本文へ移動

AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループ(第6回)

概要

  • 日時:2024年5月23日(木)13時30分から15時30分まで
  • 場所:オンライン
  • 議事次第:
    1. 開会
    2. 議事
      1. 事務局説明(第5回AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループにおける主なご意見、報告書(案)の主な記載内容、今後のスケジュールについて)
    3. 意見交換
    4. 閉会

資料

議事録

児玉参事官: はじめに事務連絡です。本日の会議は、完全オンラインでの開催となります。構成員の皆様は、会議中はカメラオンで、発言時にはマイクのミュートを解除いただきご発言をお願いします。なお、他の方が発言されている際は、ミュートにしていただければと思います。また、傍聴者の方は、カメラ、マイクをオフにしていただきますようお願いいたします。

次に、資料を確認します。事前にお送りしました議事次第に記載のとおりとなりますが、資料といたしましては、議事次第、構成員名簿、事務局説明資料、報告書(案)、構成員提出資料、出席者一覧となります。お手元にない等の状況がございましたら、Teamsのチャット機能、もしくは事務局までメールにてお問い合わせいただければと思います。本日の出席者については、時間の制約もありますので、失礼ながらお手元の出席者一覧の配布をもちましてご紹介に代えさせていただきます。なお、後藤構成員が途中参加される予定、落合構成員、酒巻構成員、須田構成員、西成構成員、吉開構成員が途中退出される予定と伺っております。

今回は前回に引き続き、DADCから大野様、菅沼様も陪席者としてご参加されています。なお、本会議の資料及び議事録は後日公開となりますこと、ご承知おきください。
それでは、ここからの進行は小塚主査にお願いしたいと思います。小塚主査、お願いします。

小塚主査: ありがとうございます。それでは議事次第に従って進めてまいります。はじめに、議事2-(1)事務局説明です。須賀参事官、よろしくお願いいたします。

須賀参事官:
(以下「資料3:第6回事務局説明資料」に基づきご説明)
資料3:第6回事務局資料に基づき、報告書(案)の主な記載内容、今後のスケジュールについてご説明

小塚主査: ありがとうございました。これについて構成員の皆様からご意見をいただきますが、それに先立ちまして、波多野様からご提出いただいている資料がございます。第2回の会合にて、データの連携について時間をかけて検討することが必要だというご発言をいただいており、事務局と検討を重ねられたということで、今回、その結果についてご報告いただきます。波多野様、よろしくお願いいたします。

波多野構成員: ご紹介の機会をいただきましてありがとうございます。先ほど主査からご紹介がありましたように、第2回以降、自工会とサブワーキンググループ事務局との間で、データ活用に関する協議を並行して丁寧に進めておりました。今回は第6回として最終回となりましたため、その検討の結果を考察という形で皆様に共有させていただき、今後の検討の参考にしていただければと考えております。

この資料は、事故未然防止・走行環境改善の観点で、ニアミスデータを収集することに関しての技術的な考察です。ご存じのとおり、自動運転以外も含めて事前的に想定ができなかった事故について、その他のデータをある程度収集した上で、客観的に分析できていくことが望ましいというご意見をいただいていましたが、データを無作為に集めてしまうと、なかなか解析・分析につながらない、要するに不要なデータだけが大量に残ってしまい、肝心の重要なデータが意外と取りこぼされてしまう懸念があります。そのため、エビデンスとしてしっかりと役に立つデータの収集を考えていく必要があることを考慮すべき、ということが背景です。今回は、作動データの記録には主に二つの領域があると考えています。一つ目は、事故原因を解析・分析するために必要なデータが考えられます。これは前回本田技研様から紹介いただいたような、法的な拘束力を持つ最低限のデータ収集によって、しっかりと法律に則った事故分析ができるという側面がある一方で、ニアミスデータといわれる、直接的には事故に至っていない、何らかの不安全に繋がる可能性がある状況をある程度捉えていくと、事故防止や環境改善に役立つのではないか、という二つの側面があります。今回は特に、二つ目のニアミスデータを対象に考察いたしました。

最初に、ニアミスを「事故には至らなかったが、予め設定していた安全マージンを逸脱する可能性がある状態が観測されたシーンなどの事」を指す、と仮決めしました。こういったデータを獲得しようとすると、いくつかの課題が考えられます。ニアミスに限りませんが、動作記録であるため、そもそも対象となるシーンを記録開始するためのトリガー条件、要するに記録開始のきっかけを決めた上で、正しく対象シーンが分析・解析できるように必要となる最低限のデータセット、これはデータの種類や数、記録時間などを含めたデータの組み合わせを指しますが、こういったことを予め決めておく必要がございます。また、トリガー条件が成立しないことも考えられます。これはすなわち、事前的に記録することが想定できていないというシーンに直面しているわけですが、トリガーが発生しないため、こういったシーンは残念ながら記録することが困難です。こういったことも理解した上で、何に役立つのかを、前提として確認した上でデータを集めていくことも重要です。加えて、記録されるデータが、システムと走行している環境の組合せに固有の場合があります。すなわち、その車やそのシーンだけでしか計測できない、ということがあるため、他のシステムでも同じことが計測されるかの期待については、十分に留意して取り扱っていく必要があります。ニアミスデータを取得する場合には、しっかりと自動運転システムの観点から整理することが必要だと考えています。次のページをお願いします。

そういった前提の中で、実際にどうすればデータ収集になるのかを簡単にイラストを交えて考察します。データを収集する場合、事例として、前の車と車間距離を保って自動運転車が追従走行しているシーンを考えます。最初は車間距離を保っていますが、②において前の車が何らかの理由で急ブレーキを始め、車間距離が詰まりますが、まだ自動運転車は反応していません。③になり、ようやく車間距離が近すぎるということでブレーキを発生させ、これがトリガー条件になり、このまま双方が減速を続けますとやがて停止します。最終的にぶつかったかどうかが非常に大きなポイントがありますが、一連の流れとしてこのような作業の中から必要なデータを記録することになるかと思います。こうなると、正常であったのか、ニアミスであったのかの差が何かということを予め定義しておかないと、正常なシーンのデータばかりを記録してしまうこともありますし、トリガーの前後をしっかりと記録するように設定しておかなければ、トリガーの瞬間だけを記録しても何が起きたか分からないということもあります。前走車が不在でトリガーが発生した場合は、別の事象となる場合もありますし、先ほど申し上げたように当該車両のみに発生する場合もありますため、他の車も同じとなるとは限らないことにも注意が必要です。こういった点に配慮しながら、具体的なニアミスシーンをいくつか抽出してみますと、急激な加減速度の変化があった場合、想定外の周辺車両の接近があった場合、自車が予定の走路を逸脱してしまうような場合と、いくつかトリガーとなる物理量と想定するシーン、同時に記録するデータが想定されますが、こういったことをしっかりとそれぞれのシーンに紐付けて記録していくことの配慮・事前の設計が重要になります。

次のページは、申し上げたことをイラストの形でまとめたものであるため、詳細は割愛しますが、このような形でいくつかのパターンが考えられます。こういったことを統計的に集めていきますと、例えば左下の事例でありますように、歩行者が横断歩道に進入し、自動運転車が急ブレーキをかけてしまうシーンが非常に多く計測されたような場所については、横断歩行者向けの信号を設置する判断に役立てる、というような走行環境の改善に向けた一つのエビデンスの獲得につながるかと思います。このようなことを、データを収集することにより、全体的な安全、社会受容性の拡大に使っていけるのではないかと考えております。
本日はあくまでも参考事例でありますので、今後、今回サブワーキンググループでお示しいただいた取組の中でさらに詳細を議論していただくことになると思いますが、参考にしていただければと思います。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。これも含めて、この後構成員の皆様にご議論いただきますが、私から1点お伺いします。トリガーと言っているものが当該自動車についてのデータであり、したがってそれが収集すべきシーンなのか、収集すべきシーンでないのかは後から決めることになるというご趣旨でしょうか。

波多野構成員: 両方が考えられますが、できれば事前にこのトリガーはどんなシーンを想定しているのかということを絞り込んだ上で、集めていくのが望ましいのではないかと思います。単純に事後で分析をしようとすると、トリガーに対して必要な同時に記録するデータが整っていない場合があり、折角トリガーがかかっても分析に資する状態にならないことも考えられますため、事前にある程度想定しておくことが重要だと思います。

小塚主査: ありがとうございます。仰っていただいた点を確認したかったところです。シーンも決まっていて、したがって自動的に抽出することができ、収集した必要な情報を抽出することができるということだとご発言いただいたと思います。ありがとうございました。

