全体、こんなふうに議論を進めていきたいなという前提として、簡単なスライドを幾つか用意しておりますので、御紹介させていただきたいと思います。
本当にイントロ的な話ですけれども、暮らし目線でいろいろなことを考えていくというときに、最初に村上からもお話を申し上げましたけれども、一人一人の暮らしの中で不便さはいろいろあるのではないか。いろいろなペルソナを考えていくと、スーパーへ行くときにどうするのかという方、免許を返納することになっているのだけれども、その後どうやって動いていったらいいのだろうか、満員電車でストレスなく移動するにはどうしたらいいのか、交通量はないのにここの道路がいつも赤になってしまうみたいなこともありますし、通学路を車がすごく走っていて、自転車とベビーカーと車椅子がぐちゃぐちゃになっていて怖いなとか、いろいろなことがあると思うのです。
デジタルになっていくと移動が便利になっていくということも当然、私が生まれたのは1978年で、物心がついたのはバブル以降ですけれども、すごく便利になっているなというところもあって、スマホで経路検索できて、どこかに出かけるときでもすぐに着くようになったなとか、券売機に並ぶことなく自動改札で乗降できるようになったし、駅の中の場所で何か物を買ってということもすぐにできるようになりましたし、そういう意味で便利になり、あとは安全運転機能みたいなものも徐々に普及していて、私の親もちょうど70歳を超えて、こういうことを考えるような世代になってきていまして、そういう意味でも安心になっているなとか、そういう便利なこともいろいろできているということだと思っています。
その上で、では、我々の今回の議論の中では、もっと便利になっていくとかということを皆様と一緒に考えていけないかと。便利になるというのはいろいろな言い方があって、便利と言うのがいいかどうかあれですけれども、いろいろな人が自分らしく暮らしていく中で、デジタルの技術を享受して暮らしをしていけるというようなことでありますし、当然、そのときは暮らし目線、生活目線で、モビリティの一番の基礎は歩くというところだと思いますので、そういうところから、最後は飛ぶというところまでで、飛ぶときには人が飛ぶだけではなくて、物が飛んでくることも当然あるわけで、ビジョンとしてはそこまで全体としてスコープには入れたいなと考えています。
これは最初に村上から申し上げたとおりでございますけれども、暮らし目線でバックキャストして考えるということでございまして、何よりも社会全体、サービス目線、カスタマー目線で考えていく。役所の議論だと、どうしても役所が何をするかというところで終わってしまいますので、G to B、G to Cというだけではなくて、G to B to Cということが成り立っていくように、最初の村上の言葉で言えばビジネスモデルが成り立つようにするにはGが何をしていくといいのかというところまで含めて議論ができればと。
いろいろないい形での実証があちこちで起きていますので、それが実証から実装して、実現して、広がっていくにはどうしたらいいのかという視点で、今日もすてきなプレゼンテーションを2件お願いしておりますけれども、そうしたことを共有していきたいと思っています。
我々事務局としては、机上の作業とか作文を作るというよりも、できるだけ皆様と一緒に共通の体験をして、現場を知るということで、今回お話しいただいている、もしくは参加いただいている皆様、どこかの接点で我々と今までにお話をさせていただいて、ぜひと思ってお越しいただいている皆様ばかりでございますけれども、現場を知りながら、もしくは現場を皆様と共有しながら、一緒に価値をつくって、横串を通していきたいというふうに思いますし、ふわふわとした話だけではなくて、拡張性があるような形で現実的な実装に取り組んでいきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
皆さんオンラインですので、以下、参考資料で適宜見ていただくと、我々がイメージしているビジョン的なものを今までも既にいろいろな方がつくられていますので、参考までにつけさせていただいております。
事務局からは以上でございます。
石田座長: ありがとうございました。
お二人から御発表いただきますけれども、御発表を受けて議論していただく形式を取りたいと思っております。
すごく議論が盛り上がることを期待しますし、予想しておりまして、いきなりで申し訳ないのですけれども、若干時間超過もありということで、本当はあってはならないのですけれども、お昼御飯をささっと食べていただくということで、盛り上がってしまって延長する可能性もあるということをあらかじめお含みおきいただけるとありがたいと思います。そうならないように私も頑張りますし、皆さんもぜひ御協力をお願いします。
参加者の皆さんは、Teamsとかチャットで、それから瀧島さんからございましたけれども、発表中でも構いませんので、御意見を好きなタイミングで御投稿ください。よろしくお願いいたします。
それでは、最初のプレゼンテーションは、国際経済研究所の宮代様より御発表をお願いしたいと思います。
宮代構成員: ありがとうございます。国際経済研究所の宮代と申します。
分野としましては、モビリティあるいはスマートシティがメインの取組をしていますが、今日お話しするのは欧米の動向ということで、皮切りで、日本ではないところで何が起きているか、その底流に何があるのかみたいなことについて、自分なりの解釈を御紹介したいと思っております。それでは、お付き合いいただければと思います。
今回取り上げるのは道路なのですけれども、道路が固定的なインフラから「場」に変わってきたということもあって、その動向と狙いを御紹介していきたいと思います。
まずは道路のRe-designということで、よく人間中心と言われるものが実際どうなのか、それから、それがどのような狙い、あるいは根っこの考えを持っているのかというのを御紹介します。
代表例として、まずアメリカで起こりました「Tactical Urbanism」という動きがございます。ニューヨークのタイムズスクエアを5年かけて改装したということなのですけれども、車中心の道路から、住民を参加させながら、どんな使い方をするかを徐々に試しながら、評価しながら転換していくということで、タイムズスクエアは5年をかけまして、総工費5500万ドルをかけて、車の道路から完全な歩行者天国に切り換えました。この間、例えば車の交通流を妨げないかとか、人の流れがどうなるかというのはデータ化しながら、可視化しながら評価をして、そういう障害を取り除きながらやってきたというところが一つのアプローチになっています。
もう一つ、今度はヨーロッパの例として、ある意味似たような動きですけれども、スペインで起こりました「Superblocks」、代表例はバルセロナになります。これは道路の空間の一部を例えば通行止めにするとか、写真にあるような遊び場にしてしまう、あるいは緑化をしていくといったようなことやっていますが、重要なのは、道路が交通の場だけではなくて、公共スペースとして使えるかとか、生物多様性や緑化といったキーワードが出てきたり、それからコミュニティーの活性化につなげるといったようなキーワードが出てきたということで、人間中心を住民中心と捉えたときに、住民の活動にどういうふうに道路が関わっていくのかということが幅広く考えられるようになったというのが大きなポイントだと思います。
その流れの中で、ある意味近接する考えとして出てきたのが、パリで代表例として言われている「15分都市」の考え方です。ここでも人の往来だとか建物をどう使うかだけではなくて、右下にありますように、コミュニティー活動スペースも含めて生活圏の中にいかに人が交わっていくかという考え方がかなり色濃く共通して出てきています。これがある種の住民目線、住民中心の考え方のコアになっているような気がします。
フランスで、代表例として、最近の動きとして出てきたのが、シャンゼリゼ大通りを住民の手に取り戻そうという動きです。これは既にこの絵のような形で構想が発表されています。既に着工しているかと思いますけれども、大事なのは次のスライドになります。
僕自身が大事だと思って、発表した資料の中でKPIをリスト化、まとめてみたのですけれども、字が小さくて見づらいのですが、左側がサステーナビリティ、この中にエコシステムがどうなるか、カーボンニュートラルがどうなっていくか。真ん中がディザイアビリティで、あるべき姿を阻害する要因と快適さ向上が軸になります。一番右側がインクルーシブ、誰も取り残さないということで、ここは社会的要素と経済的要素がありまして、シャンゼリゼ大通りを転換するときに、それぞれに、例えば快適さ向上でいけばベンチを何台どこに置くのかとか、経済的要素の中で言うと、レジャー、フリーの中で例えばスポーツ用具の貸し出しだとか、文化活動をどうするかとか、かなり細かい具体的な活動を書いています。
これが何を狙っているかということで、自分なりの解釈なのですけれども、住民の方が本当に使うのか、人通りはどうなるのか、にぎわいはどうなるのかということを、こういうKPI以外に可視化しようとしているのだと。変化を可視化する手段としては絶対にデジタル、データが必要で、通常はいろいろあると思うのですけれども、それの組合せによって、リアルな動きと評価、変化のフォローという形のデジタルの組合せが特に欧米の大都市においてかなり共通した、住民中心といったときの考え方に出てきているような気がします。これが私なりの都市デザイン、Re-designの見方の御紹介です。
さらにこの考え方を進めていっている一つの動きを御紹介したいと思います。ここでの問いかけは、道路は誰のものか。住民のものということを言い出した一つの事例です。
御存じの方も多いと思うのですけれども、スウェーデンで「One Minute City」という言い方で、人間中心、住民中心とは何だろうということを問いかけているプロジェクトがあります。これはある意味、政府肝煎りでやっているのですけれども、都市が加速、拡大から変わってきたよねと。減速の時代になってくると、道路も自動車交通優先から、生物・社会多様性を実際につくり出す場になるのではないかということを基本の理解として、では道路についても多様性を許容していこうということで、道路の目の前に住んでいる住民がどう使いたいかの意向を最優先して取り込んでいこうという、まさに住民参加、住民がお守りをするという考え方を実験的にやっています。
もともとは、左の囲いの中にあるように、2019年に構想提案があって、2020年9月からスタートしていますが、既にスウェーデン内ではかなりの都市に広がっています。
1つのキーポイントは、木の材料をいろいろ提供しているということになります。実際の例が次のスライドにあります。
こういう写真にありますように、例えば家の前の道にベンチがあり、その後ろに自電車ラックや電動キックボードのラックを置くというようなことがあったり、左下は小学校の前なのですが、小学校の生徒たちが道路の前で遊びたい、学校の前で遊びたいと言って、車を止めて、このようにペイントをして遊び場所をつくりました。
