デジタル交通社会のありかたに関する研究会(第3回)
概要
- 日時:令和4年(2022年)5月17日(火)14時30分から16時30分まで
- 場所:東京ガーデンテラス紀尾井町4階
紀尾井カンファレンス セミナールームA(オンライン併用) - 議事次第:
- 開会
- ご発表、討議
- 「Well Beingの視点から考えるモビリティ Liveable Well Being City Indicatorの活用」
スマートシティ・インスティテュート 南雲様 - 「デジタル時代のアーキテクチャ~進む方向と実証事例分析~」
慶応義塾大学 白坂様
- 「Well Beingの視点から考えるモビリティ Liveable Well Being City Indicatorの活用」
- 今後のとりまとめについて
- 閉会
会議動画
会議の様子はYouTube(デジタル庁公式チャンネル)にて公開しています。
資料
- 資料1 議事次第(PDF/385KB)
- 資料2 構成員名簿(PDF/366KB)
- 資料3 前回の振り返り(PDF/634KB)
- 資料4 本日ご議論いただきたいポイント(PDF/281KB)
- 資料5 「Well Beingの視点から考えるモビリティ Liveable Well Being City Indicatorの活用」(南雲様 ご発表資料)(PDF/10,586KB)
- 資料6 「デジタル時代のアーキテクチャ~進む方向と実証事例分析~」(白坂様 ご発表資料)(PDF/2,415KB)
- 資料7 今後のとりまとめについて(PDF/330KB)
- 議事録(PDF/637KB)
関連政策
議事録
事務局: 第3回ということで始めたいと思います。
では、先生、どうぞよろしくお願いいたします。最初に村上からご挨拶する予定でございましたが、そこは割愛させていただきます。
石田座長: 村上さんは今日は遅れられているようですので、早速始めたいと思います。到着されたらお話しいただければと思います。
今日もリアルとウェブからご参加いただいておりまして、参加されている方はTeamsのチャットで質疑やご意見を、発表中でも構いませんので、どんどんお願いいたします。ご質疑のタイミングでご報告いただければと思います。
では、早速ですけれども、スマートシティ・インスティテュートの南雲様よりご発表いただきます。
南雲構成員: スマートシティ・インスティテュートの南雲です。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
私の話はWell-Beingから見たモビリティというアプローチなので、門外漢なアプローチということは最初に申し上げておこうかなと思います。
次のページをお願いします。今まで話してきたところの現状を踏み台にして、次はデジタル田園都市国家構想の中でWell-Being指標というものを入れるということで、私どものほうでいろいろつくり込みをやって展開をしているところなのですけれども、それがどんなものなのかということで、これは聞いていただかないと次に行けないものですから、その上で、これを使ってモビリティを見たらという形で進めていきたいと思っております。
現状の話ですけれども、これは当時の内閣官房IT室がやっていたもので、モビリティの戦略のロードマップということですけれども、人口や地域性によって、赤字のところです。地方部、自動車による移動が中心のところと公共交通が普及しているところという形、3つに分けて戦略をつくっていきましょうというのが今までの流れなのです。
それにどうアプローチするかというと、この下の赤く囲ってあるところですけれども、まず技術開発、それから、インフラ、制度、プラットフォーム・データ、最後に社会的受容という順番に並んでいるわけです。私のほうはどちらかというと社会のほうから入っているということなので、反対から行っているよということを申し上げておこうかと思います。
スマートシティの文脈でいうと、テクノロジーだけではなくてゼロカーボンも大きくなってきているので、それも我々の頭の中に入れていかなければいけないと感じています。
スマートシティ・インスティテュートには自治体が230団体加盟していらっしゃるのですけれども、毎年スマートシティで今、何をやっていらっしゃいますかということについてアンケートを取っています。モビリティが、棒グラフの棒が2本たっていますけれども、2020年、去年と一昨年で、最初に来る。
世界に目を向けますと、今まで第1回目に宮代さんなどに発表していただいたものに重なりますけれども、ウォーカブルやバイシクラブルと呼ばれるヒューマンスケールへの回帰というところと、脱炭素・環境共生、デジタル、この3つが1つのおぼんの上にのっかって新しいパラダイムをつくるということになっていると。これが今までの前提条件かと思っています。
