Web3.0研究会(第11回)
概要
- 日時:令和4年12月13日(火)10時00分から12時00分まで
- 場所:オンライン
- 議事次第:
- 開会
- 議事
- 関係府省庁へのヒアリング(総務省、文化庁、内閣府、内閣官房)
- これまでの議論のとりまとめ(DAO、分散型アイデンティティ、メタバース、利用者保護・法執行)
- 閉会
資料
- 議事次第(PDF/64KB)
- 【資料1】総務省提出資料 ※構成員限り
- 【資料2】文化庁提出資料 ※構成員限り
- 【資料3】内閣府提出資料 ※構成員限り
- 【資料4】内閣官房提出資料 ※構成員限り
- 【資料5】事務局提出資料(DAO、分散型アイデンティティ、メタバース、利用者保護・法執行に関するこれまでの議論のまとめ ※構成員限り
- 議事要旨(PDF/261KB)
議事要旨
日時
令和4年12月13日(火)10時00分から12時00分まで
場所
オンライン会議
出席者
構成員
國領二郎(慶應義塾大学総合政策学部 教授)
石井夏生利(中央大学国際情報学部 教授)
河合祐子(Japan Digital Design株式会社 CEO、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 部長、株式会社三菱UFJ銀行 経営企画部 部長)
殿村 桂司(長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
藤井 太洋(小説家)
松尾 真一郎(ジョージタウン大学 研究教授)
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科 教授)
デジタル庁(事務局)
- 河野大臣、大串副大臣、尾﨑大臣政務官、楠統括官、野崎参事官
議事要旨
総務省、文化庁、内閣府、内閣官房よりそれぞれWeb3.0に関する取組み状況について説明。
構成員から質疑応答・意見交換において、主に以下の発言。
構成員: クリエイターに報いるような発想がある一方、今後制度を整備していく中で、ソフトローを考えていく話があったと認識している。ソフトローを整備していく時、主体として入ってくる体力のある民間企業は、概ね大きな企業が多い印象である。例えばこの世界のプラットフォーマーに相当する方や、Web2.0的な方がソフトローを形成していく時の主体にならざるを得ないとした時に、個々のクリエイターやクリエイターズコミュニティーのようなところにどのように配慮をして、ソフトローないしその後の制度設計をしていくのか、この点について内閣府か文化庁で考えがあればお聞きしたい。
- 発言者: プラットフォーム主導ではなく、個々のクリエイターの権利を守っていく時に、どのように担保していくべきかは、現状とこれから出てくる課題がある。クリエイターの権利処理は、例えばクリエイターの特定の著作物をメタバース空間内に持ち込み、二次創作する際の管理体系は、従前のYouTubeなどの投稿サイトと同様、基本的には事前にアップロードする人、ワールドに持ち込む人が所要の権利処理を行った上で、違反などがあった場合には、削除や制裁といった、従前のWeb2.0型の権利処理の仕組みが規約ベースで定められている。
- 発言者: そのような部分では、従前からプラットフォーム側からも権利者の権利保護が一定配慮された上でルール形成がなされてきた。かつメタバースについては、ユーザーが多様な創作活動を行い、持ち込み、更に二次創作、N次創作も行うこと自体がメタバースの価値を高める点もある。クリエイター側の様々な創作意欲を喚起し、かつクリエイター相互のリスペクトなど文化を醸成し、メタバース空間の魅力を増していくビジネスモデルが育ってきている中において、現状、秩序が形成されているのではないかと思われる。
- 発言者: メタバースがよりユニバーサルなものになっていくことで、様々なタイプのユーザーが入り、様々なことが起こり得る。その際、今のようなリテラシーの高い人同士の中で形成された秩序に、必要な範囲のルール形成で対応していくのかどうかは、今後の課題意識としてある。
- 発言者: その際に、1つの視点として、Web3.0やブロックチェーンの技術を使い、スマートコントラクトで権利処理を行い、システムによって担保していく方向性もあるのではないか。教育啓発も重要になってくる認識である。
