地方公共団体情報システムにおける文字の標準化に関する有識者会議(第1回)
概要
- 日時:令和7年(2025年)1月7日(火)17時00分から19時00分まで
- 場所:砂防会館およびオンライン会議
- 議事次第:
- 開会
- 議題
- 地方公共団体情報システムにおける文字の標準化に係る現状の取組みについて
- 検討事項について
- 意見交換
- 閉会
資料
- 議事次第(PDF/189KB)
- 資料1 地方公共団体情報システムにおける文字の標準化に関する有識者会議開催要綱(PDF/193KB)
- 資料2 地方公共団体情報システムにおける文字の標準化に関する有識者会議広報ワーキングチーム及び専門ワーキングチームの設置・運営について(PDF/149KB)(2025年1月15日更新)
- 資料3 地方公共団体情報システムにおける文字標準化に関する検討事項(PDF/1,783KB)(2025年1月15日更新)
- 議事概要(PDF/375KB)
関連政策
議事概要
日時
- 令和7年1月7日(火)17時00分から19時00分
場所
- 砂防会館/オンライン
出席者
※敬称略
座長
- 庄司昌彦(武蔵大学社会学部 教授)
構成員
- 小幡純子(日本大学大学院法務研究科 教授)
- 後藤省二(株式会社地域情報化研究所 代表取締役社長)
- 笹原宏之(早稲田大学社会科学総合学術院 教授)
- 白戸謙一(三鷹市健康福祉部健康推進課 課長)
- 原田智(京都産業大学 シニアディレクター(DX推進担当))
- 正木祐輔(神戸市 デジタル監)
- 犬丸淳(総務省自治行政局住民制度課 課長)
- 名越一郎(総務省自治行政局住民制度課デジタル基盤推進室 室長)
- 櫻庭倫 (法務省民事局民事第一課 課長)※欠席
- 国分貴之 (法務省民事局民事第一課 参事官)
- 簑原哲弘 (デジタル庁デジタル社会共通機能Gデータ標準化・品質向上支援担当 参事官)
準構成員
- 鎌仲正大(株式会社アイネス)
- 谷沢沙耶香(日本電気株式会社)
- 青木弘明(株式会社日立システムズ)
- 大村周久(富士通Japan株式会社)
- 川口真人(富士フイルムシステムサービス株式会社)
- 早瀬悠樹(株式会社両備システムズ)
- 吉田匡一(株式会社両毛システムズ)
議題
- 地方公共団体情報システムにおける文字の標準化に係る現状の取組について
- 検討事項について
- 意見交換
配布資料
- 資料1 地方公共団体情報システムにおける文字の標準化に関する有識者会議開催要綱
- 資料2 広報ワーキングチーム及び専門ワーキングチームの設置・運営について
- 資料3 地方公共団体情報システムにおける文字標準化に関する検討事項
議事
- 本有識者会議の設置については、資料1の開催要綱によることとし、構成員については別紙のとおりとした。座長については、武蔵大学社会学部 庄司昌彦教授に務めていただくこととなった。ワーキングチームの設置は資料2によることとし、広報ワーキングチーム主査に原田智氏、専門ワーキングチーム主査に後藤省二氏が指名された。
- 事務局より「文字標準化への今年度の取組と文字同定の現状」「地方公共団体情報システムにおける文字要件の運用に関する検討会の概要」「本有識者会議の構成」「有識者会議及び各WTの論点」に関する説明があった。
質疑
構成員: 今回扱われる外字、特に戸籍の外字について事務局より「戸籍にはくずし字や書き癖により様々な文字が存在する」という説明があった。これに補足をすると、くずし字や書き誤り以外にも造字(ぞうじ)、日本人が漢字の構成をふまえた上でそれらを組み合わせて意図的に新しく作った文字も含まれている。このような文字は日本の漢字文化の一端を担ってきた。今回は外字が議論の一つとなるため、いわば外字観も大事になってくると思う。ワタナベのベ(ナベ)のように字体以外にもそうした字種つまり新しく作られた字があり、それらをこの先どこまで電子化していくのかということもこの会議の重要な課題かと思う。
構成員: 今の話は資料3の3ページにあたると理解したがよろしいか。
構成員: そのとおりである。もしこの資料が今後も活用されるのであれば、「戸籍にはくずし字や書き癖、造字により」と、造字という言葉が入っていると良いのではないか。
構成員: 4点質問がある。