ここから先はお題になってくるスマートシティにおけるWell-Beingの話なのですけれども、Sidewalk Labsの図から来ているのだと思いますけれども、それに上下私が1レイヤーずつ足していまして、真ん中のデジタルと社会資本のレイヤーのところについてはよく語られるのだけれども、デジタル化の受益者である人がどうそれを受け取るかということに関しては、必ずしも積極的に語られてこなかったのではないか、デジタル化の結果、人が幸せになると思っていいのかどうかということを検証すべきではないかと。私はスマートシティの仕事をしていますけれども、家に帰ってスマートシティの話をすると、妻からそれは私の人生に何の関係があるのと言われるのです。つまり、テクノロジーと自分の生活の間に距離があり過ぎるのだということだと思うのです。ですから、それを可視化するために何かできないかということで世界を見渡したところ、オーストラリアとかフィンランドなどにこういう幸福度や暮らしやすさを測っているというものがあったので、その日本版をつくったという話です。
つまるところ、ゴールは幸福感と暮らしやすさ、それを達成する手段としてスマートシティをやっている。モビリティもここに入ってくるところが多分にあるかと思いますけれども、このまず構図を考えないといけませんねと。これがロジックモデルになっているということですね。
これを経済的な豊かさや自分らしい生活などといろいろ書いてありますけれども、経済的価値、市民的価値、公共的価値、環境的価値というものをうまくミックスするような形で実現しようとしているのが実はスマートシティなのだという形で、少し形式知化しています。
指標づくりの話ですけれども、Well-Beingと健康の社会的決定要因という2つの理屈ですね。これはユニバーサルな世界で使われているWHOの概念だと思っていただければいいのですけれども、Well-Beingというのは、体だけではなくて、精神・社会ともにいい状況ですよと。それから、自分の中から見たところだけではなくて周りの環境、例えばコロナでみんなマスクをしていますけれども、周りの環境がどうかによって中に住んでいる人の健康や幸せの状況が変わってしまうので、中から外、外から中、両方見ましょうという考え方ですね。
国連の「World Happiness Report」は、皆さんよく耳にすることがあると思いますが、日本は54位だと。何でだ、おもてなしの国なのにということなのですけれども、彼らの測り方でいくと日本人の点がどうしても伸びないということもあって、もうちょっと思いやりとか、日本人的なものが入るような尺度をつくって我々の成功を測ったほうがいいのではないかということで、指標づくりを始めました。
そのときのヤードスティックというのですか、2つ、マズローの欲求段階説というところとSDGsというところをよりどころにして、真ん中にある日本のモデルづくりに入っているのですけれども、マズローというのは、下から生理的とか安全とか、いわゆる衣食住ということですね。次に承認や社会的、仲間がいるかという話ですね。孤独ではないかと。その次に自己実現、夢がかなっているかということで、一番上の自己超越というものなのですけれども、他人に優しくできていますかということがあるのですね。死ぬ前に入れたものですね。それを「World Happiness Report」では、上から他人への寛容さとかとありますけれども、そういう6つの尺度で測っているのですが、これをもっと日本版にしていこうということですね。SDGsのほうは、環境のほうからですね。心の中はあまり見ていないのです。これも日本版でつくれないかということをやろうとしているということです。
ややこしいことを言っていますけれども、簡単に言うと、衣食住が足りると快適な人生ですねと。仲間がいるとよい人生ですねと。夢がかなって他人に優しくできると意味のある人生ではないのですかと。これのまち版、あわよくばモビリティ版がつくれないか、こういうことだと思っています。
まち版がこれなのです。一番下を見ますと、はい、元気ですと書いてあるのです。次に、このまちに俺は満足しているよということですね。鎌倉、大好きですよとかね。その次に、子供の世代もここに住み続けたいのだと。ロイヤルティーの概念ですね。あるいは、俺はPTAの会長をやっているのだけれども、このまちづくりに関与している、自治会の会長をやっているというと、シビックプライドが出てくるのですね。死ぬ前に自分のかみさんに言うように、俺はこのまちに住めて幸せだったと、こういう感覚になっていくと。こういう愛着感がとてもWell-Beingには大切なのだと。
ここからいろいろな先生のお力を借りまして、アンケートとオープンデータによる指標づくりというものをこの2年間やっていたのですね。これが今、村上さんと一緒にデジタルスマートシティ、デジタル田園都市国家構想という形で指標の展開をやっているということなのですけれども、色別に見ますと、まず一番上、緑のところが慶應義塾大学の前野先生ですね。地域における10の幸せの因子。オレンジのところが京都大学の内田由紀子先生ですね。自分だけ幸せなのではなくてコミュニティーがみんな幸せですかという協調的幸福感。真ん中のActive QoLとセンシュアス・シティというのは、行動の実績と行動に対する満足度ですね。一番下の暮らしやすさというのがオープンデータから来ます。簡単に言うと、オープンデータから来るのは、何がそのまちにありますかという実在を取っています。真ん中は、そこで何をやりましたかという話です。一番上が、それでどう思ったかというのを聞いているのです。このデータを取っていって、そのまちの個性、幸せのパターンを見つけ出していこうというのが発想になっています。
これは細かい図で、こんなものが入っているというのは後で紙で見ていただければと思いますけれども、質問の項目ですね。質問を一個一個書いていますので、こんなものを聞いていますよというのが入っています。
