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Web3.0研究会(フォローアップ会議)

概要

  • 日時:令和5年4月18日(火)15時00分から16時45分まで
  • 場所:オンライン
  • 議事次第:
  1. 開会
  2. 議事
    1. 事務局説明
    2. 関係府省庁からの取組説明
    3. 今後の方針について
    4. 意見交換
  3. 閉会

資料

議事要旨

日時

令和4年4月18日(火)15時00分から16時45分まで

場所

オンライン会議

出席者

構成員

  • 國領二郎(慶應義塾大学総合政策学部 教授)

  • 石井夏生利(中央大学国際情報学部 教授)

  • 伊藤 穣一(株式会社デジタルガレージ 取締役 チーフアーキテクト、千葉工業大学変革センター センター長)

  • 河合祐子(Japan Digital Design株式会社 CEO、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 部長、株式会社三菱UFJ銀行 経営企画部 部長)

  • 殿村 桂司(長島・大野・常松法律事務所 弁護士)

  • 藤井 太洋(小説家)

  • 松尾 真一郎(ジョージタウン大学 研究教授)

デジタル庁(事務局)

  • 河野大臣、大串副大臣、楠統括官、野崎参事官

議事要旨

  • 河野デジタル大臣より挨拶
  • 事務局、経済産業省、金融庁、総務省、内閣府より、Web3.0研究会報告書公表後の取組の進捗について説明
  • 事務局より、今後の方針について説明

構成員から質疑応答・意見交換において、主に以下の発言

構成員: Web3.0研究会DAOはとても重要な実験であり、良い方向に進んでいるように思う。各省や民間、学会から色々なメンバーが入って来られる場が、国がきっかけとなり作られたというのは、グローバルに見ても初であり、国際的にも注目を浴びつつある。Web3.0のよさは、誰でも参加可能で、全部を標準化しなくても互換性があればよい点なので、コーディネーションがとても重要になってくる。国が参加するコーディネーションの場に誰でも参加できて、透明性のある形で、合意すべきものは合意し、調整だけすればよいものは調整することが大切。また、外交においても、Web3.0は新しいトラストツールの在り方になっているように思う。今週から先週にかけて、FATFやイーサリアムなどの会議が開催されており、政治や行政、民間など世界中の様々なレイヤーが一緒になってWeb3.0に取り組み、成果を持ち帰ってきた。このDAOを新しい官民のパートナーシップの形として使っていけるよう、国もきちんと参加しつつ、民間と海外も巻き込んでいければ、大変価値のあることだろう。Web3.0以外の新しい技術と社会の調整にも応用できると思うので、例えばこの中でAIの議論をするのもありだろう。

構成員: 3つほど申し上げたい。1点目として、私もFATFやイーサグローバル東京のイベントに参加したが、以前と比べて多くの日本人が開発にグローバルに飛び込んでいっていることを嬉しく思う。再来週にはファイナンシャル・クリプトグラフィーやBGINのイベントが控えており、DIDや、ソウルバウンドトークン(SBT)とDAOのガバメントユースケース、プライバシー保護などについて議論いただく予定。デジタル庁含め日本のメンバーがグローバルのルールづくりにも関わっているところなので、この研究会で起きたことも共有しながら引き続き取り組んでいただきたい。

2点目に、経産省のスライドにおいて、分断されていないコミュニティーにしてお互いに助け合うという話があり、まさにそうだと思う一方、「コミュニティーづくり」という単語だけでは、どうしても長続きしない印象になってしまうように思う。せっかくエンジニア・アカデミア・ビジネスが一緒に協力してやるのであれば、インターネットの歴史におけるBSD(Berkeley Software Distribution)の例のように、ソフトウェアや基盤を皆で作るといった、もう少し具体的なゴールをつくるほうがよい。そのために必要なのは若い人の人材育成であり、イーサグローバル東京に関わっている人や、高校生・高専生・大学生がもっと関わってくれるとよい。ホワイトハウスはNational R&D ObjectivesというR&Dの目指すべき方向性と具体的な重点テーマに関する文書を発表しており、これから世界中の人材獲得競争が予想されるなか、日本がどうプレゼンスを発揮するのかという観点からも、経産省に詳細化をお願いしたい。

3点目に、今後の進め方の案に書かれていたAIについて、ChatGPTが出ることで世の中のデジタルデータが、そのままでは裁判に使えないようになる時代が来てしまったと捉えている。もともとブロックチェーン技術はタイムスタンプ、公証人役場の電子化から来ていることを踏まえると、オリジネーターの情報だけではなく、人間社会の責任関係も含めてWeb3.0やブロックチェーンで処理することがAIの時代に必要だということも含めて、今後検討を進められるとよいと思う。