1点目は文字同定の義務付けとスケジュールについてである。資料3の13ページ目に『現在使用している「外字」を2025年度までの間に行政事務標準文字に同定することが不可欠である』としている。これは自治体に義務付けられているのか。標準化法に基づき本事業は進められていると理解している。標準準拠システムが全て2025年度中に移行完了するわけではないと思うが、文字の同定作業もそれに応じて期限が延びると、改製不適合戸籍の方の文字が今後デジタル庁に毎年のように次々と届け出られることになるのではないか。標準化の期限とは別に、文字同定の期限は定められるはずなので「いつまでに必ずデジタル庁に提出してください」と自治体に期限を示すべきではないか。
2点目は広報や対象者への処遇についてである。各自治体の判断で一定の広報はするとしても、同定対象者に個別の通知は必ずしもしないと認識している。しかし同定後に対象者から「私の漢字はこれではない」と意見が出る可能性がある。その場合にどのような対処をしていくのか。
3点目は法的根拠についてである。現在は文字同定手順書や文字包摂ガイドラインを技術的助言として提示している。技術的助言とすると、あくまで最終判断は自治体の責任になるが、自治体としては文字同定手順書や文字包摂ガイドラインに基づき同定できたとしても、住民から「その文字の使用は絶対に認められない」と言われた場合、「国のルールでこうなっている」と説明できる法的根拠はあるのか。デジタル庁の技術的助言ではなく、法務省の法定受託事務の処理基準ということで示すべきと思うがいかがか。
4点目は資料3の17ページの「文字の標準化に関してどこまでオープン化をしていくか」という点についてである。基本的にはオープン化する必要があると思う。住民に対し「国の方針として文字はこのような対応をすることになっている」と十分に説明できることが全国規模の文字標準化では重要である。
事務局: 1点目については、まだ省令にはなっていないが、標準化法に基づき、2025年度までに行政事務標準文字に同定していただくものと位置付けている。経過措置の間は外字を保持することも可能としている。
2点目について、広報の在り方は今後広報ワーキングチームでの議論を想定している。自治体によっては、字形が変わる方は少数に限られているため個別連絡を検討している所もあれば、一般的な広報は行うが、個別連絡はしない自治体もあると聞いている。一方で、自治体が住民に説明する際に苦慮することが無いよう、国としてどのような広報をしていくべきかについては広報ワーキングチームで検討していただきたいと考えている。
3点目について、戸籍に関しては法定受託事務となるが、同定事務はあくまで自治事務であるため、法令上は技術的助言に留まる。一方で、国の方針が明示されていないと自治体は住民に十分な説明ができないという声も聞く。文字が変わる理由や政策の目的等が分かりやすく伝わるような内容を広報ワーキングチームでご議論いただきたい。
4点目についても広報ワーキングチームでの議論に含まれるものと考えている。
構成員: 1点目については、これは資料13ページの4にあたるかと思う。
事務局: そのとおりである。戸籍は、現在の規定では期限を定めていない経過措置としている。
構成員: 標準化法の期限は自治体の事情によっては延期されると思うが「標準化法の期限に関わらず、必ず同定は完了してください」との期限を設けるべきではないか。同定できなかった文字については一旦、デジタル庁に届け出て、その後は必要に応じて行政事務標準文字への追加登録を検討するプロセスと理解しているが、「この期限までに必ず提出してください」と明らかにしないと、いつまでも毎年そのプロセスが発生してしまうのではないか。
事務局: 同定期限についてはご指摘のとおりである。基本的には同定支援ツールの活用は2025年度までと周知しており、同定自体も2025年度までに終えていただくよう案内している。
ただ昨年末の閣議決定にて基本方針の改定を行い、特定移行支援システムが位置付けられた関係もあり、一部の自治体においては2025年度までの同定はかなりハードルが高いと現状は見ている。原則としては2025年度までに同定を終えていただくよう進めている。
同定できない文字の届出については、文字同定手順書上では届出の様式をデジタル庁で示すとしているが、こちらはまだお示しできていない状況のため、早急に自治体に周知したい。その上で、一定の期限を区切った上で自治体に届出をしていただき、毎年作業が発生したり、行政事務標準文字への同定完了が遅れることのないよう注意をしたい。
