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Web3.0研究会(第9回)

概要

  • 日時:令和4年11月30日(水)9時30分から11時00分まで
  • 場所:オンライン
  • 議事次第:
  1. 開会
  2. 議事
    • DAO及び消費者保護に関する委託調査中間報告
  3. 閉会

資料

議事要旨

日時

令和4年11月30(水)9時30分から11時00分まで

場所

オンライン会議

出席者

構成員

  • 國領二郎(慶應義塾大学総合政策学部 教授)

  • 稲見昌彦(東京大学総長特任補佐・先端科学技術研究センター 身体情報学分野 教授)

  • 石井夏生利(中央大学国際情報学部 教授)

  • 伊藤穣一(株式会社デジタルガレージ 取締役 チーフアーキテクト、千葉工業大学変革センター センター長)

  • 殿村桂司(長島・大野・常松法律事務所 弁護士)

  • 藤井太洋(小説家)

  • 松尾真一郎(ジョージタウン大学 研究教授)

  • 柳川範之(東京大学大学院経済学研究科 教授)

デジタル庁

  • 楠統括官、野崎参事官

議事要旨

デロイトトーマツコンサルティングよりDAOに関する委託調査中間報告について説明。
構成員から質疑応答・意見交換において、主に以下の発言

  • 構成員: DAO法を検討していく上で考えておくべきこととして、今の法律の概念の中にDAOの法律を追加する方針は、アメリカのワイオミング州、テネシー州のプロセスに似ている。彼らの評価として責任義務を増やしているが恩恵がない。ウィスコンシンやワイオミングで作っているDAOは、報告義務だけ増えているものが意外に多く、技術的な深さが法律の中に無い。例えばスマートコントラクトのアドレスを先に報告する必要があるが、一般的な会社同様、立ち上げ時点ではまだ銀行口座が開設できていことなどがある。そのため、DAOを作ってからスマートコントラクトを考えるなど、アップグレードできるようにしなければならない。しかしブロックチェーンによっては難しかったり、ベストプラクティスではなかったり、またスマートコントラクトとVoteのどちらが有効かについての定義の仕方など、アメリカの法律はうまくいっていないのではないか。従って、急いで日本でDAO法を作っても、アメリカの様に使い物にならないリスクは落とし穴と思っている。柔軟性があるDAO法が出来なければ、特区のような、ユースケースを理解してから取り組むべきである。

  • 構成員: ベネフィットとコストのトレードオフを見極めないと法律はバランスしないと思われる。有効な法律にする上で実験は重要なのではないか。

    • 発言者: ワイオミング州の議論を見ていると、無限責任のリスクを遮断し責任を有限化したいために、LLCなどのアナロジーで法制化が進んでいると認識している。法律で実現したいものは何か、仮に立法するのであればどのようなベネフィットを得たいのかという議論を踏まえて、出口を見つけていきたいと考えている。
    • 発言者: ワイオミング州の法律について、数としては300、400という非常に大きな数の登記がされているように見受けられる一方で、この法律があることで、是非ワイオミング州で登記してDAOを始めるべきだ、といったところまで機運が盛り上がってはいない。引き続き、ワイオミング州以外の形を模索するようなDAOというものが依然としてある。要因として、何がベネフィットで、本当にこれを使うべきなのかといった選択を、各DAOの方々、あるいはDAOを準備されるような組織の方々が判断した時に、必ずしもベネフィットを取りに行かなかったと認識している。
  • 構成員: DAOの持続性について、5年、10年、100年持続するようなものになると、山古志村や紫波町などでやっていることに芽が出るため、持続するためのビジネスモデルも含めて作っていただきたいと述べた。気になることとして、DAOにエンジニアが入り込んで作るのはいいが、DAOを最初に作るだけではなく、それを安全に維持し続けることは、ソフトウェアの脆弱性対応も含めて大変である。個別のDAOでサイロで作ってしまうとエンジニアが何人いても足りなくなってしまう。非中央集権だからと、各々が手作りで構築することはセキュリティー的にはプラクティスとして全く反対で、安全で確証されたものを使っていくべきである。ベストプラクティスを共有し、安全なソフトウェアや運用形態であれば、横連携をして共通的に利用できるようにすることや、そういったものを共有していくことが重要である。また、今までの法人にはなくてDAOでできることは、メリットを最大化するために時限組織にするということも、責任の有限化も含めて、実は新しい考えになり得ると思っている。既存の法人で負わされていた責任と、ある目的のために簡単に組織が作れ、ベネフィットを出せるということには違いがあるのではないか。

