デジタル臨時行政調査会作業部会(第9回)
概要
- 日時:令和4年(2022年)5月12日(木)10時から12時まで
- 場所:オンライン開催
- 議事次第:
- 開会
- 議事
- 目視規制、定期検査・点検規制について関係省庁からヒアリング
- 意見交換
- 閉会
資料
- 議事次第(PDF/19KB)
- 資料1 厚生労働省 労働基準局からの提出資料(PDF/957KB)
- 資料2 環境省 自然環境局からの提出資料(PDF/1,308KB)
- 資料3 火薬類の発破等に係る見張人の配置(PDF/547KB)
- 議事録等(PDF/297KB)
議事録等
日時
令和4年(2022年)5月12日(木)10時から12時まで
場所
オンライン会議
出席者
座長
- 小林史明 デジタル副大臣
構成員
- 稲谷龍彦(京都大学大学院法学研究科 教授)
- 上野山勝也(株式会社 PKSHA Technology 代表取締役)
- 落合孝文(弁護士 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)
- 菅原晶子(経済同友会常務理事・政策統括)
- 根本勝則(日本経済団体連合会 専務理事)
- 増島雅和(弁護士 森・濱田松本法律事務所)
議事録
事務局(髙松): 第9回「デジタル臨時行政調査会作業部会」を開会します。
今回も構成員の皆様にはオンラインでご参加をいただいています。
なお、本日の構成員の皆様のご出席状況ですが、安念構成員におかれては所用によりご欠席されています。
また、根本構成員におかれては途中でご退席される予定となっています。
また、本2つ目の議題以降については、関係省庁が都度入れ替わる形で参加をします。
それでは、本日の議事に入ります。
本日は安念構成員がご欠席のため、議事進行は髙松が務めます。よろしくお願いします。
本日の議事としましては、冒頭に「目視・実地監査」、「定期検査・点検」の類型の調整状況等についてご説明をした上でご意見を頂戴したいと考えています。なお、最後に改めてご相談いたしますが、この議題については、事務局としては非公開で議論いただきたいと考えています。
その後、各省庁からのヒアリングに入り、1つ目が労働災害を防止するための特定元方事業者による巡視について、2件目として、温泉の採取場所における定期点検、3点目として、火薬類の発破等に係る見張人の配置についてを予定しています。
【「目視・実地監査」及び「定期検査・点検」の調整状況等については非公開】
事務局(髙松): 各省からのヒアリングに移ります。
1点目のヒアリングですが、労働災害を防止するための特定元方事業者による巡視です。
厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課の釜石課長より、説明いただきたいと存じます。よろしくお願いします。
釜石安全課長: 厚生労働省労働基準局安全衛生部の安全課長の釜石と申します。よろしくお願いします。
お手元の資料に基づき、特定元方事業者による作業場所の巡視について説明したいと思います。
2ページ目、「1.該当法令」ですが、特定元方事業者とは一つの場所で仕事の一部を請負人に請け負わせている建設業等の元請負人のことですが、元請や関係請負人の労働者が混在して作業することによる労働災害を防止するために協議組織の設置、運営など必要な措置を講じなければならないということとされており、作業場所の巡視は労働安全衛生法第30条第1項第3号に規定されています。その頻度は、労働安全衛生規則第637条第1項に、毎作業日に少なくとも一回と規定されています。
3ページ目、「2.規制の趣旨、背景、目的」ですが、建設業や造船業は重層的な請負契約により同一の場所で複数の請負人の労働者が混在して作業することが多く、連絡調整が不十分であったために労働災害が発生する例が見られたという背景があります。特定元方事業者は、1ページ目で説明したように混在作業による危険を防止するために必要な措置を講じなければならないとしています。
その措置の中の巡視の目的ですが、作業間の連絡調整が適正に実施されているかどうか、さらに、作業場所における機械、設備棟が安全に保たれているかなどを確認することを目的としており、不安全な作業や危険な状況があれば改善のために必要な措置を取るということも目的としています。
4ページ目「3.制度の概要」では、労働安全衛生法の体系の全体像を示しています。まず事業者が職場での労働者の安全と健康を確保しなければならないという大前提があり、このために事業者が安全衛生管理体制を確立して、労働災害を防止するための具体的措置を実施するという義務を負っています。
下のほうには、建設業における安全衛生管理体制と主な具体的措置を記載しており、こうした措置が適切に実施されているかを労働基準監督官等が現場を訪問して監督・指導しているところです。
細かく説明しますと、この安全衛生管理体制の確立のところに示されている図は一定の規模以上の工事現場の安全衛生管理体制で、例えば鉄骨造り等の建築物の建設の仕事であれば、現場で働く方、事業者及び関係請負人の労働者が合わせて50人以上となる現場で特定元方事業者が統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者を選任することが必要となっており、それに応じて関係請負人は安全衛生責任者をそれぞれ選任することが必要となっています。それ以下の規模の現場にはこれらの者の選任義務がありませんが、それに準ずる安全衛生責任者を選任するということが望ましく、これらの安全衛生担当者が巡視を行うというようなことになります。
5ページ目は作業場所の巡視の具体的な手順の例を挙げています。建設現場は現場ごとに状況が大きく異なっています。このため、巡視の手順などを国から一律にガイドラインなどでは示していません。ただ、建設業労働災害防止協会が発行している「『元方事業者による建設現場安全管理指針』の具体的進め方」という本で巡視の具体的な進め方や点検項目の例などを記載しています。
まず巡視の重点事項ですが、3点挙げており、①作業間の連絡調整の状況確認、②不安全状態や不安全行動の是正、指導、③工事の進捗状況の把握となっています。
また、関係請負人がその労働者をきちんと監督・指導していることをその場で指導して改善を求めることも必要となっています。
巡視の結果は、工事日誌等に記載して翌日の安全工程打合せ会に反映させ、改善するときは改善指示書など文書で指示するということも必要となっています。
右の方が安全作業指示書・工事日誌・安全日誌が一体となったものの例ですが、赤の点線で囲んだ部分が現場の安全衛生管理等の具体的な措置についての点検項目です。