構成員: 確認となるが、2025年度が期限となるので、それまでにデータ要件の1つとしての文字要件は、省令等を作って、2025年度末までに同定するということを決めるという理解でよろしいか。
事務局: 現時点で確定的な方針を決めているわけではないが、基本的にはそのような方向だと考えている。
構成員: テクニカルには、文字要件を含むデータ要件を2025年度末でなく、より早く施行期限を決めることも不可能ではないと思うが、そうではなく、2025年度末までを期限として示した基準を省令で作ろうと思っている、という理解で良いか。
事務局: 確定はしていないが、2025年度中に同定を終えていただくよう進めているので、現状はその認識である。
構成員: 広報ワーキングチームの関係で確認させていただきたい。戸籍の文字は戸籍の関係で「正」として残り、行政事務標準文字は行政事務の通知、証明関係について「正」の文字として取り扱う、と理解している。その上で、文字包摂ガイドラインや同定事例として、各種報道記事では比較的理解しやすいものが掲載されている。しかし、過去の検討会ではやや理解され難い事例も挙がっていたように記憶しており、様々な事例を示して議論を進めなければ、自治体も十分に住民に説明ができない事態になりかねないと懸念している。国にはオープンな議論を進めていただく必要があると感じている。
また、大学では漢字氏名が卒業証明書等に記載され、それが資格の要件となっているため、文字に厳格な正確性が求められることから、戸籍や住民票の文字と整合性を取る必要があり、かなりの数の文字セットを保持し運用している。本件は大学も大きな関心を持っていると感じているだけでなく、他に関心を持たれている分野もあろうかと思うが、オープン化は自治体以外の分野も含めての議論と理解してよいか。
事務局: 行政事務標準文字自体は自治体システムの中の文字の話だが、派生的に、それらをベースとした活用が教育機関や金融機関等の民間企業等、様々な場所で行われているのは事実かと思う。そのようなステークホルダーの方々にも取組を伝えて行く必要はあると考えている。
構成員: 本件は国民に広く関わる話であるため、オープン可能なものはオープンにするべきだとは思う。一方、過去の検討会で気になったのは、標準化の技術の世界では「これをオープンにしてしまうと横槍が来る」等の独特のルールもあると教わったところである。そことの整合性も目を配っていただければと思う。
構成員: 人の名前というのはアイデンティティや個人の思い入れの問題もあるので、標準化の難しさはあると感じている。一方、これからの時代は、行政としては、効率性も重んじなければならないことも理解している。自治体としては、システム標準化や文字同定によって行政事務が効率的になることは利点となるが、他方で、一部の住民から不服等の問合せが予想される状況もあるため、そこの板挟みになることが想像できる。そのため、国としても、システム標準化の仕組みを丁寧に作っていく必要があるだろう。
基本的な確認となるが、13ページの2の「国民向けの周知・広報」について、「字体は変わらず、字形が変わる」のみであり、いわば「デザイン差」である、としているが、資料7ページの大小・高低や長短は、確かにそのように見ることができるであろう。国民が普段目にする文字の中でも色々なフォントがあり、フォントによっては、同じ文字ではなく見えるパターンもあるくらいなので、その「デザイン差」の範囲であれば、それを標準化することには問題は少ないと思う。そうすると、それをわざわざ字形が変わったと対象者に通知をしなくても、行政事務を進められるケースは多いのではないか。広報として、「行政事務では今後このような文字の形に統一します」と伝えれば済むのではないか。ただ、全ての文字がそれで済む訳ではなく、大きく変わってしまう文字の対象者には「行政事務効率化のために文字形を変更します」と連絡する必要もあるだろうし、無断で変更すると住民からの問合せが来ることも想定できる。
伺いたいのは、本当に同定できない漢字は数量的にはどのくらいあるのか。割合的には、わずかなのだろうか。
事務局: 資料3の5ページの図を見ていただきたい。この図は、法務省の文字整備事業を示している。文字整備事業は東日本大震災の際に戸籍システムが被災したことを受けて、法務省が戸籍副本データ管理システムを整備しようとしたことがきっかけで開始した。まず、自治体の戸籍システムに実装されている文字を集めたところ、約163万文字あった。内容を精査するとその中には、実質的な重複もあったため、それら重複を除いたところ、約70万文字となった。その70万文字を、経済産業省で整備された約6万文字からなる「文字情報基盤」に同定することを試みた。結果として文字情報基盤に同定できたのは約55万文字であり、残り約15万文字は同定出来なかった。この約15万文字をどうするかが課題となったのだが、法務省としては、約15万文字を、字の成り立ち等でグルーピングし、約5万文字にした上で、それを全て登録しようということになった。