実はここで大事なのは、デジタル化、データ化してフォローしているという話は聞いていないのですが、もっと分かりやすいものを使っています。何かというと木なのです。木の椅子だとかは、自分でメンテナンスしないとどんどん劣化していきます。汚くなっていきます。これがきれいに保たれるということが住民のコミットを示すことになります。住民側にも当然言い出しっぺとしての責任が伴うのですが、それを木の素材を使うことによって可視化していこうというのが一つの考えで、比較的デジタルの発想も入っているだろうと個人的には思っていまして、こういう発想は大好きだなと思っています。
少し視点を変えまして、次に、政策面でいろいろ道路の使い方を変えていこうという動きも当然ありまして、その一つの例を御紹介したいと思います。
今回御紹介するのは「Low Speed Zone」という運動になります。同じような発想でやっているのが、例えばアメリカで「Complete Street」という動きがあったり、コロナで「Slow Street」だとか「Healthy Street」といった形で、車の通行を制限して、人の動きを回復しましょうみたいなことをやっていますが、この「Low Speed Zone」が面白いのは、もともとのきっかけが交通事故死者数を減らしましょう、重症者を減らしましょうというところからスタートして、そのときのコンセプトとして、左下の逆ピラミッドなのですけれども、最弱者は歩行者であると。だから、最も大事に考えるべきだと。自転車やキックボードなんかも、歩行者と比べれば強者である。一番の強者は一人乗りの車であるという定義をして、この考え方を守る形で道路を再構成しましょうと。
そのときに、事故を減らすとかだけではなくて、人々の活動が活発化したり、QOLが上がったり、にぎわいが増えれば経済にもいいという効果を狙って新しく再設計していく取組になっています。
「Low Speed Zone」の設定なのですけれども、細かいので簡単に触れますと、対象地区を明確にして、その中の実現目標を決めて、もちろん資金計画までやるのですが、その際に、関係者として行政や住民だけではなくて、学校があれば教育機関なども入ってきます。それから、例えば植栽をするとなれば植栽の事業者、あるいは装飾をするのであれば装飾事業者も参加するという立てつけになっていまして、この辺が日本よりも幅広く自由度の高い考え方をしているということと、右の小さい字の表なのですけれども、どういうゾーンであれば、何キロぐらいのスピードであればいいだろうということが整理されているという点が参考になります。
発想としては、都市の中の実効速度と言われる実際の車両の移動速度というのは、例えば東京でいえば都バスの実効速度は20キロちょっとぐらいになります。そうであれば、20キロゾーンで例えば渋滞がなければそれでいいではないかみたいな発想が入ってきているということになります。
これを実際に今、近い形でコロナの中で実現してきたものが、次のスライドになります。
ブリュッセルは、コロナのロックダウンの後、2020年5月から、ブリュッセルの町なか1キロ四方ぐらいのところで時速20キロ制限を試みた。要はパイロットとしてやりますと言い出しました。ユニークなのは、歩車共存にしています。20キロ制限、歩車共存、歩行者優先、自転車優先と。2020年5月から始まったのですが、もう3回ぐらい延長しまして、いまだにやっています。いまだにパイロットと言ってやり続けています。それだけの効果があるということで、実は歩車共存が危ないとかいろいろあるのですが、ブリュッセルなんかを見ていくとそれなりの効果があり、満足度の高い結果が出ているのだろうと思います。
それを受けた形で、次のスライドにありますけれども、さらに市の全域を30キロ制限にしてしまおうということで、「Zone 30」化してしまう、まさに「Low Speed Zone」都市になってしまうということになります。
右側の写真は町の中心街なのですけれども、以前は道路がある意味でオープンスペースのようになっていたのが、今や人が歩きやすい通りに変わってきたという形で、にぎわいも非常に高まってきているという結果が出てきていることになります。
こういった政策を実現するときに、今回は御紹介しませんが、やはりデジタルの力が重要です。何かというと、先ほどの「Low Speed Zone」の話に戻ると、30キロ制限を担保するためには、デジタルによる力が必要です。デジタルによって30キロ制限をやろうとすると、しっかり実行しようというのができます。デジタルがどういうふうに使われるかという中で、事例を1つ紹介します。
行政と地域をつなぐということで、御存じの方も多いと思いますが、Via社のRemixという技術を紹介します。
これはある種、データダッシュボード、箱です。皆さんが持っておられるいろいろなデータをこの箱に入れたら、いろいろな組合せができて遊べますよという、基本的に言うとそういうツールになります。
面白いのは、特記にも書いていますが、例えばぜんそく持ちの子供がこの道路沿いには多いということをデータ化できます。データがあればそれを入れ込むことができます。そうすると、そこについてどうしようかと考えるきっかけができるということで、これまではデータは変化や結果をフォローしていくのには間違いなく有効というお話をしましたが、実はプランニングにも有効なツールだというのがこの位置づけになります。
実は箱として、今は3,000種ぐらい取り込めるという話になっていまして、それはある意味、自治体や事業者が持っているデータ次第ということでもあるのですけれども、これを入れて、例えばここに書いてあるようないろいろな検討が進められております。時間がないので、詳細は飛ばしながらいきます。
1つは、解析をすることが結構できます。手軽だけれども、それなりの明確な解析ができますよということで、例えば自動車レーンを歩行者レーンに変えたらどういうことが起きるのか。シミュレーションというよりは、どういう見かけになるのかとか、それがどう影響しそうかという議論のネタができてくるということになります。
関係者間で議論するときに、これは住民を巻き込みやすいダッシュボードということで、非常にUIとUXにこだわっています。住民がユーザーという位置づけですけれども、UXにこだわったデザイン、可視化の技術を持っていることになります。
このツールを使って、住民も巻き込んで、そうするとお互いの顔が見えやすくなる、信用ベースのダイアログがしやすくなるということがツールとしてのメリットで、この辺の発想が、デジタル化がどこに向かうかというときに、今回の議論の中の一つのポイントにもなるのかなと。
これが今、実際に幾つかの都市で起こっているのですが、ニューヨークで大規模な動きになっています。
ニューヨークで、2025年までに道路の25%を非自動車用にしようという動きが起きていて、そのときにRemixの技術を使っております。
このように非常に立て込んだような、複雑な、車量の多い通りをシンプルにして、かつ、緑化をしながら歩行者空間をつくっていくというようなデザインを実際に見せて、これをベースに住民との対話が始まるということです。
もちろんスクールゾーンとか、下のほうは例えばぜんそく持ちの多いところであるとか、生物低湿地、多様性をやろうという動きもデザインとしてはできます。
ユニークなのはBronxですけれども、ごみが散乱している地域なので、路上駐車スペースに分別のごみコンテナを置いてしまおうということもできるということになります。
ここは割と王道の変化です。
最後、データの標準化という動きを簡単に御紹介します。
Open Mobility Foundationというアメリカの組織があるのですが、世界の機関も入っています。40都市ぐらい入っていますということです。
自動車メーカーでいうとFordが入っています。それ以外にも、データを扱うソフトウエアの会社であるPOPULUSとか、デジタルエンフォースメントをやるAutomotusみたいなところも入っています。
ここが何をやっているかというと、もともとは電動キックボードのようなマイクロモビリティの標準的なデータを行政に共有させようという、Mobility Data Specification、MDSというものをロサンゼルスが公表しまして、それを拡張しているのですけれども、その普及のためにつくられた団体です。
次に注目したのがカーブサイド、つまり路肩です。路肩が今、人の乗り降りや物の積み降ろしで非常な頻度で使われている中で、路肩を道路のタッチポイントとして可視化していこうと。それをどういうふうに扱っていくかということで、標準型の提案がされました。
概念図としてはこのようなものになっていますけれども、路肩の利用状況、予約や支払いなどを標準形として行政と事業者の協力の下につくりましょうということを言っていまして、既にいろいろな動きがあるスタートアップのこれは整合している、これは整合していないということも含めて評価をしているという流れになります。
このような標準化によって、共創と協調がより明確になる部分と、本当に必要なものは何かということがクリアになる、ニーズをクリアにするという効果もあるのかなということで、ここで御紹介をさせていただきました。
以上になります。
石田座長: ありがとうございました。海外の最新の事例報告をいただきました。
これからぜひ活発に議論をお願いしたいのですけれども、資料5にあるのですが、日本はずれていないかとか、ずれているとしたらどこかとか、なぜ日本ではうまくいっていないのだろうかみたいなところも踏まえて、ぜひ活発に御意見をいただければと思いますので、お願いいたします。
ちょっとだけ言わせていただきますと、瀧島さんと村上さんの間でチャットで、道路と情報、データはよく似ているねという話がございまして、宮代さんのことに絡みますと、ああいうふうに道路空間を住民が本当に好き勝手に使おうという動きは、私が知っている限りでは1970年にオランダで「ボンエルフ」という、訳すと生活の庭という言葉なのですけれども、それが始まりまして、通過交通に業を煮やした住民が、勝手にフラワーポットを置いて、自動車が通れないようにする、あるいは速度を出せないようにするという動きを出したのが最初だと聞いております。勝手にやっただけではなくて、フラワーポットの面倒をちゃんと見るとか、救急車が来たときにはちゃんとどけるとか、そういう維持管理も責任を持ってやっていたというふうなこともあろうかと思いまして、そういうことで、誰がつくって、誰が便益を受けるか、誰が負担するかということを考える上では大きな問題だなと思ってございます。
最初に、南雲さんに手を挙げていただきましたので、お願いします。
南雲構成員: ありがとうございました。
今、宮代さんのお話を聞いておりまして、まさにそうだとうなずきながら聞いておりました。ありがとうございました。僕も海外を見ているので、全く同じような感覚を持っています。
若干付言というか、僕の知っているところだけを付け加えるという形で申し上げますと、3つ起こっていることがあるかなと思います。
1つは、都市の生態ということを考えるようになってきたということで、メタボリズムという言葉を使ったりとか、エコシステム、生態学庁なんていうものがバルセロナにありますけれども、自然環境に囲まれているバウンダリーの中で人間は生きていくという観点が、都市というサイズを決める上でとても重要になってきた。スクロールして大きくなればいいというものではないという概念が随分強くなってきて、バルセロナから始まって、みんなそういうところに行っているというのが一つだと思います。
