本文へ移動

第1回サービスデザイン関連ガイドライン改訂に係る検討会

概要

  • 日時:令和6年(2024年)11月26日(火)10時00分から12時00分まで
  • 場所:オンライン会議
  • 議事次第:
    1. 開催趣旨のご説明
    2. ガイドライン改定方針に関する意見収集
    3. 結果の取りまとめ

資料

参考資料

  • 参考資料:「サービスデザイン関連ガイドライン改訂の概要と取組状況について」※構成員限り

出席者一覧

構成員(50音順/敬称略)

赤坂 文弥(産業技術総合研究所 ⼈間拡張研究センター主任研究員)
安藤 昌也(千葉⼯業⼤学 先進⼯学部知能メディア⼯学科/先進⼯学研究科知能メディア⼯学専攻教授)
伊藤 芳浩(NPO法⼈インフォメーションギャップバスター 理事⻑)
宇田 哲也(富⼠通株式会社 デザインセンター⻑)
大井 美喜江(三菱電機株式会社 統合デザイン研究所)
早乙女 真由美(ソニーグループ株式会社 品質マネジメント部UX/HCD推進グループ)
田中 友美子(NTTコミュニケーションズ株式会社 イノベーションセンター(KOEL) Head of ExperienceDesign)
長谷川 敦士(武蔵野美術大学造形構想学部 教授、株式会社コンセント 代表取締役)
平沢 尚毅(⼩樽商科⼤学 社会情報学科教授)
福住 伸一(特定国⽴研究開発法⼈理化学研究所 ⾰新知能統合研究センター副チームリーダー)
山本 伶(フリー株式会社)

デジタル庁(事務局)

技術検討会議 サービスデザインタスクフォース

議事概要

構成員からの主な意見(要約)

1. 開催趣旨のご説明(質疑応答)

  • サービスデザインにはデジタルサービス以外も原理的には範疇に含まれるが、本事業ではデジタルサービスをスコープとするのか、非デジタルも含めたサービスデザイン一般を指すか。
    • (回答:デジタル庁)デジタルと非デジタルのハイブリッドでの行政サービス構築を検討する必要がある。本検討会で議論しながら進めてゆく。
  • ガイドラインの読者について、全体を理解できる人か、調達関係の人か、どういった人を想定しているか。また、人間中心設計(以下、HCDとする)の資格等、組織体制に触れるのか。
    • (回答:デジタル庁)第2回で付議するガイドブックは調達担当者やベンダーが理解でき、調達としてあるべき姿が伝わるようなものとする。一方で、企画検討に関しては抽象度が高く、仕様書から外れる部分の手引きや課題の絞込みに関する内容となり、読者は二分される形となる。
    • (回答:デジタル庁)HCDの専門資格を持つ人の確保は理想的ではあるが、公共領域では不足しており調達が成り立たなくなるリスクを考慮する必要がある。本検討会にはベンダーの方も参加しているため、各者の意見を踏まえて実効性の高いガイドラインを作成したい。