約6万文字と約5万文字、合計で約11万文字となった。ところが、その約5万文字で戸籍に使われていた文字をチェックしたところ、約4万文字は実際には使われていなかった。戸籍では使ってないが、「この文字は使う可能性もあるだろう」というベンダの判断の元、中国の古い漢字等が文字セットとして登録されていたというところである。結果的に、文字情報基盤の約6万文字と、文字情報基盤と同定が出来ず、実際に戸籍でも使われている約1万文字を加えた7万文字を、行政事務標準文字としたのである。よって、戸籍で使われている文字は、行政事務標準文字に同定できる、デザイン差の範囲で収まっている文字である。
事務局: 自治体における過去の戸籍の電算化の取組についてヒアリングをすると、自治体によっても違いがある。同定できない文字の規模感も自治体によって違う。自治体の規模だけではなく、当時の自治体の方針に従って電算化の際に同定をしていた自治体ではそこまで大きな影響が生じず、それ以外の自治体では、今後同定していく中で文字が変わってしまう人がそれなりに出てくるという傾向もあるのではないかというという印象を持っている。
事務局: 戸籍に記載された文字は、基本的には、全て行政事務標準文字に同定できるはずである。20の包摂基準のうち、大小・長短であれば、全ての自治体がデザイン差とみなせると考えるが、中には、デザイン差とみなせないものも存在している。よく例として挙がるのは、「杉」や「形」の字の右側の3本の線である。3本の線の傾斜が一番下だけ逆方向になっているものも、文字包摂ガイドラインではデザイン差としている。自治体の中には、「文字包摂ガイドラインではデザイン差であり、同定できるとしているが、明らかに違うのではないか」という意見もある。また、同様のご指摘が住民からも起こり得る。つまり、文字包摂ガイドラインを広く自治体や住民に理解いただくことが重要と考える。
構成員: とても大切な話が出てきたので発言したい。字形・字体は資料中で区別されて使われているが、これに関しては常用漢字表という文化庁から出た内閣告示・内閣訓令に示されている表の中に記載されている。字体は抽象的な字の形、概念であって、文字の骨組みとよく説明されている。対して字形は、例えば木という字が跳ねるのか跳ねないのか、そのような差が現実にある形であるが、この場合はデザイン差に過ぎず、字体としては一緒である、としている。その字体と字形の区別を、国語政策・漢字政策として文化庁が示している。
ただ自治体では、例えば住民基本台帳等は手書きの戸籍を電子化したことが主な理由だと思うが、デザインレベルの字形の差をかなり区別して住民票等に記載してきているようである。字形差に過ぎないと見えるものが多々存在しており、住民からすると「この文字が我が家の文字なのだ」と意識されることの1つの原因になっていると思われる。
ただ、文化庁は、文字というものは社会的な存在であって有用なツールであるといった考え方に基づき、先程の基準で字体・字形を分けている。しかし、日本中でこのコンセンサスが得られているのかというと、小学校等を見てもやや懸念がある。常用漢字表をよく見ると、固有名詞には直接適用しない、と読み取れる文言がある。例えばヨシダさんのヨシという字があるが、さむらいよしとつちよしといって、上の部分の長短の差について目立つ差として、区別を強く主張される方もいる。これは常用漢字表によると字形差に過ぎない、つまりデザイン差とされている。ただ多くの漢和辞典では、これは俗字であって字体が違うとしている。字形・字体という概念自体が十分には浸透していないということは、関係者としても、あるいは一般の国民としても感じているところである。
今回の会議は、文字を扱う電子政府事業の総決算だと思っている。そこで、このコンセンサスとアイデンティティの問題をどのようにしたら乗り越えられるのかということを、私も考えていかなければと思っているが、皆様からも様々なことを教えていただきたい。
構成員: 3点ほど申し上げたい。