もう一つは、モータライゼーションというのは一時期憧れで、世界中で突っ走ってきたわけですけれども、今、「15Minutes City」とか「ウォーカブルシティ」という形になるということは、ヒューマンスケールへの回帰という言われ方を随分しているかなと思います。つまり、人間という個体、生物の一番暮らしやすさを考えると、スピードで遠くまでいきなり飛んでいくというのは、大量輸送的なモビリティもあるのだけれども、そうではないものを持っていないとやはりバランスが悪いというところにみんな回帰していて、それがコミュニティーデザインとかまちづくりというところとうまく融合する形で今のスマートシティの議論が成り立ってきているというのが、ヨーロッパを中心とした議論だと。
城壁都市、もともとそういうサイズだったものが一つのコミュニティーを形成するコモンズになっていて、そこは、暮らしやすさというのは歩くというところに帰着するのだというようなところに行っているのだと思います。
もう一つは、最初のメタボリズムとかエコシステムと近いのですけれども、サーキュラーエコノミーの概念がヨーロッパを中心に随分大きくなってきているということで、原材料を遠くから輸入して、またどこか遠くで製造して、それをまた消費地に運んで、ごみをどこかに運んでいくというようなものよりも、循環させるという単位がないとサステーナブルではないという概念が随分大きくなってきているという意味で、町の像が少し変わってきているのかなと思います。
最後に1点、その3つがうまく重なっている概念が登場しているので、今、画面共有をしてよろしければ、1つだけスライドをお見せしたいと思います。
この概念、御存じの方も多いかもしれませんけれども、Restorative Citiesというコロナの文脈で特に大きくなった概念なのですが、町に行くときは、皆さんもそうですけれども、ネクタイをして、電車に乗って、戦闘モードで行って、ストレスを感じて、疲れて帰ってくる。ベッドタウンから都心に行くとそうなるということなのですけれども、そうではなくて、町に行くと逆に元気が増えていくというような、癒やしとか、元気とか、回復とかという意味でRestorativeという言葉が使われているのですけれども、これがさっきのグリーンベースとかヒューマンスケールとかサーキュラーというところを希釈した最終概念っぽくなってきているなと私は見ています。
7つの概念があって、グリーン、ブルー、それから5感に訴えるとか、Neighborly、ここら辺がまさにウォーカブルとか15Minutesの感覚です。それから、Active、宮代さんの資料の中にもありましたけれども、市民が参加したコミュニティーがあったりとか、文化とか潤いがあって、そしてInclusiveであるというスケール感の町の概念になってきていると思います。
日本の分散化社会という概念をこれからつくっていくわけですけれども、ウェルビーイングという概念からもどんぴしゃりという形になっていくのではないかと思いまして、幾つかの概念をまとめると、こういうふうに考えていくといいのではないかということで、御参考で共有させていただきました。
石田座長: ありがとうございました。
続いて、桃田さん、お願いできますか。
桃田構成員: 宮代さん、いつもながら詳細な事例紹介をありがとうございます。
海外と日本の対比というお話なので、今のお話は逆に日本の実情がよく見えると思います。80年代から日米拠点で欧米各国を巡る生活をしてまいりましたので、肌感覚で理解できます。
その上で、プレゼンは都市部の話が中心だったと思いますが、理由は治安の悪さ、町の汚さ、衛生面です。例えば80年代のタイムズスクエア、番地でいうと30~45番辺りのストリートは女の方、子供が行けるような場所では全くありませんでしたし、ミシガン州デトロイトの中心部、カリフォルニア州、ロサンゼルスの中心部、この数十年間で変化を見てきました。
言い方はなんですけれども、生活が維持できないという意味では、一種の限界集落のような状態だったと思います。だからゼロベースで緑地化や歩車分離が進んだという文脈が僕の肌感覚ではあります。
あと、直近ではESG投資です。従来の財務情報だけではなくて、環境、ソーシャル・ガバナンスを考慮した投資の影響が、欧州では特に都市開発では大きくあります。
他方、日本だと、都市部の治安の悪さは昭和50年代頃からだんだん改善されていますし、段階的に地域開発が進んでいるので、住民の方にとって、これからさらに大きく変えるということの実感が湧きにくい。別になくてもいいけれども、もっときれいになるならばいいねというレベルです。要するに日本の住民の主要な方は、どこでも何となく恵まれているという環境にあると感じています。
一方、地方都市も現実は都市部と同じで、シャッター商店街が増えても、主要国道でイオンモールに代表されるような商業施設が増えたり、コンビニはたくさんある。自動車移動ができれば、利便性が悪いと感じる方は極めて少ないというのが僕の実感です。
その上で最後に、MaaSの議論で主に高齢者や子供などの交通弱者に対する公共交通の在り方がこれまで主体になりがちでした。地方部で俯瞰すると、ポイントは、実際に住民の生活圏が乗用車移動で市町村や都道府県をまたいでいるのにもかかわらず、議論がそれぞれの市町村内の中で集約せざるを得ないという状況が一番大きいと思います。広域連携についても、僕が取りまとめをしています永平寺町MaaS会議等でもやるのですけれども、担当者レベルはオーケーでも、幹部レベルになると、はっきり申し上げて歴史的な背景等々があって、仲がいいとか悪いとかという話、とても人間的な話になります。ですから、はっきり言ってしまうと、全国あちこちを見させていただきますけれども、MaaSの議論はやはり皆さん真剣みが薄いです。なぜならば、社会を変えるために相当な力業になるために、それにちゅうちょする方、ないしは、そこまでやるのであれば変わらなくてもいいと思っている方が、先ほど冒頭の村上さんの話で、タクシー会社のお話も出ましたけれども、とにかく欧米的にしても、どういうベースで考えるにしても、社会を変えるために覚悟が要ると思います。
日本の場合、規制緩和というだけではなくて、逆に何らかの規制をするとか、実施年や実施内容を決めてまで社会を変えますよと。そうでないと、何となくぽやんぽやんと今、恵まれていますので、いろいろな意味で、今の宮代さんのいろいろな御指摘は、日本のものを対比するためにいい参考になると思います。
石田座長: 村瀬さん、どうぞ。
村瀬構成員: 我々も、先ほどのお話にでましたバルセロナに憧れて、今日の背景に漫画が映っているのですけが、こんな世界を思い描いています。
先ほどの意見と近いのですが、共助という意味は、結局、顔の見える範囲しかできないなと。不特定多数で大勢のところで共助はできないというのが、私たちがいろいろなところでやって思っているのです。顔の見えている人とやるのであれば、コストを負担することができる。先ほどの道を木材でやるというのもそうです。結局負担になるのですけれども、メリットを考えると顔の見えている範囲の人とはできますが、顔が見えない不特定多数な関係になるとコスト重視のゼロサム的にしか考えられなくなるのではないでしょうか。
ただ、日本は、僕も子供の頃、家の前の道で遊んで、隣の家でご飯を食べさせてもたった。そういう共助というのは、何となく共助は日本には向いているのかなと思っています。
2番目に、シミュレーションです、我々も、住民の皆さんに人出のシミュレーションを示して、効果が出るので、やりましょうという話をするのですが、結果を表すときに、携帯電話の位置データや、人通りとかを顔認証とかで測定して人通りが増えても、それは経済が回ったのかという質問がいつも来てしまいます。デジタル通貨かなんかで本当にお金が回ったという証明が必要です。シミュレーションのときはいいのですけれども、最後に何かをやってみたときの経済が活性化した結果を示すのが非常に難しいです。
3番目にサーキュラーエコノミーの話なのですけれども、正直に言って、再生可能エネルギーについては、日本は非常に不利です。太陽光とかは日本は設置できる場所に限界がありますし、洋上風力はあるけれどもメンテがかかって、御存じのように資本コストでもメンテナンスコストも高いです、リニューアルエナジーは高いと直感的に分かっているので、ここを訴えて町の人たちにというのは、今のところは難しいなと思います。
4番目は、データのオープン化が問題です。先ほどアメリカの例もあったのですけれども、私どもはVtoXをアメリカでやっていますが。データを提供してくれるOEMはわずかです。結局車のデータはあつまりません。一方、中国でも同じようなことをやっていますが、中国の場合は、国家が強制的にEVのデータを集めるので、それを利用することができます。データへのアクセスといった問題もあると思います。
海外と日本を比べたら、今、日本でやっていると、そんなことを感じていますということで、情報共有までに、そういうことをお話ししました。
ありがとうございます。
石田座長: ありがとうございました。
宮代さんが手を挙げられています。お願いします。
宮代構成員: いろいろなコメントをいただいてありがとうございます。
実は私も広島の庄原という、人口が3万人、どんどん減っているような町で、呉高専の神田さんなんかと一緒に、まさにミクロな世界で変化を起こそうということも手伝っている中で、桃田さんのお話に近いのですけれども、欧米で紹介した大都市内の動きに一つの共通項があるなと。
ここは全て、一部の通りだとか、一部の地区だとか、非常にミクロな部分にフォーカスを当てて、まずそこをよくしようよという動きが大都市の中で起こっているという点がポイントかなと。小さく単位を区切っていくと、実は田舎の町であっても、都市部のこの地区であっても、かなり共通項が見いだしやすくなってきて、そうすると欧米から学ぶこともしやすくなるのではないか。バルセロナという単位で捉えている限りは、なかなか商売が見つかることはほとんどないのですけれども、バルセロナのこの地区でやっている話はもしかしたら使えるかもみたいな、自分自身の動きとしては、そういう発想でつなげていくことがしやすくなってきたかなということを感じながら、こういうまとめ方をしていったのも実はそこにあるということで、付言させていただきます。
ありがとうございます。
石田座長: ありがとうございます。
私からもう一回発言させていただきます。
日本と欧米の違いの大きなものの一つに、町の成り立ち方が決定的に違うと。特に道路でいうと、ヨーロッパの町、よほど中心の城壁に囲まれた古くからの集落でない限り、道路面積率は結構高いのです。それに比べると、日本の町は道路がそもそも貧弱です。ですから、ヨーロッパモデルをそのまま持っていくというのはなかなか難しい面があるなと思うのです。
道路面積密度は低いのですけれども、日本の町は道路の延長密度は高いのです。要するに、細い路地みたいな道がいっぱいある。それは我々の住宅事情にもよるのです。そういう特徴をどう生かしていくか。そこで子供が安心して遊べて、コミュニティーが活発になるような、そんな形はどうあるべきかと。そこでデジタルの力で、Remixみたいなもので可視化されるということで、極めて重要なツールになると思うのですけれども、そういうことも考えていかないと、バルセロナもニューヨークもいいのですけれども、町と道路のでき方がかなり違うので、そこは非常に大事な視点かなと思っております。