2. ガイドライン改訂方針に関する意見収集、3. 各グループ意見に対する意見収集

ガイドラインに加えた方が良い要素
  • 設計図面やコードは残るが、どういった目的でこのサービスを作ったかという設計意図を明確に残すことが重要であり、ガイドラインでその仕組みに触れるべきである。
  • デジタルサービスにおいてはリリース後の改善が重要である。デジタルでユーザーとつながりながらデータを見て改善する、使い勝手の問題をどのように吸収して次に活かすか等が大切であり、公共サービスにおいても継続的に提供する運用上の仕組みが必要である。
  • 誰一人取り残されないデジタル社会の実現に向けて、実際に作る際のコストに触れる必要がある。ガイドラインを活用する上でのコストとそれに見合ったメリットを具体的な事例を含めて示さないと使われるガイドラインにならない。また、事業責任者や現場の人間に理解を促すための啓発教育も重要である。
  • リサーチにも評価の手法が存在するため、妥当な結果を仮説に基づいて評価が行えるような評価のガイドラインがあると望ましい。評価は仮説に基づくため、ガイドラインとして単独でなくとも良いが、形式的な評価にならないよう注意が必要。
  • 検収の具体的な仕組み、全般にわたる評価検収、個別の実証をガイドラインに加えたほうが良い。また、それらを府省庁とベンダーのどちらが担うかについても明確にする必要がある。
  • 「ユーザーは誰か」等をガイドラインで定義すべきと考える。要件定義で決定された内容が前提となってしまい、実際のユーザーの情報が反映されないというケースがあり、この意識を変える必要がある。
    • ユーザーを理解しているつもりでも、実際に理解できていないことが多い。そのためユーザーリサーチとユーザビリティテストは重要であると考える。
  • デザインのツールだけでなく、ツールセット、マネジメントアプローチ、マインドセット、共通言語、プロセス、サービスデザインの6原則(人間中心である、共働的である、反復的である、インタラクションの連続性がある、リアルである、全体的な視点を持つ)も含めるべきである。ツールの使い方だけでなく、デザインに対する態度も盛り込みたい。
  • プロトタイピングとイテレーションの際には、失敗を恐れずに挑戦するためのサポートが必要である。失敗から学ぶことが重要だと理解させることが大切である。
  • デジタル分野のデザインにおいてダークパターンという問題が頻発している。行政分野でもダークパターンが意図せずに起こってしまう可能性があるため、ガイドラインにダークパターンを防ぐ論点も必要である。
  • ベンダーにて現行のプロセスモデル変更が必要になる場合があるため、府省庁でサービスにどこまで求めるか、プロセスモデル変更に対する指針が必要。
  • 情報アクセシビリティの強化として、全利用者が使いやすいユニバーサルデザイン、音声・映像・テキスト・手話・点字など多層的な情報提供・伝達手段対応、双方向コミュニケーションの設計(具体例としてリアルタイムでのチャットや音声入力対応、フィードバックを受け付けるフォームや簡便なUI設計)、利用状況に応じたカスタマイズ性、緊急時等の情報のリアルタイム対応が挙げられる。
  • 当事者参画の徹底が必要であり、企画~評価の各段階における参画プロセスの制度化、実環境を再現したアクセシビリティテスト、利用者フィードバックの活用が挙げられる。
    • 企画段階:利用者ニーズの明確化と当事者との初期対話。
    • 設計段階:UI/UXプロトタイプのフィードバック収集。
    • 実装段階:実環境を再現したアクセシビリティテストを実施し、障壁を検出・解消。
    • 評価段階:サービス提供後、利用者フィードバックを活用して改善を継続。
  • 合理的配慮の明確な方針として、リアルタイム字幕の提供、手話通訳、文字サイズ調整、音声読み上げ等、多様な利用者ニーズへの対応、配慮要請の透明なプロセスが挙げられる。
  • 事前環境整備の推進として、予測可能な障壁の先回り除去、合理的配慮が必要になる前に、全ての利用者が快適に利用できる環境を設計する、例えば、デジタル機器・サービスにおける標準的なアクセシビリティ対応(例:WCAG準拠)、施設やオンラインプラットフォームでのユニバーサルデザインの採用、公共施設のWi-Fi環境整備、やさしい日本語の利用、デバイスに最適化されたUI/UXの設計等が挙げられる。
  • 教育とトレーニングの充実として、利用者へのデジタルリテラシー教育、サービス提供者と設計者への教育プログラムが挙げられる。
ガイドラインで配慮した方が良い要素
  • サービスドミナントロジックについて、実施しようとすると行政官の態度変容がかなり求められるため、ガイドラインに含めるかどうかも含めて検討が必要。
  • ダブルダイヤモンドのようなプロセスは、シーケンシャルに順番にこなしていくものと捉えられてしまい、反復される(イテレーティブ)ものであると認識されない。一つのダブルダイヤモンドプロセスの中でも、最初にわからない部分をプロトタイピングしてみるなど、柔軟な運用が必要。
  • 社会の問題が答えのない厄介な問題になったときに、デザインが最も有効だという主張がある。特に行政官や官僚などの方々に対して、デザインが厄介な問題に対処するための有効な手段であることを伝えることができる。同様に、アブダクション、作ってみることから新しい洞察を得る考え方も重要。
  • 配慮や整備に伴うコスト負担の軽減策として、大規模な環境整備を一度に実施するのではなく、段階的に進めることで実効性を確保することができる。例えば以下のような段階がある。
    • 初期段階:標準的なアクセシビリティ対応の実施
    • 次段階:合理的配慮の対応強化
    • 最終段階:個別要請に基づく柔軟対応
  • 全利用者への公平性として、一部の利用者だけが恩恵を受けるのではなく、広く全利用者がアクセス可能な仕組みを構築する。アクセシビリティ基準を全体設計に統合することで、誰もが利用しやすい環境を提供する。