構成員: 期待が持てるものとして、どのように日本が優位な分野で権利保護をしていくのかが大事な論点である。デジタルアセットを巡る権利をどのように法律上で考えていくかは、民法も含めた大きな課題だと捉えている。
構成員: ブロックチェーンの時代になり、重要な健康情報や財産の情報を広く扱うようになるが故に、権利保護という意味でも様々なステークホルダーが、法律の制定よりも早いタイミングでマルチステークホルダーの議論をしなければいけない。
構成員: 一方で、継続的に権利保護されなければいけないような力の弱い人たちの意見も十分に取り入れるために、その意見を述べてくれる人たちに、マルチステークホルダーの議論やソフトローの構成過程に、毎回時間を割いて参加してもらうことは重要だが難しい。ソフトローという5文字では簡単には表現できないような苦労も裏にある中、ソフトローの活用について、どのような運営を考えられているのか、国としてどこにバックアップすることができるのか、イメージがあればお聞きしたい。
- 発言者: マルチステークホルダーを含めた幅広い議論はこれから必要になってくる認識である。行政当局だけでルールメイキングできる時代は終わっており、Web3.0自体が分散アーキテクチャーの下で作られていく話である。ルールメイキングやソフトローを含めた意思決定も、分散アーキテクチャーの中で進めていけるような概括的な発想を持っているが、具体的には今後検討していく必要があると考えている。
- 発言者: Web3.0とは直接関係ないが、トラストサブワーキンググループの報告書のトラスト分野において、マルチステークホルダーモデルでの形成に取り組み始めている。処分通知等についてデジタル庁へ要望書を提出された後、デジタル庁の中で具体的にどう受け止めるか取り組んでいるが、様々な課題がある。
- 発言者: 業界からは本業として貢献いただいているが、ユーザー組織や消費者の声をどのように丁寧に拾い上げていくかは、議論を深く理解し、十分な時間をかけてコミットしていただくことは大変なことである。一歩一歩取組んで参りたいが、ご指摘いただいたような課題は、取組みの中でも見直している。
構成員: 次々と変化する局面にどのように対応するのか問われているが、十分に考えるべきである。
- 発言者: 裾野の広いコミュニティーの中でレベルの高い議論を行っているため、この分野は、他の政策領域と比較して、4~5年、草の根的な営みもあった分野でもあると認識している。ボーダーレスで非常に動きが早くなっており、様々な国際的取組みの中でも活発に議論されている領域に若い人たちが入っていきやすくするような支援等も含めてどういったことができるのか、今後試行錯誤してまいりたい。
構成員: 民間側で起こっている自己規律の取組みにも支援の目を向けていくと理解してよいか。
- 発言者: ご認識の通りである。
構成員: ソフトローによる対応が内閣府の検討会の資料などでも謳われているが、ソフトローという表現が一体何を示しているのか明確ではない面があるのではないか。ここで指しているソフトローとは、新しく国会で法律を作らず、別のアプローチでルール形成を図っていくという趣旨かを確認したい。
構成員: デジタルアセットでクリエイターの権利を保護し、日本が持っている強みを生かしていくことについては全面的に賛成するが、背景には著作権やハードローが存在する。例えば、プラットフォーマーの規約に定めていたとしても、ハードローである民法が背景にあると、ハードローをベースとして使いつつ、クリエイターの権利を守るという発想になっていくのではないか。従って、ハードローを後ろに追いやるよりは、ハードローの使えるところを活用した上で、メタバースの展開の足かせにならないように、ソフトローを組み合わせていく発想が大事なのではないか。
- 発言者: ソフトローを整備していく際にもベースとしてのハードローに関係する考え方の整理が重要なのではないかという指摘について、ご認識の通りである。故に今回の検討の場を関係省庁と民間で課題意識を持っている方々、ないしは法律家、法律実務をやっている方々を集めた連携会議として立ち上げた。
