Web3.0研究会(第5回)
概要
日時:令和4年11月2日(水)9時30分から11時00分まで
場所:オンライン
議事次第:
- 開会
- 議事
- 事務局説明
- 意見交換
- Web3.0研究会DAOの立ち上げについて
- 閉会
資料
- 議事次第(PDF/44KB)
- 【資料1】討議資料(PDF/726KB)
- 【資料2】(別紙)関係省庁検討状況について(PDF/598KB)
- 【資料3】(参考資料)米欧の取組状況について(PDF/849KB)
- 【資料4】Web3.0研究会DAOの立ち上げについて(PDF/540KB)
- 議事要旨(PDF/775KB)
議事要旨
日時
令和4年11月2日(水)9時30分から10時55分まで
場所
オンライン会議
出席者
構成員
國領二郎(慶應義塾大学総合政策学部 教授)
石井夏生利(中央大学国際情報学部 教授)
伊藤穣一(株式会社デジタルガレージ 取締役 チーフアーキテクト、千葉工業大学変革センター センター長)
河合裕子(Japan Digital Design株式会社 CEO、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 部長、株式会社三菱UFJ銀行 経営企画部 部長)
殿村桂司(長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
冨山和彦(株式会社経営競争基盤 IGPIグループ会長)
藤井太洋(小説家)
松尾真一郎(ジョージタウン大学 研究教授)
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科 教授)
デジタル庁(事務局)
- 楠統括官、野崎参事官
議事要旨
事務局より【資料1】討議資料、【資料2】(別紙)関係省庁検討状況について、【資料3】(参考資料)米欧の取組状況についての各資料につき説明。
構成員から自由討議において、主に以下の発言。
論点構成の観点で、概ね網羅されていると理解しているが、この先のいろいろな仕組みをOODA的に回していくことが大事である。しかし、日本の行政体系、規制体系は世界で最も固い実定法体系になってしまっている。
その中で、OODAを回すということは難しい部分があるため、今後、Web3.0周りで出てくる様々な問題やリスクに対して、自主規制型、ソフトロー的な、もしくはプリンシプルベースで物を動かしていく主体が必要である。それがデジタル庁や、研究会のような先端にいて良識のある人たちが、ある種のガイドラインを常に提示して、状況に応じてリニューアルしていくのかもしれない。
ゴルフのR&Aは、先端的な問題に対峙しているSt ANDREWSのゴルフクラブの理事会がルールを変えていくという仕組みだが、そういう主体というものを作っていくべきではないか。デジタル庁の機能なのか、この研究会の延長で仮にDAOを作るとしたらDAOでやるのか、などを考えていくべきではないか。1つの先行例として、金融庁と東証で実施したコーポレートガバナンスコードがある。本来、ソフトローコードであるため緩いものだが、東証規則と絡んでしまったため、かなり省令に近い重い位置づけになりハードロー化してしまい、硬直化する問題が起きている。そのため、本来のソフトローの良さ、あるいは英米法的な判例法的な仕組みの良さを持ち込めるようなプロセスを行政プロセス、もしくは規制プロセスのイノベーションをデジタル庁とこの研究会で起こせないかというのが一つ提案としてある。
また、日本でもイノベーションを起こしやすい環境整備の議論が出てくるが、より基盤的な環境整備の問題として、イノベーションを施行する人々、典型的にはスタートアップをやっていくような人たちにとって、現状日本はレベルプレイングフィールドになっていない。これは労働法の問題や税法の問題、いろいろな法体系、業界のプラクティスが関係する。今、我々は北欧でNordicNinjaというベンチャーキャピタルをJBICと行っている。北欧は去年1年間でコロナ禍に13件のユニコーンが、今年は8月までに11件のユニコーンがウクライナ紛争下にもかかわらず出ている。日本は4~5件しか出てない認識である。北欧でベンチャーキャピタルをやってみて分かったが、北欧のイノベーションをやっていく人たちにとって極めて基礎的な社会的前提条件は、あまり北米と変わらず、一種のレベルプレイングフィールドになっている。
例えば、会社を作る時にも北欧のスタートアップの活動拠点はほとんどフィンランドやスカンジナビア、あるいはエストニアだが、典型的にはほとんどがデラウェア州法で法人を作り、その子会社としてフィンランドの会社が実質的な経済活動実態を行うというプラクティスになっており、それがほぼ世界標準になっている。