それでは、ここから残りの時間を使いまして、取りまとめの仕方、報告書(案)の内容、あるいはご説明いただいたデータ収集等々につきまして、皆様からご意見をいただきたいと思います。Teams上で挙手ボタンを押していただくか、あるいはチャットでお示しいただければと思います。お時間が限られている先生もいらっしゃいますため、それぞれ時間が近づきましたらご発言をお願いします。既に落合先生が手を挙げていらっしゃいますが、吉開先生が14時半までとお時間が限られているため、順序を変更し、まず吉開先生から一言いただけますでしょうか。

吉開構成員: ありがとうございます。報告書(案)に関して念の為二つほど意見を申し上げます。

一点が、報告書(案)の17ページに米国における訴追延期合意制度の紹介があると思いますが、私の知る限り、米国の訴追実務は日本の訴追実務と大幅に異なっていて、有罪を獲得する見込みが低い事件であっても訴追し、司法取引に持ち込んで決着させる場合があることや、あるいは訴追延期合意をしても、コンプライアンスプログラムを策定した後も企業が法違反行為を繰り返していることがあり、訴追延期行為は企業犯罪の抑止に役立っていないという評価もあると承知しております。訴追延期合意制度を議論するにあたりましては、こうした日米の実務慣行の違いや、訴追延期合意制度が持つ負の側面にも十分に配慮した議論をする必要があると考えます。報告書に書き込むほどのことではないにしても、ここで申し上げておきたいと考えました。

もう一点は、報告書(案)の23から24ページ辺りになるかと思いますが、四象限で整理されたとおり、自動運転車による事故が発生した場合でも、具体的予見可能性と結果回避義務違反の有無によって刑事責任の有無を判断するのは、これまで整理されてきたとおりだと考えます。しかし、実際の事故におきましては、こうした一般的・抽象的な基準を基礎としながらも、より個別具体的な事実関係を踏まえて刑事訴追をするか否かの判断がなされているものと考えております。今後、保安基準やガイドラインの具体化をする場合、例えば、本日髙橋構成員からご指摘があるかと思いますが、自動運転車が右折するときに、直進車が何km/hで走行してくることまで想定しておくべきか、といった基準を明確化しておくには、公開されている裁判例等を中心にして、これまで刑事責任を問われた個別具体的な事故の対応を分析することが必要だと考えております。今後、保安基準、あるいはガイドラインの定量化を図っていくとすると、こういった裁判例等を参考にしなければなかなか定量化が難しいと思います。それによって具体的な基準を言語化し、道路交通法を機械可読化していくことが可能になるのではと考えております。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。いずれも重要な点であると思います。報告書に反映することができればと思います。

それでは、落合先生にご発言いただけますでしょうか。

落合構成員: ありがとうございます。今投影いただいている資料について発言をさせていただきます。今回提出させていただいた資料につきましては、データ連携や事故調査、ルールのアップデートの関係についても明確にしていった方がよいところがあると思いましたため、作成いたしました。これまでサブワーキンググループで議論した中で、この図にある部分で申しますと、左下の「保安基準/ガイドラインのアップデート」に触れさせていただいておりましたが、事故調査どういった形で設計されるのかは今後議論があると思いますが、マクロにおける事故やニアミス情報の収集結果・分析結果については、保安基準や、場合によって交通ルール自体にも反映されていく形が重要なのではないかと思っております。この際に、保安基準やガイドラインのアップデートだけではなく、交通ルールのアップデートも順次必要になってくる場合があろうかと思いますし、それにあたっては裁判例や行政処分の例についても踏まえていく必要があると思います。また、事故やニアミス情報だけでなく、マクロの方に記載した技術情報等もしっかり収集していき、それぞれの保安基準、ルールの側面でアップデートをしていくことで、適切なルール形成が図られていくのではないかと思っております。これに対して、事故情報の収集をするということについては、メーカーの方や、実際には運行供用者もおられるかもしれませんが、細かくなり過ぎるため運行供用者は図内には記載していませんが、インフラの提供者からの情報収集もどう行っていくかということがあるかと思います。緑字で論点10として記載しています。また、このマクロの情報収集は、メーカーの方々にもフィードバックされていくというプロセスも必要かと思います。論点9として記載しています。こういったプロセスも必要だと思いますので、このような仕組みを通じて、実際にルールの側面もそうですし、開発における情報の連携・収集も進んでいくべきものだろうと思っております。もちろん個別事項のミクロについても整理がされていくことになっていますが、こちらについては、報告書(案)にも記載されているように、まだ今後捜査機関との関係性について整理が必要であったり、調査結果の公開・利用方法についてはまだ議論があったりするため、本来は左側から矢印が出ていくこともあろうと思いますが、現時点では検討中の部分もございますため、記載しておりません。実際には、図の右側の「データ連携」において、インフラ提供者とメーカーとの間でどういった情報連携がされるか、またそこでの責任の分界をどう考えるかという論点があると思いますし、論点12にて※印で記載した、メーカーと保険会社との関係性において情報連携をどうしていくのか、ということも論点としてあろうと思います。もしかすると、論点12において基金等が入るのであれば、その辺りも考えていく可能性もあるかもしれませんが、そこまでいくと仮定に仮定を重ねることとなりますので明記はしておりません。それぞれの情報収集、アップデート、開発の高度化が、それぞれの論点間で関係していることを見えるようにして、連携を取れるようにしていくことが、適切な全般の制度設計にあたって重要ではないかと思いましたため、こういった図面を記載し提示させていただきました。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。これも非常に重要なご指摘をいただきました。報告書(案)を見ますとデータ収集等をどう活用していくかという辺りについて少し書き方が弱い気もしますため、これも反映させていただきたいと思います。

続きまして、今井先生、よろしくお願いいたします。

今井構成員: ありがとうございます。まず、本日の波多野様のご報告について簡単な質問をさせていただきたいと思います。トリガー条件は、調査の過程で更新されていくと思ってよろしいのでしょうか。恐らく想定外の事故が多く出てきたときにニアミスという言葉を使うわけで、トリガー条件を固めておくと、素人の視点では見落としが多くなる気がしており、素朴な質問ですがお聞かせいただきたいと思います。

小塚主査: 波多野様、いかがでしょうか。

波多野構成員: ご質問ありがとうございます。ご指摘のとおりでございまして、注意事項のところにもありますように、トリガー条件は正しく設計しなければ、過剰に余計なものを取ることになりますため、運用に応じて適宜見直す、もしくは予めしっかりと分別しておくことが肝要かと思います。そういったものは、今後詳細な議論の中で、初期にどうしていくべきか、それから運用によってどうやってアップデートしていくかも含めて、議論していただけるのが望ましいと思っております。以上です。

今井構成員: ありがとうございました。後は簡単に意見を申し上げます。報告書(案)の取りまとめ、大変ご苦労様でございました。短期間であそこまでよくまとめられていて、感嘆しております。ただ、今後の課題もあるかと思っておりますため、ポイントだけ申し上げます。

まず、読んでいて気になった点として、自動運転車の説明において運転者が存在しないことを前提にして書かれていると思いますが、運転者に相当するものが存在する自動運転車という書き方もありました。その記述は、私の理解する限り学問的には正しいのですが、読者の誤解を招く可能性があるため、統一するか、あるいは実は自動運転車でも運転者が存在する場合があるということがここで共有されるのならば、追ってその旨、補充をした方がよいかと思います。

二点目として、自動運転車の挙動につき、いくつかの要請が書かれていて、最初に道交法を遵守すること、と記載されています。それでは対処できない場合として③、④が出てきます。③、④については、あまり議論する時間がなかったのですが、恐らく道交法を遵守しているだけでは危険が回避できないからこそ問題になってくる事態でしょうから、私の理解が正しければ、道交法を遵守するという原則はあくまで原則であり、例外をどのような場合に認めるべきか、という議論がなされてきたことを書いておく方がよいのではないかと思いました。

三点目に、過失についてですが、今までも民事と刑事の過失を比較して議論がありましたし、先ほど吉開構成員からも関連するご発言があったと思います。私も吉開構成員と同じように考えていて、裁判所がケースバイケースの判断を示していますから、例えば判例が結果回避義務を中心に考えているのだ、と割り切ることはできないと思います。私の報告でも申しましたが、恐らく裁判所は、あるいは起訴する検察官も、予見可能性と結果回避可能性を一体的に見て、過失の有無を検討していると思いますので、そういったところをよく配慮した上でまとめていく必要があると思いました。

最後に、調査機関の在り方については、落合構成員から補充いただき大変分かりやすいご説明をいただいたと思っております。その中でも仰っていたと思いますが、調査機関が調査対象者に対してどのようなことを言えるのかという議論、調査対象者の義務の問題は、かなりセンシティブであり、まだ議論が尽くされていません。そして、例えば相手方に義務を課した場合に得られる効用と、任意に話させた方が情報が出てくる可能性とを比較考慮しなければ、義務付けという問題は解決できないと思います。恐らく近未来の課題だろうと思いますため、仮にこのような意見が本日も多いようでしたら、そのように報告書に反映してはどうかと思います。私は、義務付けがここで合意されたわけではないと思っています。その辺りは注意して書いていただければと思っております。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。いくつもの重要なご意見・ご指摘をいただきました。次に髙橋先生、よろしくお願いいたします。