6ページ目は、現状のPHASEとPHASEを進めるための課題です。
現状ではPHASE1に該当します。これをPHASE2以降に進めるための課題としては、安全衛生水準の低下を招かないということが大原則と考えていまして、具体的には現場に直接赴くことと同等の情報を入手できること。また、不安全な状況等を確認したときに即座に作業停止できるなど労働災害を未然に防ぐための措置を速やかに講ずることができるというようなことがあると考えています。
その上で、今後の対応案ですが、基本的には業界団体にヒアリングをして意見聴取、情報収集をしまして実施の可否を検討したいと考えています。デジタル活用の一例として、ウエアラブルカメラ等による情報収集の遠隔化や定点カメラと画像認識処理等による不安全行動の把握などが考えられるところですが、それらの活用の可否などもヒアリングと併せて検討していくこととしています。
以上です。よろしくお願いします。
事務局(髙松): ありがとうございました。
本件については、経済界からも遠隔での巡視の実施を認めてもらえないかというご要望も出ているところではあります。
今の説明について、ご意見、ご質問等ありましたらよろしくお願いします。
落合先生、お願いします。
落合構成員: ありがとうございます。
議論を進めていただき、ありがとうございます。議論の始めとして、巡視の中で確認されている事項や、何を巡視の中で見つけて具体的にアクションにつなげる必要があるのか、についてお伺いできればと思いました。
釜石安全課長: この巡視は単独で存在しているのではなく、特定元方事業者が行う混在作業による労働災害を防ぐための統括安全衛生管理の一環として行うもので、労働安全衛生法第30条に協議組織の設置図や作業間の連絡調整というようなことと共に書かれており、巡視の際には作業間の連絡調整が確実に実施されているかを確認するということ。また、元方事業者の義務で建設物や設備、原材料などを関係請負人に使わせているのですが、それが労働災害防止のための措置が講じられているかどうかを確認、点検するというようなこと。それから、毎朝の朝礼で指示した事項がちゃんと守られているかということ。そして、協議組織で決めたことなどはきちんと実施されているか。さらには関係請負人及びその労働者が法違反をしているのを見つけた場合はそれを是正するよう指導するというようなことがあります。
落合構成員: 分かりました。ありがとうございます。
具体的な内容としては情報連携と労災防止措置、様々な朝礼や協議会も含めて指示をしていた、もしくは取決めをした内容の遵守をしているかの確認ということですが、労災防止措置は具体的に何をする、何を確認もしくは措置をすることを、内容として求められているのでしょうか。また、指示や協議組織で決めた内容が具体的に何で、特にどういう事項が取決めの中で着目して監視するようにされているのか、という辺りはいかがでしょうか。
釜石安全課長: 具体的には資料の5ページ目「4.具体的な手順の例」のの安全作業指示書等の例のところですが、赤で囲ったところのように、管理体制のところでミーティングしているかとかありますが、標識がちゃんとあるか、立入禁止措置がちゃんと講じているか、その下の方、作業環境のところでいうと照明がちゃんとしているか、それから、整理整頓の状況を見る、仮設施設が問題ないかなど、こういうところを見ていくことになります。
落合構成員: ありがとうございます。
今、示していただいた項目を見ていくということですが、例えば現場で映像を見られるようにするとか、特に見る項目についてはある程度類型化されていると思います。一定程度見られるようにカメラ等々を配置するとか、必ずしも動き回らなくても現場の方とコミュニケーション、ウェブ会議のような方法で確認できていく部分がかなり大きいのではないかと思いますが、できないと思われる点は具体的にどの辺りでしょうか。
釜石安全課長: ご指摘のような定点カメラですと死角が生ずるということがあると思われます。資料の6ページ目の最後に書いていますが、誰かがウエアラブルカメラなどを持って現場を実地で見ながら、それを遠隔で指導できる方、経験豊かな方が見ながら現場とやり取りをしながら必要な指示をして改善していくということであれば大いにあると思うのですが、ただ定点カメラで置いておくというのは先ほど申した死角の問題と、誰がそれを監視するのか、ずっと監視するのかという問題もあると思いますし、ただ見るだけではなくて、問題が起こったときに直ちに是正させるというようなことが必要ですので、そういうことが実現できるような遠隔である必要があると考えています。
落合構成員: 実際には定点カメラを置きつつ、現場にいる方に例えばカメラなどで映像を送ってもらうようにしたり、ビデオ会議しながらなどといった方法で見られるとも思います。そもそも言うことを聞くかは対面の場合でも遠隔の場合でも、強制はできないと思いますので、むしろ指揮命令については、従わなければ違反であるということを適切に整理することで担保されるかとは思いますので、そういった点も含めて今後ご検討いただければと思いました。
釜石安全課長: ありがとうございます。業界ともよく話をしてその辺りは詰めていきたいと考えています。
事務局(髙松): 菅原先生、お願いします。
菅原構成員: この巡視の目的は、事故が起こらないようにする、ゴールとしては危険な場所や危険な行為に対してアラートをしっかり出して事故を防止するということだと思いますが、一日一回での巡視で求めている安全のレベルを達成できるという状況になっているということで設計されているのだと思うのですが、そもそもここで求めている安全性のレベルというのはきちんと設定されているのでしょうか。また、多分これは安全責任者の役割責任の範囲と非常にリンクしてくることなのではと思います。資料に項目はあるのですが、チェックするレベルがこの表にはないようですが、あるのでしょうか。例えば照明はどの程度の照度なのか。つまり、一日一回の巡視でチェックで求めている安全性基準とそれにより安全基準を確保しているという判断なのかというのをお伺いしたいです。
また、中長期課題なのかもしれないのですが、先ほど落合先生からもお話がありましたが、やはり巡視の内容をもっと明確にしていく。これは項目を明確にするという意味ではなくて、本当に事故につながるか、つながらないかというのはこれまでの経験知で積み上げているのではないかと予測するのですが、それに合った項目になっているのか、それともこれは当初できたときから項目は全く変わらないのか、その辺がどうなっているのか。