基盤整備の問題としてスタートアップエコシステムみたいなもの、もしくはイノベーションエコシステムのようなもののレベルプレイングフィールド化はこの研究会の主要テーマではないが、前提条件を整えないと、議論をされている前提のところで躓いてしまうため、そういったことも提言として言及しておくべきである。Web3.0空間はサイバー空間の次元的領域拡張であるため、恐らく既存のいろいろなものと接合しないテーマが多く出てくるのではないか。
既存の規制体系に矛盾するより、規制として書いてない世界が出てくるため、その世界について都度規制を整備すると恐らく同じ失敗を繰り返すことになる。むしろそういった空間は、自主規制的なものを先行させて敢えて接合することについては拘らず、最終的に参加しているプレーヤーがどのような規範に対して法源性を感じるかではないか。
故に、国が出てこなくても参加している人たちのある種自主規制的な部分で、この世界を健全に発展させるためのプリンシプルに合意していること、そういう人たちが善意でその空間を作っていく空気感を作ることが大事であるため、Web3.0という違う空間でそういうものを作れないか。大きく2点ある。既に事務局資料にもハードローに拠らないソフトローの話は記載されているが、深掘りしこの世界において持続するためにどうするかということを真剣に考えなければいけない。
この研究会自体は年末で終わるが、議論をしている場所が年末で終わっても世界のWeb3.0のイノベーションは進んでいく。来年以降、我々は議論を止めるわけにはいかないため、持続させていくためにどうするかを同時に考える必要がある。研究会そのもの、あるいは研究会DAOというのが仮にオフィシャルにこのデジタル庁の研究会が終わったとしても持続させなければいけない。ハードローに拠らないソフトローについて、Web3.0の話をする時に、decentralizedというキーワードが出るが、本当のdecentralizedはなくて、国も含めていろいろなステークホルダーの信頼を借りてそれぞれ協力すること、Poly-centlic Stewardshipと言う言葉が表すように複数のセンター、ステークホルダーが日本においても、あるいはグローバルにおいてもマルチステークホルダーで議論できることが本当の着地点である。インターネットがその成功例だと思うが、そのような体制を作る必要がある。伊藤穣一氏と一緒に日本の中でもラウンドテーブルを試験的に始めており、この研究会が議論検討していることを持続するために場所を借りていく必要があるのではないか。
民間主導の場所を使ってという内容は記載があるが、大学やアカデミアという中立性をキーにして、経産省あるいは文科省が若干の運営資金をつけて、自由闊達な議論の場所にする。インターネットでWIDEプロジェクトはそれに近いところがあったと思うが、そのような場所を作ることが重要ではないか。これは1月に続けていく例として、デジタル庁が職歴でNFTを発行する話があったが、BGINでSoul Bound Tokenという動かせないNFTをヴィタリックと一緒に提唱した人たちの論文のオーサーと一緒に、あるいはSoul Bound Tokenのコアのメンバーと一緒にプロジェクトをやっているが、そこにデジタル庁が参入し、世界で一番真剣に取り組んでいる人たちとジョイントすることを宣言するのはどうか。
グローバルなマルチステークホルダーの場所、あるいはナショナルなマルチステークホルダーの場所を支援することを真剣に検討いただきたい。
また、情報発信と記載があるが、情報発信では弱い。グローバルなルール作りの場所にみんなが参加することがWeb3.0に出せると、それは情報発信より大きいことをやるのだろうと思っており、そこを目指すことを大事に思っていただきたい。もう1点は人材育成についてである。今回のアメリカの大統領令のフォローアップの9月16日のドキュメントは注目している。ドキュメントの中ではCBDCの話が大きいが、資料で取り上げていただいている人材育成について、日本でいうとJSTやJSPSに相当するNSF、全米科学財団が大量のお金を投じ、このデジタル資産や暗号の研究プロジェクトの立ち上げを命令している。これによって、世界中のPh.D.の暗号使いのコンピューターサイエンティストと法律家、そして、経済学者が世界中からアメリカに渡って雇用されていくことを意味している。これはアメリカの国家戦略として今後、暗号技術を使える人が社会資本として重要であるため、技術者の独占を国家戦略でやっていると読むべきで、アメリカはそのような戦略を取っていると理解した上で、日本はどうするかを真剣に議論すべきである。国家戦略にも関わると思うため、アメリカに対抗するのではなくて、アメリカと一緒にやるのかということも含め、いわゆるグローバルルールメーカーに資するようなトップの人材をどう取り扱うかという方針も同時に議論すべきではないか。