  • 構成員: 持続性の話はすごく重要だが、一方でメリットが出る時限的なDAOのようなものも含めて実現性を検討できるのではないか。

  • 構成員: DAOに対して我々が期待しているものを現状にどこまで引き戻してくるかという話と、今の法律や現状のルールの下でどこまでDAOを実演させていくことができるかという話の間のギャップが大きいのではないか。現状ワイオミング州では、既存の法律の中に入れていくと負担ばかりが大きくなり、何のためにやっているのか分からないような法律になるのは同意である。現状から延長していった時、将来期待しているものと差が生じるところに悩みがあり、恐らく報告書としては、今の法制度の延長線上でできるものと期待しているものの違いを明らかにすることが重要なことなのではないか。

  • 構成員: その上で、1点目は有限性の話について、技術の問題ではなく法制度の問題だと考えている。現状でも例えば合同会社の無限責任版もできるが、法律は構成員の責任を有限にしている理由がある。あるいは民法上の組合は有限にできない理由があるため、制度上の課題を解決しない限り、技術で有限責任にすることは単純にはいかない。現状の合同会社の枠組みの中で言われているものが、どこまでメリットが出てくるのかをヒアリングした結果などを踏まえてお聞きしたい。例えば銀行口座がなければDAOや組織は作れず、連絡先や住所がないと会社が作れないなど、日本でも合同会社や株式会社を作る際に苦労する。様々な手続をして会社が設立できているが、DAOであるからといって全てを省くことにはならないだろう。それなりの非合理なものも含めて理由があるため、その辺の整理ができていないとこの話は先に進まないのではないか。

  • 構成員: 2点目は、DAOとして例えばコミュニティーでSNSやメーリングリストでコミュニケーションを運営する話と、DAOと言っているものの間に違いがあるのか。どこにそれ以上のメリットがあるのか。スマートコントラクトやブロックチェーンというが、ブロックチェーンやスマートコントラクトを使う必要のあるコミュニティーはどのようなものがあるのかが分からない。ヒアリングの結果等を踏まえた具体的なポジティブな話についてお聞きしたい。例えばブロックチェーンによる高い透明性について、全てのコミュニケーションをブロックチェーンに乗せる必要は必ずしもないと思われる。ブロックチェーン以外のSNSやメールでコミュニケーションを取ることで透明性はその分落ちるのではないか。現状スマートコントラクトやブロックチェーンを使わないとできないと思われるようなものとしてどんなものがあるかお聞きしたい。