実はこういう遠隔とかITを活用するウエアラブル端末を活用することのメリットは、その時々の画像と元方安全衛生管理者に出したアラートをきちんと蓄積して、AIで分析することで将来的には現場を見たらAIがチェックすべき項目を出してくれるというものが作れるなど効率化につながっていくこともあります。そのためには、もちろん確認が終わったウエアラブル端末の画像のデータを捨てるのではなく、集積して分析する仕掛けをきちんと作るということが重要なのですが、そうしたことも含めて巡視の安全性確保やプラスの意味での効率性、人手不足解消などがあるので、そういうことまでお考えになって今回の実証実験を考えるつもりがあるのかを教えてください。
釜石安全課長: まず一日一回で足りるのかというお話については、法令上は一日一回以上となっていまして、現場の状況が大きく変わっているような場合にはそれを再度確認するということになると考えています。
それから、巡視の項目を明確にしなければならないというのはおっしゃるとおりなのですが、労働安全衛生法令で定めている義務的事項は膨大ですので全部は書きにくく、資料で具体的措置を大枠で囲っていますが、このようなことが全体的にできているかというのを見ていくということで、資料の5ページ目の工事安全作業指示書等の赤の点線で囲まれている部分は、災害が多いものについて主なものを書き出している例で、工事現場の種類によっては災害の特性は変わってきますので、その辺りは事業者がきちんとモディファイして使っていくことが必要になるかと思います。
また、最後にいただきました指示事項、遠隔化することによってそのデータを集積してAIで分析してというようなことは非常に大事な視点で、おっしゃるとおりかと思いますので、今後検討していく際にはそういう視点も盛り込んでいきたいと考えています。
菅原構成員: これらの項目は法律で定めた全てのチェックではなく、主要なミニマムなチェックということを求めているということですね。
釜石安全課長: そうですね。本来、全ての安全衛生上の措置義務を果たしているかを見なければならないわけですが、全てを見るというのはなかなか難しい点もありますし、その辺りはめり張りをつけてやっているということになろうかと思います。
菅原構成員: 安全基準というかレベル的には一応100%ではなく、一定の設定をしているということなのでしょうか。
釜石安全課長: 先ほど照度のお話がありましたが、照度については労働安全衛生規則に粗な作業や密な作業など作業の密度によって最低限の照度が決められていますので、それをクリアしているかは照度計を持っていくかはありますが、そういうところを見ていくというようなことになります。法違反がないかというのを見ることになろうかと思います。
菅原構成員: そうなると、恐らく巡視で回って目視というよりは、IT技術を使ったほうがより安全性を確保できるという認識でいらっしゃるということですね。
釜石安全課長: うまく組み合わせて使っていくことによって、より現場の安全性が高まっていく良さは確実にあると思っています。
菅原構成員: こういう安全項目はミニマムであるのだと思いますが、チェックしたことが目的ではないので、それが本当に効果的なものの安全確保になっているのかを見たときに、できるだけ人間の目視などでは限界があるところを遠隔であるとかそういうデジタル技術をうまく使うというところをもっと前向きに促進していただけるといいのではないかと思いました。
事務局(髙松): 増島先生、お願いします。
増島構成員: ありがとうございます。
コネクティッドワーカーという概念がありますが、ウエアラブルを持ってカメラがあって声が聞こえてというものを活用し、みんなが人のネットのように動いくことによって全体の安全が保たれる。その安全が保たれるのだったら紙のチェックなど要らず、一日一回巡視に来ても来た30分後に事故が起こるかもしれないわけですから、そんなの意味ないという、そういう話がこのデバイスを持って動いて人がネットワーク、ワーカーがネットワークをつくることによって解決するという、こういう例だとご理解をいただくと、今やっているこの取組をもう少し前向きに皆さんで支援していただけるのかなという気がしました。
事務局(髙松): ありがとうございます。稲谷先生、お願いします。
稲谷構成員: ありがとうございます。今、増島先生と菅原先生がおっしゃられたようにうまくIoTと人間のやり方を組み合わせていき、全体の安全が向上していくようないい取組につながる面を持っているのではないかということを申し上げたかったというのが一つ。
もう一つは、専門ではないので誤解している可能性があるのですが、元方事業者というのは要するに今、作業のコーディネーションみたいなことをやっていて、そのコーディネーションの過程で何かリスクが出てこないようにすると思ったりもしたのですが、そうすると2つお伺いしたいことがあって、例えばコーディネーションの失敗に起因するような事故が万一起きてしまった場合に、実際に元方の方が損害賠償を払ったり、そういった事案というのがどのぐらいあるのかなというのが一つ、もう一つは、例えばそもそもこういう作業巡視をしてくださいという規制をかけているわけですが、これに違反した場合にどういう制裁があったりするのか、それがどのぐらい実際実効的だったりするのかというのが知りたい。というのは、そこが結局ある程度実効的なのだとすると、自分から効率化して頑張ろうというインセンティブが働くような気もしますので、その辺りの関係がどうなっているのかというところを知りたいと思ったところです。
釜石安全課長: 前半はおっしゃるとおりで、元方事業者は発注者から一つの事業を請け負って、自らやる一方で、その一部を関係請負人に請け負わせて、うまくコーディネートして作業を円滑に進めていため、元方事業者に統括安全衛生管理という現場全体を見てまとめるという義務づけをしているということです。これには罰則があり、違反すると罰金などになってくるということです。
どれぐらい賠償があるかというのはわからないですが、労働災害が発生するような場合は大体何らかの法違反の状態があって、その中には統括安全衛生管理が不十分であったというものがある。そういう場合はしかるべく制裁がなされるという状況にはなっています。
事務局(髙松): ありがとうございました。
時間が来ていますので、議論はここで区切らせていただければと存じます。本件についてはPHASE2に向けて見直し方針を設定していくということで相談していますので、いただいたご指摘も踏まえまして検討いただければと存じます。よろしくお願いします。
厚労省労働基準局の皆様、ありがとうございました。1点目のヒアリングを終了します。