- 発言者: ソフトローを整備していく際には、メタバースに参入しようとする方が一定のリスクを負ってでも、グレーゾーンに対して新たに踏み出せる指針になるために、考え方を示していくことが必要である。その際には既存の法令の解釈や、例えばNFTに付随する権利に対する法的な組み立て方や、デジタルオブジェクトの保有者が持っている権利の内容など、法律の適用関係、考え方の整理、何をベースに流通する際の根拠について、ハードローの解釈、ないしは適用の考え方の整理が重要になる。そのような視点を踏まえ整理を行った上で、今後事業参入を検討される方などにも分かりやすいソフトローガイドラインなどの形で成果を示すことが必要な方向性と認識している。
構成員: Trusted WebとWeb3.0の関係性について、オーバーラップした考え方に対応している部分もありながら、かなり違う世界を見ようとしている部分と、国家の仕組みから外れたところで発展してきているようにも見えるWeb3.0の世界と、国家の仕組みが関与して発達しようとしているTrusted Webの世界は、どの程度接合し、あるいは距離を取り、どんなところにインターフェースを作っていくべきと考えているかお聞きしたい。
- 発言者: 答えることが難しい質問である。グローバルで見ても、Web3.0の定義には様々な見解、考え方があり、定義が定まっていない。Trusted Webの協議会で議論した際にも同様の議論になった。Web3.0は定義が決まっていないため、我々が目指しているTrusted Webと違うのか、同じなのか比較しようがないと整理している。今のインターネットやウェブが抱えている問題を分散型の考え方で取り入れて検証可能にしていく点は、志向としては共通している部分もあるのではないか。ただし、共通している部分はあるが、Web3.0の定義は明確化されていないため、相違の有無については言い難い整理である。Trusted Webについては、アイデンティティの管理の在り方などを注意しながら、インフラとして、相互運用性も担当者が対応していくという考え方を記載している。
- 発言者: 違う世界を見ているのか否かは、答えにくい質問である。今の現実社会で「トラスト」を考えた時に、社会の基盤として国が支えて成り立ち得る「トラスト」があり、あるいは分散型テクノロジーとして、ブロックチェーンで実現できる「トラスト」もあるが、どちらかに限定するのではなく、組み合わせながら作っていくのが現実的に目指すべき姿なのではないか。例えば全てのトランザクションをブロックチェーンで検証可能にすることも世界観としてあるが、より人間社会の現実的な「トラスト」を構築していく上では、様々なものを組み合わせながら、今よりもデジタル空間における「トラスト」を高めていくことを目指してはどうかと考えている。
構成員: Trusted Webだけでなく、その他のWeb3.0で検討しているところでもトラストが必要になってくるのではないか。技術やブロックチェーンだけでそれを実現するのではなく、政府や法律で補完していくのか、どちらが主なのかは、先ほどの定義や見方によるものと思われる。トラストを支えていく根幹として国や法律がある前提と理解した。Web3.0も定義が様々である。法律や国が多少関わりつつ、技術主体でトラストを実現させ、分散型の仕組みを作っていくという発想は、今Web3.0と強く言っている人からすると距離があると思われる。
構成員: いずれにしても、国や法律か技術かの両極端ではなくどこか中間で、具体的な実現時期として例えば来年や再来年の話なのか、20年後なのかで異なり、技術の発展によっても異なってくるのではないか。ポイントとして考えなければいけないことは、今の法律や制度を無視することもできないという意味で、今の法律や制度が支えているトラストを外して、技術でそれを代替していくことである。
構成員: また、今の法律や仕組みがトラストを実現できていない点に対し、技術を入れていくことでより向上させるという観点もある。その際は技術だけではなく、技術と法律を両方載せなければならない可能性がある。前者は、技術と法律がある人との代替関係にあり、法律や制度の代わりに技術を載せるということである。新しい分野に関しては、技術と法律を両方補完的に使い、新しい分野に関してのトラストを作っていく整理という認識である。Trusted Webの話は、補完的なもので、新しい仕組みに対して、技術と法律の両方で検証可能な部分を増やしていくというイメージに近いと思ったが確認したい。今の制度の中で何が変わっていくのかなど、今の制度を前提にした議論が出るため、その際に、何が技術と補完的で、何の技術と制度が代替的なのか、整理が出来ると見通しが良くなるのではないか。
