河野大臣記者会見(令和6年6月21日)
河野デジタル大臣記者会見要旨
(令和6年6月21日(金)11時15分から11時39分まで 於:オンライン)
1. 発言要旨
先ほどの閣議におきまして、政府全体のデジタル政策を取りまとめた「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の改定を閣議決定いたしました。
今回の改定におけるポイントを4点ほどご紹介したいと思います。
1点目は、デジタル化を進めるに当たって、システムだけを改善するのではなく、企画段階から制度や業務も同時に改革していくという方針を明確化いたしました。
2点目は、「作る」から「使う」をキーワードに、システムをゼロから全て作るのではなく、共通機能を活用する、システムを共同化する、あるいは既成のSaaSの活用を進めるといった方針を明確にいたしました。
3点目は、多くの企業で残っているレガシーシステムからの脱却、あるいはクラウドへの最適化を進めるとともに、クラウドの人材育成も進めることで、産業競争力の強化を図っていくことを示しました。
4点目は、データ戦略で、DFFT具体化のための国際的な枠組み(IAP)において、データの越境移転時における課題解決につながるプロジェクトを実施するとともに、国際的なデータの流通・利活用に向けて、ウラノス・エコシステムで信頼を確保しながらデータを共有できる標準化された仕組みを様々な領域で構築していくことを示しました。
この4つの柱に加えて、マイナンバーカードの普及・利活用の推進など継続的に取り組んでいる重要施策もしっかり進めてまいります。
またこれらの取組を推進するために、デジタル庁を当面1,500人規模の組織とすることを一つの目安に体制を整備していきたいと思っております。
2点目、「デジタル認証アプリ」についてお知らせいたします。
従来、自治体や民間事業者が、スマホのアプリ上でマイナンバーカードを利用するときに、まず利用者から暗証番号を入力してもらい、暗証番号を使ってマイナンバーカードから電子証明書を読み取り、その電子証明書が正規のものであるかを検証する、といった一連の流れをするシステムを自ら開発しなければなりませんでした。
こうした開発はOSや機種ごとに個別のテストもしなければならないということでかなりのコストがかかります。これが民間においてマイナンバーカードの証明書、特に利用者証明用電子証明書の利活用が進まなかった要因と考えております。
デジタル庁では、マイナンバーカードの更なる利活用の拡大を目指し、マイナンバーカードの証明書読み取り機能を共通アプリ化した「デジタル認証アプリ」の開発を進めてきました。今般、準備が整ったことから、週明け24日(月)からAndroidとiOSのアプリストアから、「デジタル認証アプリ」のダウンロードの提供を開始いたします。
また、今日2つのサイトを開設し、デジタル庁のトップページからリンクを張る予定にしています。1つ目は、国民の皆様、行政機関、民間事業者それぞれにアプリに関する分かりやすい説明を掲載した「サービスサイト」で、民間事業者等からのデジタル認証アプリの利用申込の受付を開始いたします。2つ目は、「デジタル庁開発者サイト」として、開発者向けのAPIなどの詳細情報を公開したサイトです。
この「デジタル認証アプリ」を活用することで、マイナンバーカードを使って確実に本人確認をしていただく、しかもシステム開発コストを抑えた形で本人確認をすることができるようになります。現時点で、横浜市の子育て応援アプリ「パマトコ」、三菱UFJ銀行のスマート口座開設で、デジタル認証アプリ導入に向けた調整が進んでいると承知しています。ECサイト、ネットバンキングのログイン時の本人確認、公共施設やシェアリングサービスなどのオンライン予約、お酒を提供するライブ会場での年齢確認など、様々な場面での利活用を促進していきたいと思っております。
このデジタル認証アプリの開発は、ベンダーへ発注するのではなく、民間専門人材を中心としたデジタル庁のチームが、安全面と利便性を重視して開発を行ってくれました。リリース後も引き続き、利用された方のニーズ、事業者のニーズなどを踏まえながら、追加の機能開発あるいはシステムの改善に順次取り組んでいきます。
今回のデジタル認証アプリと混同されやすいものがいくつかございます。
マイナンバーの券面偽造に関連して、対面時の本人確認の際に、カードのICチップを読み取るために開発している確認アプリがありますが、それとは別物です。確認アプリは、本人確認を求める事業者の端末に入れて、券面情報を入力することで、ICチップに格納されたカードの券面情報を読み取って表示することで、そのカードが本物か偽物かを判別するものです。今申し上げたデジタル認証アプリは、使われる方本人の端末に入れて、4桁の暗証番号を入れることで、認証連携するもので、この2つは別物です。