    • 発言者: 1点目の法人格を検討するときの考え方、アプローチの観点として、必要性や位置づけについては、DAOだけに着目するのではなく、DAO及びDAOを準備するような組織や主要な関係者も重要なのではないかというような議論をしている。トークンの時価総額が大きいDAOの取組みをいくつかリストアップしているが、DAOがある中で、周辺に様々な組織体があるのが通常のスキームと思われる。例えばユニスワップであれば、DAO的にガバナンストークンを使った投票が実際に行われている一方、実際に開発を主導するのはユニスワップラボという法人である。2番目のエイプコインはBAYCや著明なNFTを持っているユガ・ラボが主導しているが、開発デザイン等はこの企業から始まっていきつつ、活動をいかに分散化、拡大化していく観点でエイプファウンデーションというDAOの活動をサポートしていく組織を登記している。3番目のAaveに関してはライセンスが必要であり、DAOに加えてライセンスを取得して活動を引っ張っていくような組織を設けている。公表情報にどの程度明らかにするのかは様々な取組み毎に濃淡があり、DAOだけで何かを成し遂げようとするスキームの方が寧ろ少数派と現状認識している。例えばDAOに法人格があると有限責任であり銀行口座を保有できるという点について、今までの仕組みの中で株式会社を作った事例や、事業者ヒアリングの中でもそのような対応もあり得るといったコメントもある。DAOに関する法人格を定義することがどの程度効果的か、事業者の方々と意見交換を通じてより詳細に見ていく必要があるのではないか。
    • 発言者: 参考になる動きとして、今月、イギリスがcall for evidence on DAOという類似の取組みとして、イギリス、特にイングランド・ウェールズ法におけるDAOの位置づけや既存の組織類型の中で該当し得るものは何か、またDAOの実態に寄せていくためにどのような要素を考えていく必要があるか、論点整理ペーパーを公表して、DAOに関する有識者からのパブリックコメントを受け付けている状況である。各国でそのような取組みをしているため、今後調査が検討に発展し得るということも考えられるのではないかと思われる。
    • 発言者: 2点目のDAOに関する期待やメリットの具体的な事例やヒアリングを踏まえた実現例については、重要なご指摘と認識している。DAOに関する期待は理念上存在する一方、非常に高いレベルで実現したDAOは、まだ実際にはないような認識である。
    • 発言者: 例えばグローバルに多くの人を巻き込むことなどはできていると思われるが、巻き込まれた人々がどの程度DAOに本気で活動参加しているかは、積極的に投票参加してDAOが回っているといったような実情には至っておらず、投票率が低いといった点にも表れてきている。
    • 発言者: ガバナンス投票率の実績は良くて10%弱という実態である。少数の方により大体の提案が可決されており、一部の人に活動の実態が限られている。また、NFT分野でDAOの運営をうまくされていると認識のあるNouns DAOは、実例として様々な派閥が生まれつつある。コミュニケーションを持つことによりかえって分断が進むと望ましくないため、Discordのコミュニティーの停止や、初期メンバーが提案に対する拒否権を持っているなど、必ずしも完全に分散化していない現状がある。各事業者の認識として、DAOについての理念が各々の頭の中にはある一方、それを現実の形に落とし込むにはまだ様々な条件が整っていない。現状は過渡期であるため、様々な事例を見ながら過渡期を乗り越えていき、ベストプラクティスが自ずと共有されて発展していくと思われるが、今は明確な回答を持っている事業者は実質いない認識である。
  • 構成員: 現行法でどこまで対応できて、法改正が必要なところはどこかという点について、対応案にある現行法をそのまま適用するのは難しいのではないか。対応案を実現する場合であったとしても、立法事実に基づき、会社法の見直しが必要という整理になると思われる。しかし、現状では立法事実があるかどうか微妙な印象がある。スマートコントラクトやブロックチェーンの仕組みを使うことが最も適した領域はどこなのかという論点を整理した上で、かつ法人格を与えることが適切なのかどうかという段階を踏んだ議論が必要ではないか。法律改正となると、時間を要する印象を抱いている。

  • 構成員: 法人化とスマートコントラクトの論点整理について、スマートコントラクトはあくまで契約論の話であり、法律を見直すという話は出てきていないという整理でよいか確認したい。

