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デジタル臨時行政調査会(第3回)

概要

  • 日時:令和4年(2022年)3月30日(水) 17時45分から18時30分まで
  • 場所:総理大臣官邸2階大ホール
  • 議事次第:
    1. 開会
    2. 議事
      1. デジタル原則を踏まえた規制の横断的な見直しの進捗と課題について
      2. 規制改革推進会議の取組について
      3. デジタル原則への適合に向けた先行的な福岡市の取組
      4. 意見交換
    3. 閉会

資料

議事録等

日時

令和4年(2022年)3月30日(水)17時45分から18時30分まで

場所

総理大臣官邸2階 大ホール

出席構成員

会長

  • 岸田文雄(内閣総理大臣)

副会長

  • 牧島かれん(デジタル大臣)
  • 松野博一(内閣官房長官)

構成員

  • 金子恭之(総務大臣)
  • 鈴木俊一(財務大臣)
  • 萩生田光一(経済産業大臣)
  • 金丸恭文(フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長)
  • 宍戸常寿(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  • 髙島宗一郎(福岡市長)
  • 綱川明美(株式会社ビースポーク代表取締役社長)
  • 十倉雅和(日本経済団体連合会会長)
  • 夏野剛(株式会社KADOKAWA代表取締役社長)
  • 南場智子(株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役会長)
  • 村井純(慶應義塾大学教授)

概要

小林デジタル副大臣: ただいまから、第3回デジタル臨時行政調査開催いたします。皆様方におかれましては、御多忙の中、御参加、誠にありがとうございます。それ会をでは、議事に入りたいと思います。「デジタル原則を踏まえた規制の横断的な見直しの進捗と課題について」について、牧島デジタル大臣より御説明をお願いします。

牧島デジタル大臣: まず、年末に策定いたしましたデジタル原則を踏まえた規制の横断的な見直しについて説明いたします。

2ページ目、デジタル臨調における規制改革への取組意義ですが、デジタル化の遅れの問題を打開し、成長を実現するため、デジタル化を阻害するあらゆる規制の点検・見直しを進めていこうと考えております。

3ページ目、現在、デジタル原則への適合性について、点検・見直し作業を行っております。まずは、目視、定期検査・点検、実地監査等の7つの規制項目に該当する法令約5,000条項を対象に、作業部会を設置して点検を進めております。

4ページ目、テクノロジーマップの活用について、作業部会において、先端技術を保有する企業等からヒアリングを行いました。表は先ほど御説明した7つの項目と、各種デジタル技術の対応を整理したテクノロジーマップの考え方を示したものとなります。

5ページ目、数千以上あるアナログ的な規制について、項目ごとに規制の趣旨・目的が同じものを1つの類型と考え、個々の類型ごとに統一された方針の下で一括的な見直しを行ってまいります。例えば目視規制であれば、検査・点検・監査、調査、巡視・見張りの3類型に分けるといったものです。

また、類型ごとにデジタル化の進捗度合いを3段階のフェーズに整理しています。例えば目視規制の検査・点検、監査については、橋梁、トンネル等の点検を目視に限っていたのがフェーズ1、カメラ、センサー、ドローンなどにより遠隔での点検も可能とするのがフェーズ2、こうした技術により現場に行くことが不要になります。フェーズ3では、画像データをAIにより認識・分析することで、より精緻な診断や自動化・無人化が可能になります。このフェーズに達するためには、AI等の技術の進歩も必要になります。

6ページ目から10ページ目は割愛いたしますが、項目ごとに類型・フェーズを分けております。

11ページ目、類型、フェーズへの当てはめの実例として、例えば河川・ダム、都市公園の巡視・点検を記したもの、これまで基本的に目視で行っていたものを、ドローンやAIによる画像解析等を用いることでフェーズ3へと移行します。我が国の河川延長は約12万キロ、都市公園等は約11万か所ありますが、これらの点検にデジタル技術を用いることで、点検の効率化のみならず安全性の向上についても実現することができます。

左下の定期検査・点検規制については、例えば現状、消火器具、火災報知設備の定期点検が6か月に1回となっておりますが、常時監視機能などの様々な技術を活用することによりフェーズ2へ移行し、点検項目の免除などが可能と考えます。防火安全性を確保しつつ、全国に約99万件ある消火器具、約63万件ある火災報知設備に係る点検の効率化、点検費用の削減が可能となります。