髙橋構成員: 私のレジュメの投影をお願いします。今まで、保安基準作成にあたって問題となる点を三点申し上げてきました。38条1項、36条、42条、70条です。これは今まで説明したとおりであります。
もう一点、34条の問題があります。これは前回のサブワーキンググループ終了後にある構成員の方から指摘されて、確かに34条も非常に問題となると思っておりました。この34条には、右左折するときの具体的な方法が書かれています。3ページとなりますが、左折するときには道路の左側端に寄って徐行することや、右折するときには道路の中央に寄って内回り右折するといったことが書いてありますが、実はこれは、従っても従わなくてもあまり事故は起きません。問題は、赤字で記載している「実際に刑事責任で問題となるのは右左折の方法それ自体の違反ではなく、対向直進車との右直事故で、右折車は直進車の速度超過をどこまで考慮すべきか」であり、かなり争われる点です。
次のページを見ていただくと分かりますが、裁判例がばらばらです。直進車が法定最高速度あるいは制限速度を10~20km/hは当然超えるだろう、ということは想定しなければいけないことはもちろんですが、問題は、30~40km/hになると裁判例が分かれてしまうことです。30~40km/hを超えることは想定する必要がある、想定する必要がない、というように分かれます。どう異なっているかというと、例えばウの東京高判において、「20km/h程度超過することまで想定することはない」と書いてありますが、30~40km/hを想定すべきだという裁判例もあるのに比べると、随分低いと感じます。しかし、この具体的な事案を見ると、原付が歩道である路側帯を走っていて、原付がそこを走っていることを想定はできないため、20km/h程度超過することまで想定する必要はない、という言い方をしているだけなのです。このように、具体的な道路環境によってばらばらです。これを自動運転化するときに、どこまで想定すべきかが問題です。次のページをお願いします。

裁判例は、交通環境に応じてケースバイケースでばらばらです。ただ、少なくとも30km/h程度の超過は想定すべきという点は、概ね多くの裁判の大勢ではないかと思います。ただ、自動運転を可能にするためには道交法を改正して、一応念の為40km/hまで想定すると一律に書かない限り、プログラムするときに自動運転車として読み込めないのではないかと思います。特に注意しなければいけないのは、右直事故では、直進車は黄信号になったため慌ててスピードを上げる、あるいは赤信号になる直前くらいに交差点まで近づいているため、スピードを上げることです。ですから、この40km/hの想定も、交差点から何m手前で何km/hを想定するのかどうかまで検討しながら、できるだけ一律にプログラミングする必要があります。これが一点目です。

もう一点、民事のことについてお話しします。報告書(案)の25ページを見ていただきたいのですが、第三段落において、自賠法について記載されており、自賠法は当然立証責任が転換されていて、加害者側が責任を負います。次のページをお願いします。1.3.3の第三段落において、民事上の責任に関し、「この場合において、損害賠償請求を行う被害者(自賠法に基づく運行供用者責任を追及する場合を除く。)及び求償請求を行う保険会社は、民法第 709 条に基づく請求においては、自動運転車が保安基準等に適合していなかったことと損害との間の因果関係(保安基準等に適合していれば、事故は防げたこと)について主張立証する必要がある」と記載されています。実際の裁判では、運行供用者と加害運転者が同一であるオーナーカーであればほとんど問題はありませんが、例えば会社の車を従業員が運転している場合は、従業員が加害運転者で、会社が運行供用者となります。会社は運行供用者として自賠法に基づいて立証責任を転換させられていて、ほとんどどんな場合でも責任ありとなります。これに対して、加害運転者は民法709条に基づくため、加害運転者は、被害者側が立証してこない限り損害賠償責任を負わなくてよいのか、という話になりますが、そうではありません。実際の実務においては、訴状や判決文には「被害者は加害運転者に対して、民法709条に基づき金何円の損害賠償責任を、運行供用者に対しては、自賠法3条に基づき金何円の損害賠償をそれぞれ求める」と並列的に書きます。裁判所はどう判断するかというと、709条の立証責任をほとんど無視し、自賠法だけを考えます。自賠法3条で反証できることはほとんどないため、責任はありとします。そのときに、民法709条に基づいて訴えられている加害運転者も、実は立証責任を考えず、自賠法と同じように考えて責任ありとします。これが実務の運用です。報告書(案)では、709条が非常に強調されて書かれており、自動運転になると709条がかなり表に出てくるイメージがありますが、ここは問題があると思います。実際には、709条で立証責任が被害者側にあるとして裁判をしている事例はゼロであり、全て自賠法でやっています。加害運転者も運行供用者も、全て事実上自賠法でやっています。なぜそんなことが許されるかについては、例えばこれは殺人事件等とは少し異なると思います。殺人事件であれば、被害者になることはたまにあるかもしれませんが、自分が加害者になることはほとんど想定できません。しかし車の世界は異なり、誰でも被害者・加害者になります。1億2000万人全員が被害者になりますし、その半分が運転免許を持っていれば、6000万人は誰でも加害者になる可能性があります。ですから、そういった互換性があります。そういった場合には、事故が起きたときには最低限お金で補償し、立証責任がどうかという難しいことは考えず、とりあえずお金で解決しましょう、ということです。そのために全員保険金を払ってプールし、お互い助け合うという社会連帯共助の精神のような部分があるわけです。これが今の自動車社会の基本です。このシステムがあるからこそ、皆が安心して車を運転し、不安はあるものの、外を歩けるわけです。これが自動運転になったときに、民法709条が表に出てきて、被害者が立証責任を負う等といったことが顕在化すれば、恐らく被害者としては怖くて外を歩けなくなり、オーナーカーなんて持てなくなります。そのようなことが世の中にまかり通っていれば、自動運転に対する社会的な信頼も失われるはずです。ですから、今まで私は刑事責任のことを中心に言ってきましたが、民事においても色々と問題点が残されていると思います。ここでは、自賠法3条という考え方を維持していただきたいという点を強調させていただきます。報告書(案)の25ページにおいて私が少し心配しているのは、「レベル 5 のオーナーカーに係る運行供用者責任の考え方についても、技術の進展や新たなビジネスモデルの状況も踏まえつつ検討していく」とありますが、この検討は、誰が運行供用者になるのかという検討であれば理解できますが、立証責任の転換、つまり被害者側に戻すことまで含めて検討するのであれば、大反対です。そこの部分を、報告書にてもう少し明記していただきたいと思っております。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。いろいろご意見いただきましたが、最後にご指摘いただいた点について申し上げますと、国交省の2018年の報告書では、「レベル4までの自動運転について当面」という書き方をしていますので、引き続き検討が必要であるというニュートラルな意味だと理解しています。その方向性についてご指摘いただいたと承りました。

それでは、続いて稲谷先生お願いいたします。

稲谷構成員: ありがとうございます。初めに、錯綜した議論を丁寧にまとめていただいた事務局に改めて御礼申し上げます。私自身にとって、このサブワーキンググループは本当に学びの多いものでしたので、参加された先生方の闊達なご議論についても御礼申し上げます。

今回の話は、データに基づいて安全基準や道交法含む関連法規のアップデート、また、波多野様からご指摘のあった道路環境そのものを変えるという意味での社会システムのアップデート、そして、それらに紐付く形で責任法制を回していくこと、さらに、その際に科学的知見に基づく調査結果を利用して責任法制を運用することで、結果的に科学技術の発展・普及に応じて法システム、社会システム自体がアップデートされていきながら、適切にリスクをコントロールしていくというような法システムの構築が目指されていると理解しています。これは、WEFやOECD、G7等でも注目され承認されている、いわゆるアジャイルガバナンスと呼ばれる新しいガバナンスの仕組みの実現に向けたとても重要な一歩だと思っております。過度に萎縮することなく責任あるイノベーションを実現する上で、非常に大きな前進が見られたのではないかと思っております。他方、いろいろな先生方がおっしゃるとおり、いくつか検討すべき点が残っているかと思います。その中でいくつか取り上げますと、例えば、これは経路依存的な問題がありますが、これまでの責任法の運用や解釈の仕方と関係する難点が少し残っているかと思います。これは先ほど髙橋先生が言及されたことと関係するかもしれないですが、私の理解では、これまでは個別具体的な結果の発生を対象に決定論的に因果関係を捉え、そこと関係のある過失をどうするのかという議論をしてきたと思います。今回問題になっているのは、むしろ蓋然的な危険性を社会全体でどのように抑え込んでいくのかというタイプの議論で、ここの嚙み合わせの悪さはどうしても残ってしまうと思います。ここは、立証責任や立証対象に関する法的利用の見直しや責任法制の在り方そのものを検討していくということにつながってきますので、我々学会としても継続的に議論していく必要があると思いますし、私個人も貢献できればと考えています。