    • 発言者: 1点目の法律に関する分析や対応案の検討は試案の位置付けと考えており、そもそも法律の必要性がどの程度あるのかを事業者の方々へヒアリングを行いながら意見交換している。初期的な印象として、必ずしも法人格があるからそれを使おうというところまで、まだ各々の検討が進んでいない。とりあえずDAOを始めてみたけれど、その活動の実態として本当にこれでいいのかなど、メリットや期待の部分を実現できているのかが一番の関心事である。徐々に実現される事例が出てきた際に、分野において例えば免許が必要、何らか有形無形の資産をDAOとして所有することが大事など、特徴が表れてくる。その際に、法人格を与えないと解決できないような、もう少し法人格で解決できる課題が明らかになってきた時に、法改正なり何らかの制度の手当てという形で議論が生きてくるのではないかと思われる。
    • 発言者: この検討の位置づけとして、ワイオミング州をはじめ各国の調査が、例えば法人格があれば有限責任で済むのではないかなど、DAOの活動を後押しするようなコンセプトレベルでの検討を基に実際に法律を作ってみた事例もあれば、これは本当にどうしようかというような検討をしているイギリスのような事例もある。今後こういったものが本当に必要かどうかの検討は継続して続けていく必要があると認識している。
    • 発言者: 2点目のスマートコントラクトに関する法的な位置づけの整理については、何かここで変えないといけないということではなく、あくまでスマートコントラクトが契約そのものではなく、事前に契約で合意された内容を自動的に執行する、その仕組み、プロトコルそのものの整理に留まっている。
  • 構成員: DAOを法形式に当てはめるメリットとして一般的に言われていることは、構成員の有限責任化と、課税関係の明確化である。米国などではパススルー課税にすると、法人課税にしない点などがメリットとして挙げられている。他には第三者や周囲の人からの視点で登記されている方が何かあった際に責任追及しやすい点や、他国からの視点で、監督が及び得るという意味で制度化をするメリットがあると思われる。その辺りは恐らくDAOの種類によってどの点を重視するかしないかが変わってくるのではないか。
    例えば合同会社を選択する場合、日本では法人課税になり、アメリカのLLCのようにパススルーにならないため、パススルーを重視するDAOであれば合同会社でよいのかが論点になる。スマートコントラクトについても、DAOはスマートコントラクトを全然使っておらず、単にNFT保有者のデジタル住民の意見を集約するものとしてDAOがある。ヒアリングの際に具体的にどのようなニーズがあり、DAOがどのような性質のものなのだからという点を掘り下げられると今後の検討に有益である。

  • 構成員: 2点目として合同会社が有限責任ということについて、全部の構成員を業務執行社員として扱うという前提であれば、業務執行社員としての責任自体はあるはずであり、そこをどう考えるのかが悩ましい問題ではないか。合同会社と位置づけると金商法の規制がかかる点も課題として出てくるのではないか。

  • 構成員: 対応案として、何も登記しないケースや、どの社員についても氏名を登記せず、例えば代表社員の氏名だけでも登記するのかしないのかなども論点として出てくるのではないか。

    • 発言者: 1点目のコメントについて、事業者の方々と会話をしている中では、DAOに対してどういった期待をしてDAOの活動に取り組むのかというと、一番大きいものは活動への巻き込み、関係者をいかに大きくするか、取組みのスケールアップかと思われる。活動をDAO化する、あるいは取組みにDAOを紐づけることで、今の段階では注目を集めたり、ポジティブな認知をしてもらえる可能性を高めたりなど、そのような効果を現実問題として事業者の方々も把握している。全てをDAOにすればよいとか全てDAOにできるとは考えていないが、DAOにすることでそのような効果が期待できることはメリットの1つとして考えた上で、DAOを上手く活動の中に取り入れていくような対応を検討されている印象がある。メリットとしてはそのような点を期待されているのではないか。また、メリットを実現していく時には、どのポイント、どの分野でどういった論点が重要になるのか、濃淡が出てくると思っており、そこを踏まえた実際の制度設計が、実現されていくプロセスの中で必要だと考えている。
    • 発言者: 2点目でご指摘いただいた、業務執行社員としての責任や金商法上の規則については、まだこの検討の中で詳細に扱えていない。合同会社をベースに考えられる方向性を案の1つとして提示した段階であり、DAOに取り組んでいる方々のニーズの有無や、こういったものを下敷きにして法人格に関する議論を深めるための材料に留まっている。検討を深めていく中でご指摘いただいた内容を取り入れて考えていく必要があると認識している。