1点目は、オンゴーイングな話として、これから暫く付き合い続けなければいけない時に、ある種、官の外にあるパブリックな存在と連携し続けていくようなガバナンスの形を作っていかないと、この件は回らないのではないかという指摘と理解したため、認識を書き込む。
人材育成ついての書きぶりについても、更にブラッシュアップを行なえたら望ましい。ソフトロー、OODAループが重要であり、それと繋がるが、暗号資産の話は交換所とデイトレーディングのようなファイナンシャルマーケットの暗号資産から流れがある。そのためにAMLやいろいろな交換所の規制という話がステーブルコインやトークン全般に繋がっていくと思うが、今のDAOの中でのトークンの使い方や、一部のゲームの中のトークンの使い方は、そもそも想定されている暗号資産の考え方とかなり違う使い方ではないか。
AMLは、1円でもAMLしなければいけないというコンセプトがまだ残っていると思うが、今回実際DAOを作ってみると、ガス代を配るためにAMLをしなければいけないのは違和感がある。全体的にAMLやKYCもある金額以上だったら対応が必要だが、100円、10円を配るためにマイナンバーカードを提出してKYCをしなければいけないのは、暗号資産の交換所の世界の文脈をDAOに持ち込んでしまっている。
ただ、DAOは実際にあまり事例がなく、デジタル庁でDAOを作ろうとしている現時点でいろいろ出てきていると思う。この勉強会でステーブルコインと、全体的なKYC、AMLのアーキテクチャーの中に、DAOで作るとすると何がプラクティカルなのかということと、交換所中心の暗号資産とステーブルコインの考え方と、DAOで使おうとするとどうなのか、同じルールでいいのか、この辺は重要ではないか。暗号資産のセクションとDAOのセクションは掛け算をする必要があり、実際に進めていく中でトラブルもある。ここでOODAループが重要になってくるが、やっていくと細かいことが出てくる。もしかすると、こういう交換所をずっと規制していたフレームワークがそもそも間違っているかもしれないため、別のフレームワークは誰がどのように作ってどう考えていくか。DAOを市町村で使おうとするとアンロックが必要であるが、他国ではあまり動いていない。日本の方が紫波町や山古志など実験をしているため、他国を見ていてもあまり分からないかもしれないし、意外に進んでいるスイスもDAOよりもいまだにビットコインや交換所が中心であるため、日本の中でも実際にDAOを作ろうとしている国の機関は他にないかもしれないが、デジタル庁がフレームワークのリーダーシップを持つチャンスでもあり、必要性もある。民間で例えばDAO Research Collectiveなど、世界中のDAOをリサーチしている機関や、この間KOARAが出したDAOモデルローや法律学者がいるため、我々も参加できるのではないか。
また、KYCについても民間企業も分散アイデンティティに繋がってくると思うが、できる限り新しいアーキテクチャーで、他国も見るべきだが、日本はマイナンバーカードという特殊な状況にあり、本当にこれからユーザブルなものを作れるかというので、先ほどのOODAループではないが、スピーディーに動くが、フレキシビリティーがあるアーキテクチャーで取り組んでいかないと、ちょっと古いアーキテクチャーでKYC、AMLをやってしまうと利便性が損なわれる。セキュリティーやKYCのベンチャーも多く出てくると思うため応援していただきたい。
暗号資産の話とDAOの話とどれくらい切り分けるのか、どれくらいアナロジーで制度設計していいのか。切り分けたいと言っても切り分け切れるのかという辺りは難しい問題だと思うが、意見や提案はあるか。
どこかの金額以上でKYCやAMLを行うというのと、トランザクションのレイヤーで行い、細かいところを規制してしまうとベンチャーも起きないし、DAOの使い方も起きないため、1つは金額でカットすることが重要だと思うのと、DAOがこれから伸びるためにツールがすごく必要で、オープンソースのツールとそこの中にMetaMaskの新しいウォレットなどいろいろ出てくると思うが、イノベーションのためにも、本当にある一定以下のところを規制しないで動けるようにしないと、ベンチャーも生まれないし、本当に草の根的なDAOは生まれてこない。ステーブルコインはDAOに重要であり、ステーブルコインが考えていることといろいろなDAOの中でのステーブルコインの使い方も重要である。