宮代さん、どうぞ。
宮代構成員: デジタル化が何をもたらしてくれるかという中で、いろいろな課題だとかを見ているときに、例えば高齢者の方が今移動したいのか、どのぐらいの距離を移動したいのかというときに重要になってくるのは、選択肢があるかどうか。これしかないよというときに、我慢ができるか、妥協、満足できるかどうかということなのだと思います。
今回御紹介させていただいた事例でも、ある意味、選択肢を与えながら選ばせていくことが重要で、住民の方にしても、木のツールにしても、いろいろなパターンから組み合わせて選べるよみたいなことがすごく重要なのだろうなと。選択できるということをどれだけ広げてあげられるかとか、どこの町でもいろいろな選択肢が選べるようになっていくかみたいなことが、デジタルが絡むことによる一つの狙い目なのかなということを実感しているということが1つ。
自動車会社出身なので、その選択肢に関連して少し申し上げると、「Zone 30」みたいなことをすると、完全に電気自動車ではなくても、プラグインハイブリッドみたいなものも、そのゾーン内では完全に電気ですと。今、つなぎの状態かもしれませんけれども、ツールの選択肢はある意味増やせる可能性もあるので、政策との組合せによって選択肢をいろいろ広げていくような考え方も割と有効なのかなということを皆さんの議論を聞きながら思い出しましたので、付け加えさせていただきます。
石田座長: ありがとうございました。
次に、甲田さん、お願いいたします。
甲田構成員: 初めまして、こんにちは。
日本全国で地域ごとの頼り合い、まちづくりに取り組んでいるAsMamaの甲田です。
海外の事例を受けてというところで言うと、日本の場合は、地域ごとに、特に都市と地方では課題が全然異なってくると思うのですけれども、その課題に関しましても、地域住民の方々にきちんとこの課題を解決するために、このニーズを解決するためにデジタル化を行うのだというところのビジョンといいますか、理由説明みたいなものも、きちんとデジタルデータを使った説得力のある説得があまりなされていないことによって、住民がいつも置いてけぼりで、デジタル化だとか、DX化だとか、そういったことが先走ってくるというところは非常にあるのではないかと思います。
今後何か施策にするときに、これをやるのだというところから発信するのではなくて、なぜこの問題を解決する必要があるのか。この問題を解決したら、自分たちの生活が、自分たちの課題がどう変わっていくのかというところも、今、コロナ禍でデータがすごく発表されているのと同じように、地域ごとにデジタルデータというものがきちんと住民に発信されて、それぞれの地域が抱えている課題がこんなに解決してきているのだよというプロセスが見えないというところが、海外との一番の違いなのかなと私は感じています。
石田座長: ありがとうございます。
おっしゃるとおりだと思いまして、関係されていると思いますけれども、小学生の痛ましい事故があって、全国の通学路の安全総点検の2回目が終わったのです。でも、どういうやり方をしているかというと、歩かれて、そうだね、こうだねと、現場に即した議論、観察が共有されているというのはいいのですけれども、それが上のレベルできちんと共有されていない。デジタルといっても、写真を撮って、それに地図に張りつけるぐらいのものでもいいと思うのですけれども、そういうことがなかなかされていない。
そういうところをどう実践していくかというのはすごく大事な問題だと思っていて、そうすると子供の安全、あるいはそこには高齢者の問題もぜひ入れてほしいと個人的には思っているのですけれども、そういうところへの具体的な提案ができそうな気がするのです。ありがとうございました。
石丸様、お願いいたします。
石丸構成員: 福岡地域戦略推進協議会の石丸でございます。
先ほど来、委員の皆様から、道路で子供の遊び場をどうするかといった話も出ていたと思うのですけれども、実際、私も関わっている町で、交通とか道路をどうするかというところからのスタートではなくて、住民サイドで、子供が外遊びができないという課題を捉えて、外遊びをしている人たちと、そうでない人たちで、健康とか成長に影響があり、それをどう解決するかという話がありました。できるだけ外遊びを促したいのですけれども、その街区がどうしても公園が少なかったり、小学校との距離があったりして、気軽に外遊びができないという地域の課題感を受けて、子供の遊び場をどのように確保するかということで、地域住民や小学生にアンケートを取ったり、様々なデータを取って、「外で遊びたいけれども遊ぶ場所がない」、「そういう場所がもしあったら遊びたい」など、幾つかのエビデンスも含め確認していく中で、そういう場所を確保しようと。
その中で、通過交通になっているところや、細い通路が街区に幾つかある中で、使える場所を可視化して、市道であれば道路でなくす方法などを含め、様々なルールのマネジメントをしながら、逆に空間づくりみたいなことをしていく、交通整理のようなことも併せてやりながら住民視点でつくる。地域ではこういった話が出てくるわけですけれども、ある程度論点が定まってきたときに、ステークホルダーが多過ぎるということがまず出てくるのです。住民としての合意はある程度できていても、所管が違うとか、県なのか、市なのか、警察なのかといった話があって、そこからその次のステップに行くところまで、一気通貫で進められる仕組みをどうつくるかという論点があります。供給者というか政策サイドの視点もそうですけれども、意外と住民ニーズはいろいろなところから道路だったり交通に出てくるところがあるので、これを捉える方法をどう考えていくかということも今回の一つの論点になり得るのかなということで発言させていただきました。
石田座長: ありがとうございました。
発言させていただきますと、外遊びは本当に大事だと思うのです。あるいは、外でいろいろなコミュニティーが成立する、お互いに顔の見える関係ができていくということなのです。ヨーロッパでも、ボンエルフとかいろいろな話をしていましたけれども、今、シェアードスペースというものがあって、大陸にもイギリスにもたくさんあるのですが、子供が遊べるような姿になりたいねと言いながらも、私は残念ながら子供が遊んでいる姿を見たことがありません。それだけ古くから取り組んでいるヨーロッパでも、子供の安全は事故だけではなくて犯罪ということもあるでしょうけれども、なかなか難しい問題だなと思いまして、やはりきちんとしていくということだと思うのです。
法律の話になってしまうのですけれども、そういうことを排除している大きな問題があると思っていて、私は社会資本整備審議会の道路分科会長もやらせていただいていますので、ある意味、道路の専門家なのですけれども、今、道路法という法律があって、きちんと定めない限りは、歩道は歩道、路側帯は路側帯と定めない限り、全部車道なのです。その辺の路地みたいな道路も車道なのです。それはちょっとおかしいなと正直思っておりますが、なかなかいろいろなハードルが高いみたいです。
あと、そういうところの最高速度はどうなっているかというと、60キロの法定速度がそのまま適用されているところが圧倒的に多いのです。誰もそんな道を60キロで通ろうとは思わないですけれども、たまに通る人がいて、でも、その人たちを危険運転罪で起訴することはできません。70キロで走っていても、10キロオーバーにしかすぎないわけです。そういうことも含めて、今、子供の安全の問題、あるいは速度規制というのは、運動エネルギー2分の1MVの2乗で速度の2乗に係ってきますから、圧倒的にエネルギー消費、省エネということから見ても大事なことだと思うので、その辺も何か考えられないかなと思います。
では、川端さん、お願いします。
川端構成員: ありがとうございます。
チャットに入れているのですけれども、幾つかの委員の方から、特に桃田さんからかなり御指摘があったと思うのですけれども、住民意識、いわゆる民主主義の浸透が特に北米とヨーロッパは非常に高くて、住民発生型のものをかなり強く参考にしていくと、結構うまくいっているものは住民参加型なのですけれども、そこは民主主義の浸透が違うので、そこの部分と、あとは今、石田先生から出ていたと思うのですが、都市設計における道路の役割が異なるので、そこが日本にマッチした形での再設計が非常に必要だなと思います。
海外事例の結果を見てすばらしいというのではなくて、その手法の中で、日本にマッチできるところをきちんと構造化して抜いていくみたいな形と、構造化すると日本に足りないところも出てくると思うので、研究会という位置づけなので、そこが1回やれるといいなと思いました。
あと、デジタルを推進しなければいけないという立場もあるので、デジタルのよさを住民に見える形で伝えるということが日本は努力がなされていないと思います。デジタルはいいところはあるけれども、魔法のつえみたいな形で、私も地方自治体の方からお問合せをいただいたりすると、MaaSを入れたら問題が解決すると思っているという結論があって入れたいみたいな話が多くて、でも、デジタルよさの住民に伝える前に、我々がまずきちんと伝えなければいけないねとなると思います。その上でインターフェースをきちんと設計してやらなければいけないのですけれども、デジタルの良さは2個しかなくて、魔法のつえではないということを分かっていただきたいというのをたくさんの地方自治体の方とかに伝えなければいけないと思います。
1つは、とにかく体験の共有とか加速です。デジタルはその辺が圧倒的に強い。これがよかったというのがみんなに伝わるということだと思います。もちろん悪かったということも伝わるし、先ほどの通学路の課題がデジタル化されていないと思うのですけれども、デジタル化された途端、たくさんの人が見る。しかもそれが共感を生むということが強いです。
それともう一つ、プラットフォームにフィードバックができるというのは、たくさんのデータが出てくるので、それをソートして、プラットフォームを改善するために情報を戻せるということがあるので、この2点を理解した上で、とはいえデジタル化しても基盤となる住民にとってよい都市というのは概念とか設計の基本思想は多分変わらないので、その上にデジタル化に最適化された都市のデジタルプラットフォームをつくるという順番を確認していくことも重要かなと思いました。
石田座長: ありがとうございました。
熱心に、非常に深い議論をしていただきました。宮代さんのいろいろな視点からの海外事例を踏まえまして、実際のリアルの空間の話も大事だよねと。それと、データをどう共有するか、デジタル化するか、そこに向けてのデジタルということが非常に大事だよということも共感されました。
私が申し上げたのですけれども、日本の特性を考えた上での議論展開ですし、現実にいろいろな場所で、いろいろなことがあって、その例として申し上げたことが通学路の安全総点検だったわけでありますけれども、ヨーロッパで今、もう少し広い視点から、都市計画あるいは都市政策で何が議論されているかというコメントも多数いただきました。ありがとうございました。