また、マイナンバーカード機能のスマホ搭載とも別物です。スマホ搭載は、電子証明書や基本4情報などを、スマホに格納することで、カードをかざさずにいろいろなサービスを利用可能にするものです。デジタル認証アプリは、マイナンバーカードの読み取りを容易にするもので、スマホに情報は保存しません。
デジタル庁が提供するサービス・各種機能について、分かりやすい広報に今後とも努めていきたいと思います。
3点目、今晩から24日(月)にかけてベルギーに出張し、三極委員会のブリュッセルで開催される総会に参加いたします。
この総会は、各国から著名な政治家、財界人、学者などが集まり、様々な政策協議を行う会議です。私は22日のセッションでデジタル化やAIについて議論してまいります。
また、あわせて各国の要人、企業のCEOと面会し、デジタル分野の取組状況や先行事例、課題などについて意見交換を行いたいと思っております。
2. 質疑応答
(問)週刊新潮が2週連続でマイナ保険証を取り上げていますが、お読みになったでしょうか。
(答)厚生労働省からその記事について情報提供がありました。記事で書かれている事案は確認できない、とのことでございます。詳細は厚生労働省にお尋ねいただきたいと思います。
(問)最新号はお読みになったということでしょうか。
(答)読んでいませんが、厚生労働省からその記事についての情報提供をいただいてます。
(問)デジタル庁としては事実確認について調べる気はないということですか。
(答)医療機関については厚生労働省の所管ですので、所管の厚生労働省にお尋ねください。
(問)アメリカの通信大手のシスコシステムズ社がサイバーセキュリティ専門家の拠点を年内に東京に設け、日本の事業の強化に乗り出す方針を固めたと報道がありました。サイバー攻撃が相次ぐ中、国内対策にも影響がある事案だと思います。大臣の受け止めと、Xを拝見しますと、CEOの方とも面会されたお写真を拝見しました。日本のサイバーセキュリティの対策等など、やりとりで可能な範囲で教えていただけることはありますか。
(答)サイバー空間における脅威が高まっているのは事実だと思います。また、その脅威の種類も変わりつつあると思います。政府は、NISCを中心に政府機関への攻撃について24時間横断的な監視を行っております。また、官民間の情報共有もしっかり進めていく必要があると思っております。個別の企業については、個別企業にお尋ねいただきたいと思います。
(問)重点計画について、1.5倍の1,500人規模まで増強するということで、大臣としてこの規模感、なぜこれくらいの規模が必要かということと、この規模で進めていきたいことについてお伺いしたい。
(答)デジタル庁設立以来、いろいろな取組を進めてきましたが、粘り強くやっていかなければいけないものも結構ございます。ガバメントクラウドもそうですし、これから地方の標準化も進めていく必要があります。DFFTもようやくスタートいたしました。その他いろいろな課題に取り組んでいく中で、デジタル庁としても十分な体制を継続的に確保していかなければいけないと思っております。また、政府におけるAIの利活用のような新たな取組も必要になってまいりますし、②③システムについてデジタル庁としてもしっかり見ていく必要があるなと思っております。デジタル庁の体制を強化し、各省と連携していく中で、システムをより良いものに改善しながら、政府として全体のシステムコストを下げるあるいは効率化していく、利用者にとってより良いシステムにしていく、そういうことをやっていきたいと思います。今後5年ぐらいを集中取組期間として政府システムを最適化していくと思っておりますので、なるべく早く1,500人体制をつくって取り組んでいきたいと思います。
(問)重点計画の中に、今回「デジタル化に対する不安やためらいといったものも一定程度あることも念頭に置かなければいけない」といった文言も入りましたが、ここについては大臣にはどのようなお考えがありますでしょうか。
(答)デジタル化すれば便利になるようなところについても、やはり今までのやり方が染みついているとなかなか変わる一歩が踏み出せないという部分があります。それから、やはりこの日本の消費者は、世界的に見ても非常に品質へのこだわりがあるというところもあり、どうしてもゼロリスク志向のようなものがありますが、ゼロリスクというのはなかなか世の中にはございません。そういうところもしっかり情報を共有しながら進めていきたいと思います。