これも追加で聞いているものです。灰色の一番上に移動が入っていますけれども、こんなものも入っているということですね。
オープンデータでいくとこんなものが入っています。これは皆さんどこかで見たことがあるなという感覚を持たれる方が多いのではないかと思います。オレンジの一番左側の身体的健康の真ん中ら辺、左側に「移動・交通」と入っていますけれども、いわゆる公共交通に関するようなオープンデータなどが測られています。
それに対応するようにアンケートも取っていて、主観と客観が合っているとかずれているなどというのも測れるようにしています。
これをデジタル田園都市国家構想ではダウンローダブルにして、各自治体でスマート化をするときに、自分の立ち位置とか、自分がやっていることの結果を測れるようにしましょうねということで、ダッシュボードをつくったり、ライブラリーをつくったりをやっていこうということをやっています。
その次のあたりから面白くなるのですけれども、左から「住宅環境」から一番右側の「事故・犯罪」までいろいろありますけれども、これは調査している項目なのですが、主観と客観が同時にはねるものはどれなのだということを調べています。相関性が高い順に左から右に入れています。日本人にとって、一番ぴんとくるのは「住宅環境」です。家賃や家の広さ、住宅ローンとか、これが来るのです。1個飛んで給料が来るのです。だけれども、それ以外のところは、文化などの精神的健康が一番みんなには大切だという感覚なのです。つまり、自分が学びたいといったときに学びたいことを学べるか。それから、面白い人に会えるか。多様性ですね。それから、自分の自己表現ができるか。これが今の日本人にとってのWell-Beingの基礎になっている部分です。これは「World Happiness Report」でも日本人が最も低かったところです。ここを伸ばさないとハッピーにならないのですね。
ピンクのところを見ていただきたいのですけれども、いわゆるスマートシティでよく出てくるような「移動・交通」「介護・福祉」「買物・飲食」「医療・健康」、これは重要で、ないと生活できないのだけれども、あればいいというものでもないと。たくさんあってもそれに比例するように幸せにはならない類いなのですね。日本の国はここまで来ているということだと思います。モビリティはちょうど真ん中ら辺だということです。ないといろいろなものがつながらないから絶対に必要なのだけれども、トップでもないし、一番低くもないという位置づけだという認識を私は持っています。
データを取ってくると、これは空間になってくるのでモビリティも関係してくるのですけれども、縦軸に都市機能がどのくらい身近にあるか、横軸にどのくらい空間にゆとりがあるかというのを取っています。そうすると、左上のほうが東京23区なのです。つまり、狭いのだけれども何でもあって、お金さえあれば何でも手に入る、そういうライフパターンだと。それから、右に行くに従って、空間は広くなるのだけれども、都市機能がだんだんなくなっていくのですね。デジタル化をするということは、まずは左側の上のほうにいる人たちは右上の空いているスペースにだんだんと移住していくでしょうと。右下の人たちはデジタルでいろいろなサービスを手に入れるので、バーチャルに右上のほうに行くでしょうと。つまり、この近似曲線が斜め下に落ちています。これがフラットになっていくというのが、データから見たデジタル田園都市国家構想だというのが見てとれるかと思っています。
各自治体単位ですね。基礎自治体単位に、さっき見ていただいたいろいろな特性を見ていくと、こんなスパイダーチャートが出てきます。これはもう形だけ見ていただければ結構です。東京の上の千代田区で非常に変わった形をしています。
だんだん政令指定都市になると丸くなっていくのです。ベッドタウンだと真ん丸になるのです。これが日本の特徴です。いびつな形から、形は小さいのだけれども真ん丸に近づいていくというのが、我々の住んでいる空間の特徴です。
こういうダッシュボードを配っています。
これは実在するある都市の本当のデータを使ったものです。これを見ると、左と右で客観と主観のデータを使って、縦軸に市で取っている市民アンケート結果を取っているのですね。主観なのですね。そうすると、第1象限というのですか、右上のところに「環境共生」が来ています。この都市は環境共生が物すごく大事なところです。縦軸の右側に赤く点線で囲まれた「自然災害」、これは惜しいところにいるものなのですね。こういうものをデジタル化すると、満足度が高くなり、都市の機能も高くなる。だから、これがスマートシティのネタだというようなことを今、やっています。
これをナラティブにして市民と共有するところから、僕のかみさんのようにあなたのやっている仕事と私は関係ないと言わずに、そのまちの幸せと一体化するというシナリオをつくろうと思っていまして、左側にマズローがあって、下から行くと、環境共生、非常に自然が豊かなところなので、憧れて人が移住してきます。そうすると、自然に囲まれた生活の喜びというのは本当に心身が健康になっていって、自然を保全しようという意識が高まる。そして、ピンクのゾーンに行って、それがリサイクルやごみ拾い、市民活動につながっていって、これは市長のマニフェストにつながっていって、その政策がうまくいくと、シビックプライド。これは転じて、外から見ると市のブランドだし、中から見るとコミュニティー意識だと。こういうことを高めることがスマートシティにおけるWell-Beingである、こういうものを都市ごとに見つけましょうと、こんなことをやっています。