道路インフラの自動化の話はこれから出てくると思いますし、あるいは自動運転車と協調する複数のシステムが関係した場合にどうするのかという、いわゆるシステムオブシステムズと言われる複雑なシステムのリスクマネジメントの問題は、今回直接的には取り扱わなかったと思いますが、インフラが自動化された場合の責任分担の問題が出てくるということはこの会議体でも先ほど落合先生からご指摘がありました。そのようなことが問題になった場合、今回の管理の仕方はある種中央集権的なやり方で、政府が責任をもって安全基準を作っていくことにある程度重点が置かれています。このやり方をすると、原田先生からご指摘があったと思いますが、サービス・製品の提供者の責任と、責任をもってコントロールする規制官庁の責任との分担問題について、これは規制のアップデートにおけるマルチステークホルダープロセスの在り方そのものになるかもしれないですが、こういったものについてもより一層整理が必要になってくると思います。
また、システムが極めて複雑になると、将来的にはより自律分散的な方向を目指さざるを得ない可能性もあると思います。そうなると、先ほどの責任法の立て付けの見直しについても、無過失責任から完全な厳格責任への移行等も視野に入るかもしれないですし、安全性の維持のために利用されるデータ・情報の真正性をより厳格に担保するための仕組み、即ち自律的に安全性を向上させることができる仕組みを考える上では、企業の経済的インセンティブを利用する制裁制度や、あるいはデータの真正性を確保するための公益通報者保護・報奨制度を構築していく必要性も高まってくると思っています。この点につき、先ほど吉開先生より訴追延期合意は問題があるのではないかというご指摘をいただきましたが、私個人としましては、その問題についても、折角この会議体ですので、データ・エビデンスに基づいて議論していく必要があるのではないかと思っております。少なくとも、データの上では、このような制度がなかった場合とあった場合とでは摘発件数が大きく違っております。また、合意した後に合意条項違反があれば制裁を受けますし、さらに厳しい対応をされることで違法行為を抑え込む仕組みになっております。ですので、少なくともこのような制度がない場合と比較するか、又はデータ・エビデンスに基づいて既存の在り方の問題点について議論し、より効果的な制度にしていく必要があると思っています。実務慣行との違いについては、少し言い過ぎかもしれないですが、テクノロジーが関係する経済犯罪の分野におきましては、ウィニー事件、コインハイブ事件、プレサンス事件、大川原化工機事件等、様々な事件が問題になっています。この部分の実務慣行を所与のものにしてよいのかという点についても、そことの関係性を問題にするのであれば改めて幅広い視野から検討する事があってもよいと言えるかと思います。
最後に、いろいろ申し上げましたが、6か月の短期間で文句のつけようがないような完成形を作ることはそもそも難しく、また、これほど重要な論点について過度に拙速なやり方は望ましくもないです。ですから、これからも残された課題、あるいは議論として挙がっている課題について、科学技術の発展・普及に応じて、データやエビデンスに基づき継続的・迅速に法制度の在り方を幅広い視野から見直していくという、まさにアジャイルガバナンスを実践していくことが重要だと思います。今回サブワーキングの議論では、データやエビデンスに基づいてより良い法制度を目指すことに焦点が当たっていたと思いますし、その成果の報告書(案)にもこのようなことが書かれていますので、こうした点が確認できたという意味でも、今回のサブワーキンググループは大きな前進だったのではないかと思います。私からは以上です。

小塚主査: ありがとうございました。いくつか重要な点をご指摘いただきました。

続きまして、須田先生お願いいたします。

須田構成員: 須田でございます。私が主張していた事故調査については、非常に良い方向での結論が出ており、良かったと思います。しかし、書き方の部分で気になった点があります。事故調査は基本的には原因究明と再発防止が目的で、責任追及は警察がする仕事ですので、その点についてもう少し踏み込んで示されていた方がよいのではないかと思ったのが1点目です。
 
また、保安基準や道路交通法を見直した際、それに対してソフト・ハードをアップデートしていくということは重要ですが、現実的に、ソフト・ハードをアップデートするのは技術的な検討を要すると思います。パソコンやスマホのように簡単にアップデートできるものではなく、本当に正しく機能しているのかを検証しなければならず、場合によっては試運転も必要になりますので、踏み込んだ議論が必要だと思います。誰がアップデートするのか、例えば整備工場が行う場合、整備工場に責任が生じるのではないかといった話も出てくるのではないかと思いましたので、その点についての検討が今後重要になってくると思いました。
 
最後に、本文20ページの中ほど、事故・インシデント情報の収集・分析・利用(マクロ)の最後に「※『丁寧な議論』の結果を必要に応じて反映予定」と記載がありますが、この意味が分からず、どういう意味なのか教えていただければと思います。以上です。

事務局: 最後の点につきまして、「丁寧な議論」が事務局の中で固有名詞化しておりまして、大変失礼いたしました。内部メモのようなものとなってしまいますが、冒頭波多野委員からご説明いただいたお話を我々が「丁寧な議論」と呼んでおり、そのエッセンスを反映させていただきたいということで、書かせていただいております。

小塚主査: ここに本日、波多野委員からご説明いただいたことが入るということでしょうか。

事務局: はい、追加させていただければと思っています。

須田構成員: わかりました。

小塚主査: ありがとうございました。次に今井先生、落合先生から2度目のご発言の要望がありますが、時間の都合上、15時までの参加となる酒巻先生、西成先生からご発言いただけますでしょうか。はじめに酒巻先生、お願いいたします。

酒巻構成員: ありがとうございます。報告書(案)全体を読ませていただいて、特段個別の異論があるわけではございません。特に私の専門との関係で言いますと、事故調査に関わること、調査と捜査の調整について、短期的な検討課題にしていただいて具体的な話が進んでいくことが予測できるため、大変良かったと思っています。また、調査と捜査の関係につきまして、関係者に報告を求めたり義務付けたりすることについて、何人かの方から言及がありましたが、既に存在している運輸安全委員会等の事故調査と将来の防止に向けた会議体でも関係者からの情報提供や報告は古典的な問題として存在しており、今後続いていく問題であると同時に、調整を具体的に試みるべき重要な課題だと認識しています。
私、あるいは今井先生の専門である、犯罪あるいは犯罪捜査、刑事責任との関係で申しますと、捜査機関が、ある事実について犯罪があると思った時に捜査が始まりますが、犯罪があると思うかどうか、特に、自動運転についてはほとんど過失ですので、どこに過失があるかを考える際、調査と捜査で共通している大前提として、客観的な事実が何であったか、事故に至った機序は何であったかを確定することが挙げられます。犯罪の場合は刑事責任をどう評価するかという話ですので、共通する前提の部分について、まずはできる限り正確な情報収集ができる体制は必要ですので、そのような観点から今後の調査、捜査との関係の検討を進め、具体化していく、議論していくことが重要だと考えます。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。それでは、西成先生よろしくお願いいたします。

西成構成員: ありがとうございます。私も特に異論はありませんが、2点ばかり簡単なコメントを申し上げます。
一つが、現在システムが複雑になっていますが、悪意をもってこれを壊そうとするアタックが世界的に見ても多いです。その場合、ODD内でガイドラインに基づいていても、よく分からず事故が起きてしまうことがあります。そのような悪意を持ったプロがシステムを壊しに来た場合、どこまでそれを見破ることができるのかという非常に難しい問題も今後出てきそうだと思います。初めは予見可能性が無かったのが、一度経験することで対策の必要性を認識し、予見可能性ありとなってアップデートしていく必要があると思いますので、悪意に対する対策については検討すべきだと思います。
 もう一つは、インフラ提供者の話でありましたが、私は重要だと思うのが携帯電話のGPSによる位置情報です。例えば向こうに誰がいるか見えない交差点であっても、その位置情報を活用することで車と人の接近を検知できる可能性があります。こうした安全サービスについても将来は議論を展開していくとよいと考えました。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。非常に重要な視点をご指摘いただきました。それでは今井先生、お願いいたします。

今井構成員: ありがとうございます。
1点目は補充でございまして、既に須田先生と酒巻先生がおっしゃった点に関することです。須田先生がおっしゃったように、事故調査の目的は原因究明で、捜査機関においては責任追及でございますが、オーバーラップする事実に基づく判断になることは、酒巻先生のおっしゃるとおりでございます。これは古典的な問題でして、私も約20年前の独占禁止法基本問題懇談会で、川崎民商事件を契機としていろいろ検討してきました。それも簡単には結論が出ず、見切り発車的に良いものをその都度考えてきておりますので、酒巻先生がおっしゃったように、継続的に議論しながらニーズに応じた解決策を入れていくのがよいと思います。その際、義務付けて出てくるのではなく、情報を提出してくれるようなインセンティブを付与するシステムがあるかどうかということは常に考えていくべきでして、義務付けたら有益な情報が出てくるという話ではないと思います。この点は、稲谷先生もおっしゃっていたと思いますが、私もそのように考えています。
 