2点目のヒアリングですが、温泉の採取場所における定期点検についてです。
環境省自然環境局自然環境整備課温泉地保護利用推進室の北橋室長より、説明いただきたいと存じます。よろしくお願いします。
北橋温泉地保護利用推進室長:
よろしくお願いします。
それでは、資料に基づきましてご説明いたします。
環境省では、温泉法に基づいて、温泉資源の保護などを昭和23年度から行ってきましたが、その法律の中で温泉の採取等に伴う可燃性天然ガスによる災害の防止という項目がありまして、この中で法律上、環境省令で定める技術上の基準に適合しない場合には温泉の採取を許可してはならない。これは都道府県の自治事務になっていますが、そういう規定があります。
その施行規則の技術的な基準の中で、毎月一回以上、ガスの分離設備、これは温泉をくみ上げる際に温泉の中に含まれている可燃性天然ガスを分離する設備などがあるのですが、そういった設備の内部の水位計及び可燃性天然ガスの発生設備の異常の有無を目視により点検するという項目があります。こちらはいずれも平成19年の法改正によって法律上追加された基準になっています。
次に、この基準ができた背景について説明したいと思います。
平成19年に、東京都渋谷区にあります温泉施設で可燃性天然ガス、具体的にいうとメタンですが、メタンによる爆発事故が発生しました。これにより従業員の方で死者が出たほか、周辺を歩いていた一般の方にも負傷者が出たことがありました。渋谷という繁華街の中で起こった事故で非常に大きな反響がありまして、これを踏まえて環境省では各都道府県に対する緊急措置の要請ですとか、あるいは関係省庁による連絡会議なども開催したところですが、そういった背景を踏まえて安全対策に対する法的な義務づけが必要だという結論に至ったところです。
この事故が起こってから緊急にいろいろな検討が行われたわけですが、そういったことを踏まえて平成19年11月に公布されました温泉法改正で、温泉を掘削するということに対する許可制度に加えて温泉を採取することに対して可燃性天然ガスによる災害の防止が付け加えられました。法律の目的にも追加され、具体的な許可条項としても温泉を採取すること自体を許可制にして、その際に可燃性天然ガスの発生設備、分離装置の異常の有無等、施設設備に対する定期的な点検が規定されたところです。
また同時に、今回の検討の趣旨ではありませんが、冒頭申しました温泉を採取するための土地の掘削においても同様に可燃性天然ガスによる災害防止に関する基準が追加されています。
制度の概要ですが、いろいろな成分の温泉があり、まずはその中に可燃性天然ガスが含まれているかどうかということがあります。可燃性天然ガスが含まれていなければ当然この基準は適用されないわけですが、天然ガスが含まれている場合には、それに対する安全対策を実施することが義務づけられ、温泉採取許可、都道府県の自治事務として許可が行われていますが、その申請に当たって安全対策としてガスの分離設備の設置や適正な排気口の設置あるいは周辺に一般の人が立ち入らないような立入禁止措置の実施などという設備基準が設けられていますとともに、その後の運用においても毎月一回以上、ガス分離設備の内部の水位計と可燃性天然ガス発生設備の異常の有無を点検するということが求められています。また、関係する作業員等が使う災害防止規程の作成というものが法律、規則上、求められています。
ここまでが国の取組ですが、これに加えまして自治体の内規によります安全対策もありまして、例えば東京都の安全対策の指針によりますと、消防への事前相談や安全対策責任者による講習の受講、その責任者から作業員に対する教育を行うようにといったようなことが定められています。
次に、実際にどんな検査が行われているのかということですが、先ほど申しました可燃性天然ガス発生設備というのがどんなものかというのが資料にあります。温泉の井戸ですとかガスセパレータ、温泉の中に含まれている天然ガスをお湯とガスを分離する設備になります。それから、その先にあります貯湯タンク、浴槽にお湯を回す前にお湯をためるタンクがあるのですが、そういったものが可燃性天然ガス発生設備というものというように位置づけられています。
こうしたものが屋外にあるときに周辺の立入禁止の柵を作ることが決められておるわけですが、今回のチェックポイントとなります点検の内容は、資料左下になります。ガス漏出の原因となる設備の異常の有無やその兆候も含めて点検することになっていまして、具体的なガス濃度と違って各設備、特にガスの話ですのでパッキンなどが各部分にあったりするのですが、そういった設備が腐食したり劣化したりしていないかですとか、温泉ですのでスケールと言っていますが、温泉成分が固まってしまうようなものがあり、そういったもので排気口やこういった管が詰まってないかということを確認したり、あるいは異物による排気口の詰まり。この異物というのは、温泉の中には様々な有機物なんかが入っていますので、ヘドロ状とかバイオフィルムとかですが、そういったどろどろしたものが排気口やそういったところに詰まってきたり、あるいは屋外にあるものですから蜂が巣を作ったりとか、そういったことで詰まったりしないかというようなことを点検したりしています。
また、こういった設備の中にファンがついていたりするので非常にがたがた振動するのですが、そういったことによってボルトが緩んだりしていないかというようなことを点検することになっています。基本的にはガスが漏出する前の状況を事前に把握するというような形での目視点検となっていまして、自動車の安全対策でいえばぶつかる前に緊急ブレーキをかけるような、そういった位置づけになるかと思っています。
あともう一つ、点検の対象となっています水位計ですが、資料右上に書いていますが、スケールが付着したり損傷してないかということを見るということになっていますが、この目的というのは、こういった水位計の故障が火花を飛ばして爆発の原因になったりということで、それを防止するというものです。
これらの点検においては、後ほどの課題にも直結するのですが、温泉特有の難しい状況がありまして、一つは、こうした可燃性天然ガスを含む温泉が高濃度の塩化物泉、塩を含んだ温泉ということで、塩害による設備の劣化や腐食が非常に激しいということがあります。ここでは塩分のことを書いてありますが、ほかにも硫化水素ガスとかによっても異常が起こることがありまして、温泉地ではエアコンやクーラーなど、そういった電化製品が非常に頻繁に壊れるということがあります。いわゆる電線といいますか、配線などの腐食が非常に激しいというような状況があります。