1点目は運用面についてである。現在は文字同定順書や文字包摂ガイドラインを出していただき、自治体にとって非常に助かっている。かつては文字同定の作業工程は自治体職員の目視による職人技のようなところがあった。一定の基準やガイドラインが出ることで、一つの候補に特定され易くなるので、かなり文字同定作業の効率化が進むと思われる。
2点目はこれは他の構成員と同様の意見となるが、文字同定のスケジュールがいつまでかという点を明らかにすべきである。やはり期限は今回の会議の中で示す必要があると思う。標準準拠システムへの移行に向けて緻密にスケジュールを組んでいる自治体は多いと思われるが、これに文字の標準化も加わると自治体だけではなくベンダも含めて検討をしていかなければならない。原則や例外等もあると思うが、先行した自治体が損をすることはないように進めていただきたい。また、文字同定作業について国からの今後の費用補助の見通しも明らかになると良い。どの自治体も確認したい点と思われる。
3点目は広報についてである。今までは行政職員向けの資料として文字包摂ガイドラインや文字同定手順書等には専門用語が使われてきた。職員が住民に説明するための資料には分かりやすい言葉が使われると良い。その資料には、初級・中級・上級のような段階別のものがあっても良い。住民にどこまで周知できるかという課題はあるが文字の標準化が将来的には「住民サービスの向上や行政の効率化に繋がる」という目的も示しながら広報を進められればと思う。
事務局: 自治体への伝え方はしっかり検討したい。国民への広報はどのような媒体をどのように使うかということも重要であり、また自治体の職員同士で勉強するための資材も広報ワーキングチーム等でご議論いただきたいと考えている。
構成員: 事務局に質問となるが、資料3の5ページの中に改製不適合戸籍は入っているのか。
事務局: 入っていない。先程戸籍に記載されている文字は、行政事務標準文字に同定できるはずとお話ししたが、改製不適合戸籍の文字は、最後に残った同定出来ない文字である。
構成員: 今までの議論中、文字同定の話が、この5ページの中の話をしているのか、あるいはその5ページに出てこない改製不適合戸籍の話をしているのかで、デザイン差と言えるレベルなのかそうでないのかも変わってくるのかと思う。そこは今後、特に専門ワーキングチームで議論されると思うが、区別をした方が良い。また、経過措置について、文字の経過措置自体は別に特定移行支援システムでなくても使える経過措置なのかとも思う。そのような点含め、本日は口頭での議論になっているので、資料や文章で示して現状を明らかにすることを出発点として、構成員一同が同じものを見て同じ認識で議論できるような形で事務局にはぜひ準備いただきたいと思うし、我々も協力させていただきたい。
構成員: 文字の問題は本当に厄介で、私も現場での状況は良く理解している。綺麗に整理をしていくことは中々難しいことは重々承知をした上で、改めて申し上げたい。
ルールというのは分かりやすくならなければいけない。非常に複雑なルールというのは、国民にも理解されにくい。住民への説明は多くの場合は市区町村の職員が行うが、職員も理解が困難で正しく説明ができない可能性もある。
戸籍の氏名の文字は、住民の「思い入れ」もあることは理解出来るが、だからこそ、市区町村の戸籍窓口で住民に文字の変更について説明を行う際に、根拠を示して説明できることが大切である。また、行政事務は効率的に執行されなければいけない。文字を取り巻く様々な環境や課題に対しての作業や経費が増加してくることを懸念している。より効率的にするためにはどうするべきなのか。あらゆる事務では国民を特定するために、例えば医療機関、金融機関等の民間企業でも氏名の文字というのは非常に大きな要素になっており、取扱いに違いがあってはならない。言い方を変えると、行政事務標準文字の約7万文字というのは、人間が理解をして区別可能な数字を超えているのではないか。とすると、実際に人間が理解をして使える範囲に文字数を集約していく工夫も一定程度必要かと思う。スマートフォンで使える文字種類は、一般的なパソコンも含めて約1万文字とされている。この中で事務可能になると、医療機関や金融機関等の民間企業も含めて、文字が同じ形で表示ができるはずだ。それを目指すことも1つの方向性としてあり得るのではと思う。