- 発言者: 1点目のトラストの根源について、政府がトラストの根源になるケースもあり得る。あるいは今のデジタル空間は、恐らく大きなプラットフォーム事業者の人たちを信用するしかない状況になっている。様々な人が各所で確認をしているはずであり、トラストの根源を分散化させ、社会全体として確認している点をトラストのチェーンを作り分散させていくことは、トラストの方向感としてあるのかということである。
- 発言者: 2点目は、例えば、今の個人情報保護法についても、同意で機能しているのかという意味で、法律では限界がある。技術で補完できるようなところがあれば、法律の在り方が変わるかもしれないし、法と行動のリバランスを模索していくことが必要か問題意識として持って取組んでいる。
構成員: そもそも論に立ち戻る良い機会ではないかということを感じている。トラストは何かを考えることは、Web3.0に限らず、これ以降の技術開発やそれ以外の領域にも大きく寄与するところがあるのではないか。その中で、その事業やサービスの実態を逃げずに精査していくことをお願いしたい。また、制作するガイドラインについても、そのガイドラインが法の理念に従っているのか、正しいのかということも考えていかなければいけない。例えば、我が国の税制は申告税制であり、事業者が経費を使い収益を得たことを申告して税金を払う制度である。子会社に指導するような、あるいは監督している業界に対して指導するようなレベルで細かなガイドラインを作り、仮想通貨や暗号資産、NFTなどの会計処理を指導していくことが正しいのか考えていかなければならない。もともと財産権として始まっているはずの著作権も複雑で、配信などで分解されてしまっているが、本来どのようなものだったのか考えていくと、案外現行のハードローで対応できるところも増えてくるのではないか。1度立ち戻ってみることも大事である。
続いて、DAOと分散型アイデンティティ、メタバース、利用者保護と法執行に関する議論のとりまとめについて、事務局より説明。
構成員から質疑応答・意見交換において、主に以下の発言。
構成員: 分散型アイデンティティのマイナンバーカードの公的個人認証について、Web3.0のどのような場面で利活用の余地があるのか、使用するメリットがあるのかを深掘りしていく必要があるのではないか。マイナンバー関係でよく問題になることは、マイナンバーを使うのか、ICチップ内の情報を使うのかという点が誤解されがちな面がある。使い方によっては違法になり易い面がマイナンバー制度辺りにあるところが課題になるため、誤解されない、違法にならないような使い方を意識しておく必要がある。
構成員: 個人情報保護については、個人情報保護法というよりは、プライバシーの側面が前面に出てくる認識である。個人情報保護法だけではなく、プライバシーや個人情報保護の観点からの検討が必要と書きぶりを検討いただきたい。
構成員:「忘れられる」という言葉が出ている箇所について、ここでの問題意識は、「忘れられる」という言葉ではなく、文章で説明した方が正しく伝わるのではないか。最高裁が認めているような権利ではないため、確立されているかのような書きぶりでは誤解を生んでしまう恐れがある。
構成員: 個人クリエイターの支援について、厚く書くのが望ましいのではないか。前半の議論でも個人クリエイターの支援や保護の話があった。強調したいところを強調して、メリハリのある書きぶりが良いのではないか。
構成員: e-KYCについて、国内事業者がビジネスチャンスとしてどのように捉えているのか、確認の上共有いただきたい。
構成員: 消費者トラブルについて、特に若年層の被害がどのような事例で具体的に生じているのか、被害の実情をつまびらかにしていただきたい。
構成員: 国境を越えた犯罪対策について、どのような場合に、日本の捜査機関が必要な情報を取れずに困る場面があるのか。可能であれば、具体的なケースなどが分かると、課題の解決や対応の検討に繋がっていくのではないか。
- 発言者: 具体的にマイナンバーカード連携に関しては、ウォレット本人確認があることの他、今後、NFTやガバナンストークンなど、新しいトークンが出てきたときに、様々な利用余地が出てくると想定している。
- 発言者: 番号かカードかの質問について、基本的にはカードを念頭に置いているが、使い方が重要になってくるため、事業者と連携をして、現行法の中でどのようなやり方が適切か考えていく。既に国内のe-KYC事業者とも対話を始めているため、オープンにできるとよいと思われる。