12ページ目から14ページ目は割愛しますが、こちらは作業部会で議論を行った主要な規制の当てはめを項目ごとに整理したものとなります。

15ページ目、先日、経団連の皆様と意見交換をいたしました。経団連含め経済団体から延べ約1,600件の規制改革要望をいただいております。これらについても別途、点検・見直しを進めてまいります。

16ページ目、まず、国で先行7項目の点検・見直しを徹底して進めていくことが不可欠ですが、同時に、地方公共団体の自主的な見直しの取組を後押しすることも重要だと考えています。先行7項目について、地方公共団体向けに見直し手法のマニュアル等を作成するなどの取組を、総務大臣にも御協力いただきつつ進めてまいります。この後御説明予定の髙島市長の先進的な取組や御提言もいただければ、参考にさせていただきます。

17ページ目は割愛します。

18ページ目、デジタル原則に基づく規制の総点検を通じ、法令等のデジタル原則への適合性を自律的・効率的に確認できるようにすること、法令等のデジタル正本を常に参照できるようにすること等の必要性も明らかとなりました。今後これらを実現するためのプロセス・体制などについても検討を進めてまいります。

19ページ目は割愛します。

20ページ目、アジャイル型政策形成・評価については、行政の無謬性から脱却し、より機動的で柔軟な見直しを行える政策設計の在り方や、そのための環境整備について、ワーキング・グループの議論を進めていきます。

21ページ目、デジタル時代にふさわしい霞が関への転換のため、二之湯大臣、川本人事院総裁とも連携し、デジタル技術を活用した働き方改革や人材の登用・活用の具体化に向けた検討を進めております。

22ページ目、今後、一括的な見直しプランを策定していくに当たって、法令における規制約5,000条項の見直しを鋭意進めていくほか、通知・通達等における規制や経済界要望などについても点検・見直し作業を進めてまいります。

また、技術検証やITシステムへの重点投資、地方公共団体における取組の後押しを行っていくほか、今後、法制事務のデジタル化やアジャイル型政策形成・評価などを目指して、具体的検討を進めていくことも必要と考えております。

本日、皆様からいただいた御意見を踏まえ、プランを取りまとめてまいります。

小林デジタル副大臣: 次に、規制改革推進会議の取組について、夏野構成員より御説明をお願いします。

夏野構成員: まず、私が議長を務めている規制改革推進会議の取組について御紹介いたします。

資料2の2ページ目、前回のデジタル臨調でも御報告したワーキング・グループの改組以降、各重点分野における規制改革について活発な議論を進めるとともに、新たに位置づけたファストトラック・プロセスを活用し、できるものから速やかに規制改革を実現しております。

今、牧島大臣から御説明いただいた大きく網をかけるデジタル臨調の動きと私どもで同期を取りながら、できるものから、ほぼ毎日ワーキング・グループを開くこと等によって進めさせていただいております。

これまでの主な審議事項の例として、まず、スタートアップ・イノベーションの分野では、デジタル証券市場の整備、法人設立時の手続の簡素化を協議しております。

また、「人」への投資分野においては、イノベーション、人的投資につながる高等教育やリカレント教育について協議しております。

医療・介護・感染症対策においては、オンライン診療・服薬指導やデジタル技術の活用による介護施設への人員配置基準の見直しなど、かなり具体的な医療DX、介護DXの件を協議しております。

また、地域産業活性化の分野では、水産業の成長産業化のための独占禁止法の件、あるいは適切な資源管理に向けた改正漁業法の運用について議論しております。

さらに、デジタル基盤として、公正証書等のデジタル化や地方公共団体への税・公金納付のデジタル化・一元化などを審議してまいりました。

これらの重点分野以外にも、地方の人手不足対策や人の活躍にも資する学歴要件といった資格要件の在り方、地域ごとにばらばらなローカルルールの見直しなどとともに、分野横断的な取組を進めるとともに、各種の規制改革制度との緊密な連携の下、世界最高水準のスタートアップ・フレンドリーな制度を整備するなど、新たに検討を進めてまいります。