また、もう一つは先ほど申しました温泉成分によるスケールです。カルシウムの塊のようなものがどんどんついていってしまうようなものですとか、温泉地ということで高温、高湿度による設備の劣化というような問題もあります。こうした状況をしっかりと把握してガスが漏出する前の設備自体の劣化・異常がないかということを定期的に点検するということが必要だというように考えています。
こうした状況から、現状のPHASEとしましてはPHASE1に当たります。冒頭申しましたように省令によりまして一律に月一回以上の点検を規定していますし、この中ではデジタル技術を含めた遠隔監視等による周期延長とかそういったものは規定されていないところです。
こうした状況を踏まえまして今後の取組の方向性ですが課題としましては、そもそも目視点検として行っている様々なパッキンの劣化ですとかボルトの緩みとか、そういった複雑な事項をデジタル技術でどのぐらい代替できるのか。技術的な代替性だけではなくて先ほど申しましたような物理的な高温、高湿度あるいは塩分などを含めた科学的な条件の厳しさを含め、代替性がどのぐらいあるのかというような技術上の課題。それから、実際にそうした温泉設備に技術を活用するとした場合に台数がどのぐらい要るようになるのかとか、あるいは温泉関係施設というのは、いわゆる田舎のおじいちゃん、おばあちゃんがやっているような温泉宿なんかも非常に多いものですから、そういった中で費用対効果的にどのぐらいできるのかといったようなことも含めて検討する必要があると思っています。
そうした検討の結果を踏まえまして、我々としても現場の負担軽減というのは図っていきたいと思いますので、点検周期の延長等が可能なのか否かということを考えたいと思っていまして、来年度の予算要求でも、もちろんこれはまだ決まった話ではありませんが、デジタル技術の活用について検討する予算を要求したいと考えているところです。
最後ですが、目指すPHASEとしましてはPHASE2だと思っています。現在行っている目視点検というのが非常に複雑な総合判断を行っているものですし、何か一つの単独のセンサー等で代替できるものではないと考えていますので、まずはデジタル技術を活用することによって事故防止に対する安全性がどのぐらい上がるのか、一層確保できるように取り組んでまいりたいと思いますし、同時にデジタル技術の活用によって現場の負担が軽減できるような効果的、効率的な点検方法ができればいいと思っていますので、そういったところを目指していきたいというように考えています。
簡単ですが、私からは以上でます。
事務局(髙松): ありがとうございます。
今の説明について、ご質問、ご意見等ございますでしょうか。
増島先生、お願いします。
増島構成員: ありがとうございました。
いろいろな機械設備の問題は結局、先ほどすごく難しいとかいろいろおっしゃっていますが、いろいろなプラントなんかでもいろいろなことがあって、もっと複雑なものもいっぱいありますというような中で、そこでデジタル技術で押さえようとしていますと。センサーなんかを見ていただければ分かりますが、センサーはデータを常時取っている中で、波形がこういうようにずれてくるということになるとそこは何か発生している可能性がありますみたいなのを把握して、それで人が行くみたいなこういう形でプラントもそうですし、工場なんかもそういうようにやっています。
パッキンが何か緩んでいますみたいなのも人の目で見ても分からないけれども、圧力がすごく変わったみたいな話は兆候が出ればそれでもう分かってしまうみたいな、この辺がきっとデジタルの強みだという、こんな感じがしていますので、その辺の今やっているものをそのままデジタルに置き換えるという発想は、いつも申し上げるとおり印鑑を押す自動アーム、ロボットアームを使うというのと全く同じで、多分それではないという、ここの辺りを何か踏まえつつやっていただけるといいかなというようなことと、あと田舎のほうでは、とはいえ、こんなものは多分使わないということはいっぱいあられるだろうという気がしますが、ここはデジタルを強制するという話でも多分ないと思いますので、デジタルを使いたい人はそれが使える状態をつくっていただきたいかなという、こんな感じだなと思いました。
北橋温泉地保護利用推進室長: ありがとうございます。
しっかり来年度の検討作業の中でおっしゃられたようなことも含めて考えていきたいと思います。
事務局(髙松): そのほか、いかがでしょうか。
稲谷先生、お願いします。
稲谷構成員: ありがとうございました。
私も増島先生と同じことを思ったということが一つあるのですが、私のほうは少しお尋ねしたいことがありまして、ご説明の中で、いわゆるシエスパ事件が契機となってこの規制ができたのですという話があったように理解したのですが、シエスパ事件の原因自体は施設が劣化したというよりは、施設の建てつけがそもそもおかしかったということと、ヒューマンエラーが幾つか重なってしまって結局起きた事件だったように私は理解しているのです。しかも、実際に設計して施工を監督する立場にあり、従って施工者にどういう問題が起きているかということを伝える立場にあった人は刑事責任まで問われているという事件だと思います。
ですから、そもそもの義務を課していったご趣旨とシエスパの経緯というのが私は完全にマッチしないような気も何となくしていまして、その辺りの経緯というか、今、申し上げたようなヒューマンエラーが重なっていって、ヒューマンエラーの最も大きかった人が処罰されたという事件から、設備をちゃんと点検しなければいけないことになったという話のつながりをもう少し教えていただければありがたいかなと思ったところです。すみません。
北橋温泉地保護利用推進室長: シエスパ、渋谷の事件ですが、幾つかの複合的な要因が重なって事故につながっています。一つは、排気管、排気口が結露によって閉塞していたということです。その結露によって塞がってしまったということの原因は、結露を防ぐための装置があったにもかかわらず、それが動かされていなかったということがありますし、また同時に、そういった場合にも室内から外へ排気管、ファンによって排気を行うということになっていたにもかかわらず、そのファンにも異常があって換気ができていなかった。さらに、スイッチ自体も防爆仕様ではなかったということだと思うのですが、ここははっきりしてないのですが、恐らく制御盤からの火花が発火原因となって爆発が起こったというようなことで、本当に二重三重にも設備あるいはその運用に対するミスがあったということなのだと思います。
