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国際データガバナンス検討会(第1回)

OECDの下で立ち上がったInstitutional Arrangement for Partnership(IAP)やその他の国際枠組みにおけるDFFT具体化に向けた日本政府の取組や提案形成において、データの越境移転に係る我が国・企業等のステークホルダーからの情報や要望を反映しつつ、その実施を支援するため、有識者による議論・検討・提言を行うことを目的とした検討会を開催します。

概要

  • 日時:2024年1月30日(火)10時から13時まで
  • 場所:デジタル庁 庁議室およびオンライン会議(Teams)
  • 議事次第:
    1. 開会
      1. デジタル庁挨拶
      2. 座長ご挨拶
      3. 構成員ご挨拶
      4. 本検討会の議事運営について(事務局)
    2. 議事
      1. DFFT に関するこれまでの取組及び本検討会の趣旨について(事務局)
      2. 自由討議
        • 国際動向を鑑みた日本の取り組むべき課題
        • 課題解決のために日本国内で求められるメカニズムについて
    3. 諸連絡等
    4. 自由討議【任意参加】
    5. デジタル庁挨拶
    6. 閉会

資料

関連情報

議事要旨

日時

2023年1月30日(火)10時から13時まで

場所

デジタル庁 庁議室およびオンライン会議(Teams)

出席者

構成員(座長以下50音順)

山本座長、渥美構成員、生貝構成員、稲谷構成員、川村構成員、北村構成員、鬼頭構成員、黒﨑構成員、佐藤構成員、沢田構成員、鈴木構成員、藤井構成員、増島構成員、宮本構成員、若目田構成員

事務局

  • デジタル庁 国民向けサービスグループ
  • 経済産業省 商務情報政策局 国際室
  • みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