- 発言者: 個人情報保護について、日本の保護法の問題というよりは、プライバシー全般に関わるため、プライバシーという方向で整理する。忘れてもらう権利に関しても、固有の問題で削除できないところや公開されているところを念頭に、文書で説明してまいりたい。
構成員: それぞれの項目について、なぜWeb3.0研究会でこの話をしているのかというところの紐付けが具体的であると分かりやすいのではないか。
構成員: 研究会の報告書自体がどのような読者想定をされているかにも拠るが、読んでほしいというのは難しい。なぜこの話をしているのか、これはWeb3.0にどのような関係があるのかなど冒頭でかみ砕いて書くことで読みやすくなり、理解しやすくなると思われる。
構成員: 1点目はDAOのまとめについて、DAOの将来性を潰すことはしたくないが、今の段階ではまだ検討されていないことが多い。全体としてはDAOに向き合うには気をつけなくてはいけないようなトーンがよいのではないか。この雰囲気で最初にまとめることで、読む側の心構えができるのではないか。例えば、DAOについては、株式会社を乗り換えるものだというようなことを言う人がいれば、反対に、様々なことを検討しなくてはいけないと言う人もいる。積極的な賛成派、推進派、慎重派がいると思われる。社会的なインフラとして認められていくようになるまでには、まだ相応の時間がかかるのではないかというのが、恐らく全体をまとめる感覚ではないか。上手くいくか否かということも然ることながら、上手くいったとしても、時間を要するのではないかということが全体的な印象の様に思われる。もしコンセンサスが取れるのであれば、時間軸を含めてプラスとマイナスが両方あり、解決には時間がかかることを書いていただけると、報告書を読むに当たっての心構えができる。
構成員: 2点目はメタバースについて、Web3.0と関連領域であるため見ておく必要があると記載がある。メタバースとWeb3.0はそもそもどのように関係してくるのか。今のメタバースは極めてWeb2.0的である。主催する人がおり、その人が運営するWeb2.0的なメタバースが多く出てきている。ただし、Web2.0の1つ1つのメタバースの中でも、運営自体をWeb3.0にしていく、ブロックチェーン技術を利用していくメタバース的な展開もあれば、メタバースとメタバースを繋いでいくところにブロックチェーン技術を利用するWeb3.0的な展開、インターユニバースでのWeb3.0的な展開もある。このような繋ぎがあると、なぜWeb3.0研究会でメタバースを取り上げなくてはいけないのかが分かり、その後の論点も頭に入っていきやすいという印象がある。
構成員: 未来で出来ること、あるいは未来でできると期待することを書いたほうがいいのではないか。現実的に様々な課題が出てきたため、課題や問題点、法律でどのように握らなければいけないかなど、多く書かれるのは事実ではある。しかし、デジタル庁でWeb3.0研究会を開催し、多くの有識者が集まっている中、現行法の対応の話だけで終わるのは勿体ない。本来こういうことができると期待している、あるいは技術が発展して、社会が実現することが期待されるところについて、それぞれに関して理念を書いていくべきなのではないか。その上で、その理念を現行法で実現しようとすると難しい面がある。あるいはその理念が現状では上手く回らず、今の法律に入れなければいけないというような部分は、今の書きぶりで良いのではないか。例えば、個人情報保護や利用者保護について、今のWeb3.0側は全てそれに対する悪者側で、個人情報保護にはこのような問題があり、それを今の法律で対処していかなければいけない記載になっている。しかし、本来のWeb3.0の理念からすれば、個人情報保護やプライバシー保護にも役立つような、あるいは技術でそのようなものが対処できると考えるからこそ、分散型の社会が実現すると考えてきたはずであり、技術側も貢献できる面もあるのではないか。それが不十分であることは事実だが、そのようなものを書いた上で、今の技術では上手く対処できないため問題が出てきている。従ってこのような形でやっていくべきなのだという書きぶりにした方がいいのではないか。