なかなか深い大きな問題で、今すぐに取りまとめるというわけにもいきませんので、我々のアウトプット、大きなビジョンについての議論をちゃんとしたほうがいいという御意見もいただきましたので、私と事務局のほうで取りまとめをさせていただきたいと思っております。
今日は時間が限られておりますので、また御意見、アイデア等がございましたら、事務局にお寄せいただければと思いました。
それでは、宮代さんのプレゼンに伴う議論はこれくらいにさせていただきまして、次の御発表に移りたいと思います。茨城県境町の橋本町長より御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
橋本構成員: よろしくお願いいたします。
瀧島さんからは、現場の声ということで入っていただきたいということで、入らせていただきました。僕のような素人をこのような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。
先ほどの宮代さんの話の中で、桃田さんが言った市町村の境界だとか、さらには様々な海外事例、そして、ちょうど僕らは隈研吾さんの施設をこの3年で6個つくっているものですから、隈さんも、世界的に加速、拡大の時代から減速の時代に入っているということを盛んに言われていたものですから、なるほどなということで、少し聞かせていただきました。
境町の事例の場合は、実際に自動運転車を導入したということで、その話をしたいと思っています。
なぜ自動運転を始めたのかというところで、我々の地域は2万4000人の小さな町です。そして、どこの地方も抱えている人口減少、高齢化、それから地域の公共交通がどんどんなくなっていく、タクシー会社すらもなくなっていく、そういうどこの地方にでもある課題がある町でありました。
実際に、境町というところは鉄道がありません。昔、舟運ですごく栄えたのです。利根川と江戸川の分岐ということで、日光から木を切り出してきて江戸に運ぶとか、千葉県の銚子からしょうゆを運んできて江戸に運ぶとか、舟運の要所として非常に栄えたのです。そのために、例えば今、宇都宮に行くJR東北線がありますけれども、それが本当は赤杭まで入ったのですけれども、舟運の方々が反対をして、今の古河市のほうになり、そちらが市として発展し、小山、宇都宮と、そういうような地域であります。ですので、歴史柄は非常に古い町だということが言えると思います。ただ、そのせいで公共交通網が非常に脆弱になってしまいました。
例の池袋の事件以降、高齢者が免許を返納したい、家族が高齢者に運転をさせたくない、そんな話の中で、でもやはり返せないので、デマンドタクシーを入れるのか、循環バスを入れるのか、地方の自治体というのはそういう形になっていくと思うのです。スクールバスもどうしようとかです。
そんな中で、一つの可能性として僕が考えたのは自動運転でありました。2019年11月26日に、ヤフーで東北の小さな村の記事が出ていました。それを見て、このままいくと境町は、全国に自動運転が普及して、その後に入ってくるようなことになってしまうだろうなという焦りを感じたのです。実際にうちの町に総務省の事業で地方創生の関連で専門家に来ていただいていましたので、そのタムラさんに聞いたら、この記事のところは、当時はSBドライブ、今はBOLDLYという会社ですけれども、ソフトバンクの子会社がやられていたのです。ソフトバンクに知り合いがいないかと聞いたら、専務を知っていると言うのです。1か月後、12月26日にSBドライブ、現BOLDLYですけれども、佐治社長と行け合いまして、面談をしました。
実際に、2019年12月に、佐治社長に、実験ではなくて実用化できるのかと聞いたのです。そうしたらできると言うので、ではやろうと1分ぐらいで話を決めまして、始まったという状況です。ですので、12月26日に会って、1月9日には5億円の予算を承認しています。2万4000人の町です。70億円ぐらいの予算規模、税収は30億円ぐらいの小さな自治体です。そういうところで実際に、お役所は大体28日から休むのです。このときはちょうど土曜日でした。ですので、27日が御用納めでした。御用始めが6日ですから、何で9日かというと、議会運営委員会を3日前にやらなければいけないので、6日に議会運営委員会を開いているのです。12月26日に会って、そこから議会の調整をして、予算調整をして、そして6日には議会運営委員会を開いて、9日の臨時議会で議決と。普通の自治体ではちょっと考えられないスケジュールなのかなと。5年で5億円ですから、普通の小さい自治体からすれば大きい予算です。そういう意味では、境町というのは特殊な町なのかなと思っています。
実際に3台を5年間導入する。さっきの表を見ていただいても、実証実験もやっていないですし、町の人に説明もしていませんし、何一つやっていないです。我々すら乗っていないです。本当はフランスに行って、リヨンでこれに乗ってくるという約束だったのですけれども、コロナになってしまったものですから乗れなくなってしまって、そのまま導入を決めたという状況です。
予算が可決されてから、1月15日に町民の試乗会をやらせていただいて、高齢者の方、議会の方々、いろいろな方に乗っていただきました。赤ちゃんを抱いたお母さんたちにも乗っていただいて、いろいろな声を聞くこともできました。
本当であれば2020年4月からやるということで我々は決めたのですけれども、コロナがあったものですから少しコロナに予算を割かせていただいて、半年後に行おうということで、2020年11月26日から町内で走行を開始しました。ですので、本来であれば4月1日からやる予定だったのですけれども、コロナになってしまったものですから、半年延期をして始まったという流れであります。
実際に、出発式の様子はこんな感じです。
最初はこの1ルートです。シンパシーホールから河岸の駅という、旧の町の一番の大通りだったところです。40年前とかだと、自転車ですれ違うのが大変なぐらい町のにぎわいがあったそうです。今は夕方5時、6時になると車も走っていないような、非常に閑散とした中心市街地になっています。このルートでまず運行を開始させていただきました。
よく言われるのは、歩道を見てみんな驚かれます。普通こういうもので実証実験をやる際には、歩車分離ではないですけれども、歩道と車道がしっかり分離されている、またはガードレールがある、段差がある、ちゃんとしたという言い方は悪いかもしれないですけれども、そういう道路でやられる例が多いのだそうです。うちの町は、どこにでもある道路です。歩道がほとんどない、路上駐車もある、電柱もある。これで成功すれば横展開ができるだろうということで、こういったところを今、走らせていただいております。
2020年に、経済産業大臣がちょうど地元の梶山先生だったものですから、補助金を取りに行くという名目ではなくて、経済産業省さんに、邪魔をしないでくれと。要は応援をしてくれという意味で、梶山先生のところに行ってまいりました。我々が使っているのはフランス産のNavya社の「ARMA」なものですから、国産の車、国産の運行管理者、そして国産のシステムでないと、経済産業省さんはなかなか応援できない部分があるということがあったものですから、行ったときは、町長さん、始まる前にまず永平寺へ行って勉強してくれと言われたまま、行きもしないで始まってしまったものですから申し訳ないなと思って、今年は何とか永平寺に行って勉強してこなければなと思っているところなのですけれども、そんな形で始めさせていただきました。
実際には片山先生にも乗っていただきまして、まだ法律は追いついていないけれども、レベル4ができる車だねということを言っていただきました。今の山際大臣にも乗っていただいて、そんな話もいただいているところであります。
3か月後、実際に2021年2月から、6か所のバス停を追加しました。実際に生活で使えるようにということで、銀行や小学校、役場、郵便局、それからキッズハウスというところにスーパーがあるのです。ですので、大型スーパーの前、そして、三次救急を担うこの地域では一番大きな病院である西南医療センターという病院があるものですから、そこも停まれるようにということで追加させていただきました。
小学生の通学の利用実証では、子供たちに非常に喜んでいただいて、最近何が起こっているかというと、境町の子が乗ってきて、ぱっと降りていくだけではなくて、土日だと境町のおじいちゃん、おばあちゃんが、外にお嫁に行ったりとか引っ越していったお子さんたち、そのお孫さんが帰ってきて、自動運転が走っているから一緒に乗りに行こうと言って、おばあちゃんに自慢をしていただいたり、それから、夏休みだと近隣の市町村の子供たちから、自由研究に使いたいのでいいですかというオファーをたくさんいただいたり、子供新聞で使いたいのだという子たちが来たり、子供たちに対しても非常にいい効果を生んでいるところであります。
実際の効果としては、一般道で常時運行しているのが境町だけなものですから、様々な規制緩和だとか、法律改正だとか、横展開型として、今、非常に多くの省庁関係をはじめ大学の皆さんに来ていただいて、ちょうど緊急事態宣言が明けた期間、2~3か月ぐらいだったと思いますけれども、民間企業も含め120件ぐらい視察に来ていただいていて、今も明けましたので、皆さんこれに乗りに来ていただいているという状況になっています。
境町は駅がないものですから、幾ら自動運転車を走らせてもA区間からB区間だけとかになってしまうので、先ほどMaaSの話もありましたけれども、境町から東京駅八重洲口に行くバスを出させていただきました。これは関東鉄道さんとJRさんに交渉して出させていただきました。1日8往復です。境町から東京なんて、誰が8往復も乗るのかというバスだと思うのですけれども、実際に今、8往復走らせていただいて、東京からは勉強に来たり、研究、視察に来る際にこれに乗ってきていただいて、そこに自動運転バスをつなぎましたので、その自動運転バスに乗って町なかを回遊するとか、遠隔監視センターに行くということが可能になり、非常に効果を上げるツールになる。
逆に、境町から東京へは貨客混載で、今、JRさんと話をして、境町の農産物とかいろいろなものを東京まで運んで、そこから配送する、そんな仕組みもつくっているところであります。
現在、2021年8月2日には、2ルート、バス停も8か所追加いたしまして、土日も運行を開始したという状況になっています。
おかげさまで、この間の2月には、内山田会長から「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」ということで、鎌田先生にも出ていただきましたけれども、本当にお世話になった。
今日は須田先生も出られていると思いますけれども、本当にこういった方々に境町の取組を評価いただいているということで、改めて感謝を申し上げたいと思っています。
その際に、佐治君が、内山田会長に「e-Palette」をくれと町長から言ってくれと言うので、内山田会長に話をしました。トヨタの「e-Palette」を境町にいただけないかと。そうしたら買ってくれという話になりまして、幾らするのですかと言ったら、「ARMA」よりちょっと高いぐらいだったので、では買いましょうと言ったら、鎌田先生が、今のものよりも次に出るものがいいので、次のものにしたらいいと思いますと言われて、この間、日本交通の川鍋会長と「e-Palette」に乗らせていただきました。コロナにかかってしまったということもありましたけれども、この車はNTTとKDDI、auが交互に実証実験をやっていたものですから、ソフトバンクは来ては駄目だと言われて佐治君は乗れなかったのですけれども、僕は乗せていただきました。非常によくできていました。ただ、課題は4%の斜路で上れないということ、あと、中身がティア4だということなので、間もなく日本のものが出てくる。