交通のほうに行きましょう。交通の世界のデータを取れたので、これを使って当てはめてみようというのですけれども、一番下、通勤時間とか通勤時間以外の渋滞やCO2、ストレスですね。そういうものを含む交通状況指数とモビリティ、モビリティというのは将来の期待を含めたものですね。こんなデータも取ってやってみて、生活の質と幸福感と相関があるのかというのをやってみようと思います。
右上を見ていただくと、何と何の相関を取っているかと書いてありますけれども、幸福感と生活の質は相関係数0.6ですから、相当相関しています。
では、通勤時間と生活の質はこれも0.48で、まあまあ相関しています。
通勤時間と幸福感は全然相関していないのです。通勤時間が減っても全然幸せにならないのです、世界中。
では、もうちょっとデータを増やしましょうと。交通状況指数、右下にいろいろと定義が書いてありますけれども、これと生活の質は0.4と、まあまあ相関していますね。
幸福感はまた0.05と全然相関していないのです。だから、移動というのは、幸福にリーチするためには何かをつけないといけないというのがここで見えてくると思うのです。
モビリティ・レディネスというのは、もっと一番下を見ていただくと、社会のインパクトや環境や経済のインパクトなど、いろいろな将来に対する期待を含めてやると、まず、生活の質は0.5なので相関していますと。
やっとここで幸福度で0.47が出るのです。だから、移動というところだけではなくて、その周りにくっついている生活や期待などを含めたような設計をしないと、これからのまちづくり、モビリティがつまらないものになってしまうよというのは、何となく見てとれると思います。
これをさっきのストーリー図にするとこうなるのだということです。一番下のところを見ていただくと、黄色のところですね。最低限の移動のところについては、生存基盤だからやらなければいけない。これは高度経済成長以降、ずっとやってきたのですね。それは何のためにというと、ピンクのところに行って、移動の目的があるからだと。今、ここを含めてプラットフォームだと言っているわけですね。さらにその上があって、もっと生き方にリーチできるような多様な生き方や環境共生に資するようなモビリティをつくると、幸せという概念に近づいていくでしょうと。
もうちょっとかみ砕くと、下からベーシックニーズがあって、コストやリスクの最小化というところから、多様な価値観やニーズ、ライフスタイル、さらにはユニバーサリティーやインクルージョンというところにヒットできるか、環境共生にヒットできるか。反対から考えて、上から考えて下のモビリティをつくっていくというほうが時代には合っているかもしれないという気すらするということかと思います。
ウィーンが最も近いかなと。私はずっとモビリティプランを見て回ったのですけれども、ウィーンはこの緑色のものがモビリティのプランなのですけれども、「healthy」とか「fair」とか「eco-friendly」という言葉が出てくるのです。だから、モビリティ計画なのだけれども、これが入っているという意味では近いと。ただ、Well-Beingというところが出てきていないのです。だから、やるのならば、日本はそこまで含めたフレームワークをつくるべきだという一つの提言かと思いますけれども、方向感かなというものが出てくると思います。
日本のデータ、まだWell-Beingがないので、左を見ていただくと、公共交通の指数とモビリティに関連するQOLの指数と、一番上の幸福感は6月にデータを取るのですけれども、それまではないので、見てみると、ということなのですけれども、東京23区、相関0.76ですね。一番きれいに取れているところはここです。東京23区はモビリティと生活の質がきれいに相関している日本で唯一の場所ですね。
政令市0.5、少し下がり始めます。だから、あまり移動を高めていっても、生活の質が一緒になってはねてくれないのですね。
一般市0.4、もうよく分からなくなるのです。どこの駅で降りてもみんな同じような感じになる。個性がだんだんなくなってきているということなのですね。
具体的な都市を取ってみると、これは全部政令市の例ですけれども、下の「公共交通・通勤指数」をダイヤモンドの形で見ていただくと、福岡は比較的形が整っていて、それが事業創造、モビリティとスタートアップのところの相関が高いのです。一つのパターンですね。真ん中は広島市なのですけれども、どれもあまり特徴がない。浜松になってくると、公共交通ではなくて車移動の度合いが高まってくる。交通事故が増えているのですね。それが出ているということですね。
一般市、鎌倉は公共交通が非常に発達しているのですけれども、混雑しているというのはあるのですが、文化創造と相関が高い。小田原は真ん中で、あまり特徴がない。会津若松はさっき言ったみたいにダイヤモンドが平らに潰れていますね。これは車に依存しているというパターンです。だから、一番最初に3パターンに分けて今までつくってきたというけれども、同じ一般市でもこんなに違う。同じ政令市でもこれだけ違う。3パターンぐらいずつある。だから、生活のクオリティー・オブ・ライフのほうから見て、どういう交通パターンなのかという入り方も一つの提言になり得るのではないかと思います。