引き続き、人への投資と経済成長を実現する規制改革を推進し、5月~6月をめどに答申を取りまとめるべく議論を継続してまいります。

最後に、オンライン診療・服薬指導に関する取組を御紹介いたしますので、3ページ目を御覧ください。金丸構成員にも大変御協力いただいておりますが、当会議においては精力的な議論の結果、オンライン診療・服薬指導の恒久的な措置として、諸制約の撤廃等の改革が実現されつつあります。引き続き規制改革を推進してまいります。

小林デジタル副大臣: 続いて、デジタル原則への適合に向けた先行的な福岡市の取組について、髙島構成員より御説明をお願いします。

髙島構成員: 福岡市からなのですが、今、国のほうでデジタル原則への適合に向けてアナログ規制7項目について、小林副大臣を中心に法令を総点検していただいていると思いますが、地方自治体に当てはめたらどうなるかというのを、福岡市は独自に条例を総点検しました。

そうしたところ、400本ある条例のうち31本のアナログ規制に該当する項目があったのですが、単独で見直せるものは実は1割未満で、9割以上は国の規制においてアナログでやらなければいけないとなっていることが分かりました。具体的に言うと、例えば、省令に従って条例で定めるとなっているため、国の法令が変わらなければ見直しができないというようなものです。単独で見直せるものは1割未満ですが、福岡市でできるものは早速見直しに取り組みます。今後、法令はもちろん国のほうで地方への通知も含めて見直していただくことが地方のデジタル化に向けた一番の後押しになると思いますので、この取組は総理のリーダーシップに期待するものでございます。

次のページですが、引っ越しのことを書いています。自治体とか行政は本当にアナログな手続きだと思うのは引っ越しのときです。3月、4月に手続が一番煩雑で大変で、福岡市内で約8万人の方がこの時期に手続を行います。単に転入・転居届を出すだけではなく、子供を持つ親、障がい者がいる家族が、それぞれに住所変更の届をしなければいけない手続きが、全部で20以上もありました。

3ページ目です。例えば3人目が生まれた方とか、ひとり親のへの助成など福岡市独自でやっているものについては、早速、市の条例改正をこの6月にもやって、全部済ませたいと思います。

4ページを御覧いただきたいのですが、例えば、国民健康保険とか介護保険、国民年金というのは、自治体で転入・転居届を提出したらこれらの住所変更もしたとみなされることになっています。この5つだけは特例になっています。全部で同じようになるといいと思いますが、この下に書いてある届出が必要な13手続は該当するもの全てが住所変更届を提出しなければなりません。これは、国の法令でそうなっているのです。自治体の中は住民記録のデータがつながっているので確認できます。しかし、わざわざ法令で届け出させなければいけないとなっている。下の13項目も上の5項目と同じようにワンスオンリー、1回転入・転居届を提出すれば自動的に役所内部で変えられるとなったら、各区役所や市役所で市民に書類を書いていただく負担を減らせるわけです。これは相当利便性が感じられると思っています。これをしていただければ、まずは市内での引っ越しについてはこれができるようになる。そして、この臨調でお願いをした自治体間の移動、データポータビリティにも、まさに大きな一助になってくれると思っています。規制見直しの効果を国民が実感するためには、国民生活に直結した法令の見直しが重要であり、5ページ目はこうした話をまとめて記載しています。

小林デジタル副大臣: ここからは御出席の皆様に御意見を伺いたいと思います。金子総務大臣、お願いいたします。

金子総務大臣: 総務省は、社会全体のデジタル化に向け、デジタル原則への適合性について、総務省所管法令の点検・見直しを行ってきました。特に、先ほどの牧島大臣の御説明資料で触れられておりましたが、総務省所管法令である地方税法、行政手続法及び消防法は、本調査会での議論を踏まえつつ、デジタル原則への適合に向けて検討を進めてまいります。また、自治体への支援についても、デジタル庁と連携をして、必要な取組を進めてまいります。

加えて、デジタル時代にふさわしい政策形成・評価の在り方について、総務省としても、政策評価審議会の協力も得ながら、政策評価制度の見直しなどの検討を進めてまいります。

このような取組を通じて、本調査会の目的である社会全体のデジタル化に貢献してまいります。

小林デジタル副大臣: 続いて、萩生田経済産業大臣、お願いいたします。

萩生田経済産業大臣: これまでも申し上げてきたとおり、我が国の最大の弱点とも言われるデジタル化の後れを解消するためには、デジタル化を大前提として日本全体をつくり直すくらいの大改革が必要です。そして、この改革の一翼を担うのがデジタル原則に基づく規制の抜本的なアップデートだと思います。