戸籍には改製不適合戸籍がある。これは戸籍の電子化をする際に、電子化できない文字が含まれているため紙戸籍のままで残した戸籍となる。過去の検討会で調べたところでは、全国で改製不適合戸籍は約1万戸籍まで減っている。全戸籍数が約5,000万戸籍から約6,000万戸籍ある中で、これも世の中の変化に応じて住民の理解が変化してきたことの表れであるのかと感じている。
スマートフォンで簡単な手続きができる、スマートフォンやオンラインで申請手続きができる、30秒で完結できる、ということをデジタル庁は前面に出しているが、それを可能にするためにはこの戸籍の問題を再考することが必要である。将来の方向や着地点、期限を示した上で、改めて広く議論をするということはあっても良い。もし今回の有識者会議の中で議論をする余地があれば、改めて議論ができるとありがたい。改めて申し上げるが、市区町村の職員が住民にしっかり説明できるためにも、全体の整理を考えていただきたい。改製不適合戸籍が約1万戸籍あるとしたら、その戸籍の人たちの住民記録は電子化されているのかいないのか、されていたとするとその根拠は何なのか、ということも含めて検証しても良いと思う。JIS X 0213で収まっている戸籍の人は全体で何件居るのか、ということもこの際調べてみても良いのかもしれない。難しいことを問い正すつもりはないが、事務局からコメントがあればいただきたい。
事務局: 議論がどこまで進められるか課題だが、ご指摘いただいた点はそのとおりだと思う。一方で、文字を統一や標準化するのにも様々な難しい歴史があるため、最終的に約7万文字にどう集約していくのかが当面の大きな課題である。大きい将来の方向性はありながらも、当面の課題をまずは解決していかなければならない。そこの議論をまずは行い、大きい方向性等も可能であれば議論いただければと思っている。
構成員: 自治体は文字の問題で長く苦労を重ねてきた経緯があり、今回の議論で文字の問題について終止符を打っていただきたいと強く願っている。
先程のJIS X 0213への統一の件は、私も個人的には本来はそれで良いと思っているが、現段階でそれを実現するのは難しいと感じている。大学の状況をみても氏名文字を正式な文書用とスマートフォン等での表示用に二重で持たざるを得ず、これが日本の現実だと思っている。二重で持たざるを得なくても、そのことを前提に文字の議論が打ち止めとなれば、私はありがたいと思って本有識者会議に臨んでいることをお伝えさせていただきたい。
構成員: 今回は広報をしていくと同時に、国民、あるいは当事者の方々、自治体の現場やベンダにどう受け止められるかもよく確認しながら進めていくことも大事かと考えている。
事務局: 最初に、文字要件の検討開始時にJIS X 0213で統一しようという構想があったという事実はお伝えしておく。しかし、自治体や様々な関係者に意見照会したところ、まだその段階ではないという意見が大勢を占めた。 以降、この議論については、ある程度の理想は描きつつ、段階的なステップを要するものとして進めてきた。そのステップが、今回の行政事務標準文字である。7万文字は少し多いが、一方で、7万文字あれば、戸籍に関してはデザイン差の範疇で収まり、個人のアイデンティティにも配慮できる。まずはこれで1つ山を乗り越えた形になったと思う。それでも一部の方々は文字が変わることについてご指摘されるかもしれない。広報ワーキングチームで次の山を乗り越えられるようなものを考えていただいて、ステップを上がって行きたいと思う。国民の皆様にご納得いただけるのであれば、次はJIS X 0213への統一という道筋も作れるのではないかと思っている。ただ、現状として行政事務標準文字が国民に十分に認識されていない。例えるなら柿の木の実が熟してポトンと落ちる時に、また新たな道筋が作り出せれば良いのではないかと思う。ぜひ皆様の英知を結集して、一緒に考えていただければと思っている。
構成員: 蒸し返すようで恐縮だが、基本的に文字の問題の大部分は氏名の問題と思っている。氏名は自治事務である住民基本台帳等様々な場所で使っているが、結局は法定受託事務である戸籍から引用しているので、法定受託事務である戸籍事務として、「氏名は包摂基準に従っていただきたい」等の処理基準は出せないのか。
包摂基準でデザイン差としているものについて、自治体ごとの判断で、住民からの要望があるから別字として扱うということを許すのはかえって自治体を困らせ、適切ではないと考えている。同じ氏の親子が別自治体の戸籍にあることも考えられ、例えば杉の字について、A市は包摂基準に従って統一しているがB市では別の字と認めるということがあるとすると、A市はB市に倣って基準を緩くせざるを得なくなる。よって、国のルールとしてこれは従うべき処理基準だという形で明示しないと、遵守することなく次々と基準が緩くなってしまうのではないか。