結論で、Well-Beingということの分析が今後は必要になってくるのではないかと。そのときに、Well-Being、QOL、SUMPというのはサステーナビリティーのアーバンプランニングですけれども、SDGsと、ばらばらにやるのではなくて、メタレベルのフレームワークをちゃんと用意していないといけないでしょうと。これをやれば日本は世界より頭一つ出るかもしれない。そのフレームワークを見て一つ一つの都市を見ていくと個性のあるまちがつくれるのではないでしょうかということで、どうもありがとうございました。
石田座長: ありがとうございました。
村上さんが到着されましたので、ご挨拶を。
村上統括官: 南雲さんはいつも一緒に仕事をさせていただいているのですが、要約でいうと、インフラとつながりです。インフラがないと上がりませんし、つながりがないとWell-Beingも上がりません。いろいろな分析があるから、何が正解か分かりませんが、どんな分析で見てもこの2つは共通していると思います。まさにその結節点にモビリティが要るということかとある種ラップアップできるのかなと。
白坂先生のお話で出るのではないかと思いますが、今回、官民ITS構想・ロードマップに代わる新ドキュメントをつくるに当たり、比較的技術的なロードマップの色彩が強かったロードマップに、ぜひ使い勝手やユーザー側の視点を取り込んで、上下2層の形になったものにしたいということも含めて、今回、この研究があるというように冒頭お願いいたしましたが、例えれば上半身と下半身が同期することが必要だと思います。コンピューターにクロック数を守る周波数がきちんとしていないと全てが動かないのと同じように、せっかく上下貼り合わせで議論しても、ただ乗っかっているだけだと上半身と下半身とばらばらで結局運動論にならずにまたそのままということになってしまいます。
ぜひ今年のロードマップでは、何に使うのか、何のためなのかというところと、実際にそれを支えるテクノロジーの部分との変化が時間軸でどう同期をしていくかということを少し戦術的に、1年目ですから戦術的にブレークダウンするところまではいかないかもしれませんが、どうやって時間軸が同期するのかを上半身の視点の持ち込みと同時に意識しつつ、南雲さんにたってのお願いでこの話もしていただいたのは、行政の側が強制的に時間軸を設定して一緒にやりましょうとロードマップを描いても、上と下でやっている連中の間にそもそもつながりがないと、この取組をする人たち自身のWell-Beingが全く向上いたしませんので、目指すところが明らかならぬ、つながりがないところには楽しんでこのロードマップを実現しようという動きにもならないですし、楽しくないものは続きませんし、続かないものは実現いたしません。
ぜひ研究会後半の一つのテーマとして、同期をする戦術論ということと、改めて我々同士のつながりを、それを実際に担う現場の方々にとって見えるモチベーションになっていないと、またこの研究会の中だけで専門家だけが盛り上がったモチベーションになるのではなく、ぜひつながりを支える現場においても通用するようなゴールと、上半身と下半身の取組を同期させる時間軸といった視点を加味しながら、これまでのロードマップにプラスアルファするような議論をいただければということです。
石田座長: では、興味深い南雲さんのプレゼンに対して議論していただければと思います。
甲田構成員: 非常に貴重な講演をありがとうございました。
本当に第1回目から話があるとおり、MaaSが技術的な観点だけではなくて、市民の目から見たときにいかに幸福度と連携しているのかがデータで出てきたというところが非常に興味深かったのですけれども、スライド22にある「住宅環境」というのが一番大きな要因でありながら、「多様性」などの「精神的健康に関するKPI」が、これというのは年齢やライフステージ、地域性、そういったものによって大分入れ替わりが起こるのかなと思ったのですけれども、この辺はどんな感じなのですか。
南雲構成員: それはとても重要なポイントだと思います。これは全部データを集めたところでやっているので、キャンセルアウトしているところもあって、凸凹がお互いに消し合っているところもあると思いますけれども、ただ、多様性に対する寛容度とか、自己実現、セルフエフィカシーの低さなどというのは、世界的に日本は低いと言われている。これはあまり変わらないのだと思うのです。だけれども、住宅が上のほうにあるとか、モビリティが真ん中にあるとか、この辺は少しぶれが地域性によって出てくるのだろうなとは思います。
甲田構成員: ありがとうございます。
もう一点付け足すとすると、例えば非常に高いところで、文化や芸術は自宅で鑑賞される方は非常に少ないと思うので、そういった多様な環境に自分の身を置きたいとか、文化や芸術とかを取り入れたいとなったときに、モビリティというものとの相関性が生まれてくるのかなと思ったりして、その辺がちょうど南雲さんがおっしゃった、ただモビリティを充実させるだけではよろしくなくて、そこにこういった要素がいかに入ってくるかみたいなところが非常に重要な要素かなと思います。