圧倒的にDAOの方が日本の未来には重要だと思う。このトレーディングとEメールがインターネットのキラーアプリケーションであったのと同じで、交換所というのは立ち上げるためにはキラーアプリケーションだったが、5年、10年経つと、今の貨幣のデイトレーディングぐらいのマニアックな世界で、普通の人間には関係ない活動だと思う。
一番Web3.0が社会にインパクトがあるのは、一般的にDAOを使って会社の中でコミュニティー、ステーブルコインで予算管理している部署、DAOを使って大学の研究所の予算管理、トークン発行して学園祭をやっているPTAなどそのような事象が次々と起きなければならず、限られたマニアックな使い方のために規制して、本来の社会的インパクトが全く使えなくなってしまうというリスクがあるため、タイミングが難しい。この研究会の報告書を出すまでにはまだ本当に世の中の役に立っているDAOは存在しないと思うため、イマジネーションを使うなど自分たちでDAOをやって設計しなければいけないと思うが、その未来の可能性をアンロックするという姿勢を持たないと危ないのではないか。大きく分けて3点コメントする。1点目は、イノベーションを促進する上でハードローが立ちはだかると、望ましい方向にはならないように思う。しかし、詐欺や不正資金対策、コンテンツの保護、法人化の議論も内外の責任を明確にするというような意味で、ハードローだからこそ効果を発揮する場面もあるのではないか。ソフトロー、ハードロー、共同規制方式の、大きく分けると3種類になると思うが、イノベーションを促進すべきという大きな軸があり、どの手法が適切かについては、メリットとデメリット、リスクを客観的に評価して、個別の論点との関係でよく検討しておくことが重要な視点になるのではないか。
2点目について、全体的な文章を拝見していて、セキュリティーの観点がやや薄いような感じがしたが、書き足していただきたい。
今後の検討の方向性のところについて、日本においてはコンテンツが強いということで、コンテンツビジネスを展開できるのではないかという期待が文章の中に記載されているが、その強みを生かす方向性も挙げていただきたい。
最後に全体のメッセージとして、失敗してもいいから進めていくというメッセージ感が出ると前向きな展開になってくるのではないか。
時間軸の話が整理されておらず、すごく先に起きることと今すぐ起きること、すごく先にやらなければいけないことと今すぐやらなければいけないことが混在していると感じられるため、整理がもう少しできるといいのではないか。
法制度の話、規制の話も、少し大きなこれからの技術革新を起こすためにどのような仕組みにしなければいけないかという大きな未来に向けた話が主に議論された。ただ、資料では足元の今すぐ何をどこまで法律、変えられるかのような割と手前の話があり、両方とも大事だが、両方とも並列で記載されていると読み手が混乱するのではないか。
特に技術に詳しい方は今すぐ起きることと、5年、10年後には確実に起こることは頭の中で切り分けていると思うが、そうではない人からすると、これは一体いつの話なのだと混乱するのではないか。この話は技術革新の側と、法制度、規制の側と2つの軸があり、この軸に加えて、今と少し先あるいは未来の話と、2つの時間軸と見る軸と両方をうまく整理できるといいのではないか。
大まかに今の技術革新はここまで進んでいるため、少なくとも押さえて置くべきポイントが整理できると望ましい。
しかし、現時点の話であり、これから大きく変わっていくであろう。今の法体系なり今の法律の作り方、規制の仕方では、恐らく対処できなくなる、あるいは変えていかないと本来あるべき技術革新が起きないという、啓蒙的なものも今回の研究会の非常に大きなメッセージだと思うため、その点もしっかり記載した方が望ましい。
これから起きる技術革新を推測して、法律や制度や規制の作り方の部分も変えていかなければいけない、あるいは考えていくべきことを整理いただくと、読み手が混乱せず、今後報告書を基に議論されていく時に見通しが良くなると思いため、整理いただきたい。時間軸がよく分からないため、何から手をつけてよいのか、あるいは今何に気をつけなくていいのか分からない。金融業界の人間からすると、この資料を出されてしまうと、自分たちはまだほとんど何もできていないが、規制がやってくるかもしれないのでとりあえず様子を見ようということになりかねないため、時間軸の整理をお願いしたい。