討議要約

【論点1】国際社会において我が国が取り組むべき課題について

我が国が取り組むべき課題
  • データ越境に関する規制の透明性の確保は、昨年度までの研究会でも、Data Free Flow with Trust (DFFT)を具体化していくための国際メカニズムとして立ち上げられた IAP(Institutional Arrangement for Partnership)で取り組むべき点として挙げられていたため、企業へのヒアリング等を待たず、取組を進めた方がよい。民間企業から海外の規制が分かりにくいという声が挙がっており、企業が変化の激しい法令の趣旨を理解し、遵守しながら事業を行うための後押しが重要である。
    • 具体的な取組については、本検討会での議論等も踏まえ、国際の場に打ち込んでいきたい。また、企業のニーズの具体化に向けて、官庁同士での密接な連携に加え、民間企業や学識者との連携も今後さらに深めていく必要があると考えており、ぜひご協力をお願いしたい。(事務局)
  • DFFTにおけるトラストを確保する上では、国別のリスクの捉え方の違いを考慮しながら、相互運用性(インターオペラビリティ)を確保する方法を探ることが重要であり、そのためにも各国の法規制の関係性の整理や国際的な調和の実現が喫緊の課題である。
  • 例えば、自動運転システム等の実用化にあたっては、海外の事故情報を迅速に収集し、システム改善を行うことが必要になると考えられる。特に自動運転においては、民間と公共団体のシステムが連携して動くことが想定されるため、官民問わず、国境を越えて協調する枠組みが重要になると考えられる。
  • 海外諸国の規制等の制度運用に関する具体的な情報を得るためには、単に法律の条文を読み込むのみではなく、現地の大使館や国際企業等の現地法人の力を借りるなどの方策も有効である。そうしたインテリジェンスに対するコストのかけ方を再検討すべきではないか。
議論・整理すべき論点
  • データの自由な越境流通が国家の安全保障に影響を与えないよう、保護すべきデータと流通させるべきデータを明確にすべきである。そのためには、データ流通の目的や実現したいことを明確にし、それに基づいた議論を進めることが重要である。また、データが流通した先でのガバメントアクセス等に対する不安感への対応も必要であると考えられる。
    • 共有すべきデータとローカライズすべきデータの区別などの具体的な議論については、一定のデータガバナンスの考え方の下で、国際法や二国間の協議など、様々な戦略的手法を効果的に使用し、国内外のプレーヤーの意見を踏まえて進めていきたい。(事務局)
  • 海外諸国のデータ流通規制の前提として、共通して想定されているリスクが存在するはずである。そういったリスクを明確にした上で、それらが各国の規制にどのように反映されているかを確認することで、データ共有のリスクを総合的に捉えることができ、国内企業にとっても理解しやすくなるのではないか。
  • データが越境した先で、どのような価値が生まれるのかを考えることが重要であり、それを示すユースケースを用いることで議論がしやすくなるのではないか。最初から全体的なルールを整備することは難しいため、ユースケースごとに小さな部分から段階的に議論することで、効果的に議論を進めることができると考えられる。
  • データの性質や業種業界によって、適用される法令や想定されるリスクなども異なるため、具体的なユースケースやトピックごとに議論を進めることで、企業にとっても分かりやすくなるのではないか。
  • 国際標準化の過程で、各国共通の課題と考えられるユースケースが集められているため、そうしたユースケースを題材にして、IAPで扱うテーマの検討を行うことも一案ではないか。
  • EU一般データ保護規則(GDPR)のようなデータ法制においても、公共的な利益のためにはデータ移転が認められている。こうした流れの中で、国内企業の競争力の源泉となる情報が、公共の利益のために供出を迫られることがないよう留意が必要である。国際動向を踏まえつつ、データ共有のバランスや補償などの考え方を整理することが必要ではないか。
議論の際に考慮すべき点
  • データ流通においては、ハードウェア面の整備も不可欠であり、データセンターや通信インフラなどの物理的側面も考慮に入れる必要がある。
  • プライバシー強化技術(PETs)などの技術的解決策に対する理解を深めて、それを議論に活かしていくことも重要ではないか。
    • IAPにおいては、技術的な解決策を重視している。技術のみで課題が解決するわけではないが、規制を守るコストを下げるために、技術を効果的に活用することは重要である。ただし、様々な国で技術を活用するためには、各国の規制当局が参加し、各技術により何ができるかを共有することで、透明性を確保することが必要であると考えている。(事務局)
IAP における議論の進め方
  • 他国においては、個人データ以外の分野においても、越境流通の制限の検討が進んでいる。日本企業への影響も懸念されることから、ルール設定のフラグメンテーションを防ぎ、国際的な調和を図るために、IAP の場での議論が重要となる。
  • IAP の役割が、WTO 等の既存の国際機関の機能と重なる部分もあると考えられるため、複数制度の乱立が、目的達成にとって望ましいのかという点についても、議論が必要ではないか。
    • 現在、データガバナンスを専門に扱うフォーラムは存在せず、様々なフォーラムで断片的に議論が行われている状況であるため、全体の議論の横串を通す場が不足している。IAP は、そうした議論の横串を通し、データガバナンスに関する政策調整を進めるための場である。(事務局)
  • 現時点で連携が想定されている国際機関や取組の進捗状況を教えていただきたい。
    • データ流通に関する共通のルールの枠組みが必要という意識を持った地域や機関とトピックごとに選択的に連携を行うことで、議論を膠着状態に陥らせることなくプロジェクトを推進することを想定している。なお、具体的に連携を行う地域や機関については現在検討しているため、今後報告したい。(事務局)
  • 海外の主要団体が参加しなければ、IAP における議論が活発に進まない可能性もあり、IAP に対する他国政府の認識や参加の姿勢に対しては注視が必要である。