もう1点質問がございまして、髙橋先生へのご質問です。本日も大変有意義なご報告をありがとうございました。道交法34条と関連して、右直事故のご示唆がございました。右折車両がいる際、対抗する直進車両との関係で、どの程度のスピードを考慮してプログラムを作っておく必要があるのかというところで、おそらく髙橋先生のご提案は、現在直進車の方が黄色を見ると加速する場合が多いので、おそらくそれは道交法違反ですが、そういった現状をベースにプログラムを組むべきではなかというご示唆だったと思います。それは現実的な解なのですが、そうなりますと、自動運転車は道交法を遵守するという大原則ですね、アシモフの第一原則のようなものと矛盾してしまい、交差点に入ったときには自動運転車も加速して右折せよということになってしまう気がしています。それがよいかどうかは、統計的に事故が減るかどうかで決められるべきだと思いますので、髙橋先生のご提案には賛成すべき点が多いと思いますが、アシモフ原則のようなものを考えなければならないということになりますので、ご質問と意見ということで、ご指摘があれば教えていただきたいと思います。以上です。

小塚主査: 髙橋先生、お願いいたします。

髙橋構成員: ご指摘いただいて気付きました。全ての車が100%自動運転化したら、対向直進車が制限速度を超えるわけがないですので、私がここで問題にしているのは100%自動運転化されていない段階で、30%くらいは自動運転車で、70%がまだ自動運転でない場合に問題となるということに気が付きました。ありがとうございます。

今井構成員: 自動運転車を見て私たちがどう行動するのかという話にもなってきます。自動運転車の行動を見て皆が行動を変えてくれればよいですし、そこまで待つ許容性が私たちにあるのかという話にもなります。これはやはり、ODDが設定されている地域の状況を見ないといけないと思います。ただその際に、報告書(案)にコメントしましたが、過失を判断する際に事実上の慣行をどう評価するのかという部分は、民事・刑事で同じではない気がします。刑事では、みんなで赤信号を渡っているのだから、自分も渡ったのだと言っても、過失ありと認定されることがあるという点を踏まえて、コメントを終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

小塚主査: ありがとうございました。今議論している段階で、いきなり自動運転100%という世界を想定できるわけではないということが一方ではあり、他方で、道交法等のルールを、法律違反者がいるときにどう執行していくのかという問題があります。それを、今まで現場の運用で対応してきたものを機械化するときにどうしたらよいのかという問題は残っている、あるいは発生してくるであろうと理解しています。その議論を始めると奥が深いと思いますので、本日は先に進めさせていただければと思います。続きまして落合先生、お願いいたします。

落合構成員: ありがとうございます。私からは大きい点一つと、それ以外に三つほどございます。
まず大きな点としては、今回の検討会自体の目標が何だったかということを考えて、今後も発信していくことが重要だと思います。全体として、交通事故の被害者を減少させていくために、ソフトウェアをうまく組み合わせて自動運転車を社会実装させていこうという取組だと思いますので、この点は今後各所に打ち出す際にメッセージとして明確に持っていただけるとよいと思います。
 
その他の三つの点ですが、まず一つ目に、先ほど今井先生や酒巻先生、稲谷先生等も議論されていた、事故調査に関する報告の義務付けの点です。この点はインセンティブ設計されているのが重要だというのが共通していると思いまして、言い方として、稲谷先生が訴追延期合意制度の話をされたり、現行制度の話をされたりと様々ありますが、いずれにしても単に義務付けしただけでは必ずしもうまくいくわけではないという中で、いかに工夫して実効性がある形を作っていくかということは大事だと思います。本日もその方法が固まっているわけではないですので、この点については比較的早いタイミングでどのような工夫ができるのか考えていただけるとよいと思います。それにあたり、すぐにではないと思いますが、将来的には海外のソフトウェアメーカー、場合によってはビッグテックが関係してきたとき、本当に協力してもらえるようなインセンティブ設計になっているかどうかという点も、中長期的には問題になってくる可能性がございますので、そういった点もテイクノートしていただけるとよいと思います。
 
二点目が、道路交通法の機械可読化についてでございます。既に報告書(案)の中でもいくつかフィジカルな手段も用いることも含め、機械が利用できるように場合によってはルールを考えていくことが必要だという議論がされておりました。この点は非常に重要だと考えています。機械可読化の議論の際、規制改革会議やデジタル臨調で議論していても、どうしてもそのまま翻訳してしまおうという話になりがちです。しかし、ルールの記述方法がデジタル処理に適する形へ翻訳される場合、若干元のルールとは違った形で書かなければならないこともあるかと思います。その点は重要だと思いますので、同等の保護法益が保たれることは維持されるべきだと思いますが、そのまま書き換えても必ずしも良い書き方にならないことも多いと思いますので、その点ご留意いただけるとよいと思います。
 
最後に、須田先生がおっしゃっていた事故調査機関やアップデートの点ですが、非常に重要だと思いました。特に事故調査機関の関係において、特にミクロの点については新聞報道等も出ていて必ずしも捜査のためだけにやっているわけではなく、それとは別のものであるということは明確にしておいていただいた方が、誤解が生じなくてよいかと思っております。今回のまとめの中でも、今後詳細については議論すべきものであるものの、誤解を生む可能性がある議論が出かかっていますので、その点については牽制するような表現も入れていただけるとよいと思います。実際には、そこの部分をしっかり設定することが、資料提出や事故調査への協力をいただくにあたって肝になる部分だと思いますので、無用な心配が生じないように記述していただければと思います。また、須田先生が言及されたアップデートの点も非常に重要な点で、プログラムやプログラム医療機器、その他AIを組み込んだ場合やソフトウェアを組み込んだ場合に必出の論点になってくると思います。実務的には最も安全対策として重要になる可能性があるかと思いますので、その意味でも、須田先生のご指摘は重要だと思いました。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。続いて佐藤先生、お願いいたします。

佐藤構成員: ありがとうございます。事務局・構成員の皆様、この長大で多岐にわたる論点の報告書(案)を短期間でまとめていただきまして大変感謝しております。私自身も諸々コメントさせていただいて、大部分反映いただいたと理解しておりますので、特に具体的に議論するというわけではないですが、いくつか感想を申し上げさせていただければと思います。
 
まず、行政との関係ですが、迅速・適切に保安基準やガイドラインをアップデートしていくためには、なるべく多くの有用な情報を集めていくことが重要になってくると思います。ここに関連して、先ほども議論に出た保安基準のアップデートのところで、脚注57に少しコメントをさせていただきましたが、自動車に対してアップデートする前提として、例えば緊急性があるのであればある程度強制的にアップデートしていく必要もあるでしょうし、逆にアップデートがされていない自動車をそのまま運行させることも危険ですので、そのあたりをどのように整理していくかという点は今後検討を進めていく上で重要になると思います。
 
また、民事の関係ですが、もともとは平成30年の自賠に関する報告書があった中で、今回の様々な議論を踏まえて再度検討していくということで、具体的に2025年中に取りまとめると踏み込んで記載されているのは素晴らしいと思っております。私自身も当時役人として報告書の取りまとめに関与しておりましたが、髙橋先生もおっしゃったとおり、引き続き迅速な被害者の救済等は後退してはいけないと思っていますし、この報告書の中でも被害者の十全な救済については記載されておりますので、決して譲ってはいけないところだと思います。
自賠を離れますと、PL法関係につきましても議論を進めるということが示されております。EU等では一部AI等を使ったソフトウェアについても製造物に入れていくという議論がされていると理解していますが、日本においても議論をすること自体は非常に重要です。結果的にどこまでの製造物がスコープに入ってくるのか等、入り口の議論から難しいところがあると思いますので、結論として今の裁判例で十分対応可能と言う結論になる可能性もありますが、議論していくこと自体は非常に重要だと思います。
 
刑事関係で申しますと、自動運転を導入したとしても、過失責任自体は維持され、事案に応じて判断されるとしか示されていなかった中で、ユーザーや開発者からするとなかなか身動きを取りづらい状況であったのに対し、今回の取りまとめの中では、適正・合理的な内容の保安基準やガイドラインがあれば、処分を決定するにあたって適切に考慮するということが明確に示されておりますので、そこはかなり大きな前進だと思います。この点に関連して、報告書(案)の脚注53に遠隔監視者に関する記載があり、報告書(案)自体がコメントを縷々されていく中で、遠隔監視者の不注意それ自体が直接事故原因となる可能性は低いといった趣旨のコメントが元々入っていたと思いますが、今の仕上がりを見ると、削除されてしまっています。ここで想定されているような①のケースや②のケースは、そもそも遠隔監視者に過失があるようなケースが前提になっていると思いますので、もともとの大前提である、遠隔監視者の不注意それ自体が直接事故原因となる可能性は低いという趣旨は、改めてどこかに入れていただいた方がよいと思います。先ほど刑事の関係で申し上げたように、関係者からすると、どの範囲から過失があるのかという点がより明確になりますので、言っていただいた方がよいと思います。
 