南雲構成員: 文化は3つあって、一番上の自己超越のところは利他なのですね。スポンサーという概念。2番目が芸術家で自分を表現したいというものです。自己実現です。3つ目の社会的認知というのは、仲間と一緒にコンサートに行きたいみたいなものなのです。その3パターンの文化とモビリティがクロスでマトリックスみたいな感じで対応するのだと思うのです。そういうところで、どの層のモビリティの話をするのかでデザインが変わってくるというお話はあります。
日高構成員: JCoMaaS日高と申します。
非常にすばらしい取組だと思いまして、気になるというか、教えていただきたいと思うのは、海外の都市、15Minutes Cityとか、そういうところだと、15分以内にというので1本の同じ交通で、基本的には同じようなお答えかと思うのですけれども、先ほどおっしゃったように鎌倉市とかも鎌倉駅と大船のほうとかで、同じ市だけれども交通のアクセスの充実度が違うケースもあるので、そこの一つの都市でばらつきが出たときに、これをさらに足すとしたときに、うちの市は平均するとこうなのだけれども、偏差でいうとこのぐらい出てしまって、充実しているところとしていないところの差が激しいというところを埋めるという、そこの比較と、都市間で隣の藤沢市と比べてどうだったかということにも使えるかと思うので、単純にWell-Beingと比較するというのもありますけれども、同じ地域の中でユーザビリティーを上げる、隣の都市と比べて見たときに、モビリティをもっと充填したほうがいいのではないかという取組にもつながるのかなと。
特に海外に比べると、日本はそのばらつきが非常に、民間事業の中で交通が発展していくと、人が多いところは走るけれども、人が少ないところはというところでいうと、ちゃんとデータは取れていないですけれども、同じ市の中のばらつきは非常に大きくなるかと思うし、交通一般のアンケートだと、駅からの距離とかでユーザーを分けたり、甲田さんがおっしゃるとおりユーザー層で分けるというのもあると。この辺りをさらにやれると、自治体さんですごく有効な指標になるのではないかと思って聞いておりました。大変興味深い発表をありがとうございました。
南雲構成員: データはまさにおっしゃるとおりで、オープンデータは比較的、自治体単位しかないのです。主観を6月に取るのですけれども、これは郵便番号区単位で取っていこうと思っているのです。なので、同じ市の中での大船エリアと旧鎌倉エリアでこんなに違うというのは出てくると思います。
石田座長: 今の問題と絡むのですけれども、交通行動分析や、そういうものが道路単位とかから個人単位に変わった大変革が40年ぐらい前にありましたが、そのときに議論したのですけれども、見かけの相関と空間的に集計したものの相関と個人ベースでやると、相関が逆のようなことも発見されたりとか、そういうことはなかなか難しい問題ではあるのですけれども、これからさらによくするためには本当に必要だと思いまして、お二方の議論を聞いてちょっと思い出しました。
南雲構成員: ありがとうございます。
石田座長: 宮代さん。
宮代構成員: 宮代です。ありがとうございました。
この22枚目のスライドが基本かなと思いながら拝見していて、この相関が見えにくい中に「医療・健康」とか「地域とのつながり」というものが割と低いほうに出ているのですけれども、これは実際に地方とかに行ったときに、実はここで今一番苦労しているというか、まさに同じまちでも中心部に住んでいる人が比較的活動が活発で、それなりのつながりなどを求めているのですけれども、それが郊外に行って分散して住んでいると、集会所に行くだけでも大変みたいな話になるところだと、だんだんつながり感が薄れていくというのがあって、だから、これが逆転していかないといけない部分もあるのかなと。もっとここの相関、感度を高めていかないといけない仕掛けが必要かと思ったのですけれども、これについては何か解説というか、補足、理解みたいなものがあればというのと、もう一つは、最近、我々は高齢者の人と接していて、特にコロナ禍になって健康の課題がすごく広がってきた中で、健康と幸福度とかがもっと上がっていかなければいけない部分かなと。医療はともあれ健康に関しては広くそうなのかなという気がするのですけれども、これについては何か調べられている中で感じておられるところとかがあれば教えていただければと思います。
南雲構成員: この22ページに関していうと、あまりこれ以上のことはやっていないのですけれども、この絡みでいうと37ページ、つまり、モビリティに関わるWell-Beingはどういう構造になっているのだという話をしているとき、これはある実際の中核都市のスマートシティをやっている人たちと話していたのですが、免許を返納する方が出てくる。免許を返納すると、みんな元気がなくなるのだそうです。今までのモビリティの議論だと、自動運転、MaaS、自動配送などでそのニーズを満たそうという話になるのだけれども、その人と話していたら反対なのではないかという議論が出てきて、高齢者が運転できる車をつくることこそがWell-Beingの考え方なのではないかと。だから、同じWell-Beingとか同じモビリティなのだけれども、どっちから見るか、どう捉えるかというところの我々のパーセプションのほうが結構重要かもしれないなという、そんな気がしました。
