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国際データガバナンス検討会(第3回)

OECDの下で立ち上がったInstitutional Arrangement for Partnership(IAP)やその他の国際枠組みにおけるDFFT具体化に向けた日本政府の取組や提案形成において、データの越境移転に係る我が国・企業等のステークホルダーからの情報や要望を反映しつつ、その実施を支援するため、有識者による議論・検討・提言を行うことを目的とした検討会を開催します。

概要

  • 日時:2024年3月19日(火)10時から12時まで
  • 場所:デジタル庁 庁議室およびオンライン会議(Microsoft Teams)
  • 議事次第:
    1. 開会
      1. 開会、事務連絡(事務局)
    2. 議事
      1. これまでの検討会、企業ヒアリングをふまえた課題の共有(事務局)
      2. 国際的な産業データのデータガバナンスのあり方について(経済産業省)
      3. 自由討議
      4. 次年度以降の国際データガバナンス検討会の対応方針の説明(事務局)
    3. 諸連絡等
    4. 閉会

資料

関連情報

議事要旨

日時

2024年3月19日(火)10時から12時まで

場所

デジタル庁庁議室及びオンライン会議(Teams)

出席者

構成員(座長以下50音順)

  • 山本座長
  • 渥美構成員
  • 生貝構成員
  • 稲谷構成員
  • 川村構成員
  • 北村構成員
  • 佐藤構成員
  • 沢田構成員
  • 鈴木構成員
  • 藤井構成員
  • 宮本構成員
  • 若目田構成員

オブザーバー

  • 個人情報保護委員会事務局
  • 総務省

事務局

  • デジタル庁 国民向けサービスグループ
  • 経済産業省 商務情報政策局 国際室
  • みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社

討議要約

(1)これまでの検討会、企業ヒアリングをふまえた課題の共有

事務局説明(デジタル庁)
  • 第2回国際データガバナンス検討会での議論を踏まえ、国内のステークホルダーのニーズを収集するためのヒアリングを進めるとともに、個人・非個人データを含めた国際データガバナンス推進に向けた国内メカニズム・エコシステムの形成のための戦略要素を策定した。
  • 次年度以降の取組としては、これまでの検討会での議論を整理し、政策課題として扱うべき論点を深堀りしていくことや、データスペースに関する議論を我が国のデータ戦略に落とし込んでいくこと、国内のメカニズム・エコシステムの形成に向け継続的に取り組むことの3点を想定している。特に、国内のメカニズム・エコシステムの形成にあたっては、引き続き、企業や業界団体へのヒアリングを実施することを念頭に置きつつ、進め方を検討している。
  • 特に、産業データに関して、越境データ管理に関する実務指針を整理するためのSubWGの設置を予定している。また、国内のメカニズム、エコシステムに関する方針としては、継続的に個社にヒアリングを実施していくことが効果的であると考えている。さらに、整理した結果を国内関係政策と連携させつつ、本検討会の議論状況の周知を図っていく方針である。

(2)国際的な産業データのデータガバナンスのあり方について

事務局説明(経済産業省)
  • 産業データの流通が、越境の有無を問わず進められる中で、各国においてデータガバナンスに係る規制が導入されている。これらの規制により、国内企業において、営業秘密の保護、ガバメント・アクセスに対する懸念、データの越境移転規制への対応、規制が不明瞭かつ適用範囲が広範であることによる萎縮やコンプライアンスコストの増大等の対応が発生している。
  • 産業データを含むデータの国際的な流通の推進に向けた政策検討の論点として、①データの性質に応じた保護・流通の方針、②産業データのガバメント・アクセスに関する規律や対応、③消費者・第三者への情報開示・情報提供に関する規律や対応及び④越境移転規制をはじめとする他国の産業データ規制への対応の4つが考えられる。
  • 産業データの保護・連携については各企業の自由に任せることが原則であるが、企業に対し、判断の基礎となる情報を提供することは考えられる。一案としては、①データの性質等に応じたガバナンス手法、②データ管理に関する先進事例の紹介及び③越境データ移転に関するデータ契約の在り方等の論点について、企業に実務指針を示すことが考えられるが、定まった方向性があるものではない。本日は委員の皆様に是非ご議論をいただきたい。
  • また、産業データのデータガバナンスについては、国際連携の視点も重要と考えられる。まずは我が国としての考え方や海外規制との相互運用可能性について整理した上で、例えば、産業データに関するガバメント・アクセスや、消費者・第三者への情報開示・情報提供に関する規律について、まずは国際的に議論を行い、場合によっては規範の形成を目指すことが選択肢としてはあり得るところである。