続いて、デロイトトーマツコンサルティングより消費者保護に関する委託調査中間報告について説明。
構成員から質疑応答・意見交換において、主に以下の発言。

  • 構成員: 今年1月1日から11月半ばまでに起きた犯罪やセキュリティーインシデントを手元で取りまとめたものとして、ラグプルだけで37件、230million dollars、320億円程、セキュリティーインシデントは105件、2.9billion dollars、4030億円程である。今年になってスマートコントラクトが世の中に使えるものとして出てきており、特にブリッジも含めてチェーン同士をつなぐ、あるいはスケーラビリティーの問題を解くためにブリッジを使って実用に供することが出てきている。実用に供され始めたがゆえに攻撃対象になってやられており、今年犯罪やインシデントが増えている認識に相違ない。犯罪やインシデントが明らかに過去より大きくなっているため、本来は年ごとに定点観測するべきではないかと思われる。

  • 構成員: 一方で、私が見る限りにおいて今年起きているセキュリティーインシデントは5種類ある。旧来型の取引所・交換所への攻撃とブリッジへの攻撃、スマートコントラクトへの攻撃、スマートコントラクトに対して外部からデータを取り込む時のオラクルへの攻撃と、インターネットへのプロトコルに対する影響を与えることでブロックチェーンにも影響を与えるタイプの攻撃である。5種類に関して言うと、今年新しく登場した攻撃手法というよりは、旧来から知られている攻撃手法がそのまま適用され大事故が起きているケースが多い。昨年より以前に起きているということは、ある種、それへのシステムを構築する側の対策が見えているのに、それがうまく幅広い開発者やプロジェクトの運営者に共有されていないということがあるのではないか。安全にブロックチェーンのシステムを作るためのプラクティスの共有がされていないが故に起きていることも多々ある。法執行も重要だが、人材育成も併せて取り組むことが事故防止に十分効果を発揮すると思われる。法執行の話だけではなく、その裏側も見ていただきたい。

    • 発言者: ここで取り上げているのは、何らかの攻撃によって不正に資産が盗み出された時の匿名性の問題や、DeFiを中心に新しい分野での悪用事例の概観といった形でのファクトの整理である。従来型のシステムに関する5つの類型についてご指摘の通りと思われる。調査の深め方、取りまとめ方について、事務局、構成員の方々と具体的な報告書の書き方を相談させていただきたい。
  • 構成員: 暗号資産を使った犯罪捜査を行う能力は各国によってばらつきがあるのかということと、アメリカは専門チームを立ち上げて対応するようなリソースもあればスキルもあるということだが、日本も含めた他国については、必ずしもそうでないかもしれない。

  • 構成員: 日本において現状、暗号資産関係の詐欺被害やダークウェブ関連の捜査に対する対応能力がどの程度であると評価しておけばいいのか可能な範囲でお聞きしたい。DAOを使っているから犯罪が横行しているかのような印象を与えてしまうと、今後の展開に影響があると思われる。犯罪に対して厳正な措置を取れるような体制が作られているのか、あるいは作られつつあるのか、現状について確認させていただきたい。

    • 発言者: 各国の捜査能力の評価について、公になっているデータはない状態という認識である。個人の想像になるが、捜査能力を客観的に評価すること自体がどの立場であればできるのか難しく、仮に客観的な評価が理屈上可能だった時に、そういったものがある程度気軽にアクセスできてしまうのは好ましくない現状もあると思われる。今回の調査業務の位置付けとしては、犯罪の手口や対応する捜査事例の列挙と動向整理に留めておき、事例を踏まえて今後取るべき対応や、各国との意見交換について、関係省庁において具体的な検討を進めていく際の1つのインプットとして役立てていただく整理である。従って、様々な国の捜査能力に関してどのような評価がされているかについては、今回この調査の中では明示的には扱っていないという回答になる。
  • 構成員: 日本における、サイバー犯罪対策のスキル向上や暗号資産関係の犯罪対策についての対応状況をお聞きしたい。