当時はそうした可燃性天然ガス、特に温泉設備の可燃性天然ガスが出てくることに対する法的な縛りというのは一切なくて、その件については屋内において起こった事故であったわけですが、それに対して消防法あるいは温泉法、どういった法律で今後縛っていく必要があるのかという話になった中で、温泉法を改正して屋外も含めて可燃性天然ガスの事故防止を図っていくという方向性になったというような経過です。
稲谷構成員: ありがとうございます。
そうすると、これが直接関係しているかどうか、私、分からないですが、あの事件では要するに運営会社側も刑事の責任を問われたのですが、そこは結局無罪になったという経緯もあったりしますので、そことの兼ね合いもあって運営、設備を管理する側もしっかりしてもらうためにこういう義務が出てきたというように考えるということができるのでしょうか。
北橋温泉地保護利用推進室長: そうですね。設備基準だけではなくて、その設備をちゃんと点検する、その担当者を置く、そういったこともこの法改正の中で追加されたところです。
稲谷構成員: そうすると、むしろ運営者側にそういったことをちゃんとやるインセンティブを付与するという観点からいくと、実は起きたときの責任の処理の仕方という辺りも実はここに跳ね返ってきている部分があったりする、そういうことでしょうか。その両面が影響しながらこういうようになったのですか。
北橋温泉地保護利用推進室長: はい。
稲谷構成員: 分かりました。ありがとうございました。
事務局(髙松): ありがとうございます。
落合先生、いかがでしょうか。
落合構成員: ご説明ありがとうございます。
お話を伺っていまして、複合的な要素でもって検証するべき点があるというお話があったと思います。全体として、何となくいろいろなものを見ておけば全部安心というような、漠然とした形でまとめてしまうと、やはりどうしても言葉で記述できないという話になると思います。その後、10年ぐらい点検されている中で、本当にどういう部分が特に事故につながるかや、本当にリスクがある部分はどの辺りなのかを明確化、標準化していくことがあるのではないでしょうか。これはデジタル化だけではなく、人の作業自体も正確なものにしていくために必要なことだと思っております。そういった意味で、いろいろあるので、現場の人がいろいろ見ないと分かりませんというご説明ですと、その人が本当に適切に対応できているかどうか、実はアナログの場合でもコントロールできてないのではないかということになるようにも思います。逆に、標準化されていると、この技術はこう足りない、だから、ここだけは見る、こちらは見なくていいとか、そういう切り分けができるようになると思っています。
DXをするときも一緒に業務の見直しをするという話があるのと同じように、それをきっかけにして、よりよい実務をつくりましょうということと同じ話だと思います。まずどこを見る必要があって、デジタルだけではなくて人もどうやって安全性を上げられるように標準化できるのかを考えていただきながら、そこを要素分解できると、例えば経産省でやられた高圧ガスですとかそういった事例につながると思います。ここでの取り組みはそのまま等価で他の方法に置き換えてよい部分と、この活動は代替ができない、ここはまだちょっと評価が仕切れないとかが出てくるはずです。ここだけはこのタイミングで見るという切り分けをして作業負荷を減らすこともあると思います。全部一気に代替や省略するだけではなくて半分にするなど、部分的にできることもあると思います。そのような見直しのプロセスの中で、ぜひアナログの場合の業務内容も向上するような形で、業務自体を見直していただけないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
北橋温泉地保護利用推進室長: 先ほどご説明の中では具体的に点検する中身として配管の詰まりですとか、パッキンの劣化あるいはタンクのひび割れとか、排気口の詰まりとか、そういったことをご説明申し上げたところですが、来年、いろいろ考えていく中で、各都道府県とかでは点検の記録を集積しているわけですが、そういったものも踏まえておっしゃられるように実際の点検作業でどこに注視していくべきなのか、注力していくべきなのかというようなことも考えていきたいと思います。
落合構成員: ありがとうございます。
デジタル庁でも、こういうことにはこういう技術を使えるとか、こういう事業者がいるといった、例を蓄積してきております。プロセスを分解できると協力して進められる部分が増えると思いますので、ぜひよろしくお願いします。
北橋温泉地保護利用推進室長: 我々もなかなか最先端のモニタリング技術みたいなものを承知してないところがありますので、技術マップでしたでしょうか、そういったものも非常に活用したいと思っています。
事務局(髙松): ありがとうございました。
時間も来ていますので、質疑はこちらで区切らせていただきたいと思います。環境省自然環境局の皆様、ありがとうございました。こちらで2つ目のパートを終了します。
3点目ですが、火薬類の発破等に係る見張人の配置についてです。
この規制については、目視規制の類型3として整理をしています監視、巡視、見張りに限定して議論いただきたいと考えています。規制の内容について、冒頭に私からご説明しまして、その後、質疑応答は同席いただいています経済産業省商務情報政策局の岡本課長に対応いただきたいと思います。
私から3点ご説明いたします。
1点目は規制の内容についてです。
上段の資料をご覧ください。第25条に、火薬類を爆発させ、または燃焼させようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないとされています。
また、後段ですが、消費に関し必要な事項は経済産業省令で定めるとされています。火薬については、その爆発または燃焼が公共の安全に密接に関係を持っています関係で許可制とされていまして、地方自治体による自治事務として自治体において規制が運用されている状況になっています。
また、火薬が消費される行為としましては、一つは鉱山、工事現場等における発破、それから、花火の打ち上げ、鳥獣の捕獲、駆除、射的練習における散弾の使用などが該当します。この中で比較的頻度が多いと考えられます鉱山、工事現場等における発破と花火の打ち上げについて、省令では次のように、下のところですが、規則のほうで定められています。
53条の16号ですが、発破に際しては見張人を配置し、その内部に関係人のほかは立ち入らないような措置を講じて、危険がないことを確認した後でなければ点火してはいけないということ。それと、56条の4の4項10号では、煙火の消費、これが花火の打ち上げを指しています。それに際しては関係人のほかは立ち入らないような措置を講じて危険がないことを確認した後でなければ点火してはいけないとされています。