(3)自由討議

DFFTに係る国際的な議論の進め方について
  • 国際的なデータ流通の推進に向けて、EUのデータ法制が国際標準になってしまわないよう、OECDをベースとした枠組みを作ることで、EUの影響力を一定程度抑制することを目指していると理解しており、全体的な方向性に違和感はない。
    • ご認識のとおり、EUの規則が、国際的な議論を十分に経ないまま、実質的な国際標準となってしまういわゆる「ブリュッセル・エフェクト」の事態は未然に防ぐ必要があると考えており、OECDをベースとしたIAP(Institutional Arrangement for Partnership)の活動の中で、国際的な議論を進めていきたい。(事務局)
  • EUは、欧州バッテリー・パスポートやデジタル・プロダクト・パスポート、炭素国境調整メカニズム(CBAM)等、サプライチェーンの情報を含めて情報開示を強制するアプローチを採っている。我が国としては、その目的を理解した上で、目的に照らして過剰な規制や差別的な部分については是正を促すほか、立法過程で意見を提起することも重要である。
    • 欧州における産業データ戦略の背景として、欧州と日本では産業データの捉え方の違いがあるのではないか。具体的には、欧州では個人データはプライバシー権に基づき、保護されるべきものとみなされる一方で、産業データは企業がコントロールするものではなく、公共財的なものとして受け止められているような印象を受けている。(事務局)
    • 事務局としても、ご指摘と同様の認識を持っている。EUでは、企業が収集したローデータの価値が比較的低く見られており、どちらかというとローデータを加工して作られたデータセットに相対的に高い価値が感じられているような印象を受けている。(事務局)
    • ローデータと加工データのいずれか一方に価値があるという考え方は適当ではなく、ローデータの収集からデータセットの活用まで、データのライフサイクル全体で創出される価値に着目していくことが重要ではないか。
  • 今後、データ流通のあり方や管理に関する議論について、我が国が国際的に主導権を持って関わっていくためには、欧州による規制のロジックに対抗できるようなビジョンを持つことが必要であると考えている。昨今では、国際的にも個人データを個人の排他的な所有物として保護するというより、適切なリスク低減措置を講じた上で、必要な範囲で活用できるようにすることが目指されているため、個人データ保護もデータガバナンスの一部分と位置づけ、技術の活用も含めたデータガバナンスのビジョンを作っていくことが重要だと考えられる。
  • 我が国としてビジョンを打ち出していくことが重要というご指摘について、事務局としても重く受け止めたい。(事務局)
  • ブリュッセル効果のように、自国の規制によりグローバルスタンダードを形成できる強い影響力を持つ国・地域では、国際的な合意による規範形成に対するインセンティブは生まれにくい。ただし、そうした国や地域に対しても、粘り強く多方面から働きかける中で、一定の落としどころを探ることは有効であると考えられる。
  • 越境データ移転やガバメント・アクセスについては、政府間の交渉だけでなく、企業や有識者を巻き込みながら議論を主導できると良い。
  • データ越境の規制に関する議論において、安全保障や環境保護等の大義名分を根拠とし、規制による非関税障壁を築く「レトリックの不均衡」と呼ばれる戦略を取る国が現れる可能性がある。そうした場合には、そのような政策によって流通の阻害や介入を行うことが、本当にグローバルな視点で公共の利益に適っているか、という点を検証することが重要である。また、その際に日本のビジョンを打ち出して対抗していくことも重要なポイントとなる。
  • 我が国として、国際的に幅広いステークホルダーを巻き込んでいくことが重要である。そのためにも、米国やEUがSNSでデジタル政策について積極的に発信しているように、発信メディアの活用方法の検討も重要である。
  • データ越境に関する課題の中には、当事者同士・業界団体同士のすり合わせ等で一定程度解決できるものもあるが、あえてIAPの場で政府として取り組むべき課題としてどのようなものがあるか、十分な検討が必要ではないか。
    • ご指摘のとおり、IAPでは、基本的には大きな粒度の課題を扱うことになると考えられる。継続的に企業へのヒアリングを実施しながら、各国による規制によって生じる不合理や矛盾等を整理していくことを通して、解決すべき課題を洗い出していきたい。(事務局)
  • データ流通に関しては留意すべき事項が多く、企業単独で規制に対応することが難しい場合も多い。このような状況の中で、各企業が各国の規制を個別に調査しなくてもよいような、規制の透明性を高める取組についてはニーズが高い。企業に対するヒアリングによるニーズ発掘は重要であるが、明らかにニーズが高い取組については、先行して取り組んでもよいのではないか。
産業データの越境流通のあり方について
  • データの保護・流通方針の検討にあたっては、データの性質ごとに、社会・政府というステークホルダーと、データを提供する企業というステークホルダーの間の均衡を考えることが重要である。例えば、安全保障に関するデータの取り扱いでは公共の利益が重視される一方で、企業秘密等、社会の要請よりも企業の利益が重視される領域もあると考えられる。
  • 政府として、国内産業の国際競争力を念頭において、守るべきデータを保護する「守り」と、我が国の強みが生かせる分野で自由なデータ流通を実現できるよう国際的に主張する「攻め」の双方を実現するための戦略が重要である。特に、「守り」において、データの越境までを考えた場合に、現状の法制度で十分に保護すべきデータの保護が可能かどうか、検証が必要ではないか。