目視・点検などの改革の代表的な7項目について、本日御報告いただいた規制の類型やデジタル対応の段階についての整理は、各規制制度の現状を分析した上で、今後デジタル原則を実装していくための重要な指針となるものと思います。経産省としては、引き続き、デジタル原則を踏まえた法令等の見直しに積極的に取り組んでまいります。

例えば本日、資料の13ページの中でも御紹介いただいておりますが、業務用の空調機器や冷凍・冷蔵機器については、フロンの排出抑制の観点から、現行制度では驚くことに3か月に1回以上の機器の点検が必要となっています。常時監視システムを用いることでこの点検を免除することができないか、現在、環境省とともに規制の見直しを進めているところです。

引き続き、こうした取組の横展開も図りつつ、デジタル庁をはじめとした関係省庁とも連携しながら、デジタル時代の規制改革にしっかり取り組んでまいりたいと思います。

小林デジタル副大臣: 南場構成員、お願いします。

南場構成員: 牧島大臣に説明いただいたいずれの取組についても賛成であり、ぜひスピード感を持って進めていただきたいと思います。

ただ、デジタル庁は強力な旗振り役ではありますが、関係各省が新しいテクノロジーをキャッチして、自主的にデジタル実装を推進する機運、体制、仕組みが必要だと思います。具体的に提案させていただきたいと思います。

目視、実地、対面などを必要としている規制の見直しのために活用可能なデジタル技術、いわゆるレグテックの進展は著しいものがあります。これらを整理したテクノロジーマップの説明が大臣からありましたが、これを常にアップデートした形で公表し、規制の見直しに活用可能な技術を誰でも把握可能にして、そして、規制当局がある特定の規制を見直す際にテクノロジーマップを参照し、見直す要件等を明確にした上で、革新的な技術ソリューションを募集します。応募された提案を基に規制当局は技術検証を行い、一定の水準を満たすと認められたものをカタログ化して公表します。これによって特定の規制を代替可能なデジタル技術が一覧化されて、容易に検索されたり把握されたりすることができるようになります。

こうしたカタログ化により、技術は有するけれども営業力が不足しているスタートアップなどの企業も、自社の技術が規制当局からオーソライズされた形で活用事例も併せて周知が可能になり、大きなメリットになります。

なお、こうした取組を進める上では、規制当局もシステム投資に回せる予算を確保しておいて、それを分配する仕組みも有効だと思います。特にスタートアップは社会課題にタックルして、高速で新しいものを生み出していくイノベーションのドライバーであり、活用することでデジタル実装に大きな効果を期待できると思います。

最後に、スタートアップからの政府調達に関して言いますと、現在、スタートアップからの調達の目標を3%と定められていますが、経団連は10%までアップするように提言しています。ただ、今の3%と定められている数字も全く達成できていません。これは例えば入札参加資格における等級制度が著しくスタートアップに不利であるなど、多岐にわたって細部に魂が籠もっていないからだと考えています。これを機に、目標達成のため、見直しを一斉に行っていただきたいと思います。

小林デジタル副大臣: 続いて、綱川構成員、お願いします。

綱川構成員: 私からは、オープンデータとAIの可能性について述べさせていただきます。

資料4の2ページ目、データとAIは食材とシェフという関係です。データという食材があって初めてAIは料理ができます。シェフのスキルに注目が集まりがちですが、多彩な料理、おいしい料理を作るためには、やはり多くの食材が必要となってきます。様々なサービスを生み出すためにも、産業界の一員としてデータの提供を国や自治体に強く望みます。

3ページ目、海外では、オープンデータから新しいサービスが続々と生まれています。例えば犯罪予測です。こちらはアメリカの事例です。過去、いつどこで窃盗や発砲といった犯罪が起きたかというデータを警察が公開し、このデータと予測モデルに基づいて、犯罪がこれから起きるかもしれないエリア、時間体を予測しています。米国のサンタクルーズ市ではこのサービスの活用もあって犯罪が2年で17%減少したという実績があります。アトランタなど60以上の都市で導入され、拡大しているサービスになっています。