構成員: DIDについて、期待している話から、突然マイナンバーの話になってしまうことで落とされたような感じになる。現実的にマイナンバーの話が大事なのは分かっているが、マイナンバーで対応する話とは大分違う話ではないか。DIDの理念について書き込んでもらわないと、DIDの話は政府のマイナンバーや、グローバルプラットフォームカンパニーのID管理のような話だけに見えてしまう。様々な方々に読んでいただく観点から、DIDの理念を書き込んでいただきたい。
構成員: DAOの理念について気になっているが、何がDAOで大事なのかが何も分からないまま、DAOの形態を認めるためにどのような法律があり得るかという話になっている。DAOで実現できるものとは何なのか。今の法律で実現できないDAOのメリット、DAOと呼んでいるもののメリットは何もない。例えば、DAOだから利害が一致するという話はよく分からない。ブロックチェーンがあっても利害は一致しない。このメンバーで集まっても利害は一致しない。DAOを作っても利害は一致しない。数人で全てのコミュニケーションが記録できるような技術が仮に出来たとしても、それで利害は一致しない。利害が一致しないことがより明確化されるため、一致する人だけを集めて組織を作ることは出来るかもしれないが、技術で利害を一致することはできない。DAOに対するロジカルではない過剰な期待が書かれている部分がある気がしており、その部分はもう少し精査していただきたい。ブロックチェーンで記録されることで、一体我々は今の組織体にないことがどれだけ実現できるのかというと、記録されるメリットはあるがよく分からない。そのような意味で、だからこそ新たな法律を作ることは難しく、今の法律の先達としての組織を作っているだけではないかという意見に対し、どこまで答えられるのかは今の法律を見ていて分からない。しかし、メリットはあると思われるためそれをしっかり書いたほうがよいのではないか。DIDに関して、マイナンバーの話は大事だが、最初に持ってくる話ではないため、後の方が望ましい。
構成員: メタバースに関する個人クリエイターの支援の記載について、これはWeb3.0的ではない。政策案の中で政府が産業支援をするという話が出てくるのは事実だが、Web3.0で国を超える様々な枠組みが出来て、その中の1つがメタバースという話になっている。突然メタバースをやっている個人のクリエイターが困っている故に、政府が支援をする話を書くのは構わないが、並列的に入ってくる話ではないのではないかと思われる。
構成員: 「日本における期待とその実現に向けた方向性に関する主な意見は以下のとおり」の部分の最初の文章が私の発言を省いているため、追加いただきたい。
構成員:「DAOを通じて新しいアイデアを地域から実現するというボトムアップの取組みが増えていくと、日本がグローバルでのルールメーカーの役割を果たせるようになる大きなターニングポイントになるのではないか」という記載は、確かに発言はしたが、間が抜けている。ブロックチェーンや暗号技術のインプリケーションを得た技術者、経済学者や、法律家、そういう人たちが同じことを議論するようになる。
構成員: ブロックチェーン単独では何も解決せず、ブロックチェーンがあろうと、DAOがあろうと、人間が2人以上いることでガバナンスの問題が発生する。人間の業の問題なので、技術だけでは物事は何も良くならないが、人間同士がガバナンスをする、あるいは何かのトラストを構成する時に、新しいありようがブロックチェーンによってできるのではないかという仮説の下に様々な議論がなされているのではないか。
構成員: Trusted Webの黄色と青目玉焼きの図の中の一番右側、技術で出来る部分はあるが、人間の社会でやるものであるが故に、人間中心で人間をどうするかというところが重要である。
構成員: ブロックチェーンの論文から暗示されてきたものは、基本的に人間のガバナンスに対して、あるいは人間の社会を信頼に足るものにするために技術がどう役立つかということについてである。論文には技術のことだけが書いているわけではなく、経済学を理解している人、ガバナンスを理解している人がいるグループで経済学的な分析や様々なことが書かれている。
構成員: 日本でDAOやWeb3.0の旗印の下、技術が分かる人、生活が分かる人、経済が分かる人が同じことを議論する場所ができることは、いわゆるガバナンスルールを決めることに近いのではないか。あるいはソフトローの議論にも近いと思うが、そのような素地が日本人に出来るということである。日本人は、ルールメーカーになることは少なく、ルールフォロワーであることが多い。