事故調査機関関係についても、今回かなり前進したと理解していまして、以前役人をやっていた際には運輸安全委員会が自動運転車の事故調査をするというような議論をすること自体が難しいと思っていましたが、この報告書(案)において運安委が例示されていること自体、非常に大きな進歩だと思います。その事故調査の結果である報告書等については、保安基準やガイドラインのアップデートにも是非活用していただきたいと思いますし、民事の求償の実効性確保の観点からもうまく活用できるようになればよいと思っております。少し長くなりましたが、以上です。ありがとうございました。

小塚主査: ありがとうございました。今井先生、髙橋先生からご発言の要望がございますが、全体との進行の関係で、まだ発言いただいていない先生方にも一言ずついただければと思います。特に民事の話が佐藤先生のご発言でも出ましたので、後藤先生、その後中原先生にご意見いただければと思います。

後藤構成員: ありがとうございます。本日遅れてきてしまいましたので前半の議論をフォローできていないのですが、報告書(案)は、本当に短期間で幅広いエリアをカバーしなければならなかったと思います。まとめていただきましてありがとうございました。報告書(案)自体について私からお願いすることはございません。
今回何か結論が出せたというよりは、ロードマップを作ったという位置付けになるかと思いますが、おそらく一番重要なのは、民事責任の話も出ましたが、民事・刑事責任等をバラバラに議論するのではなく、行政規制も含めて全体としてどのような像を描くかということをかなり意識して議論が行われたということだと思います。これから個別の担当省庁に役割が投げられていくわけですが、結局そこでそれぞれ個別の話に戻ってしまう可能性も無きにしもあらずだと思っておりますので、デジタル庁等で音頭を取ってフォローアップを行い、どこかでスタックしてしまわないように全体としてどのように制度設計していくかという点を念頭に置いた議論が今後もなされていくことを期待しています。ありがとうございました。

小塚主査: ありがとうございました。中原先生、お願いいたします。

中原構成員: ありがとうございます。民事責任の観点につき、報告書に反映していただきたいという趣旨ではありませんが、今後の課題に関わる点について三点コメントさせていただきます。
 
一点目ですが、適切・詳細な保安基準あるいはガイドラインが今後定められていくことを前提に、それらを裁判所が処分を決するに当たって適切に考慮することによって適切な民事責任の付加が実現されていくという基本的な視点を打ち出した点に、今回の報告書(案)の意義があると思われます。言うまでもなく、コンセプトの成否はどれだけ具体化・定量化した基準を提示するかにかかっていますので、これに関する技術的な検討の進展を期待したいと思います。
 
二点目として、今申し上げた点に関わりますが、報告書(案)でも留保されているように、民事責任の賦課の判断は保安基準等への適合性だけを考慮要素とするものではないと思います。また、運行供用者責任や製造物責任の規律枠組みの中で、それをどう反映していくかということも未解決の問題であると思います。これはどちらかというと法理論的な問題で、進展を期待するとともに、私自身も取り組んでいかなければならないと思います。
 
三点目に、これも今申し上げた点から派生することですが、適切な責任賦課の要請、これは責任主体の側の要請ですが、その一方で、制度全体の主眼はやはり損害の填補ないし被害者救済を適切に行うこと、また、社会的に望ましい損害分担の在り方を構築することにあります。民事責任の制度が適切に機能しないのであれば思い切った転換も必要になってくると思います。その意味で、基金による損害填補という選択肢については、前回の原田構成員のプレゼンの中で行政による負担も含めたチャレンジングで具体的な提案がなされたものと認識していますが、これを主たる方法と位置付けるのか、それとも責任制度では限界がある場合の補充的な方法として位置付けるか等、制度設計も含めて法分野横断的な検討がされていくべきだと感じております。いずれにせよ、困難な課題について貴重な取りまとめをいただいた事務局の皆様、それから主査をはじめとした構成員の皆様に深く感謝申し上げます。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。それでは原田先生、お願いいたします。

原田構成員: ありがとうございます。先ほど言及いただきました提案につきましては、多分無理だろうと言いながら提案しましたが、本来はそういったことを考えなければ根本的な解決にはつながらないだろうと思っています。今回の報告書(案)につきましては、非常に短期間でありながらもこれだけ広範な内容をまとめていただいたという点は非常に意味が大きいと思っており、私も報告書(案)自体について特にコメントはございません。行政法に関して申しますと、まだ問題として顕在化できていないことが多いと認識しておりますし、責任制度と行動制御の関係についても学界全体として議論を盛り上げた上で制度化に向けた議論を熟していかなければと思っております。このような機会をいただき誠にありがとうございました。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。学界での宿題もいただきまして、私も学界の一員として責任がありますが、実務界の観点から横田様からもご意見いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

横田構成員: ありがとうございます。今回、自動運転の社会実装に向けての重要な位置づけとなるようなサブワーキンググループに参画させていただきありがとうございました。また、このような短い期間で報告書(案)を取りまとめていただいた事務局の皆様には感謝申し上げます。今後社会実装が進むにつれて事故件数が大幅に減少していくことは非常に望ましいと思う一方で、予見できない事故をはじめ、完全にゼロにすることはできないと思いますので、損害保険業界としては、そういった場合における補償面がインフラとして機能することにより、現行あるいはそれ以上の被害者救済を確保できるよう引き続き尽力してまいります。 
 
報告書(案)について、我々が提出した資料も取り込んでいただきありがとうございました。今後の重点施策の⑫の部分について、ここが、保険業界が中心にかかわることかと思いますので言及させていただきます。先ほども佐藤先生から言及もありましたとおり、元々平成30年の国交省の報告書で、自賠については従来の運行供用者責任を維持することをベースに今後検討していくことと思いますが、改めて漏れのない補償体制や迅速な被害者救済が担保できるように我々としても検討に協力したいと思います。
 
資料にも言及がありますが、一部物損にも触れさせていただきました。人身事故だけでなく物損事故についても、事故の大小はありますが、全ての事故がスコープから外れないようにという点も、改めてよろしくお願いします。その下の※印のところでも書いてあるとおり、自動運転に関連したデータについては一定必要になると思いますので、現在レベル3の自賠責保険については事故状況調査、あるいはそれを踏まえた事故原因究明の実効性確保というところで、自工会と自動車メーカーから保険会社にデータを提供していただく仕組みの構築の検討を進めておりますが、これがレベル4以上になっても同様の協力体制ができていくように、引き続き協議していきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。全体的な事故状況調査および事故原因究明の仕組みにつきまして、政府の皆様方におかれましては、体制整備を引き続き検討いただければと思います。

小塚主査: ありがとうございました。本日は藤田先生がご欠席ですので、これにて皆様からご意見をいただいたと思います。お待たせしていた髙橋先生、よろしくお願いいたします。

髙橋構成員: 事務局資料のフロー図右側の刑事責任のところで、白枠のところが従前どおり事案に応じた刑事責任と書いてあり、青枠のところには事案に応じた刑事責任と書いてありますが、これは保安基準を満たしていなくても、事案に応じた刑事責任を負わないこともあり、保安基準を満たしていても事案に応じた刑事責任を負うこともあるという趣旨だと思います。だとすると、報告書(案)でももう少し明確に記載した方がよいのではと思います。報告書(案)22ページの一番上の段落で、保安基準に適合する性能を発揮した場合には、事故が生じたとしても、道交法を遵守しており、これを予見又は回避することができなかったと原則として評価し得るものとして想定されると書いてあります。法律家が読めば原則と例外があるとわかりますが、ここについては、事案に応じて刑事責任が問われる場合もある等、フロー図に合わせて言葉を付け足した方がよいと思いますが、いかがでしょうか。
事務局:ありがとうございます。他意はないですので、そのようにさせていただければと思います。

小塚主査: ご指摘の点自体は、次のページの刑事責任のところには記載があります。23ページの冒頭には、「事案によった判断になるものの」と書いてあります。

髙橋構成員: 書いてあるのであれば結構です。もう一点、事故調査委員会の話なのですが、報告書(案)19ページのミクロの部分の第二段落に、重大事故等一定の事故の場合については、事故調査への協力を義務付けると記載されていますが、義務付けるというのは法律上強制的にというニュアンスが入っているのでしょうか。