構成員: 金融庁資料では取組一覧に暗号資産と並んでトークンと書いてある一方、経産省資料ではトークンというのがいっぱい書かれているが、両者のトークンの概念に違いはあるのか。

発言者: 資金決済法上の暗号資産であれば規制対象となる。一般的な整理かどうかは分からないが、当庁としては、暗号資産以外も含めてブロックチェーン上で発行されるあらゆるデジタル資産を、トークンと呼んでいる。したがって、トークンの内数の中に暗号資産やNFTがある。なお、一般にNFTと呼ばれているものは、基本的には暗号資産にはならないと考えている。

構成員: そうすると、先ほどのLPSの投資対象の話では、LPSには暗号資産なら投資してよいけれども、その他トークンはまだ認められないという理解でよいか。

発言者: 今回の解釈で投資対象に含めるのは、株式や新株予約権をトークン化した、いわゆる金商法上のセキュリティトークンのこと。もともとLPS法上の投資対象になっていたものがトークン化した場合に、LPSが投資してもよいということを今回の解釈で明確化する予定。一方、暗号資産に関しては、LPS法上の対象資産に含まれていないので、こちらは現時点では投資できず、今後どのような方法で投資対象に含めるかというところを検討していく。

構成員: 何がハードルになっているのか。

発言者: まず、LPS法の目的である事業者の円滑な資金供給の促進に則する暗号資産というのはどのようなものかという線引きの検討が必要。また、作業としては、法律を改正する必要も出てくる。

構成員: 生成AIとWeb3.0の関係について、必ずしも一対一関係にはないものを、政府内でどういう形で扱おうとしているか、説明できる範囲で教えてほしい。

発言者: 政府内でどういう形で扱うかについては、まだコンセンサスがとれていないので、相互の関連性やその可能性について、まさにこの場でご議論いただきたい。我々が念頭に置いていたのは、生成AIの急速な普及によって大量の情報やコンテンツが次々生まれていく中で、そのオリジネーターが誰かということを、より透明性、信頼性のある形で確認していくニーズが高まってくるのではないか、また、その際にブロックチェーン技術が活用できるのではないかということ。これに限らず、DAOのガバナンスやインセンティブ設計を最適化する話や、ブロックチェーン上の取引の監視や不正検知、職歴やスキルを表彰するNFTやSBTの分析など、今までWeb3.0の中で議論していたものが、AIというツールと絡めることによって色々な可能性が生まれてくるのではないかと考えている。構成員の方々からも、こういう可能性もあるのではないかなどあれば共有いただきたい。

構成員: 3点ほど確認したい。まず1点目に、生成AIについて、資料6で「AIによって生成される大量の情報・コンテンツが」とあるが、具体的に大量のコンテンツが流通する兆しのようなものが既にあるのか。関連して、純粋にAIが作ったものには基本的に著作権が発生しないという整理になっている一方、人間と一緒に作った場合には人間が作った部分については著作物として認められ得るだろうとされているところ、ブロックチェーン上に載ったコンテンツに著作権が及ぶのかを透明性を持って証明する仕組みがつくれるのか気になったので、もしご検討されていることがあればお聞きしたい。

2点目に、不正競争防止法の改正のところで、商品形態の模倣行為もデジタル空間上で行われたときに不正競争行為の対象とするという方向になっているとのことだが、これはWeb3.0の世界においても当然適用できるという理解でよいか。

3点目に、NFTを購入することによって、どういう権利ないし法的な地位が移転しているのかという点については未整備な部分が多いというご指摘もあったが、NFTを買うことによる権利は、契約上の地位のようなものでしかないのではないかという議論があると思う。この辺り、NFTを取引することによってどんな権利が発生するのかという点の検討をしておく必要があるのではないか。

発言者: 1点目について、生成AIが普及し、AI生成物も大量に生み出されるようになっているが、今後、それらがNFTと紐づき、パブリックブロックチェーン上に流通していった場合、取引対象となるAI生成物にそもそも著作権があるのかが、問題となることはあるかもしれない。そうした問題への対応については、正直に申し上げて、掘り下げた議論は現在のところ行っていない。もとより、AI生成物が著作権の対象となるかの判断基準が非常に曖昧である上、AI自体が非常に高性能になってきており、人間が作ったものと見分けることも難しくなっている。ただし、著作物性の有無の判断は、人間が作ったものでも、元来それほど簡単ではなく、現に流通しているコンテンツが本当に著作権の対象になるのかについては、最終的には裁判をしてみなければ分からず、このような問題は、AIが出現する以前からもあった問題である。