4ページ目、当然ながらオープンデータが増えれば、国内のサービスもどんどん広がってきます。例えば災害時の避難場所の開設状況や多言語対応の情報などのデータがあれば、車椅子の方が避難するにはどこへ行けばいいのか、ペットが一緒の場合はどこに避難すればいいのか、言語は通じるのかなど、AIに質問をし、回答するというようなことも可能になり、避難をためらう方にもスムーズな避難誘導が可能となります。

また、これはデータとAIの可能性から推測するものですが、現在、国や自治体では膨大なコストをかけて法令、条例の制定作業を実施しているかと思います。この法令、条例のデータを、AIがもし読み込むことができれば、関係性の整理や文書作成のサポートができる可能性があると考えています。

このように機械処理できるデータが増えることによって、新たなサービスが展開される可能性が広がってきます。ぜひ積極的にオープンデータを進めていただきたいと思います。

なお、1点補足です。AIはやはり万能ではありません。シェフも調理することで成長する必要があります。AIも同様、AIを育てていくものだと皆様に理解していただきたいと考えています。

小林デジタル副大臣: 続いて、十倉構成員、お願いします。

十倉構成員: だいま牧島大臣より御説明がありました規制の横断的な見直しは、まさに全ての産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に資するものであります。デジタルトランスフォーメーションを通じまして、企業の生産性の向上や現場の人手不足の解消に寄与し、ひいては従業員の所得向上など、日本経済全体に好循環をもたらします。

この点、3年間の集中改革期間は、日本が真のデジタル社会へと転換する最大にして最後のチャンスとなります。アナログ規制を3年間で一掃すべく、経済界としてもデジタル臨調の取組を全面的に後押ししてまいります。

そこで、本日は具体的なステップに関する考え方をお示ししたいと思います。資料5の2ページ目を御覧ください。

3段階に分けております。第1に、既存規制の総点検とデジタル一括改正であります。改革の手始めに、あらゆる手続において途中で紙が一枚も入らない真のデジタル完結を実現しなければなりません。

第2のステップは、新たな制度・インフラの整備であります。日々の技術革新に法規制が追いつくことはあり得ず、アジャイルな制度の整備が必要であります。また、マイナンバーを含むベースレジストリの構築と、データ連携による、データドリブンな経済社会の構築が重要な鍵を握ります。さらに、全ての行政サービスに対する統一的なIDの附番も欠かせません。

そして、ステップの最終段階は、デジタル前提の体制構築であります。改革が決して後戻りすることのないよう、行政が先端技術に自律的に対応できる仕掛けをビルトインすべく、例えばデジタル法制局の設置などが有効と考えます。

改めまして、デジタル臨調を立ち上げられました岸田総理の御英断に敬意を表するとともに、む規制の一括的な見直しプランを足がかりに、強い覚悟とスピード感を持って法律の一括的な見直しに対応していただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

小林デジタル副大臣: 続いて、村井構成員、お願いします。

村井構成員: 2点申し上げたいと思います。いずれも2000年からIT政策で取り組んでいることの延長上にあると思われるのですが、少し見直しあるいはスピードアップが必要だと思われる項目です。

この会議でこの議論をするということは、全ての省庁に関わる、あるいは我が国全体に関わる議論をするためだと理解しています。その中で、先ほど綱川さんがおっしゃったオープンデータについて。前回も申し上げましたが、オープンデータというのはこの国はOECDの国別ランキングで非常に低かったのです。これを内閣のIT戦略でねじを巻いて進めたため、一時は4位まで上昇しました。やはり内閣でやると非常に成果が上がってくるのです。そこから先がどのようになっていくのかというのは大変重要だと思います。

私が見ていると、今回は、本日御説明があったように、全ての都道府県の行政、そして国の全ての行政機関に対して一つのデジタル社会の推進というテーマで取り組むことができる。さらに、予算も調整することができる。こうなってきたときに、やはりオープンデータの鍵は、各省庁がIT関係の予算を取るときに、オープンデータにも取り組むことを伝えていれば推進することできたと考えています。これは今、非常に強力にできるようなりました。