事務局: 車両を認可する際、重大な事故を起こした場合には調査に協力して欲しいというように、認可の段階で条件付けするイメージを持っておりました。

事務局: 義務付けの対象者につきましては、自動運行装置の認可を取った者でありますので、メーカー等に協力を求めるシステムでございます。

髙橋構成員: メーカーの方はここが一番気になるところだと思いますが、実は被害者側も一番気になるところです。メーカーからすれば会社の内部情報ですから他社には知られたくないというところもあるでしょうし、被害者からすると同じ被害者を出さないために全ての情報を開示してほしいという気持ちもあるわけです。私も以前の回で言ったと思いますが、強制的な調査権限はある程度事故調査委員会に設けてもいいのではないでしょうか。この場合、事故調査委員会の委員は特別国家公務員のような形になると思いますが、そのようなものを視野に入れてもよいと思いつつ、強くやりすぎるとメーカーの開発意欲が失われますので、この点はどうすればよいのか悩んでおります。

小塚主査: 先生のご指摘のところは難しい問題があろうと思います。これは主査としてではなく構成員として発言しますが、私自身も消費者安全調査委員会という事故調査機関の委員を拝命しております。消費者安全調査委員会は消費者安全法に基づいて強制調査権限があるのですが、創設から10年間で強制調査権限が行使されたことは一度もなく、全て任意の情報収集によって活動してきました。このように、運用で微妙なバランスを取っていくという解決の仕方もあろうかと思います。しかし、大きく言えば稲谷先生がいつもおっしゃるインセンティブの構造の考え方を踏まえてどうしていくのが最適かということを制度設計に際して考えていく必要があると思います。よろしいでしょうか。

髙橋構成員: 今まで問われていたのは民事責任・刑事責任等の対外的な責任でしたが、もう一つ、懲戒処分という責任があります。組織内部の処分です。確かに、対外的に刑事処分等を受ければ、対内的にも懲戒処分等を受けることになるかと思います。そこのところを分けて考えて、インセンティブを与える等も一つの方法としてあるという気がしていましたので申し上げておきます。

小塚主査: ありがとうございます。海難事故等は、船員法に基づく懲戒処分が大きなインセンティブになっていると伝統的には説明されておりますので、そのような考え方は確かにあろうかと思います。ご指摘いただきありがとうございました。それでは、今井先生お願いいたします。

今井構成員: ありがとうございます。今髙橋構成員がおっしゃったことは改めて聞こうと思ったのですが、時間の関係もあるので、後の稲谷先生にお任せしたいと思います。私も業務用自動車事故調査委員会に入っておりますが、それは任意の調査権限しかありませんので、調査の際には苦労しておりまして、被害者の方々の気持ちに沿いながらできるところまでをやっております。その経験からすると、強制権限が無くても相当の事実は分かってきますし、事故の将来における予防という点ではかなり効果的なことも言えるのだろうということが私個人の意見であります。ですので、先ほど座長からあったように、塩梅よろしく、どういう権限を持って抜かずの刀をどう置くかということになるかもしれないと思っております。これは稲谷先生にお任せします。
 
もう一つは、先ほど佐藤構成員がおっしゃった脚注53のところです。先ほど言い忘れていたのですが、この点の記述は今後かなり検討を要するだろうと思います。遠隔監視者が終了させる措置を取らなかった①の場合、日本ではこれでもレベル4だと言われていますが、実際はレベル4に至っていない場合だと思います。ということは①と②では、①の方では運転者が実は遠隔監視している人になっている可能性があり、②の方が本当の自動運転になっています。そういう認識をほとんどの方もお持ちになっていないので、ここはこのままでいいのですが、おそらく、自動運転の定義と運転者の定義、それから遠隔から運転者でなくても何ができるのか等といった要素を組み合わせないと結論が出ないところです。さらに、ここに記載のとおり複合的な要因ということで因果関係の認定が民事と刑事で違ってきます。民事の場合は共同不法行為の前提で因果関係が問題になります。刑事でも同様ですが、因果関係の点が明確になっていません。実は非常に大事な部分ですので、今後要検討である、のような旨を追記いただいて、やはり結論が出ていないということを、ここで合意が取れれば加筆していただければと思います。佐藤構成員の発言を聞いて改めて思いましたので、発言させていただきました。以上です。

小塚主査: ありがとうございます。事務局から補足があるとのことです。

事務局: こちらの点について、真逆の記載になってしまっていて申し訳ございませんでした。まさに今、先生方からおっしゃっていただいたような趣旨で、細かく分岐を見ていかないと具体的な議論はできず、結論としては両方どちらも有り得るというご指摘があったために、結論を逆に書き直してしまっているという状況ですので、正確に書き下しながら、引き続きといったようなニュアンスも盛り込ませていただければと思います。

今井構成員: ありがとうございます。①と②では自然人の役割が違いますので、今のご指摘のとおり記載いただければと思います。

小塚主査: ありがとうございました。稲谷先生がお手を挙げておられますので、よろしくお願いいたします。

稲谷構成員: インセンティブの話をするつもりで手を挙げたわけではなかったのですが、ご指名いただいたので後でその話は改めて簡単にご説明しますが、その前に少し確認なのですが、先ほどの髙橋先生とのやり取りの中で、特に報告書(案)の内容を修正することはないという理解で大丈夫でしょうか。先ほどご懸念になっていた話は基本的に文案に反映されていると思いますので、特に反映、変更する必要はないと思っていますが、よろしいでしょうか。

髙橋構成員: はい、その理解でよろしいと思います。感想を述べさせていただいたまでです。

稲谷構成員: 先ほど中原先生からもお話がありましたが、また、ガイドラインがより良い内容に適宜アップデートされていくという前提ですが、今回の報告書(案)では、そこがきちんと果たされている限りは、責任事由の解釈において適切に考慮されるということによって萎縮効果を下げ、同時に安全なものを作らせるという両立を目指していくという、ギリギリのバランスの上で作られていると思いますので、そこは動かさない方がよいというのが私の意見でしたため、そこが動かないという点には異存はございません。
 
また、インセンティブの話ですが、簡単に言うと二つの制度を組み合わせることで基本的に可能になると思っております。一つは、自分から早く協力すればするほど結果的に課徴金等の制裁金の金額も下がっていき、また、捜査対象、特に強制捜査等の対象となることによる負担が起きるということも気にしなくてよい方向にもっていくということと、もう一つは、公益通報者保護・報奨制度を用意することによって、企業の中で悪いことを放置すると企業側がより大きな経済的損失を被ることになるということを強く認識させ、結果的に嘘をつかないで自分から情報を出していくように仕向けることで、捜査や調査に関する企業側及び公的主体側の負担を下げつつ、適正な情報を収集できるようにすることによって、それに基づいたその後の適切な手続も進んでいくということを考えられてはいかがかということを繰り返し申し上げてきたという趣旨でございます。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。それでは皆様からご意見をいただきましたので私の方でまとめさせていただきたいと思うのですが、その前に、本日最初にデータ収集のことのみ発表いただきましたが、全般についてもご意見があるかと思いますので、波多野構成員、お願いいたします。

波多野構成員: ご指名ありがとうございます。全体としては、非常に多岐に渡る論点を、刑法、民法、行政法、事故調査・分析という四つの大きな観点で様々な意見を集約していただき、報告書(案)に絶妙なバランスで反映いただきまして、特に業界としての困りごと含めてご配慮いただきまして、本当にありがとうございます。並行して先ほどのような丁寧な議論もさせていただいたことで、今後の検討に資する議論ができたと自負しております。大きな指摘はありませんが、これからの検討としては、より実効性のあるルールメイキングという観点から申し上げますと、実務側、即ち産業側の意向も汲んでいただきながら、より詳細かつ具体的な議論が継続的に行われていくことを、弊会としては希望しております。インフラとの関係性も、責任分界等はまだまだ議論の余地があると思いますし、本日話題に上がった道路交通法の機械可読化、デジタル化という文脈に関しては、自動運転がルールを守るという観点から非常に有効な手段である一方で、交通社会で共存するという観点から、自動運転・機械だけが新たなルールを提供されるということには一定の課題が残っていると思います。交通ルールの厳格化によって逆に人間のドライバー側が厳格なルールについていけないとなると、交通ルールのダブルスタンダード化のような懸念が出てまいりますので、そういったことも慎重に配慮しながら、今後の更なる議論を続けさせていただきたいと思います。技術的には、私以上に様々な領域で専門性を持ったメンバーも有しておりますので、個々のテーマに応じて是非お声がけいただいて、議論を続けさせていただければと思っております。本日はありがとうございました。