    • 発言者: 我が国においてもサイバー空間の脅威は極めて深刻な情勢にある。サイバー事案の対処に関する課題は紹介いただいたとおりで、サイバーの分野においては、捜査機関等から追跡されづらくする目的で、国境を越えて犯罪が敢行され、C2サーバーを介したり、ブロックチェーン技術を悪用したり、匿名化技術が悪用されている。こうしたサイバー事案の特性は、我が国だけではなく世界共通の課題となっており、この課題に対抗するべく、昨今、海外捜査機関同士の連携が活発に行われている。各国間で情報連携し、その捜査権限が及ぶ範囲で相互に連携し、ダークウェブのフォーラムのテイクダウンや、特定のウイルスを使うハッカーグループの検挙といった実績等も確認されている。このような情勢を踏まえて、警察庁では、この春、サイバー警察局及びサイバー特別捜査隊を設置した。サイバー警察局においては、専門的な知識・技能を有する職員の確保・育成や、海外捜査機関などとの国際連携の強化に向けた取組を推進しており、また、国内の重大なサイバー事案に直接的に対処するサイバー特別捜査隊においては、各国の捜査機関と情報交換などをしながら捜査を推進しているところである。
  • 構成員: e-KYCを適切に運用することが有効ではないかという認識は警察庁とも一致しているのか。

    • 発言者: ご認識のとおり、本人確認の手続は極めて重要である。本人確認が適切な形で行われなければ、犯人の追跡が困難となる。また、適切な手続が講じられていれば、犯行の意思を持つ者への抑止効果が働くことから、防犯の観点からも、適切な仕組みを設けることが重要であると認識している。本件取組に関しては、警察としても関係省庁、関係業界と連携しながら対策を働きかけてまいりたい。
  • 構成員: もう少し大きい概念で考えると、暗号資産を使った従来型の犯罪、例えばFTXのガバナンスが悪いという話と、暗号資産でしかできない犯罪の種類を捜査で捕まえることと、規制で抑えること、技術的に不可能な構造を作らせるという、様々な手段があり、物によってどれが適切かどうかは変わってくるのではないか。

  • 構成員: ステーブルコインのパブリックコメントで議論になっており、DAOとは関係はないが考え方が似ている。日本を規制してしまうと簡単に海外に行って、他のサービスを使えてしまう。しかし、海外では日本からはコントロールもできないし捜査もしづらいケースがあるのではないか。例えば今回、ステーブルコイン法でもトークンを買う時はボラティリティーが高いと分かっているが、円と書いてあるとボラティリティーはないと思われてしまう。ステーブルコインは銀行口座に入っていないといけないという話があり、例えばアルゴリズムのステーブルコインは突然落ちたりするためリスクは高く、円のステーブルコインでアルゴリズミックはリスクがあるため使わないようにしようという話があると思われる。ただ、アルゴリズムでOne to Oneでバックされていない円のステーブルコインは、決済を1秒だけやる時であればいいのかもしれない。金庫に何年も保管するのであれば安全なものが欲しいが、ゲームの中で一瞬だけ円で決済するのであれば、アルゴリズムが良いのかもしれない。

  • 構成員: 日本の中でステーブルコインを守るために規制をかけていくと、ゲームの中で使おうとしている人たちは海外でセットアップし、ユーザーも海外に行ってしまい、コントロールしづらくなってくる。もう1つ考えなければならないことは、海外に動いて行きやすいユーザーとアプリケーションを規制したり捜査したりする時に、本当に日本だけを規制することによって、結果的に日本人の消費者の被害が上がるか下がるかという、マーケット全体を見た合理的な考え方である。