(問)マイナンバーカードの読み取りアプリについて、事業者サイドにとっては本人確認の厳格化ができるほか、利用者・申込者にとってのメリットはどのような点にあるとお考えになってるかお聞かせください。
(答)本人確認が厳格に行われるということです。今の券面だけの確認では、様々偽造されているものもありますので、ICチップを読み込んでいただくことで、利用者も安心して本人確認をしてもらえるというところがあると思います。
(問)利活用の場面について、ライブ会場などでのアルコール販売とおっしゃっていましたけど、これはカードを見せるだけでも本人確認できると思いますが、このアプリを使うシーンがイメージが湧きませんが、どういうことをイメージされてるのか教えてください。
(答)チケットを予約するときに年齢確認をしてチケットと紐付けするというようなことだろうと思います。
(問)デジタル認証アプリについて、これまで政府のサービスでしかできなかったものが、今回横浜市と三菱UFJ銀行と民間にも拡大するということについて、改めての意義をお伺いしたい。また、今後このアプリをどれくらい民間で拡大していきたいか具体的な目標があれば教えていただきたい。
(答)今までは、この部分のシステムの開発をそれぞれがしなければいけないということで、なかなかマイナンバーカードの利用が民間などで進まなかったところがありますが、このデジタル認証アプリを活用していただければ、その部分を事業者自ら開発する必要がなくなりますので、非常にコストを抑えて本人確認ができるということになると思います。様々な場面でお使いいただけたらと思います。
(問)重点計画について、重点課題に「産業全体の競争力の低下」についての言及がありました。大臣は、かねていろいろと国際の関係者とのセッションなどもされているかと思います。現状のデジタルという部分における日本の競争力についてどう見られているか、また、競争力の強化に向けて、今後どうデジタル庁として取り組んでいきたいか、お考えをお聞かせいただけますしょうか。
(答)現状のデジタル産業、IT産業の競争力、今日本がどのところにあるかというのは、今皆さんがそれぞれ使われているシステム・アプリを見ていただければ、日本製のものがどれぐらいあるかということはお分かりいただけると思います。やはり多くの企業がまだレガシーを使っている、あるいはなかなかクラウドへの移行をしても、クラウドへの最適化が進んでいないということは、これから大きな要素になるのではないかと思いますので、そこをしっかり進めていきたいと思います。それから、クラウドが主力になってくると、その辺りの人材育成も必要になってくると思います。政府として、こうした取組の後押しはしていきますが、産業競争力の強化というのは、民間の企業、特にこの分野のスタートアップがどれだけ頑張れるかということだと思います。日本のスタートアップは、どちらかというとまず日本市場を見てしまうというきらいがありますが、多くのスタートアップの話をすると、この分野のスタートアップは、最初からグローバル市場を見ている、取りに行くというところがあると思いますので、日本のスタートアップもまずグローバルを見るようにしていただきたいと思っています。
(問)今日で通常国会が事実上最終日ですが、閉会したら9月に自民党の総裁選が控えております。大臣、現時点で総裁選に向けて出馬のお考えがあるか教えてください。
(答)国会も日曜日まで会期が残っておりますので、しっかり務めたいと思います。
(問)閉会後はどのようにして対応していくお考えでしょうか。
(答)必要に応じて必要な対応をしてまいります。
(問)ニコニコ動画が大規模なサイバー攻撃を受けてサービス停止していますが、例えばデジタル庁が提供するシステムでもそういったことが起こった場合、今まで大臣が培ってきた信頼というのは崩しかねないかと思っています。先程1,500人規模の組織を目指すとお話しいただきましたが、セキュリティ人材確保のために何か取り組む案などはあるのでしょうか。
(答)ニコニコ動画は私も使っておりますが、なかなかサービスが回復しないということで、いろいろとご努力をいただいているんだと思います。政府のシステムは、NISCで横断的に見ております。しっかりと政府のシステムを守っていかなければならないと思っておりますが、DDoS攻撃を始め、これまでも利用される方にご迷惑をかけていたことがあったと思います。サイバー攻撃は100回のうち99回守っても、1回通してしまうと大きな被害が出るということもありますので、いかに復旧・復元できるか、レジリエンスの強化も含め対応していかなければいけないと思っております。
(以上)