外国の製品と日本の製品を比べたときに、デザインが違うということと、非常に洗練されてできているなという感覚がありましたので、今、担当者に聞いたら、買うのではなくてリースしかやらないだろうと言われているので、新しいものができたらリースででも、「ウーブン・シティ」で走る前にうちの町で走らせてやりたいなということを思っているところであります。
なぜフランス車なのかということはありますけれども、ここに書いてあるのは全部うそです。ただ単純に佐治君に任せると。その中で、デザイン性のあるものでないと人は乗らない。夏は暑い、冬は寒いでは、おじいちゃん、おばあちゃんは乗りたくないし、乗りたいと思わせるものがいいという話をしたところ、Navya社の「ARMA」が非常にいいということを言われたので、リヨンで走っていて何ら問題がないということなので、それではこれを入れようと。しかもフランスのリヨンにも行けるので、ちょっと不純な動機で、僕は今度リヨンにも行けるなと思いながら導入をしたというところはありますけれども、導入して全然問題はないです。
運営コストはよく聞かれます。研修、視察に来た方は非常によく聞かれるのですが、コストは我々が稼げばいいと僕らは思っているのです。自治体は本当はマネジメントが重要で、これからは稼ぐ自治体だとか、広告宣伝収入とかを取っても何でもいいです。いろいろなことをやってしっかりと運営を回していけばいいので、これで幾ら取ってとか、ここから派生して、例えばぐるなびみたいに飲食店から金を取るとか、佐治君はそれを考えているそうですけれども、僕はそうではなくて、自分たちで営業をかけて、これに対して投資をしてくれるようなところをつけていけばいいのではないかと実は思っています。
ふるさと納税と補助金を活用してゼロになっていると書いてありますけれども、補助金は後づけで取りました。最初はSociety 5.0をやっていたのですけれども、やはり取れなくて、途中から地方創生のモデルに変えました。ふるさと納税は、1人で1000万円を寄附してくれる方がいらっしゃいます。その方の社名を貼る代わりに1000万円をもらっている。そんな形で、毎年1000万円をもらっています。
事故があったらどうするのかと。今は保険があるから何ら問題はないです。ドライブレコーダーもついていますし、例えば90歳の人がそのまま乗るよりもよほど安全なのです。うちは90歳だろうが、80歳だろうが運転していますから、そういう人たちよりはこの「ARMA」のほうが安全だと僕は判断したので、そんな形でやらせていただいています。
本当にいろいろなことをやらせていただきながら、この取組が横展開をして、全国の過疎地、中山間地域、クローズド空間で人の運転が要らないようなところ、そういったところには本当に普及していただきたいなと思っています。もう1年やりましたけれども、まだこの第2号が出ていないというのが現状なので、そういった部分は自治体のハードルがちょっと高いのかなと思っています。
うちの町はいろいろなことをやっています。地方創生もやっていますし、スポーツのまちづくりとか、いろいろなことをこの8年間でやらせてもらいましたけれども、実際にソフトバンクで試算した結果は、経済効果はこの1年で11億円あったというのですが、少なめに見積もって7億円ぐらいの効果はあっただろうということで、シティプロモーションの費用だ何だということでいけば、境町という名前が非常に知れ渡ったという意味ではよかったのかなと思っているところであります。
補助金は1億5000万円ですけれども、この間、デジタル庁さんのデジタル田園都市で2億円をつけていただきましたので、信号協調とかをやりながら、これからの先導役として頑張っていきたいなと思っております。
このような形で、横に動くエレベーターというのは佐治君と共有しておりまして、ボタンを押せば来るみたいに、例えばスマートスピーカーとかで「ARMA」と言えば目の前に来るような、そんな時代がそのうち来るのではないかと僕らは思っています。全部の車が自動運転にならなくても問題なく運行できるのではないかと僕は思っているので、そういったところをしっかりやっていきたいなと思っています。
スーパーシティも、スーパーシティに認定された何とかというよりは、やっているうちにスーパーシティになってしまったという形が一番いいのかなと思っていますので、今、顔認証とかいろいろなことをやっていますけれども、いろいろなことをやりながら、誰もが生活の足に困らない。今は60代、70代の方が田舎から引っ越します。駅前の病院が近いマンションに引っ越すとか、娘さんたちがいるつくば市に引っ越そうとか、そういうことで自分たちの老後を考え、将来を考え、今まで住み慣れたところから引っ越すということが起きていますので、こういったことが少しでも改善されるように、この後、ドローンなんかもやっていきますし、様々な課題解決として、困っている人がいるから、ただ助ける、シンプルにそのためにやっている事業なので、そんなに難しいことはないのかなと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。
これで終わりにさせていただきたいと思います。
石田座長: ありがとうございました。
勇気とスピードに物すごく感銘を受けました。ありがとうございました。
まず、チャットで御質問いただいております村瀬さんから、このバスは民間に対する財政拠出の公共交通機関と認識していいでしょうかという御質問です。いかがですか。
橋本構成員: そういう認識で使われてもいいと思います。ただ、我々はそういう感覚ではないです。例えば今まで朝日バスという東武鉄道の子会社が路線バスをやられているのですけれども、1時間に1本とかというバスなので、町なかの公共交通としては成り立っていないのです。タクシー会社も2件あるのですけれども、2台ずつとか、運転手は73歳とか72歳とかですので、あと2年もたつとタクシーもなくなってしまう。
そのような状況の中なので、実際に僕らはいろいろな事業をやってきましたけれども、そんな中で、全国で唯一、自動運転をうちしかやっていなかったので、すごく工夫しましたけれども、民間に対する財政拠出の公共交通機関とは認識していないです。本当に困っているから助けよう、そのツールとして自動運転を使った、それだけの話です。
石田座長: 分かりました。
それと、甲田さんからも、子供等が乗車中の車両故障や事故、乗車者の不具合など、オペレーションはどのように御準備されていますかと。モニタリングと、それに連動したサポート体制のコストなども知りたいですという御質問をいただいております。
橋本構成員: これは、実はこの後の法改正とかを見込んで、遠隔操作になることを見込んで、セネックさんという会社が本社機能を境町に移転するということで、もう来ていただいています。今、本社をつくっていますけれども、うちの社会福祉協議会の一室を改装していただいて、僕らは家賃をもらっているのですけれども、その会社が全部オペレーションするように、乗っている人たちもBOLDLYから来ているのではなくて、セネックさんがBOLDLYと共同で教育をして、彼らが運転をして、保険も入っていますし、もし何かあったときにはすぐにそこに駆けつけるような、白バイを改造したみたいな車も用意して、サポート体制もしっかりしていただいている。
そういった中で1年やってみて、出動機会は一切なかったですから、遠隔操作になって、信号協調がやれて、どうなるかという部分はありますけれども、事故が起こったらどうしようとか、誰が責任を取るのかという前に、もう保険で全部対応できますので、そこら辺は自治体が勇気を持ってしっかりやっていくと進み続けられると。最終的には地域の人のためになるのではないかと思っています。
石田座長: ありがとうございます。
須田先生から手が挙がっていますので、御発言いただけますでしょうか。
須田構成員: 東大の須田です。
橋本町長、どうも御無沙汰しております。テープカットのときには大変お世話になりまして、先ほどの写真の左端に写っていたのは私です。
先週の金曜日も境町に行かせていただいて、石田先生も会議で御一緒でしたけれども、これだけ社会実装が進められているということで、私も本当に敬服しているところです。
今回、網羅的に御紹介されたのですけれども、私が現地に行っていろいろ見て思ったのは、自動運転以外のところ、いろいろな地域の活動と物すごく連携しているなというところなのです。特に私は佐治さんにいろいろと御案内していただいたのですけれども、どこの病院がどういう利用者がいるのかとか、どこのスーパーマーケットでどういうニーズがあるのか、そういうことを事細かく調べられて、ルートだとかいろいろなものを決められている。そういうところが非常にうまくいっている事例ではないかと思いました。そういうことで、ぜひ、これを発展させていただきたいと思っています。
1つ御紹介いただければと思うのですけれども、今後、デジタル庁の予算を使って発展させるということはあるのですが、そこら辺でどんな障害が予想されているのか。我々もぜひお手伝いしたいので、そこら辺を教えていただきたいということ。
あと、地元の公共交通、先ほど朝日自動車の話が出てきましたけれども、ああいうところと今後もどうやってうまく付き合っていくのか、そこら辺について御紹介いただければと思います。よろしくお願いします。
橋本構成員: 須田先生、ありがとうございます。
先ほど時間が短かったので、説明できなかった部分があるのですけれども、先ほどもどなたかがおっしゃっておりましたが、様々な政策を住民の声を聴いてやることが重要だということを言われていたと思うのです。それが当たり前なのです。説明責任も重要で、議会もそうですし、住民の皆さんにもしっかり説明した上で始まる。なので、議会としては早かったのですけれども、その後はしっかり説明をさせていただいているのです。今は逆に住民の皆さんが路上駐車を少なくしていただいたりとか、駐車場を提供していただいたりとか、自分の家の前をバス停にしていいよとか、本当に地域の沿線住民の皆さんに手伝っていただく、さらには、うちのほうはいつ通るのだというおじいちゃん、おばあちゃんがいたりして、コミュニティーが密接で狭かったために住民の協力を得られたという、もしかすると特異、希有なケースなのかなとは思っています。
課題としては、今後我々がやるのに、デジタル田園都市のタイプ2と3に応募しようかなと思っているのは、5Gという話もあると思うのですけれども、町ごとWi-Fi化しようと。Wi-Fi化してしまえば、自宅で呼んだりということも可能になりますので、全部ができなくてもある一定の地域をWi-Fi化して、その地域の方で実証実験をしてから広げるということも可能だと思っているので、近い将来、法律改正があった後になると思いますけれども、24時間、救急のときとかにも、例えばお酒を飲んでしまって、救急車で家族が運ばれたけれども行けないというときにタクシーがない、そういったときに「ARMA」と呼べば、病院までと言えば連れていってもらえるような、そういうことが可能になるのではないかと僕は思っているので、そういったところについては細かい法改正やいろいろな規制があると思いますので、その辺は各省庁の皆さんと連携しながらクリアしていきたいと思っています。