この機会にもう一度、AIをはじめ、デジタルデータがどのように使われる社会をつくることができるのかを検討する必要があり、その要は、基盤であるパブリックからできるデータ、つまりオープンデータをどのようにして強力に推進するかにかかっています。このことのねじ巻きというのはおかしいですけれども、今までうまくいっていたときもあった。今また本当に力を入れるべきときだと思っていますので、是非その体制をつくって進めるべきではないかと考えています。これがオープンデータです。

もう一つ、個人認証、マイナンバーで個人が一括していろいろなことができるという議論は順調に進んでいるように思いますが、本日お話のあったことを全て進めるためには、許認可、証明書といった行政のあらゆる手続を、デジタル化によって、しかも役割を横断して進めていこうというすばらしい提言だと思っています。このために鍵になるのはそれぞれの組織のIDと証明書です。

これも2001年に政府の認証基盤という電子署名法ができ、20年たっています。様々な許認可、認証、証明書、裏にあるのは全て電子証明です。このことがきちんとできているのか。これはDFFTだとすればトラストといったことに関わってくると思います。トラストは今、あらゆる社会で必要になっていることから、民間でばらばらに考えられています。そうすると、ばらばらの縦割り、あるいは民任せといった、これまでのIT政策の中でしばしば陥っていた反省がいきてこないことになります。したがって、今回政府としてきちんと取り組むということであれば、証明書、ID、認証、トラストの体制を、難しいのは分かっていますが、ある領域からでもきちんとつくり上げて進めていくというアプローチが必要だと思います。

小林デジタル副大臣: 続いて、宍戸構成員、お願いします。

宍戸構成員: 東京大学の宍戸でございます。

私は意見を資料6という形で提出しておりますので、要点を申し上げたいと思います。

まず、先ほど牧島大臣からお話がありました規制等のデジタル原則への適合性の点検・見直し等についてですが、作業部会において恐らく大変な作業、膨大な作業をしていただいているものと思います。そのことに非常に感謝の意を表明したいと思います。

その上で4点、簡単に申し上げます。

第1に、今のデジタル原則への適合性の点検などにおいて、経済界からの御要望などの集約・反映が始まっていることは大変大事なことだろうと思います。今後はそのプロセスの透明性を高めるとともに、多様な個人あるいはコミュニティーの参画を積極的に促していくことが求められるのではないかと考えております。

そのためには、改革の司令塔でありますデジタル庁が、言わば国民の中から声が上がってくる、言ってきてくださいというのを待つということを越えて、例えばデジタル市民モニターのような仕組みをつくって、デジタル化への不安・不満や、例えば身の回りの生活課題がデジタルで解決できないのかといったミクロな、しかしデジタル化以前は顧みられることも少なかった重要な声を積極的に拾い上げていくことをぜひ御検討いただけないかというのが1点目です。

2点目はデジタル技術の適用段階についてです。これについては既に南場構成員からスタートアップの支援という目線から御発言があったところです。

私からは、スタートアップの提供されるサービスを選んで使うという、行政側がどのように選べばいいかという観点からも、それをアジャイルに判断していくためにも、テクノロジーマップのようなカタログ等をしっかり御整備いただきたいということをお願いしたいと思います。

3点目は地方公共団体における取組の支援ということで、今、髙島市長から非常に重要な御発言があったと思います。とりわけ法制事務のデジタル化は行政限りで完結するものではなく、立法、司法、それから条例を所管している地方公共団体においても非常に重要な課題であると思っております。

この点につきまして、先ほど綱川構成員から法令等のオープンデータの話がありましたが、そういったものを進めていくだけではなく、条例を制定・改廃することになりますと地方議会の御協力も必要になるかと思いますから、ぜひ、そういった点についても、例えば三議長会を通じて情報提供する、あるいは意見交換するなどのアクティブな活動が望まれるのではないかと考えます。

最後、4点目は牧島大臣からお話がありました霞が関の在り方についてです。いわゆる行政の無謬性神話から離れて、問題を発見して改善する、公務員がそういうことに取り組むことが評価されるといった文化の形成に、幹部職員はもちろん政務も含めてお取り組みいただきたいと思います。あるいは国会各党が、国民、メディアに対してもそういった発信をしていっていただくことが非常に重要ではないかと、公務員になる学生を育てている側からは思うところです。

そのためには、いわゆる心理的安全性確保に向けた取組、あるいは外からの目線を取り入れる、情報公開、公文書管理、政策評価の仕組みの強化をデジタル改革の中で適切に位置づけていただきたいと考えております。