時間軸の整理に沿って、きちんと注意をした上でイノベーションを促進したいという愛に溢れたペーパーだが、恐らく金融業界の人間が読むとそうは読めないというペーパーになっており、手前にあること、もしかすると先に来るかもしれないこと、全てをまとめて、ソフトローであるか、ハードローであるかにかかわらず、規制がかかるというメッセージに読まれかねないトーンになっているような印象がある。手前、真ん中、先に分けた時に、押さえつけるという意味での規制的な規制、イノベーションを促進する側、クラリティーを高めるという意味での考えなど軸をはっきりさせないと、いたずらにプレーヤーがバックオフすることになりかねないという懸念がある。
典型的な例が暗号資産の規制を決めた時は、規制を入れたことは非常に良かったとプレーヤーとしては思ってはいるものの、あの規制が入ったことによって、ほぼ全ての伝統的な金融機関が触らなくなったということも事実だと思われるため、そこを十分に踏まえた書きぶりというのもお考えいただきたい。3点ほどご指摘する。まずは消費者保護について、暗号資産という枠組みから話が始まっているため、投資家、投資をした人に対する保護というような方向で読めるようになっているが、制作者にとっては、NFTを発行する側として誘われる、勧誘される局面が多く、そういう人たちが正しい情報によるアクションの保護をできるような方向についても加えていただきたい。
2点目に、この会の持続性についてだが、Web3.0に関する状況や認識というのは日々変わっていく。恐らく12月で終わった後も、また大きな激変が2回、3回と続いていくことになると思うが、この検討会で話した内容はアウト・オブ・デートになっていく。
研究会で作るDAOを持続していくことをまず希望したい。また、イノベーション促進策の中にカンファレンスに協力していくと記載があるが、主体的にデジタル庁や研究会でカンファレンスを主催して有識者を招いて話し合うような場所、有識者や現場の方々を招いて話し合うような場を設け、発信をするという責任をある程度果たしていく必要があるのではないか。カンファレンスを自主的に主催することを検討していただきたい。最後に、人材育成について、Web3.0人材が投資家やイノベーター、起業家のラインで語られることが多いが、実際に手を動かしているエンジニアが増えること、またはWeb3.0に対して正しい知識や実際に動いている知識を得ることができる場というものをできるだけ広げていく必要がある。好むと好まざるとにかかわらず、これだけの資金が動いている事業であるため、多くのエンジニアがWeb3.0という単語を目にすることになる。その内容が何なのかということを実際に知る機会というものを私たちは提供していくべきである。提案として、今回、研究会で作るDAOのコードをGitHubでオープンソースとして公開するということを考えてはどうか。学ぶ材料があること、それがある程度の規範になればWeb3.0に触れるエンジニアというのは飛躍的に増えるのではないか。
ソフトロー、ハードローについて、今の現行法でもいわゆる規制のサンドボックス制度や新事業特例制度があり、ある種、既存の法令がある中でお試しでやってみるという制度自体はある。使い勝手がいいのかという議論があるものの、Web3.0の分野でも具体的に今あるものをせめて使えるだけ使ってイノベーションを促進していくというメッセージを具体的に出すことはあるのではないか。
DAOについてはいろいろ分解して考えていくと、既存の法令の延長線上でDAOだからという例外が作れるものがある。一定の金額や譲渡を一定程度制限することにより、いわゆる有価証券のようなものとは違う扱いをするという、ある種、定量的な切り方はあるのではないか。もう1つ、DAOだから特別な扱いをするといった時に、何でDAOだから特別な扱いをするのか、という立法事実や実態、実例がそこまでない。
特にWeb3.0関連のサービスを少し離れた、地域創生や社会貢献のためのDAOというものの実例がまだないため、実例が貯まらないと正当化できず規制の例外が作れないということでは、いつまでも遅れたままになってしまう。このペーパーにどう反映するかという話と離れてしまうかもしれないが、問題意識としては持っている。今の結果をインタラクティブなディスカッションに付け加えて深めたいと思うが、どちらかというと暗号資産ではなくてDAOのアングルからフレーミングすることは賛成で、金融庁や金融規制を考える人たちとどのように矛盾しないようにするかがポイントで、金融庁がそのときにずっと説明してきたことは、基本的には規制目標、規制当局者の3大目標に立ち返ることである。