あと、民間ですけれども、朝日自動車さんも、実際には運転手の確保とかに困ってきているのです。確保して、就職はしたけれども、育てたら3年で辞められてしまったとか、地域の公共交通は非常に困ってきているので、逆にこういう自動運転を一緒にやっていくことによって、いざとなったときに、路線バスについては自動運転に変わったりとか、逆に言えば、いろいろな情報は我々と共にやっていきましょうということで入っていただいていますので、そういう意味では、自動運転に取って代わられてしまって、我々の職がなくなるではなく、みんな共存していこうという形でずっと進めてきたので、ある程度理解いただいているのかなと。
朝日自動車さんのバス停の中にもバス停を置かせていただいたりしていますので、そういう意味では、地域と共通課題を持った中で、一緒に課題解決をしていくことが実は重要なのかなと思っています。
須田構成員: ありがとうございます。
石田座長: 桃田さん、お願いできますか。
桃田構成員: 橋本町長、永平寺町の視察はいつでもお待ちしております。
橋本構成員: ぜひお願いします。
桃田構成員: その上で、境町の行動力には僕も非常に敬服しておりまして、一昨年にエボリューション大使という立場で拝見して、役場の方とも意見交換させていただきました。その中で、単なる公共交通施策だけではなくて、町の財政健全化も前提とした町全体の変革であるというところに感銘を受けました。常日頃、僕も申し上げているのですけれども、自動運転等々、モビリティ全体が社会全体の血液であるべきだと考えているのですけれども、まさにそれが実行に移されているという感じがしました。
僕も自動運転を永平寺町で長年いろいろとやっている中で一番強く感じるのは、社会受容性という言葉がよく出てきますが、社会受容性を後づけにしないことだと思っています。振り返ってみると、2010年代、自動運転の実用化に向けた黎明期でしたから、今日も御参加の葛巻さん並びにSIP-adus の皆さんが、技術面、人間工学、国際協調、多方面で、オールジャパン体制で、オーナーカー、サービスカーの大きな実績を上げられてきたと思います。
ただ、どうしても日本の産業競争力強化が主体になるので、社会受容性は技術面と同列で議論せざるを得なかったのだと思うのです。ただ、今、社会実装の段階では、今日のバックキャストのお話があるように、まず社会受容性ありきの議論がなされるべきで、単なる町の交通課題だけではなくて、今、橋本町長が御指摘の医療、教育、防災等々のことを、市町村レベルもそうですし、広域連携でやっていくという考え方をそもそも持とうとすることがバックキャストだと思いますし、そういう考え方をベースにしたデジタルプラットフォームの議論が必要だと思っています。
最後に、自動運転は打ち出の小槌ではないとよく言うのですけれども、公共交通でも、小型配送ロボットでも、高速道路の大型トラック、ドローン、自家用車のレベル3に対しても、いつ、どこで、誰が、どのように必要なのかということと、誰がどのように事業を継続させていくのかということを明確にするべきだと強く思っています。
橋本町長のプレゼンは非常に参考になりました。ありがとうございました。
橋本構成員: ありがとうございます。
実はこのSプロというのは後づけなのですけれども、よく都市計画の先生に、普通はこういう設計図を描いてからまちづくりをしていくと思うのですけれども、僕らのところはゼロからイチを生み出すのが得意な自治体なのかなと思っているのですが、全く特産品もない、何もない、借金だけがある何の変哲もない町だったのです。そこに隈さんの施設を6個つくりました。それはお金を生み出すような施設です。国の補助金も借りて、そういうものに投資をさせていただいて、点をつくっていったのです。
今、その点を自動運転車で結んで、線にして、最終的には面にしていくということをさせていただいていて、僕も町長を8年間やらせていただきましたけれども、この8年間でこれだけの施設をつくった自治体は、普通は公共施設は悪ですから、落ちてしまうのでないかと思いますけれども、投資をして、回収する仕組み、それを実際に自動運転車でつないでいくという仕組みができつつあるので、そういう意味では持続可能になっていくのかなと思っています。
桃田先生のお話は非常に参考になりました。また今後、お聞かせいただければと思っています。ありがとうございます。
石田座長: ありがとうございます。
山本さん、お願いいたします。
山本構成員: ITS Japan専務理事の山本でございます。
橋本町長、ありがとうございました。
我々ITS Japanは、地方自治体の方々といろいろコミュニケーションを取って、いろいろ活動をしている者ですけれども、1つアドバイスをいただきたいのです。橋本さんのリーダーシップがすばらしいということはもちろんなのですけれども、境町のようなモデルを日本の同じような自治体に展開していくに当たり、境町のほうでいろいろプロセスみたいなものが残っているのでしょうかというお話と、それを展開していくに当たって、ほかの自治体に展開する上でのアドバイスみたいなものを少しいただけないかと思っております。差し支えないところでいただけないでしょうか。
石田座長: 今の山本さんの質問に上乗せしまして、経済効果の表がございました。ほかの自治体へのアドバイスということからすると、2件目、3件目になると、テレビでの放映とか新聞・メディア掲載が極端に少なくなっていきます。そのときに、住民の皆さんの誇りとか愛情とかウェルビーイングにこれがこんなに貢献していますよみたいなことをきちんとデータを取って、できればデジタルのデータを取ってやるとデジタル庁もありがたいのではないかと思うのです。そんなことはもう考えられていると思うのですけれども、話せる範囲で結構ですので御披露いただければありがたいと思います。
橋本構成員: ありがとうございます。
先ほどのプロセスと展開という話ですけれども、先生が言われたように、シビックプライドがどうなったとか、シティプロモーションがどうなったとか、データ化することは非常に重要なので、御紹介いただければ今すぐにでもデータ化したいということは思っておりますので、ぜひアドバイスをいただければと思っています。
そうなると、そのデータを基に、こういう効果があったとか、こういうふうになるというのが言えるので、非常に横展開もしやすいし、多分、首長の皆さんがやりたくても、議会で反対されたらどうしようとか、住民の皆さんに反対されたらどうしようとか、そういうところがネックになっている部分もあると思いますので、そういう意味では、ここに来てもらって、見てもらってやるのではなく、それプラス、データで説明していくというのは非常に有効な手段だと思いますので、ぜひ取り入れさせていただければと思っております。
もう一つ、展開というところですけれども、佐治君がドローンを持ってきたものですから、ドローンの人たちに聞いたのです。今、敦賀だとか伊那だとかいろいろなところでやっていますけれども、みんな結構アナログなのです。実は自治体さんが神様で、自治体とか住民の皆さんに合わせてオーダーメードでやっていっているのです。そうすると、何年も何十年もかかってしまうのです。そうではなくて、ドローンの人たちも、自分たちがやりたいことをうちに持ってきてやったらいいでしょうといって、まだ法律の課題はありますけれども、今度始める予定なのです。
企業の皆さんは、やりたいこととか、先進技術とか、データを持っているのだけれども、「ARMA」もそうなのですが、自治体に合わせてそれをダウングレードするのです。ここが課題だと思っていて、企業がやりたいことを率直に自治体が受け入れて、それを住民にも議会にも、住んでいる人のためになるし、国のためになるのだよと説明すれば、納得していただけるというか、すごく効果があると思っているので、最近よくいろいろなものを持ってきていただく中で、うちはハードルを一番低くして受け入れようといってやっているのですけれども、つくば市に先進事例が来て、つくば市は世界初が好きなものですから、世界初以外はうちに流れてくるのです。なので、流れてきたものを網でキャッチして、いろいろなことをやらせていただいているのです。そういう意味では、先ほど言ったように企業がやりたいのに自治体側がハードルを設けてしまっている例が多いので、ぜひそういったところをクリアできるような展開ができれば、よそにも普及していくのかなとは思っています。
石田座長: ありがとうございました。
南雲さん、お願いできますか。
南雲構成員: ありがとうございます。
今、ウェルビーイングの観点からデータ化しませんかという議論が出ていたと思いますけれども、実は同じデジタル庁の中で、デジタル田園都市国家構想の交付金タイプ2と3についてはウェルビーイングの指標を設定するということが公募の条件になっています。実はその指標をつくっているのは私でございまして、今、スマートシティ・インスティテュートがデジタル庁と連携してつくっているという形なのです。
もちろん私が一人でやっているわけではなくて、東京大学とか、京都大学とか、慶應大学とか、いろいろな著名な先生方のつくられる主観的幸福感のアンケートというものと、それから客観的な指標、健康の社会的決定要因と言いますけれども、町の環境を客観的なデータではかるものとの組合せになっているのです。もし境町の皆さんが御関心があるということであれば、デジタル庁さんのほうとのコーディネーションになってくると思いますけれども、一つの先端事例という形でやってみるということは、日本全体にとって価値があるのではないかと思いまして、提案という形で付言させていただきました。
石田座長: 一つの具体的なものができて、意義深かったと思います。ありがとうございました。
今、ヨーロッパでITFが言っているのですけれども、MaaSでデータ連携というとすぐにリアルタイムのデータしか思い浮かばないのですけれども、政策決定とかウェルビーイングとかは別にアナログのデータでも、あるいは半年に一度のデータでもいいのではないかと。そういうところの新しいビジネスモデルを、事業者さんへのデータの義務化、ヨーロッパの場合は特に公共のお金が交通事業者に流れている場合が非常に多いので、それぐらい要求してもいいだろうということで、そこはデータレポーティングという考え方で整理をして、あと、リアルタイムで事業者さんが頑張る部分は競争領域で、そっちは話のまとまった人からどうぞということで、データシェアリングという、2つに分けるような方向性が見えてきたような気がしますので、そういうことも参考にしていただければなと思います。
宮代さん、どうぞ。
宮代構成員: ありがとうございます。宮代です。
橋本町長、非常にパワフルなプレゼンテーションで、物すごく刺激を受けました。ありがとうございます。