宮代構成員: 今のお話で思い出したのですけれども、選択肢があるかないかではないかと思っています。自動運転だったり、MaaSもあるのだけれども、行きたいところ、近い距離だったら自分でも行けるよというある種のプライドの部分がかなり残っているので、あとはよく言われるのは、スクールバスが走っているけれども乗れないので、その時間を本当は行けるといいのだけれども動けないねみたいな、モビリティは動いているのだけれども、なかなかそれを選択できない不自由さみたいなものも同時に感じているというのは、実際にいろいろ私も地方のお年寄りと話しているとそういう話を聞くので、その辺りの掛け違いみたいな感じがあるのだろうと。
南雲構成員: まさにWell-Beingの一番上のほうの自己決定、自分の人生を自分で決めている感覚というのは、選択の自由と関係あるのですね。
宮代構成員: ありがとうございます。
アドバイザー伊藤氏: 留学でシアトルに住んだことがありますが、シアトルやポートランド、あるいはデンマークのコペンハーゲンなどが提唱しているクオリティー・オブ・ライフが、Well-Beingどう違うのかが気になりました。シアトルやコペンハーゲンは、外から人を集める目的でクオリティー・オブ・ライフを提唱しています。要するに、有能な人に街に住んでもらい、彼らがビジネスに起こすなどして稼ぐことで、人口が増え、経済が発展し、最終的に地価が上がることを意識して主張しているように思うのです。Well-Beingが目指しているのがそれと同じことなのか、それとも現在街に住んでいる人たちがハッピーになることだけを目指しているのか、どちらなのでしょうか。また、不動産業界では「住みたい街ランキング」があり、恵比寿や吉祥寺などが何位になるかが毎年騒がれます。こういうランキングとはどう相関してくるのでしょうか。Well-Beingが一般の人たちにとってなじみのある指標と大きくかけ離れてしまうと、理解してもらいづらくなるのではないかと思い、質問させていただきます。
南雲構成員: ありがとうございます。
最初の質問でいうと、僕もアメリカに12年住んでいたので、あれは資本主義のモデルなのです。だから、土地の値段が上がるということに市場メカニズムを使うと。そのためのQOLなのですね。だけれども、そうではないモデルもあるのではないかというのが、ここのインプリケーションのところです。コミュニティーをつくるみたいな話は市場原理ではないのですね。市場原理が助けるというのはあるかもしれないけれども、主目的ではない。だから、誰のためのまちづくりなのかという観点は、そのレジームのデザインによって随分違うなというのが一つ着眼点ですね。
それと、住みたい街ランキングとか、買いたい街ランキングとか、いろいろあるのですけれども、僕は全部データを取ってバックテスティングをやっています。0.4とか、0.5とか、そのくらいの相関はしているのです。だから、パーシャリー、同じことを言っている。だけれども、KPIがどこに寄っているかというミックスによってゆがみが違うという感じです。だから、僕は非常に幅広く取っていて、これがその都市のニーズによって、全体のうちのここを見たいのだというときのセレクションができるようにしています。それと主観がペアになっているというのが違うわけです。
アドバイザー伊藤氏: ありがとうございます。
桃田構成員: 桃田でございます。
LWCIの全体像がしっかり理解できました。ありがとうございます。
感想と、立派な資料を事前にいただいて考えた提案がありまして、スマートシティの対象領域だと、ずっと時間がストップなのですけれども、実際はスマートシティでは実証現場が数多く見られますから、デジタルでやる移動と交通、結局領域は難しいねという話が非常に出てくるのです。社会全体の血液とか血管なので、横を通貫といっても単独ではできない。社会全体を変えなければ非常に難しい。
その上で、先ほどの村上さんのお話のように、ロードマップの上半身、下半身を同期させるのはどうするのという話のときに、もう一つプラットフォームが要るかとは思っています。今だと自動運転レベル4とか、永平寺町もそうですけれども、技術要件や基本的要件の評価とQOLの評価の本当はその真ん中が欲しいのですが、真ん中がなくて、それがLWCIだと思うのです。それにもっと現実的な話、具体的に言うと、まず、市町村の中で今ある交通の現状把握ができていないとか、これは永平寺町も含めてなのですけれども、バス、鉄道、自家用有償旅客運送、介護タクシーとか、スーパーとかドラッグストアの送迎サービスなどあるのだけれども、どうまとめていいのというのが分かり切らなくて、昨年ぐらいから国交省で規制緩和します、どうぞ声を上げてくださいとやっていても、自主的に動かれる自治体は極めて少ないと思います。その状態でいきなり自動運転です、完全レベル4です、3だ、2だ、シェアリングだ、ベンチャーの話が来ると、ごちゃつくというのが正直なところで、せっかく今のLWCIの話がリンクしていない感じなのです。