以上が規制の内容となっています。
ご説明の2点目ですが、実際に火薬の発破が行われる現場のイメージについてです。ここでは火薬の発破の模様のビデオをご覧いただきたいと思います。
(ビデオ上映)
事務局(髙松): こういった現場ですが、さらに大きな山際の山壁自体を大規模に発破するような場合もあります。このような現場では数名程度の方が危険を伴う区域を注意して監視をして問題がないことを確認した上で発破のボタンを押す、このような対応が取られているということです。
最後に3点目ですが、もう一つの行為、花火の件です。花火大会を開催する場合には、消費許可申請を提出しまして、都道府県知事から許可を受ける必要があります。この申請を行う際の手引が都道府県ごとに取りまとめられて公表されています。花火についてはこの手引に基づいて大会当日の体制ですとか人員配置等の計画を取りまとめた申請書を提出して許可を受けるということが必要となります。
そこで事例をご覧いただきますと、1つ目は東京都の例です。
立入禁止区域等の設定事例が描かれていまして、これは一つの例ですが、打ち上げ場所を取り囲む領域に立入禁止区域と立入規制区域が設けられています。資料の下に記載しています手引からの抜粋ですが、心得としまして立入禁止区域には関係者以外の者が立ち入ることのないよう警備体制を確保してくださいと求められています。
もう一つが千葉県の事例ですが、消費場所見取図の例が書かれています。円の中心が花火の打ち上げ場所となっていまして、それを取り囲む形で見張人が4名ほど配置されています。赤字の四角は事務局で追記したものとなります。
申請書の作成上の留意事項としまして、見張人や大会本部の位置などを明確に記入することが求められているというような状況になっています。事務局としましては、例えば花火会場などについては、会場によっては相当な広さがありますし、相当な観客が集まる場合もあります。規制の目的との関係で支障がないと考えられる場合にはということになりますが、例えば比較的安価なドローンなどで監視の作業の一部を担うということを認めることができれば、運営業者に一定のメリットを与えることもできるのではないかと考えまして、このような観点も含めましてご検討いただきたいと考えているところです。
経産省さん、追加や補足等ありますでしょうか。
岡本課長: 火薬類取締法の担当課長をしています岡本と申します。
私からは2点、お伝えしたいと思います。
1点目は、ディズニーランドの花火事故であります。既にネットで流れていますのでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、一昨日10日、ディズニーランドで花火の事故がありました。具体的には花火が上空に上がらず、ほぼ地上で爆発をしたという事故です。幸い負傷者はいなかったと千葉県からは聞いていますが、皆様方にお伝えしたいのは、こういった火薬の事故というのは遠い世界のものではなくて身近なところで起こり得るものなのだということ。それから、その火薬の保安にデジタル技術を導入する場合には、そういった信頼性が厳しく問われることになるということを改めてご認識をいただければありがたいなと思っています。
もう一点は、火薬類取締法における規制の基本的な考え方です。これは一言で申し上げますと自主保安ということでして、これは国もしくは自治体が事細かに手取り足取り規制をするのではなくて、行政側は規制の目的、例えば爆発が起こらないようにすることとか、安全な措置を講ずることといった最終目標を示し、それに向かってどういった手段を用いてそれを担保するのかというのは事業者側が取捨選択できるという制度となっています。
ですので、このことをデジタルという観点で言い直しますと、現行において火薬類取締法の規制内容については基本的にデジタル技術の活用は可能となっています。そのデジタル技術を活用することによって安全が担保されるということを事業者がデータや科学的なデータ等を用いて立証することでそれは認められる、そのような法律上の立てつけとなっていますので、皆様にお伝えをいたしました。
私からは以上です。
事務局(髙松): ありがとうございました。
以上の件について、ご意見、ご質問等をお願いできればと存じます。
落合先生、お願いします。
落合構成員: ありがとうございます。
ご説明ありがとうございます。状況についてもよく分かりました。確かに立入りがないようにすることは大事だと思いますし、火薬が非常に怖いもの、ということはそのとおりと思います。一方で、ある程度自主性に任せて具体的な措置までは必ずしも縛らないという部分は、ある種法の理念としても持っていただいているところがあるように思います。そういった点を踏まえて、どう進められるのかということかと思いました。
基本的には具体的な方法を定められていないということですが、人を配置していることが今回の議論のポイントだと思っています。何をもって監視をできるような状況にしておくのかの整理です。例えばドローンを使ったり、現場の状況を確実に見ることができる状況にすることが考えられます。その場合にどういう方法があるのかは、現場の状況にはよるでしょうが、必要に応じて物理的に立入りができないようにする地域をつくって、人が入れるかもしれない場所はそのようなものを配置した上で、例えば拡声器などを使って入らないでくださいと言う方法を組み合わせるのも合理的にできる部分はあるのではないかとは思います。必ずしも人でないとできないことではないと思いますし、例えば逮捕までできるような権限が必ずしも見張りの方にあるわけではないと思いますので、強制する措置というよりは適切に警告をして、できる限り入らないようにしていただくのが規制の目的とも思います。その部分は代替できるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。具体的な技術の検証はされるとして、ということではあります。
岡本課長: まさに今、先生がおっしゃった技術が代替できるかどうかについては、それをまず事業者の方が立証していただくということかと思います。根拠を持った説明をもって許可権者である自治体が了解すればそれは認められると思っています。
落合構成員: 分かりました。ありがとうございます。
ご説明をいただいていた中では、この施行規則の中で見張人を配置という箇所がありますので、見張人がいないという判断は今のままではできないようにも思われましたが、そうではないのでしょうか。