大変素朴過ぎて申し訳ないぐらいの質問なのですけれども、橋本町長にとって、例えば公共と民間とか、行政と民間とかの区分は、お話を伺っていると、境目をそれほど意識されていなくて、例えば住民の困り事があったらそこを解決しようとかということを最優先に考えておられるとなると、もしかするとこの研究会でも、今後の公と民の在り方とか、公共という言葉そのものがもしかしたら古いのかもしれないみたいな感覚で伺っていたのですけれども、今の町長にとっての公共の役割とか民の役割とかをどう捉えられているのかと伺えればなと思いました。
すごくプリミティブなことで申し訳ないです。
橋本構成員: ありがとうございます。
公共は全体の福祉というか、そこは考えなければいけないと思っているのですけれども、ただ、手法の部分で、今までみたいな公共施設をつくって、しかも利益を生まないものをつくって、それを維持していって、人口も減っていく。そういうことは、全国の1,741の自治体が本当にやっていけるのだろうかと、僕はそこなのです。
実際にうちの町は、僕が就任したときは将来負担比率が180を超えていて、後ろから29番目だったのです。一番後ろが夕張です。ですから、5年の財政計画を立てたら、5年後には財調がなくなって破綻すると。8年前、そのような町でした。
逆に言えば、財政がひどかった町がこれだけの投資をして、これだけ借金を減らしたり、基金も増やしたりできるというモデルを示せば、自治体はやらない理由を考えるので、やらない、できないではなくて、この町がこういうやり方をしているから、うちもこういうやり方をすればやれるのではないかというようなモデルになればと思ってやっているのです。なので、僕らが公共施設をつくるときに、今、考えるのは、自治体は国から補助金をもらって事業ができるという、民間では考えられないようなすごく優遇された状況なのです。それを第三セクターで天下りをしていった役場の人とか役所の人とか、それから、誰かが運営するからこれがおかしくなってしまうのであって、普通にビジネスマンが経営して、しかもそこが飲食店を出して、投資して、回収できる場所だとすれば、全然問題ないのです。
今は、人口が減っていく中で飲食店が減り、それから病院が減り、どんどん町の機能が失われていくのです。なので、最初に宮代先生が言われたように、困っている人がいるから助ける、そのために、町もお金がないけれども、国にもお金を出していただいて、事業者にも運営をしていただいて、地域がよくなっていけば、それはそれでウィン・ウィン・ウィンぐらいの関係になるので、三方よしぐらいになるのではないかという思いでやってきました。
PFIの地域優良賃貸住宅は、関東では神奈川県の山北町しかやっていなかったのです。今、僕はこれをあちこちの市長村長に言って、移住定住にも使えるし、子育て支援にも使える。そのうち年配の方が、足が不自由だからという集合住宅にも使えると思いますけれども、今までは町営住宅、市営住宅だったのです。ですが、この地域優良賃貸住宅制度を使うと、建設費の45%、今は5割になりましたけれども、社会資本整備総合交付金で入ってしまうわけです。こういうことを使うと、町はお金を出さないで、人も呼べるし、黒字化するし、そして運営している会社もいるという仕組みが実はあるのだけれども、自治体は新しいことをやらないので、見ていないのです。関東で地域優良賃貸住宅をやっているのは山北町とうちなのです。今、あちこちに紹介しています。
例えば空き家だった、昔すごく栄えたまんじゅう屋さんなんかも、企業版ふるさと納税とか国の補助金とかでリノベーションして、今、ここから家賃は17万6000円頂いているのですけれども、投資した費用は間もなく回収します。今度は逆にプラスになっていくわけです。自治体は回収するツールがなかったわけです。今まで道の駅をつくりました、雇用が生まれました、売上げがこうなりました、経済効果はこうだと言ってひもづけてしまうのです。でも、20億円も投資しておいて、その20億を回収できなかったら本当は意味がないわけです。そういう自治体も、観光施設だとかいろいろな公共施設をやる際にマネジメントをしっかりしていけば稼げる。しかも、駅もない、人口は2万4000人、何もない変哲な町で、さかいサンドは月に700万円売るのです。1回作って、売り切りですから、午前中だけでです。だから、自治体というのは、やり方次第で本当にいいツールになるのです。
隈さんの施設もそうです。3年間で6個つくる自治体は多分ないのです。隈さんの施設は、1個つくるのに3年ぐらいかかるそうです。うちは民間みたいで楽しいと隈さんに言っていただいていますけれども、こういったこともやりながら、人を呼び込む。
そして、意図しなかった、ホッケー場なんて負の遺産ではないですか。2020で我々はアルゼンチンチームのホストタウンだったのです。その際に、メダル候補なのでホッケー場だけつくってくれと言われたのです。でも、つくっても負の遺産ではないですか。すごく悩みました。例えば普通にホッケー場をつくるというと、新設なので補助金はないのです。今、物流施設が多いですから、工業団地の中の公園に子供は遊びに行かないではないですか。その公園をホッケー場にしたのです。そうすることによって4割ぐらい補助金が入ってしまうのです。
今は何かというと、先週もさくらジャパンという日本代表の女子ホッケーが来ていて、その前の週は日本代表のサムライジャパンが来ていて、土日は学習院大学とか中央大学とか、東日本には大井町とここにしかオリンピックコートがないものですから、クオリティーをオリンピック基準にしたというのが非常によくて、下のテニスコートもそうなのですけれども、東京の名立たるテニスクラブが境町へ来てやりたいというようなことが起きてきているのです。
BMXもそうなのですけれども、今度、世界大会をやるのにつくったら、結構日本の大会とかをやっていただいているのですが、ゼロからイチを生み出すのがうまいので、今までは住んでいる自治体の人のためとか住んでいる地域の人のために公共施設があったと思うのですけれども、これから人口減になっていく中では、外からも来ていただいて、さらにはシビックプライドで、これはぜひデータ化してほしいのですけれども、逆に言えば、町の人たちが、あの施設があるから孫たちが帰ってきたとか、周りの親戚から、あの境町の施設はすごいねと言われて喜ぶとか、そういうことが起き出しているので、そういう意味では、先生が言われるように、公と民の垣根はなくて、地域の人のためになるのであれば、我々はどの選択肢も取ると。
よく自治体の人は物をPRするときに、お酒を持っていって、そのお酒会社のPRになってしまったらどうしようとかを考えるのです。僕は何でも持っていきます。例えばミシュラン1つ星でも3つ星でも、野菜とか酒を持っていって、ぜひ使ってくれということをやっています。実際に使っていただいているところもあったりします。
自治体の首長はそうあるべきであって、いろいろなところで町のいいものをPRして、逆に所得が上がればいいと僕は思っているので、そういう意味では、農家の方々は売るツールがないので、その間でもうけられてしまったりしているので、僕らが適正な価格で売る。さらには、お米などもそうなのです。今は減反とかがなくなったので、安くなってしまうではないですか。米が安くなるのは分かっていたので、古米になる前にライスパックをつくりました。ライスパックにすると賞味期限が半年延びるのです。ということは、その分、従来の新米と同じ値段で買えるわけです。
自治体はやり方次第で本当に変わりますので、そういう意味では、この間、紫波町の町長さんに名指しで境に来ていただいて、僕はコロナが明けたら行きたいと思っていたのに、逆に来ていただいてしまって非常に感銘を受けたのですけれども、そういう意味では、これからの自治体マネジメントというのは、しっかりやっていけば、2万4000人しかいなくて、人口がどんどん減っていた、さらには借金が多かった自治体がこれだけのことをできるのだから、勇気を持って自治体の首長さんたち、そして職員の皆さんがやっていくと日本はよくなると、僕はそれを信じてやっているのです。
石田座長: ありがとうございました。
最初に時間を超過すると言って、いいねをたくさんいただいたのですけれども、本当に深い、かつ、幅が広い議論をしていただきました。ありがとうございました。
橋本町長のプレゼンと皆さんの議論の中で、自動運転だけではないということがよく分かりましたし、それは総合的な町の経営ということだと思いました。
ところが、橋本町長が頑張っているからできているということでは、我々のミッションとしては全く駄目で、誰にでもというわけではないけれども、そういうことができやすくなるような環境をどう整えていくか、制度をどう設計するか、データあるいは科学的な手法をどのように展開していくかということが問われているということだと思いましたし、そういう中で南雲さんの御提案で早速一つ話がまとまりそうで、よかったなと思っております。
私はもともと土木なので、都市計画なんかがそうなのですけれども、政策を立てて、計画をして、でも計画を立てたらいつできるか分からないというところがあるとか、都市計画を実現するために都市計画事業をやるのですけれども、その事業で道路ができた、施設ができたと。都市計画の手から離れて、それは公園管理者としての自治体にお願い、道路管理者としての自治体にお願いとなって、マネジメント性が非常に働きにくいようなことに今の法体系がなっているのです。都市計画法を変えるというのは物すごく大きな仕事ですけれども、そこでのデータの活用みたいなことを考えると、マネジメントとかスマートとかはやはり考えておくべき課題だなと私自身は今日深く思いましたし、そういうことを実践されている橋本町長に本当に感銘を受けまして、取りまとめろと書いてあるので、そういう話をさせていただきました。
本当に深い議論をたくさんいただきまして、ありがとうございます。村上さんも書かれていましたけれども、議事メモをよく見て、どういう方向性で、大きなビジョンと、冒頭に申し上げましたけれども、小さな実践をどう我々の提案としていけるかということをきちんと考えてまいりたいと思いますので、第2回もよろしくお願い申し上げまして、私の司会はこれぐらいにさせていただきます。ありがとうございました。
瀧島さん、お願いできますか。
瀧島参事官: 最後に、事務的な連絡だけさせていただきます。
本日は、皆さん、本当にありがとうございました。
今日もいろいろなコラボレーションという形で、南雲さんにも拾っていただいたりしていただきましたので、この会議が終わった後も、意見交換、チャットができるような場所はTeamsで準備したいと思っていますので、何かあればそこでも引き続きと思っております。
次回は4月27日水曜日を予定していまして、AsMamaの甲田さん、福岡地域戦略推進協議会の石丸さんから御発表いただきます。今日、各論というか、こんなに面白い話があるということを海外、日本の中で出していただいたので、もう少し人目線というか、実際の暮らし目線みたいなところを含めて、お二人からお話をいただけるといいかなと思っています。
村上統括官とも話しまして、できるだけリアルも組み合わせたいと思っていますので、コロナの状況にもよりますけれども、リアルとオンラインのハイブリッドでできないかなと模索をしておりますので、その辺はまた事務的に御連絡させてください。
それでは、これで締めたいと思いますので、皆さん、ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。
(以上)