事務局: 戸籍に関しては、経過措置の期間がそもそも違うということがあり、また、文字の同定に係る事務については自治事務である以上、法令上、この点について処理基準を策定するというのは困難である。
一方で、自治体毎に同定結果が異なり、情報連携ができないことは避けなければならない。技術的助言ではあるが、文字包摂ガイドラインに従い、情報連携や住民の利便性の向上という観点も含め、自治体事務の効率化という観点から推進できるよう支援の方法は引き続き検討していきたい。
構成員: 最初の構成員の質問で、義務付けなのかという質問があった。標準化法に基づく省令で定めたものが義務付けされるため、正確に言えば現時点では省令が無いため義務付けの内容は決まっていない。一方で、標準仕様書が公開されているため、その多くの部分が省令化されると自治体は想定しているだろう。その上で、同定の仕方のプロセスは恐らく義務付けされることはないのではないか。同定の仕方自体は技術的助言だが、同定結果はこの文字なのだということを義務付けてしまえば、自治体からすると、国が示した標準化法で選択肢は約7万字となり、その中でどれを選ぶかということになる。問題は、現在の標準仕様書では経過措置があるため、経過措置を使用するか否かは正に自治体毎の判断になってしまう。自治体の中でも様々な意見があると思うので、丁寧に聞いていくべきである。想定される自治体の意見としては、1つ目は、国が方針を明確に示し、自治体はそれに基づいて住民に説明するという意見である。その意見を尊重すると、これから作る省令では自治体の裁量範囲を無くすことが考えられる。2つ目は、各自治体で住民との距離感も異なるため、自治体の裁量の余地は残して欲しいという意見である。そのような自治体の裁量の余地を残そうとするのであれば、省令における標準化として原則は示すものの、自治体における裁量の幅を残すような書き方になるのではないか。
特に基礎自治体である市区町村が住民行政を直接担っている立場でどのような考えを持っているのかを、ぜひこの有識者会議やワーキングチームの場を通じて聞いた上で、皆様が納得できるようなものを作ってく必要があるのではないか。
事務局: 標準準拠システムで取り扱う氏名等のデータの文字セットは行政事務標準文字とすることを省令化する予定である。ご指摘があるように「この文字はAに同定される」という同定のプロセス、包摂基準そのものは、技術的助言である。例えばある外字を、ある自治体はA、別の自治体はB、とそれぞれ異なる行政事務標準文字に同定することは、現時点では許容せざるを得ない。この包摂基準そのものを省令にすることは考えていない。
構成員: 改製不適合戸籍も重要なポイントという点について補足をすると、法務省では改製不適合戸籍を減らすための努力をされている。また、JIS X 0213の内実について率直に話すと、経済産業省で20年以上前に設けられた委員会では、最初から字数に上限が設けられており、その中で第3、第4水準を作り上げていった。名字や名前は、NTT電話帳のデータが当時提供され、それを参考資料として字を拾っていくという進め方をした。その結果、外字が減ったが、名字の全ての文字を補ったということでは全くない。そもそもNTT電話帳に掲載していない人の方が人口からすれば多かった。下の名前の字はかなり厳しい選定基準が設けられたので中々採用されず、取りこぼされた文字の方が多いということが現実である。そして、JISも包摂規準があり、これもデジタル庁や法務省の方で作られた包摂基準よりもJISの方が概して緩く、1つのコードポイントの中に様々な字体が入っている。また、NTT電話帳自体もかなり緩い包摂基準のようなものを作って運用していたことも作業の中で分かっていた。従って、JIS X 0213に入っている文字は固有名詞も多く収めようと努めたわけだが、独自の包摂規準とそもそも全数調査ではなくサンプルに基づく作業であったため、どこまでご期待に添えるかということがあると思う。
構成員: 他に意見が無ければ、議事をここまでとさせていただきたい。
事務局: 文字要件の運用に関する論点整理をはじめ、本日いただいたご意見以外についても何かある場合は、1月21日(火)までに事務局までご意見をいただきたい。
また、次回、第2回有識者会議は3月24日(月)午後3時からとなる。
以上