構成員: DAOの定義だが、ガバナンスの在り様が変えられることを日本人が体験し、そのような経験を持った人が増える。人材育成という単純な言葉で括るのではなく、同じ土台で議論できる人が増えることがキーになるため、記載の中には、センテンスの中のロジックを強化するためにそのようなポイントを入れていただきたい。
構成員: Web3.0の健全な発展に向けた基本的指針について、マイナンバーカードを使ったe-KYCをAML、マネーロンダリングに適用したものと同じような形で適用していくことで、安全で健全な仕組みが守られるのではないかとある。今の局面ではそれしかないのではないか。
構成員: もしそれを実現するのであれば、Self-Sovereign Identityのような考え方を明確に打ち出して、自己コントロールの下でデータを扱う、自主主権でデータを扱うという考え方を色濃く出していかないと納得感が得られないのではないか。かつ、その時にアイデンティティのマネジメントの仕方として、マイナンバーは有力なワン・オブ・ゼムでもあるが、他のやり方があることも位置付けた上で、打ち出すのがいいのではないか。
総論の部分を含めて1度まとめたものを送付していただきたい。- 発言者: マイナンバーカードは、DIDの本流の議論ではないと指摘があった中で、今後の取組みにどのように繋げていくかの部分と全体感の中での位置付けも含めて、議論を考えてまいりたい。
構成員: DIDのマイナンバーがメインではないという部分の対応は可能な範囲で構わない。極めて普通の人が報告書を見てもよく分からない話だと思われる。この報告書は、一般向けに広く、これからのデジタル庁なり日本がWeb3.0に向けて何を考えていくか、あるいはWeb3.0はどのようなものと考えているかという広報的な部分と、現実的な政策の中で、戦略的に何を実現させていくかという戦略的な部分の2つの側面があるのではないか。前者は、分かりやすく魅力的な話が必要である。現状では規制重視的な方向に行きがちなため、単純に規制が必要なだけではなく、未来の可能性を分かりやすく書いてほしい。広報的な話だけではなく、報告書上で戦略的に実現させていく大きな方向性、楔を打ち込んである部分があるのではないか。その部分は必ずしも分かりやすく書く必要もアピールする必要もないが、政策的に実現できるところに落とし込んでもらいたい。書きぶりは事務局で判断していただきたい。
構成員: DAOについては、様々な方が各自意見を持っている論点であるため、デジタル庁のWeb3.0研究会でどのような形のまとめを出されるか悩ましいところである。1つは、DAOでなければ本当に達成できないことを突き詰めていくと、今の時点では多くは残らないのかもしれない。しかし、デジタルファーストのブロックチェーンとWeb3.0の世界の中では、考えようによってはトークンを使ったガバナンスをさせていくことは、自然な成り立ちとして実態では多く起こっており、国として何らかの法的な位置付けを明確化しないまま放置しておくことは好ましくない。法的にそれを明確化するのであれば、法律に従いDAOを組成できるオプションを同時に提示すべきではないか。トークンを通じた様々な意見の交換や、そういったものを例えばAIで分析し、可能な限り議論をファシリテートする。全員一致の見解は出ないが、意見をナビゲートし、統一的な見解を組成していくことも、デジタルな組織の中では可能性はあり得るのではないか。報告書の中でどこまで書くのかというところはあるがコメントする。
構成員: Web3.0とメタバースは両方ともバズワードになっており、去年、今年と同時発生的に単語として出ているが、多くの人が関係を理解していないまま使っているところはある。デジタル庁として全体を見られる立場のペーパーとして、丁寧に書いていただくと、非常にインパクトがあるのではないか。
構成員: 各章の冒頭について、一段落でも構わないが、方向性や全体に繋がる論点のまとめが記載されていると見通しが良くなるため、対応いただきたい。
反対側の意見も全て並列で並んでいるため、メタバースの立ち位置が分かりにくい。各大ポツの一番初めのところだけでも、練って分かりやすくしていただきたい。
次回の研究会は、12月23日金曜日開催予定であることを事務局より説明。
議事要旨は、構成員の皆様に内容を確認いただいた後に公表させて頂くことを事務局より説明。
以上