小塚主査: ありがとうございました。実務界との対話を今後とも丁寧に継続していただければと思います。続いて髙橋先生お願いいたします。

髙橋構成員: 本日私が発言したことをすべて報告書に反映して欲しいという意味で発言しているわけではなく、報告書(案)はこれ自体よくできていると思っております。その前提で1点だけ指摘しておきたいのは、おそらく将来問題として挙がってくるだろうと思われる、民事上の責任なのですが、医療過誤との関係です。交通事故になると頭部外傷を起こし、医療機関に運ばれ、その医療機関で医療ミスを起こすことがあります。そうすると私たちは、加害運転者と医療機関の両方を共同不法行為で訴えます。昔そのようなことが多く起きて、医療機関と加害運転者の過失割合をどうするのかということが問題になり、最終的には平成13年に最高裁が決着をつけました。それは、被害者との関係では、医療機関も加害運転者も全額賠償するということで、もちろん連帯責任ですので一方が払えば他方は免責されますが、あとは医療機関と加害運転者の保険会社との間で互いに適切に求償するということになりました。自動運転になった際に、医療機関側から同じような問題が提起されるのではないかと私は思っておりますので、そこを指摘させていただきました。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。以上で先生方からのご意見を一通りいただいたと思います。この報告書(案)ですが、基本的に先生方からいろいろお褒めの言葉をいただいておりまして、これは事務局のご尽力によるものでありますが、非常に良いものになっていると思いますので、ベースはこれを当サブワーキンググループの報告書として採択できるかなと思っております。
本日ご指摘があった中で加筆をした方がよいと理解したものとして、第一に、事故調査に関して、どういう組織を設けるにせよ、責任追及とは異なるものだということは強調して書いた方がよいかなと思います。これは法律家ではない一般の方々に出て行っても誤解がないようにということを含め、強調した方がよいと思いました。
二つ目は、保安基準等のアップデートについて、誰がするかという主体の問題があるというようなことも須田先生からご指摘いただきまして、少し触れておいた方が良いかもしれないと思いました。誰が主体になるかは決められないかもしれないですが、主体の問題も含めて触れていただいた方がよいかもしれません。
それから、ルールの機械可読化ということがいろいろな文脈で出てまいりました。刑事との関係でも、例えば報告書(案)23ページの四象限の中でも、基準・ガイドラインの具体化ということとの関係でご指摘いただきましたし、髙橋先生から、民法709条と自賠法の関係についてご指摘をいただいた点も、今のところは理論的にギリギリと詰めるとどうかなと思いつつ、民事の裁判所としては、そういう運用判断をしており、それがある意味でデジタルの世界にもっていった際に、裁判官の塩梅でしていたことが必ずしも貫徹できないという部分が出てこないかという点も含めた問題であると思います。ルールの機械可読化は報告書(案)の中に書いていただいているわけですが、これが非常に重要な問題であって、実務の関係者を含めて今後取り組んでいかなければいけないことだろうという点は、分かるように強調していただくとよいかなと思います。
他方、本日の時点ではいろいろご意見はありましたがコンセンサスは得られていないであろうと考えられることは、一つは事故調査機関にどれだけの強制権限を与えるかという点ですが、それについてはご意見をいただきましたけれども、現状結論が出ている状況ではないと思います。二つ目として、関係者に適切なインセンティブを与えることは一般論として、異論がないところだと思いますが、例えば訴追延期合意制度をどう評価するのかというようなところについては、ご意見が違うところもあったようですので、決め打ちはできないと考えております。また、先ほどご指摘がありました脚注53の遠隔監視者についても、どういう形で書けるのかというコンセンサスが取れたわけではないと思いますので、あまり議論はしていませんが、遠隔監視者がどういう形で注意を尽くしていくかということは問題になるということで、誤解がないように書いていただければと思います。
 
大きな問題もいくつかいただいておりまして、例えば西成先生がおっしゃった悪意を持った攻撃者が攻撃してきた際に特別な考慮が必要ではないかとか、携帯事業者の位置情報の活用についてもご指摘をいただきまして、広い意味ではインフラ側の情報の利活用の問題ともいえますが、他方で携帯電話の位置情報については総務省の方でもガイドライン等があったりして、波及が大きい問題だと思います。
 
また、将来にわたって、関係者に対して適切なインセンティブをどう与えていくかとか、稲谷先生が強調しておられるアジャイルガバナンスという考え方に沿っているかというような話は非常に大きな論点ではありますが、この報告書の中で正面から打ち出していくというわけにはいかないのではないかと思いますので、事務局で検討いただき、例えば将来的な課題として記載可能な部分は記載していただき、もし、記載することが将来にわたって問題になるようであればむしろ触れず、議事録として議論したとの記録にとどめるということを考えていただければと思います。
 
私が理解したのはだいたい今のようなところで、この報告書(案)にこのような若干の加筆・修正を含めた上で、サブワーキンググループからの報告書として確定させていただきたいと思います。調整につきましては、最終的には私が事務局とご相談の上で取りまとめたいと思いますのでよろしくお願いします。
 
髙橋先生から挙手がありますので、お願いいたします。

髙橋構成員: 報告書(案)27ページの最後にありますが、サブワーキンググループはまだ続くのでしょうか。

小塚主査: 今後の事につきましては、事務局からご説明いただきますが、後藤先生からご指摘もありましたように、何らかの形でフォローアップは必要であると私は考えております。
 
この報告書は基本的には私と事務局の方で取りまとめたいと思います。事務局からもう一度確認があるかもしれないですが、皆様よろしいでしょうか。
 
ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。それでは、終了の時間が近づいておりますので、いつものように蓮井審議官から総括をいただけたらと思います。よろしくお願いします。

蓮井審議官: 改めまして、デジタル庁の蓮井でございます。昨年の12月から始まりまして、本日まで6回に亘り、集中的に、また非常にクリアに議論いただき大変ありがとうございました。始まった当初は難しい議題であり、先行きが見通せない状態ではございましたが、構成員の皆様方の高いご見識に基づく真摯なご議論や開発現場の実情を踏まえたインプット、さらに事故被害者の会の皆様からの貴重なご意見をいただきました。小塚主査には、重要論点の整理もいただき、検討の方向性についてもご指示いただいたところでございました。このように、丁寧に皆様の議論が積み重ねられた結果として、従来、刑事、民事、行政、事故調査の四つの分野でそれぞれ議論していたところ、技術者側と法的な評価をする方々が一緒になって議論いただいたこと、ここに非常に大きな意義があったと思っております。その結果、今後の自動運転の発展に欠かせない重要な論点が整理され、大変ありがたいご提言をいただいたと思います。改めて深く感謝申し上げる次第でございます。
 
もともとデジタル行財政改革会議で、自動運転事故における責任関係はどうなのかというご指摘があって議論することとなったものでございますので、本日取りまとめいただいた内容は、最終的な調整を踏まえ、そちらの会議へ報告させていただくことを予定しております。また、このご提言を受け、今後関係府省庁において保安基準・ガイドラインの見直しや、事故原因の調査に係る制度設計等、具体的な検討を深めていくことになります。この取りまとめは、本サブワーキンググループが属している本体のモビリティ・ワーキンググループがございまして、そちらが取りまとめるモビリティ・ロードマップに位置付けられます。このモビリティ・ロードマップは最終的に、デジタル社会推進会議での決定を予定しておりますが、このロードマップに基づきまして、今後政府における取組状況をローリングしていきます。その中で、サブワーキンググループで取りまとめいただいた内容についても、その検討結果を関係省庁からも報告いただく予定でございます。関係省庁の連携をデジタル庁が率先し、政府全体としてしっかり対応してまいりたいと思います。今回の報告書の取りまとめで、サブワーキンググループとしての作業は一段落いたしますが、ご参加いただいた構成員の皆様、あいの会の皆様、自動車業界関係者の皆様、並びにソフト・システム関係業界の皆様方にも、自動運転の社会実装の加速化に向け、更なるご協力を頂きたく、宜しくお願い申し上げます。ありがとうございました。

小塚主査: ありがとうございました。私からも6回の会合で皆様方に多大なご協力をいただきここまでたどり着きましたこと、改めて御礼申し上げます。事務局にも御礼申し上げるとともに、本日落合先生からお話があったように、何よりも我々が苦労しているのは自動運転技術を通じて日本社会の中で交通事故を少しでも減らしていきたいということですので、この意義をしっかりと発信いただければと思います。
 
最後に事務的なことではございますが、いつものように本日の会議資料につきましては、後日デジタル庁ホームページにて公表することになります。議事録は構成員の皆様方にご確認をいただきました上でホームページに公表することになりますので、よろしくお願いいたします。ここで事務局からお知らせがあるとのことですので、児玉参事官からお願いいたします。

児玉参事官: ありがとうございます。先ほど座長からもありましたとおり、今後の報告書につきましては、座長一任ということでご理解いただいていると承知しておりますが、よろしいでしょうか。ご異議がないと見受けられますので、座長一任ということで進めさせていただければと思います。本日テーブルしました報告書(案)につきましては、公表せずに、最終的に修正した形の報告書のみを共有させていただければと思いますので、ご理解いただければと思います。こちらからは以上です。

小塚主査: ありがとうございました。

それでは、第6回AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループはこれにて閉会とさせていただきます。皆様、ありがとうございました。