  • 情報の双方向性の確立として、情報を提供するだけでなく、利用者からの意見やフィードバックを受け止める仕組みの充実が重要。例えば、フィードバック窓口やリアルタイム対応の拡充、収集した意見の透明性と反映結果の公開等。
  • 当事者参画の多様性確保として、参画する利用者が視覚障害者や高齢者など特定の属性に偏らないよう、幅広い属性を意識した参画プロセスを設計する。さらに、当事者参画を促進するため、次のような配慮を明確に記載する。参画時の合理的配慮(例:手話通訳、移動支援、オンライン参加オプションの提供)、参画者が発言しやすい心理的安全性の確保等。
  • 災害時やイリーガルケースへの対応として、緊急時の情報アクセシビリティ、通信やインフラ障害への対策、不正利用やセキュリティリスクへの対応が挙げられる。
ガイドラインが活用されたケース、されなかったケース
  • ガイドラインは分量が多くなると読まれない。様々な部署で異なるガイドラインを策定しており、ガイドラインを読むだけで、設計に関わる時間が無くなってしまう。ガイドラインの基本骨格を補足部分と分け、補足部分はチャットAI等で補足して後からアップデートできるような方法がとれると良い。
  • ガイドラインは細分化されがちで理念が見失われることがある。上流にデザインプリンシプルを設け、それをもとに価値判断できるようにする。流動的な問題のコントロールが重要であり、どの程度詳細化するかという点や、係数をどのように組み込むかについて検討する必要がある
  • ガイドライン活用の促進に点検シートや活用シートなどが役立つことがあるが、形式的にフォームを埋めるだけとなってしまうこともあるため、サポートツールは必ずしも効果が出ないという点で難しい。
  • ガイドラインやチェックリストは実際に使われる状態までブレークダウンする必要がある。ドキュメントを用意するだけで、やり方は自分で考えてくださいという方法では上手くいかない。
  • 情報を再加工しモジュール化やテンプレート化することでインターフェースが和らぎ使いやすくなった。ドキュメントを作りすぎるとどう活用するかが問題になるため、どこまで作り、どこを運用でカバーするかは検討する必要がある。
  • 弊社ではユーザー調査の初歩をイントラサイトで提供し、デザイナーが効率的に調査を進められるようにした。調査から仮説を立てる場合や検証する場合など、お困りごと別に分け、知りたいことをすぐ読める工夫をしている。
  • ガイドラインを体系的に作っても、読み手はほしい情報だけをランダムに参照することもある。抜粋版やイラストを用いた説明を取り入れ、どこから読んでも欲しい情報にたどり着けるようにすることが重要。
  • 行政サービスでは法律に基づく正しい言葉を使う必要があるが、一般の人には馴染みがないため理解を助けるため、用語集などのサポートが必要である。
  • 読者のリテラシーに合わせて書き方を変えるべきだが、高リテラシーと低リテラシーどちらの人に合わせるのかは難しい問題である。補足部分で柔軟に解釈できるようにすると良い。
  • ガイドラインを活用する行政機関の多くは、デジタル技術や人間中心設計、デザイン思考に馴染みがないことが多い。前提知識を揃えることが重要であり、必要に応じてアンラーンやリスキリングができるようにする必要がある。
  • ガイドラインの理解を深める取組として、事例紹介、参考文献、導入効果等の統計データ、イラストによるストーリーボード、音声付きe-learning、当事者の使用状況の説明、当事者の見え方などがシミュレートできるツールの紹介・実演、ルールの背景説明、ユーザー体験を通じて課題を自覚させる、双方向コミュニケーションにより質問・フィードバックを受け付け、疑問を解消する等が理解の向上に役立った。
  • 優れた仕組みがあることを知り、使ってもらうためのコミュニティ形成も重要。中央集権的なやり方だけでなく、分散型とうまく連携する方法が良い。
  • 標準化や認証制度とセットになるとガイドラインが受け入れられやすくなる。また、専門家による支援の仕組みがあることが、ガイドラインが正しく使われるためには必要。
  • デザインスクールなど、体験を通じてサービスデザインの理解を深めることは効率的であると感じる。デザインスプリントを実施し、その体験を理論として説明することでサービスデザインの理解が深まると考えている。
その他
  • ガイドラインの目指す「誰一人取り残されないデジタル社会」について、理念としてどう捉えるかと現実的にどう実現するかを整理する必要がある。
  • サービスデザインに非デジタルを含むかという点については何を想定するかによって位置づけが変わる。例えばアクセシビリティでは、ハードのアクセシビリティは障害者対応だけでなく、様々な利用環境からの利用を可能にするというより広い概念になるため、ハード側で対応する話とコンテンツ側で対応する話が構造的にある。
  • サービスデザインガイドラインは抽象的なレイヤーであり、具体的なウェブやUIのガイドラインと分けて提供する必要がある。プリンシプル的なガイドラインと具体的なプラクティカルなガイドラインを両立させることが重要である。
  • サービスデザインの企画に関し、行政サービスの基本プロセスを見直すことを踏まえたDXの観点を入れたほうが良い。
  • サービスデザインにおいて、誰一人取り残さないという目標だけでなく、政府全体に求められるデザイン態度も重要。しかし、すべてを一度にやろうとすると、情報量が多すぎてしまう。デザイン全体を見渡し、どのタイミングでどの要素を出していくかという戦略性が必要である。そのため、デザインの出し方についても検討していく必要がある
  • 「誰一人取り残されないデジタル社会の実現」について、このガイドラインで何を目指すのか、日本のデジタル行政がどこに向かおうとしているのか、デジタルをベースに非デジタルでサポートするのか、非デジタルをベースにデジタルの要素を付け加えるのか等の基本的な方針が必要。

以上