2点目の仮想空間におけるデザイン保護について、現行の不正競争防止法は、商品形態模倣行為を不正競争行為の1類型として規制しているが、ここにいう「商品」は、もともと現実空間における有体物を想定したもので、現実空間の商品のデザインが、仮想オブジェクトのデザインに模倣され、仮想空間の商品として提供されても、これを規制できない状況となっている。今回の改正により、仮想空間にける商品提供行為も不正競争に含めることとされ、リアルとバーチャル双方に規制が及ぶことになった。

構成員: ブロックチェーン上にコンテンツが載った段階では、そもそも著作物性があるかどうかというところは判断できないまま載るということか。オリジネーター情報等と紐づいたとしても、作成者の責任が何かしら表彰されたとしても、コンテンツが権利の対象であるかどうかというところは、現実世界でも著作物性が明確ではないように、やはり明確でないままの可能性があるということか。不正競争防止法の改正については、あくまでメタバースにおける商品形態の模倣行為についても適用対象にするという理解でよいか。

発言者: NFTなども今回の不正競争防止法の対象になる。特にNFTでは、ブロックチェーン上にはコンテンツデータは直接載らず、あくまでURLだけ繋がっていて、実際のコンテンツデータはサーバー上にあるというのが一般的なので、そこで形態模倣行為があった場合には、サーバー上にあるデータを削除することができるようになるかと。将来的には、フルオンチェーンになったときにどうするのかという問題は依然としてあるが、現状はブロックチェーンに全てのデータが載っているわけではないので、対応できるかと思われる。

構成員: NFTの権利の話に関連して、経産省から電子商取引の準則というものを出されていて、今年度の改定では暗号資産の項目を増やすことになっている。NFTを買う、保有しているということは一体どういうことかを解説したQ&Aを足すことも想定されているので、ある程度整理されることになるかと思う。

先ほどの知財の著作権の話は、生成AIが作ったAI生成物に著作権はそもそも認められるのかというところがまさに今論点になっており、国によってポジションが異なる。これが著作物だというのを機械的に判定するのは難しいだろうが、あり得るとすれば、何か元になっている著作物をそのままコピーしているか、ほぼそれに従って作っているかといった侵害の度合いをAIが判定するといった形で、不正なコンテンツが流通しないようにする枠組みとして活用するのが非常に重要。

相談窓口について、問合せがどんどん来るという状況になっていないのは、そもそもまだ周知が上手くいっていないからなのか、もしくはまだ相談に至るほど煮詰まっていないのか、自治体と事業者でそれぞれ何か感じられていることがあれば教えてほしい。また、現在DAOに関して色々とヒアリングをしていただいている中で、DAO法との関係で、法律論にはめるような論点がもし出てきていれば教えてほしい。

発言者: 相談窓口について、周知が上手くいっていないかを我々が検証するのは難しいが、具体的にコンタクトが取れた方々とやり取りした感触だと、Web3.0、特にDAOについて色々とやってみたいが、具体的にどういうコンセプトでどういうふうにやればDAO本来のよさや理念が実現できるかまだよく分からないといった話を伺っている。ただ、我々が聞いている人がたまたまそう思っているだけの可能性もあるほか、直接デジタル庁の窓口に来ずとも、他の所管省庁のところでお話をされている可能性もあり、我々が見ている姿がほんの一部分であるリスクはあるので、そこをどのように改善していくかが今後の検討課題。

2点目のDAO法制に関わる論点があるかについては、有限責任になるといいなという声はいただく一方で、別途設立した法人とDAOの両方を運営するという既存のオペレーションではなぜ駄目で、絶対にDAO法が必要であるというところまでの話は伺えていないというのが現況。
 
構成員: DAO法の必要性というのは、究極的には有限責任性を確保すること。法人とそれではないDAOというのを並行で走らせたとしても、「ではないほう」の構成員と見られて任意組合性が認められてしまうと、結局無限責任というのが今の日本の法律の建付け。付随して、例えば配当をするのであれば、税の話と金融規制の話が少なくともクリアではない。そういった意味では、DAOを法律上正面から認めて、会社法上、税法上、金商法上の取扱いはこうですとクリアにすることによる意義は一定程度ある。ただ、それがないとDAOが今できないというわけではなく、皆さん工夫してやられているので、それは両方あってよいと思う。

構成員: 補足が1つとお願いが1つある。知財に関して、生成AIで作成したものについて著作物性が認められないという記事の紹介があったが、あれはすごく特殊な事例。そもそも著作者人格権が明文化されていないアメリカで、著作物の登録局が内容について著作性を認めないというリリースを出したにすぎず、財産権としての著作権は認めるというリリースまでセットになっていたうち、一部だけが切り取られたものなので、そういう部分もきちんと政府や関係者から伝えていただけるとありがたい。また、おそらく無限にコンテンツやアーキテクチャーが生成されていく中で、著作物を流通させている私たちがちゃんと話し合う場所をつくっていただきたい。日本もヨーロッパも、アメリカとは違う考え方で著作権を扱っているが、著作者人格権がないと言われているアメリカでも、実際にはオーナーズロー、オーナーズライトなど様々な形の原則的な権利としての人格権に相当するものがあるので、そういうものを引き出してきて話し合う場が生まれると、私たちが活動する意義があるのではないか。そういう場にDAOなどをつくって挟んであげると、すごく強くなる気がする。
 