  • 構成員: 我々は日本にいる人たちだけに対して責任を持たなければならないというコンセプトがあるが、DAOなどインターネットはそもそもグローバルであり、海外に行ってしまう日本人の責任も取らなければならない。取り締まりも規制もグローバルな視野で考えていると思うが、海外に行ってしまった人のことは気にしない。アメリカでFTXを規制しても、バハマでアメリカの消費者が多くの被害を受けるなど、爆発する時はグローバルである。グローバルで様々なコーディネーション、KYCやマネーロンダリング対策や捜査もしており良い方向に動いていると思うが、様々なルールを作る範囲もグローバルに考えないと難しく、DEXは規制しづらいものなので、技術的な改善も考えていかなければならない。結論からすると、ルールや規制をすると海外に移ってしまい、更に取り締まりと管理がしづらくなってしまうリスクを、どのように計算するかということだけ視野に入れて進めたい。

  • 構成員: 規制することで海外に移ってしまった責任は取らなければならず、日本国内だけの責任では終わることはできないと思われる。実際に金融庁がFTXの日本の交換所の買収時に厳しく、海外のFTXの交換所にいる日本のユーザーも日本の文脈で管理しなければならないと指導した。FTXの人曰く、当時90%以上のFTXのユーザーがバイナンスに移ってしまった。しかし、偶然FTXが日本に進出したことで金融庁の影響力があり、その金融庁のルールをグローバルなFTXが適用したことが、結果的に日本のユーザーには良かった。海外にいる日本のユーザーをどのように守るか。どのようにグローバルにコーディネートするか。他国とのコーディネーションは重要であり、他国とのポリシーの整合性もあると思うが、グローバルなレイヤーをちゃんとマーケットも含めて考える責任が誰なのかお聞きしたい。全体的にポリシーをどこかが決めて常にポリシーの二次効果も視野に入れて考えることが必要である。

  • 構成員: ポリシーコーディネーションの取組みについての国際調整は調査しているか。

    • 発言者: 今時点で調査をしているポイントではないため、この後の調査に含められるかどうか検討させていただきたい。
    • 発言者: 各国がばらばらに規制をしてしまうと、税制もそうだが、レギュラトリーアービトラージが発生して、予期せぬ結果を生み得るということはご指摘のとおりである。しかし、問題認識はかつてから既にされていると思っており、例えばマネロンの観点ではFATFで、証券の観点ではIOSCOなど、様々な観点から国際連携というものが進んでいる。捜査の中でグローバルの観点で、お互いに持っている法律は違うが、目指す目的を共有して捜査協力していることがあろうかと思う。解き難い問題ではあるが、Web3.0はDay 1からグローバルという視点を持ちながら、どのようなメッセージを報告書に出していくべきなのかについて議論いただきたい。
    • 発言者: 恐らくアルゴリズム型ステーブルコインが日本で全く認められていないということではなく、ステーブルコインではなくて暗号資産に分類される。国内の交換業者で取扱いできるかどうかは、審査プロセスなども他の場所で議論されていると思われる。グローバルで扱える全てのものが国内の交換業者で扱えるという状況では全くないが、投資家保護をしていく部分と、自己責任をどのように考えていくかも含めて、研究会でどこまで扱えるかという点はあるものの意識していく必要がある。
    • 発言者: 監督当局の登録や認可があることで、利用者が安心してその事業者
  • 構成員: リスクテイクをして、リスクを承知でやりたい人が海外でやるのは防ぎようがない。日本の中では管理されている世界を創るのが得策ではないかというご意見か。

    • 発言者: いかにバランスを取るかが重要。旧来の金融サービスと異なり、利用者が容易に海外の事業者と取引できてしまう面もある。そのような中でいかにイノベーションと利用者保護のバランスをとっていくのかについては、難しい問題であり、悩みながら取り組んでいる。

次回の研究会は、12月7日水曜日開催予定であることを事務局より説明。
議事要旨は、構成員の皆様に内容を確認いただいた後に公表させて頂くことを事務局より説明。

以上