小林デジタル副大臣: 続いて、金丸構成員、お願いします。

金丸構成員: まず、夏野構成員から報告のあったオンライン診療の恒久化やオンライン服薬指導、電子処方箋の実現は、規制改革推進会議とデジタル臨調の連携による大きな成果だと思っております。もっとアピールしてくださってよろしいのではないかと思っている次第です。

本日御説明いただいた改革をさらに推進する際に重要だと考える点を4点述べさせていただきます。

1点目です。この改革を通じて収集された様々なデジタルデータがデータベースに蓄積されます。単に点検や確認の効率化を実現するだけではなく、国としてプラットフォーム化して、集めたデータを広く活用できる仕組みとしてください。もちろん個人情報に十分に配慮した上で、集めたデータが広く活用され、高度なAIや新しいサービス、ベンチャービジネスの創出や地域の課題を多くのプレーヤーがテクノロジーで解決する好循環サイクルを今回の取組として実現してほしいと思います。

2点目はマイナンバーカードです。マイナンバーカードのアナログ部分を、ぜひデジタル、カードに替えていただきたいと思っています。内蔵されているチップの有効期限を手書きする見直し、ローマ字表記、西暦表記など、従前より課題の券面デザインの刷新は、早期に実現していただきたいと思います。

また、物理的なカードにこだわらず、既に配付済みの番号そのものを完全デジタルオンラインで活用できるような方向への転換も必要ではないでしょうか。

3点目です。技術や手法は日々進化をしております。最適なやり方もどんどん変化します。法律やガイドラインを見直す際には、特定の手続や技術的な手法まで規定して未来を制約するのではなく、本質的な実現すべきゴールにフォーカスすることが大切です。

4点目です。中央政府と地方自治体のDXを推進する人材の教育・育成は最重要課題です。当社の事例ではありますが、文系理系を問わず3~4か月間の新人教育を経て、プロジェクトに配属して約1.5年、教育期間と合わせて約2年で課題をデジタルで解決できる人材になれるよう育成しています。即戦力人材をマーケットから採用するだけではなく、全国的に各省庁、各自治体から選抜された人材を、例えば24か月間の育成カリキュラムを策定して集中的に教育する計画を提案いたします。御検討、よろしくお願いいたします。

小林デジタル副大臣: 夏野構成員、お願いします。

夏野構成員: 十倉構成員が御提出された資料の2ページ、デジタル前提の体制構築、行政が自律的に対応できる仕掛けをビルトインするというのは極めて大事な話だと思っておりまして、私も今、実務的に規制改革をやらせていただいていますが、あらゆる数のあらゆる省庁のいわゆる法体系あるいは制度、必ず見直さなければいけず、そこには必ず時代に合っていないものものがたくさんあります。そういう中でいうと、今後、デジタル法制局の議論等をされる際に、ぜひ、今の技術あるいはこれはデジタルに合っていないよということのチェックするとともに、これは技術の進化が速い領域だから5年以内に必ず見直してくださいとか、10年以内に必ずアップデートしてくださいという条項を法律の中に入れておいていただけると、必ず所管省庁は見直すことになります。それがないと、これはこのように決まっていますので、こういうふうにやっていますで終わってしまうので、ぜひそういうことも御検討いただければと思います。

それから、今、金丸構成員が御発言されたマイナンバーカードとマイナンバーは実は似て非なるものなので、ぜひマイナンバーの活用も御検討いただければと思います。

小林デジタル副大臣: 髙島構成員、お願いします。

髙島構成員: ありがとうございます。

スピードアップしなければいけないという認識はみんな一緒だと思いますが、これまでの住基カードの議論、マイナンバーカードの議論も、本来はいいものをつくろうとしたけれども、いろいろな声が上がる中で中途半端になってしまったところがあると思います。なので、今こそ前に進めていくためには、今いらっしゃる大臣の皆さんでだけではなく、民間やこちらの有識者の皆様も含めて、こういう人が声を上げていって、そういうムードをつくっていくことも大事かなと思います。今日いらっしゃっている有識者の皆様は大変影響力の大きい方々なので、これから政府の中、国会の中でも議論になるだろうということを前もって我々のほうから議論を行っていくなど、政府をサポートしていくという取組もあったらいいのかなと思います。