構成員: 2点申し上げたい。1つ目に、生成AIについては、著作権が認められるのかどうも含めて、急速に実務が積み上がっているところ、明らかに分かっているのは、膨大なデータの数になるということ。個人的な感想としては、この膨大なデータの数を持つものとブロックチェーンでの記録というものに本当に親和性があるかはよく分からない。また、今はまだ実務が積み上がっている最中なので、今の段階で何なのだろうということを検討すべきなのか、あえてWeb3.0との関係で生成AIを特異領域として取り上げるべきなのかについては、正直なところ、やや疑問がある。

2つ目は、暗号資産の領域について法整備を進められているなかで、今後見なくてはいけないような制度整備や、論点があれば教えていただきたい。また、暗号資産と既に法律で規定されているもの以外のトークンに関する制度や規制は、どのように考えているか。

発言者: 暗号資産について現時点で明確に制度整備すべき分野は無いと認識している。暗号資産を扱うライセンスが一種類しかないことについてご意見も伺っているが、我々としては、今の制度枠組みの中で、運用面で工夫の余地はあると考えている。また、先ほどご説明したように、資金決済法上の暗号資産に該当しないトークンの明確化を行っているが、暗号資産に該当しないトークンを現時点で規制する必要はないと考えている。他方で、トークンの今後の扱われ方によっては検討が必要になるだろう。
 
構成員: 生成AIについての補足だが、今のブロックチェーン、特にパーミッションレスブロックチェーンが、生成AIに係る何らかの権利処理に役立つというのは、今すぐは考えにくい。かつ、あるデジタルデータが生成AIの助けを借りたものか否かを見分けることは今ほとんど不可能に近い。そういった中できるのは、例えば何らかのデータを提出するときに、私はChatGPTを使っていませんという宣言に対して記録をするといった、人間の行為に対する宣言をデジタル的に公証するということ。すると、私が著作権侵害はしていないと言い張ったにもかかわらず、著作権侵害が見つかったときに責任関係を追える。生成AIが作ったデータのことはかなり難しいが、もともとタイムスタンプがやっていたことも含めて、人間の行為からこの議論をスタートすることは今からでもできるのではないか。

構成員: Web3.0と生成AIを技術的に結びつけるという点で、オリジネーターを管理するというのはあまりリアリティがないという話があったわけだが、それ以外に橋渡しするところの議論は何かあるか。

構成員: 分かりやすいところで言うと、組織をつくるコストとスピードを下げられるのがDAOのよさなので、DAOの立ち上げを生成AIでやるということは考えられる。スマートコントラクトや定款が透明性をもって行われれば、例えば、アメリカのあるDAOから、日本の文脈と日本の法人格に合わせて、日本円ステーブルコインに変換する形にしてDAOをつくるということがAIでできるようになるだろう。さらに、おそらくAI翻訳が文化の翻訳もできるようになると思うので、日本人の文脈に合わせた規約の変更、多言語なDAOのガバナンス、会議の進行など、今DAOで困っているガバナンスの分野でも活用できるのではないか。また、これは生成AIというより不確実系AIやストラクチャーの話だが、ブロックチェーン上で何が起きているかという解析、Web3.0によって透明化された関係性やデータ、約束を解析し、考察し、それをまた組織の形にしていくというナレッジの整理にも使えると思う。今は生成AIでNFTをつくるほうに意識が行っているが、もう少しシステムの中で動くAIとして、透明性と解析能力として考えると、Web3.0とはすごく相性がよい。

構成員: :今日はフォローアップ会議ということで確認ができてとてもよかったが、今後、この会議とDAO、そして新たにアジェンダにあがってきたような生成AIといった話は、どのように進めていくつもりか。

発言者: 今後の動きとしては、先ほど示したような、政府全体としてのWeb3.0の方針と、その中で生成AIの話をどう織りまぜるのかという点も含めて、本日のご意見を踏まえて検討を深めていきたい。DAOについては、新規メンバーも加わりまさに色々なプロジェクトが具体的に動き出している状況なので、構成員の方々も随時状況をご覧いただき、また何かの機会に報告できればと思う。この会議の今後については未定で、一旦は今回ご議論いただいたところを区切りとして政府の方針としてつなげていき、それ以降の取扱いについては、また別途ご相談させていただきたい。