金融規制の3大目標は、消費者保護、金融安定、金融犯罪防止だが、1円ではとか1万円ではという話と100万円ではという話と一緒で、規制目標まで立ち返ればフレーミングができるはずである。これは時間軸では中期、長期の話だと思うが、その金融規制、当局者の目標と矛盾しないものをどう作るかというアングル、かつDAOや非金融も含めてより広い応用機会のアングルから矛盾しないものを作っていくということが大きなメッセージなのだということを書けるのであれば望ましい。もう1つはセキュリティーについてだが、複雑な暗号を使った複雑なシステムを安全に保つのは難しく、スタートアップの方がホワイトペーパーに技術優位性があるということを書くが、その多くは恐らく安全ではない。それを安全にしなければいけないからこそ、ホワイトハウスはResponsible Development、責任ある開発というのがそもそも大統領令のタイトルになっていて、そのために暗号学者を世界中から集めようとするわけである。安全なシステムにするためにどういうことが必要なのかということを同時に考えて、それが日本においても責任ある開発の1つなのだということをメッセージとして打ち出すことが重要。
ここで明らかにしたいのは、このWeb3.0と言われている技術革新で何が変わるか。法律や規制で必要とされている許可されているものをどういう形で変えられるのか、乗り越えられるのか、あるいは更に必要となるものがあるのかもしれないが、何が変わるのかがまだ分からない。誰にも分からないのかもしれないが、そこを明らかにしないと進めないのではないか。
例えば、対人で目視をしなければいけないというルールがあった時に、カメラがあって、カメラが見ていれば人がそこに行かなくてもいいではないかという話がある。これはカメラで人が見ていることと同じことを実現できるからである。このようなシンプルな話でもなかなか法律や規制が変わらないので、規制改革で苦労しながら変えているわけだが、そうであるとすると、ここで議論されている、あるいは専門家の方が議論している技術革新によって一体何が変わるのか、何が既存の法律や規制で必要とされているものを乗り越えられるのという点をクリアに出せるのであれば大きなインパクトがあるのではないか。
そこが出せないと実際の法規制をどう変えるかといった時に、そちら側の世界では何も変わらないということになりかねないため、その辺りを議論していくべきである。そもそも何を目指すべきかということがまだふわふわしている中で、そもそもどういう技術に力を入れていくべきなのか、それぞれが果たすべき役割に則って一体何を今準備して伸ばしていけばいいのかという具体的なイメージが掴みにくい。何かをやらなければいけないことは分かっているが、何をすればいいのだろうというように迷っている人たちというのは少なからずいるのではないか。
金融業界の一人として、今後の議論の中でぜひそれぞれの役割がいろいろあり得るのだという役割的な整理やそれぞれの役割の人たち、あるいはどんな役割を本当に担うかどうか分からないが、少なくともこの技術は確認していくべきというような、示唆出しをしていけると民間の努力をより一層具体的に後押しすることができるのではないか。
事務局よりWeb3.0研究会DAOについて説明。
DAOを立ち上げていくことについて事務局から案をご提示する。まず、今回のDAO自体の設立趣旨は、各構成員の方々がDAOのユーザー体験を通じて課題や可能性を認識して、研究会の議論をより深度あるものとするという形にしたい。
法的な位置づけに関しては、デジタル庁が立ち上げるのではなく、構成員及び事務局の自発的意思に基づいて設立される任意団体として、独立していろいろな意思決定ができるようにしていくことを考えている。
様々なDAOがあるが、今回の場合はまず最低限、トークンを配布して実際に投票をするとところからスタートしたい。他にも例えば何かしらの証明書の発行や、ブロックチェーン上に書き込むなどあるが、それは実際、立ち上がった後に意見をいただく中で増やしていきたい。
当庁の役割として、まずDAOを立ち上げ運営をする。実際にブロックチェーン上で書き込むなどトランザクションが発生するタイミングではガス代が必要になるため、取り纏めや実際にコントラクト上に書き込む処理などを担当する。
構成員の役割として、トークンの受け取りや投票にはウォレットの開設が必要になるため、ウォレットを開設していただく。既にお持ちのものをお使いいただく場合はそのアドレスをお伝えいただく。実際にDAOに参画して運営側にもお手伝いいただける方々がいらっしゃればお手伝いいただき、議論への参加、ガス代に関しても今回、任意団体として立ち上げるため分担する形にしたい。
今回参加メンバーに関しては、研究会に参加されている構成員及び事務局が参加する。一方で、DAO的な非中央集権の形としては、構成員が参加を許したメンバーにも対象を広げていくことを考えている。