【論点2】国内において我が国が取り組むべき課題について

国内企業に関する課題
  • IAP の枠組の下で、マルチステークホルダーでデータ越境移転の問題について議論する場が形成されつつあることは歓迎すべきである。一方で、今後はこうした枠組を通して、様々な主体が声を挙げることが想定される。国内の企業にとっては、大きな声を挙げなければ影響力が低下するという危機感を持っていただき、しっかりと声を挙げていただくことが重要である。
  • 企業に対して、目の前の課題を尋ねるのみでは、その問題意識を十分に把握することは難しい。DFFT の実現によって可能となる新たなビジネスモデル等のポジティブな面と、DFFT が実現されずデータ規制が断片化した場合のビジネス上のハードルやコンプライアンスコスト等のネガティブな面の両面について、企業に十分に想像してもらった上で、課題を聞き取り、IAP のフォーラム等の国際フォーラムで発信していくことが重要である。
  • 国内では情報を求める企業は多い一方で、ヒアリングの場で議論できるほど積極的ではない企業も多いため、勉強会等の形を通じた情報提供も有効と考えられる。
  • 大きな戦略の下でクラウドの規格策定等のルールメイクに積極的に関与している海外の大手企業と比較すると、国内企業はルールメイクへの関与に消極的な傾向がある。その背景には、経営層が大きな戦略を描けていないこともあると考えられる。日本企業のルール作りへの積極的な参加を促すためには、企業におけるビジョンや戦略の策定を促進することも重要である。
    • G7 等の国際会議や国際交渉の場において積極的にアプローチしようとする海外企業の姿勢と比較すると、日本企業はやや消極的である。一方で、政府として、我が国のデジタル政策の明確な方針や全体像が示せていないことにも原因の一端があると考えているため、今後デジタル庁が国内外で包括的なデータ政策を推進するとともに、政府と民間が一体となってデータガバナンス問題に取り組む体制を作っていきたい。(事務局)
  • 企業の協力を得るためには、企業にとっての具体的なインセンティブを提示することが重要である。そのためには、欧州等のルールメイキングに対する日本企業の意見を集約し、伝達するルートを確立することが重要ではないか。
  • 組織の種類や分野によって、抱えているニーズや問題点は大きく異なるため、企業へのヒアリングを行っても、全体感を把握することは困難ではないか。まずは、ユースケースを作成し、典型的な事例を通して、データの越境流通がもたらす利益を明確にし、各国の制度の問題点等に焦点を当てて解決策を模索することで、議論の方向性が明確になると考えられる。
  • グローバルなデータ流通規制の統一化による恩恵を産業界が享受するためには、リーダーシップをとってデータ流通に取り組む主体が重要である。特に、データ分野においては、既存のプレーヤーに加えて、産業構造の転換による新しいプレーヤーの参入も考えられるため、政府が主導する可能性も含め、幅広い視野でリーダーシップを有する主体の登場が期待される。
市民社会の巻き込みについて
  • 市民社会からの意見が少ない場合、意見を引き出すための仕組みが必要である。具体的には、DFFT に関する市民社会の考え方を定点的に観測するための調査手法や設問項目の検討が必要ではないか。
  • 市民社会の関与を促すためには、抽象的な議論ではなく、具体的な課題やユースケースに基づいた議論が必要である。データの種類や利用ケースによって課題が異なるため、それらを明確にすれば議論がしやすくなると考えられる。例えば、自動車の安全性向上に必要なデータの流通が法規制や技術的問題で阻害されていないかなど、具体的なケースを分析することで、市民や消費者にとっても理解しやすくなるのではないか。
  • 「DFFT」という用語は未だ一般的とはいえないため、概念や関連する用語を整理することで、理解を促進する必要があるのではないか。
  • 「DFFT」は具体的な仕組みや技術を示した言葉ではなく、データの越境移転を実現することや、プライバシーやセキュリティなどの違いを乗り越えるために具体的なトラストの仕組みを議論することの重要性について、各国に共通の認識を持たせるための言葉である。そのためには、まずはデータ流通を阻害するボトルネックを特定し、民間、アカデミア、市民社会からの意見を取り入れながら、具体的なソリューションの検討を進めることが重要である。
今後の議論の進め方について
  • これまでの DFFT 研究会での議論の成果や、まだ議論しきれていない部分を明確にすることが必要ではないか。特に非個人データに関する議論が不足していると認識している。
  • ヒアリングやユースケースの収集は行われているが、まだ情報が収集されていない業種や業界があるかもしれないため、セグメンテーションの粒度や戦略を検討する必要がある。
  • 課題を乗り越える方法についての議論と、それを議論するための具体的な方法論の両方を考える必要がある。方法論としては、ヒアリングの戦略や企業を巻き込むためのインセンティブの作り方、市民の声の取り入れ方等を検討する必要があると考えられる。

以上