岡本課長: 見張人を求めているのは発破の現場だけでして、煙火、花火の場所は見張人という記載がそもそもありません。ですから、いわゆる鉱山とか採石場のようなところは実際死者も発生していまして、ここは代替技術をいわゆる省令上の書きぶりは見張人が残っている。ですので、省令の中でもそれ以外のところは見張人という記載が残ってないので、花火については、見張人はもうそもそも求めていないというのが現状です。
落合構成員: そういうことですね。ありがとうございます。
そうすると、発破については花火と比べると、関係者以外の方が寄らないような状況になっていることもあると思います。また、今でも例えば様々な場所で人が立ち入っているかは、体温のセンサーなど様々な方法で計測することもあります。建物でも人がいるかを識別して、もし問題があればすぐ警備会社へ通報するなど、対策する仕組みはあるように思います。人が入らないようにする方法なども含めて、より実効性を持つ形で対策できる場合も多いのではないかとも思いますが、いかがでしょうか。
岡本課長: 今、先生がおっしゃったような技術によって見張人が代替できる可能性は十分あると思っています。したがって、見張人を置かねばならないというところで物事を進めようと思っていませんで、可能性のある技術は受け入れていくという方針で考えています。
落合構成員: 分かりました。ありがとうございます。
デジタル庁でそういう技術については、事業者に任せるだけではなくて、いろいろな分野で使われている、危険な領域も含めての技術の情報を集めていると思いますので、そういう情報も活用して見直しを進めていただけるとありがたいと思います。
事務局(髙松): ありがとうございます。
補足をしますと、今、経産省さんからご説明がありましたように発破については見張人と明示的な規定があります。消費については規則上では見張人とはないですが、地方自治体の運用も含めて見ますと実際にそういったことを求められているという実態があろうかと考えており、取り上げました。
それから、事業者の側が立証という点ですが、現在、この取組については規制当局がデジタル技術を活用してもいいと考えていても、それが明示されていない場合はきちんと明示して使いやすいような状況をつくっていこうという考え方がありあすので、もちろん規制の中身、目的も踏まえての考え方になろうと思いますが、併せてご検討いただければと考えています。
稲谷先生、いかがでしょうか。
稲谷構成員: 事業者の側のある程度自主性に任せて論証がされればというようなお話があったと思うのですが、今まで具体的に何かそういうので変わった例がもしあればお聞かせいただければと思います。
岡本課長: 非常にマニアックでテクニカルな話になるのですが、例えば火薬類はある一定の場所に停滞、いわゆる置いておける量というのが決まってます。爆発した際に周りへの影響が大きいので。ただ、ある事業者はその火薬の停滞量をもっと大きくしたいということで、それに代わる代替技術としてこういう安全対策を講じますということを申請されて、それが認められたという例はあります。一例、参考までに申し上げました。
1点続けて発言させていただきたいのですが、先ほどデジ庁のご発言の中でデジタル技術が使えるということを明示するというご発言がありましたが、自主保安をする際に具体的には規制を変えています。具体的に申し上げますと、省令を書き換えています。性能規定化という書換えのときにデジタル技術も含んで書換えをしていますので、もう既にデジタル技術は包含している状況にあります。ですから、今後、これはデジ庁との相談になるかと思いますが、明示されてないのではなくて、既に含めて省令改正していますので、ここに改めてデジタルのことを記載するとなると、それは過去の省令改正は一体デジタルを含んでいなかったのかという議論にもなりかねない、そういった恐れもあると思っていますので、どう書くかという点についてはまた別途ご相談したいと思っています。
稲谷構成員: デジタル化の進み方、技術の進み方によってどんどん事業者側から意見が出てきて論証がなされれば変わっていくというご姿勢で進められているということですね。ありがとうございました。
事務局(髙松): 時間が参りましたので、後ほどご意見、事務局にお寄せいただければと存じます。
経済産業省商務情報政策局の皆様、ありがとうございました。
それでは、3点目のパートを終了します。
本日のヒアリングは以上です。
全体を通じてご意見・ご質問等ございますでしょうか。ないようであれば、議事については以上とさせていただきます。
最後に、小林副大臣に一言いただければと存じます。よろしくお願いします。
小林デジタル副大臣: ありがとうございます。
2つの案件議論のとおりかと思うのですが、その前に皆さんと議論いただいたことで結構大事な論点をいただいたと思うので、作戦を練って、どう議題化するかというのも整理をしてやらせていただきたいと思います。別途ご連絡が行くかと思いますので、調整をお願いします。
あと最後の経産省の案件は、既に手段を限定していないので包含しているのであるとすると、これはほかのも含めてどのように関係者に認知してもらうのかというのは別途考えておかなければいけないことだろうと思っていまして、ここは菅原さんや根本さんなど経済団体の皆さんの力もいただいて、この分野はこう変わったのだから、自由にチャレンジできる場所であるということをうまく表現をして伝えていかないと最終的には突っ込んでこないという問題が起こるということで、その辺の周知の仕方、かつ何年後にできるというのが見えてくるタイミングがあるでしょうから、予見性を持って準備していただくというコミュニケーションをとる必要があるのかなと思います。そこはまた別途知恵をいただけたらなと思っています。よろしくお願いします。
事務局の頑張りのおかげで相当な数の調整がつきつつあるということですし、さらにもう一段階、今週ブーストがかかる予定ですので、5月末に向けて刈取りが大変な時期ですが、もう一息一緒に頑張りましょう。お疲れさまでした。
事務局(髙松): ありがとうございました。
最後に、事務局より次回の作業部会の開催について、ご説明いたします。
次回の作業部会ですが、5月18日水曜日の14時より開催いたしますので、よろしくお願いします。
本日の議題についてですが、冒頭の議題については、ご異議がないようでしたら非公開とさせていただき、それ以外の部分については後ほど議事録を作成して皆様にご確認をいただいた上で公開させていただきたいと存じます。よろしいでしょうか。
また、資料の取扱いについても、冒頭を除く資料をホームページに公開させていただきたいと存じます。
それでは、以上をもちまして第9回の会議を閉会したいと思います。
本日はご参加いただき、ありがとうございました。