具体的にどのようなアウトプットが出てくるかという想定だが、今回、立ち上げる時点で様々な議論が既に起こっている。今後、行政がDAOに関わるような場合のロールモデルになると考えているため、それぞれ立ち上げの際に使った資料などを公開していくこと検討している。
実際に体験することでDAO自体の理解が深まると考えているため、それ自体が議論の今後のアウトプットの向上に期待できるのではないか。また、トークンをどのように集めるかなどに関しても論点が出ているため、具体的なユースケースを基にした提言につながっていくのではないか。
今回、プロジェクトのスコープとして、研究会終了時までDAOの運営を続けていくが、その後、どうしていくかも議論いただきたい。このDAO自体が今後のルールメーキングの場になる可能性も話されているため、残す場合はどのように残していくべきかについても議論していただきたい。
立ち上げにあたって、まず決めていただきたい点が以下である。
トークン、ガス代を均等に負担していただくことで問題がないかということ。現在の研究会メンバーから始めるが、今後徐々に広げていく考え方でよいかということ。また、DAOの機能として何を使うかだが、最初はガバナンストークンのみを発行して議論しながら今後派生させていく形でよいかということ。そして、一般的にはDAOのコミュニティーはDiscordを使うことが多いため、今後のやり取りに対してDiscordを活用していくということでよいかという点である。
以下質疑応答
構成員: トークンの取扱いについて教えていただきたい。ビットコインやイーサリアムなど暗号資産を持たない自己ポリシーを持っている。それはアカデミックニュートラリティーというか、自分の論文が値上がるために意図しているだろうという突っ込みを受けないために敢えて保有していない。今回のトークンがどういう取扱いになるのか、あるいは私だけ例外にしてということなのかもしれないが、イメージがあれば教えていただきたい。
- 事務局: 意見があれば伺いたいが、方法としては、NFTを配布して、それを持っているホルダーが投票できる形にする方法がまず考えられる。あとは授受のようなコミュニティー内で送り合うユースケースを想定する場合は、金銭的な価値には繋がらないコミュニティーで使えるトークンを一定数発行する方法が考えられる。そのどちらかではないか。
構成員: 金銭的価値を持たなければ問題ないため、またご相談したい。ガス代の負担に関しては異論ない。
金銭的価値を持つか持たないかで話が変わってきており、結局DAOでトークンをいろいろ持つ時には、そのDAOの全体の運営のインセンティブメカニズムのためだと思われるが、それをどういうように構成し得るのかということではないか。構成員: Soul Bound Tokenのような形で初めから譲渡できないトークンを発行するなど縛っておくといいのではないか。Soul Bound Tokenとステーブルコインは恐らくDAOの設立を民間の非営利団体が行う時に非常に重要な仕組みになると考える。ここでお手本になるような形で出せると望ましい。
- 事務局: Discordを使っていくということについて、Slackでコミュニケーションが始まっているが、そちらも移行していくのが望ましいため、それで問題ないかという点があるのではないか。実際にウォレットのアドレスをお伝えいただくなど、実際立ち上げる際にご連絡するため、了承いただきたい。
構成員: このDAOをどのような方向へ発展させていけばいいのか、これからこの研究会が終わった後でのオンゴーイングのガバナンスの一つの役割を担えると望ましいという気持ちはあるとして、どうやってそのようなものを作っていけばいいのかということについては、DAOの中で議論をしていけばいいのではないか。
- 事務局: Soul Bound Tokenがよいのではないかと盛り上がっており共感するものの、まだ開発中でもあるため、ツールのエコシステムなど含めて、取り組もうとしていることが実現できるか今後、事務局でも調査をした方がいいのではないか。趣旨としては、Soul Bound Tokenのように譲渡不可とすることも考えられるのではないかという提案をいただいたため、今後、別途進め方についてコミュニケーションさせていただきたい。
構成員: リアリティーのあるところから始めて、その後進化させていく必要があるなら進化させていけばいいのではないか。それでは、DAOは立ち上げるということで進めたい。
次回の研究会は、11月8日火曜日開催予定であることを事務局より説明。
議事要旨は、構成員の皆様に内容を確認いただいた後に公表させて頂くことを事務局より説明。
以上