小林デジタル副大臣: これまでの議論を踏まえまして、牧島デジタル大臣から御発言をお願いします。

牧島デジタル大臣: 大変積極的な御議論をいただいて、うれしく思っております。新しいテクノロジーを実装する機運を盛り上げていかなければならない、今回お示ししたテクノロジーマップを参照するという習慣、また、これを随時アップデートしていかなければならない、それを意識的に行うということの御示唆をいただいたと思っています。

また、スタートアップはイノベーションのドライバーであるという御指摘も重く受け止めております。

データに関しては、オープンデータやAIの活用、デジタルデータ活用の基盤の推進、データベースとして活用することで、さらに課題解決にスピード感を持ってつなげることができる。こうしたものも大変重要な視点をいただきました。

国が率先垂範しつつ、髙島市長からも御指摘いただきました地方での規制の見直しの取組を後押しをしていくこと、重要な声を拾い上げていくプロセスも進めていきたいと思います。

最後に、マイナンバーについても、サポーター宣言をいただいたこと、私たちとしてもありがたいと思っています。

本日、この各種規制を類型、フェーズに当てはめるということをお示しいたしましたが、個々の類型ごとに一括的な見直しを行うという方針について、点検・見直しの基本的な考え方を有識者の皆様から御賛同いただいたものと受け止めております。

ここからが正念場でございます。3年間の集中改革期間の中で、アナログ的な規制を一掃する、そしてそのマインドをその先にもつなげていかなければならない、そうした中でまだまだ山はあると思いますけれども、一括的な見直しに向けて、5月に向けてプランを具体化してまいりますので、今日いただいた御意見を反映してまいりたいと思います。引き続きの御指導、よろしくお願いいたします。

小林デジタル副大臣: 金丸構成員からもっとPRを、髙島構成員から応援をという御発言がありましたので、ぜひいろいろな場面で、構成員の皆様からも、この臨調への期待や成果について御発言いただけると我々も大変力になります。

それでは、最後に岸田総理から一言いただきたいと思います。総理、お願いいたします。

岸田内閣総理大臣: 有識者の方々には、本日も活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。目視規制や実地検査、書面手続、対面講習などの古い規制をデジタル技術に置き換えることで、国民の安全安心かつ便利な暮らしや、事業活動の円滑化につなげることが重要です。

デジタル技術の活用により、労働力が減少する中でも、力強い経済成長を実現するとともに、生産性を高め、所得の向上につなげます。新たなデジタル市場が生まれ、ビジネスや産業の創出にもつながります。

本日は、4万以上の法令や各種告示などのうち、課題のある5,000か所について、類型化した上で、見直しの方向性をお示ししました。残りの法令の洗い出しに加え、新規立法時の対応も含め、牧島大臣を中心に、5月までに一括的な見直しプランを取りまとめます。その上で、今後3年間で、政府一丸となって、デジタル原則に沿った規制の一括見直しをやり遂げます。併せて、牧島大臣を中心に、センサー、ドローン、AI診断、ビッグデータ分析など、あらゆる技術を活用するためのテクノロジーマップを整備してください。また、牧島大臣と金子総務大臣において、デジタル化の取組が地方にも波及するよう、地方自治体のデジタル化に向けた取組を後押しする方策を具体化してください。

規制改革推進会議においては、オンラインによる診療・服薬指導の恒久的な措置として、諸制約の撤廃などの改革が実現されつつあります。さらに、全国どこでも、医療・介護サービスや医薬品に円滑にアクセスし、健康を維持・増進するための医療や介護のデジタル化の推進策を取りまとめるとともに、スタートアップ・イノベーションや人への投資を促進するための取組を加速化してください。

最後に、デジタル時代にふさわしい政府への転換に向け、機動的で柔軟な見直しを行える、いわゆるアジャイル型の政策形成・評価の仕組みを具体化するとともに、省庁横断での各種デジタルツールの活用に向けた工程表の具体化、民間のデジタル人材の採用円滑化に向けた手続・処遇等について、検討を加速してください。

小林デジタル副大臣: ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の「デジタル臨時行政調査会」を終了いたします。

御多忙の中、御参加いただきまして、誠にありがとうございました。

以上