    • 例えば、不正競争防止法については、域外への適用があるため、海外の企業に対するデータ保護の根拠となる可能性はある。他方、契約条項の域外適用等については、個別の分野によるところも大きいため、ご指摘の点を含めた整理が重要であると認識している。(事務局)
  • 我が国の企業が、他国のガバメント・アクセスや情報の強制開示に対抗する根拠として、通信の秘密だけではなく、欧州のデータ法のような法令が必要ではないか。そのような法制度によって、我が国の企業の自由を確保する方法も考えられる。
    • ご指摘の点は、事務局としても重要な論点と認識している。他方で、従来から日本では、明確な規制の策定を重視するEUと異なり、ソフトローによるアプローチが選択されてきた経緯もあり、必ずしも法制化が唯一の選択肢とは考えていない。日本に適したデータ規制の在り方について、継続的に議論して、日本としてのスタンスを定めていくことが重要であると考えている。(事務局)
  • 企業に対するガバメント・アクセスをある程度コントロールしていく上で、適正手続の観点が重要である。公益目的を名目に政府に提出したデータが、全く異なる理由で使用されることもありうるため、ガバメント・アクセスの手続が本当に公益に適うものであり、他の権利・利益を大きく害することはないのかという観点から検証を行う必要がある。
  • 憲法上、個人情報だけでなく、非個人情報についても、通信の秘密や住居不可侵等の規定を通して保護されるべきものと整理できる。ただし、企業が有する非個人情報については、安全保障との関連や秘密の重要性等によって、保護すべき度合いには差があることから、画一的な議論は適切ではないように思われる。
  • 産業データの管理については、原則として各企業が自由に定めることが望ましく、データ提供の形態や費用の有無等は、越境の有無にかかわらず、商業的合理性に基づいて、企業間の契約により決められるべきものと考えている。他方で、安全保障上の理由等により、一部のデータの流通について、輸出管理令や外為法等の既存の法制度の枠組と整合する範囲内であれば、一定の規制が行われることは、企業としても理解できる。いずれにせよ、データの取扱いのあり方に関しては、画一的に議論するのではなく、業界やデータスペースの単位で議論するのがよいのではないか。
  • プライバシー保護技術(PETs:Privacy-enhancing technologies)では、個人情報保護や暗号化が論点になりやすいが、必ずしも保護の対象は個人情報に限られない。より広く、データの本体を授受せずに、データが生み出す価値のみを共有するためプラットフォームとして捉え、これまでデータ共有が進んでこなかった業界でのデータ共有等に活用していくことが、普及促進につながるのではないか。
  • ご指摘のとおり、PETsが指すものは暗号化や匿名化だけにとどまらないため、データの価値を共有していくためのプラットフォームとしての位置づけも念頭において、今後の検討を行う。(事務局)
  • 我が国では産業用機械やロボット等の製品に強みを持つ企業が多いため、それらの製品から生み出される産業データは、日本企業の潜在的な競争力が高い分野といえる。産業データを資産として捉え、活用していくための考え方について、政府としての考えが示されるとよいのではないか。
  • データガバナンスの中でも特に、産業用データの共有や法制度については、世界各国で多数の文献が出ている一方で、それらの文献に対するレビューが学会でも進んでいない。そのため、そうした文献に対するレビューに取り組むことも重要である。
国内のデータ共有メカニズム・エコシステム形成について
  • 国内でデータスペースについて行われている議論は、データ共有の部分に論点が集中する一方で、契約や商行為に関する議論が乏しくなる傾向にある。他国での事業展開にあたっては、商行為や契約等、ビジネス的な戦略が不可欠であるため、まずは取組に関与する官民や個人等のステークホルダーを明確化するなど、ビジネス戦略の立案に向けた議論も必要ではないか。
  • データスペースについては、立ち上げや運用の費用負担が課題となりうるが、もし公的資金で費用を賄うとすれば、公益の増進という側面も重要となる。例えば、保険会社が保険加入事業者の労働環境をIoT等から得られるデータを活用してモニタリングし、保険料率を調整するような取組が進んだ場合、現在労働安全衛生法の執行に費やされている公共の費用を削減できる可能性がある。
  • 産業界で、データ活用に対して積極的な取組が進まない背景としては、個人データの取扱いに係る、コンプライアンスリスクの大きさが挙げられる。国際的なデータ連携の議論を進めるためには、規制緩和やサンドボックス、PETs等の対策を駆使し、データ連携のハードルが下げることで、新たなデータビジネスが生まれやすい環境を整備する取組が必要ではないか。また、同時に、企業に対してデータ連携によるメリットの視点を持ってもらうための働きかけも重要と考える。
  • データ管理における技術活用については、国内でデータスペースの考え方や国際連携、産業データの取扱い等について、分析や検討を行っている既存組織との連携も検討するとよいのではないか。

(4)次年度以降の国際データガバナンス検討会の対応方針の説明

  • 来年度は、国際データガバナンス検討会の下に産業データSubWG(仮称)を設置し、産業データのデータガバナンスの議論に継続的に取り組む予定である。(事務局)

以上