ですから、プラットフォームと僕が申し上げたのは、単純にビフォー・アフターで人流、物流がどう変わるというのが分かりやすくなるような、まず、現状把握して、どちらかというと手引書みたいな感じなのですね。これがみんなでダウンロードできるものがあって、例えばNTTでもどこでもやっていらっしゃる人流という話のビフォー・アフターが見られるような簡単なデバイスをみんなが、できれば市町村は無料で使える。そうした本当にエビデンス・ベースト・ポリシー・メーキングと言っているものを見せて、それをどう住民に落とし込むかというのは各自治体に任せる。おじいちゃん、おばあちゃんにバス、交通の乗り方教室みたいなところで落とし込むかもしれないし、法的、技術的、それから、Well-Beingをつなぐために。今々ですけれども、そういう交通プラットフォームの共通認識プラットフォームが要る気がすごくします。
南雲構成員: デジタル・ツインがあり、最近だとメタバースがそれに近いですかね。
桃田構成員: はい。シミュレーションができるような、みんなが共通で同じパラメーターで話せるようなものが要るかなと。
南雲構成員: もしくは漫画とかね。
桃田構成員: 落とし込み方は。
南雲構成員: 僕も同じことを考えました。どうしてもサプライ先行になってしまっているのですかね。イノベーション型。
川端構成員: すごく興味深く聞きました。特に指標が分かりにくいと思うのです。幸せの度合いであったりとか、そういったものが、指標が測れていくことが重要だなと思って伺っていました。それと同時に、今日の議論にもあったのですけれども、結局のところ、KPIはある程度設定できるとして、KGIをどう設定するかが大変重要かと思って伺っていました。先ほど委員の中で海外の留学の経験、お住まいの経験がある方で、特にアメリカは資本主義に基づいて、仕事があったり、土地の価格が上がるということが是とされるという、本当にKGIはすごく設定は明確ですね。そういった中でKPIを設定して利用していくというのはすごくやりやすいと思うのですけれども、今、日本が目指す住みやすさとか、Well-Beingのゴール設定が、では、地元の人の住みやすさと例えばした場合に、どこにゴールがあって、地元の人がどんなまちを目指しているのかとか、どんな暮らしやすさを目指しているのかを明確にしなければいけないと思いました。
ヨーロッパはその点、割とそこを住民合意でつくっていく。例えば、基礎自治体単位で、本当に村とかでもそういった投票をしてつくっていたりするので、例えば小さなまちで都市部のところを遊びの道路にするとかという住民合意をどうやって決めるのですかと取材をすると、字が書けていれば、その道に住んでいる人全員が投票しますという、小学生以下の子も投票したりして決めるのです。民主主義がすごく発展しているから、そのゴール設定ができるのだという結論に至ります。そうすると、日本はそれができるのかなという議論もあって、では、ヨーロッパ型かというと、それができない可能性がある。そうすると、日本でゴール設定をどう、KGIをどうつくっていくかによっては、このKPIの使い方は非常に有効に使えるとは思うのですけれども、このKGIのところでは非常に重要なのと、どこを目指すべきかが、我々はもしかしたらここで議論するべきかと思いました。実際にその辺の温度感を委員の方でお持ちの方がいたら、机上に出していただいたら有効かなと思って伺っていました。
もう一点、先ほど桃田さんがおっしゃっていた提案に関しては、デジタル上でもいいと思うのですけれども、移動を5分メッシュぐらいで見ていって、例えばヨーロッパの場合、全ての住民が5分以内に公共交通にアクセスできることをゴール設定にしているまちなどもあります。そういったものとかを、5分メッシュの移動などを見てあげて、そうすると、移動の過疎化なども見えたりするので、移動の過密というデマンドをつくるところが重要だと皆さん気づいていらっしゃると思うのですけれども、同時に、過疎になった場合、そこは公共交通を諦めて、テレマティクスみたいに第1の交通をつくってあげるという設定もできるので、そういったことも技術的な議論として進めていくといいのかなと思いました。全然違う2点なのですけれども、できれば委員の方にご意見を伺えればと。よろしくお願いします。
南雲構成員: 1点だけ返させていただいて、まさにそうで、定量データでというと結局は価値判断がなければいけないというところにたどり着くのですね。なので、政治の世界といったら言葉が強過ぎるのかもしれませんけれども、何を優先にする価値観として考えるべきなのか。さっき環境共生の事例を挙げましたけれども、あれはデータで見ると市民がそう選んでいるのですね。それが空気みたいになっているので、あまり言語になっていないのですけれども、データから気づかせていくというのが一つのアプローチではあるかなと。ただ、時間がかかるだろうなというのはおっしゃるとおりだと思います。
石田座長: 非常に大事なご提案で、かつ期待感も非常に高くて非常にありがたいです。実は国民生活指標とか生活満足度調査というのは、50年間ぐらいずっと経済企画庁の時代からやっていまして、そことの違いは何なのだろうかとプレゼンを聞きながら考えていたのです。これまでは、そういうものの計測のアクションを取ったときに、こういう指標がどうなるかということをオペレーショナルにモデリングしていくかということに主眼が置かれていたような気がするのです。ところが、今日も南雲さんのプレゼンでありましたように、なかなか相関が低くて説得力を持てるというのは極めて難しくて、なかなかそれと結びつかなかったのです。
ところが、最初に宮代さんに報告していただいたRemixみたいな、ああいう本当に細かいデータをビジュアルに明示をして、お互いにどうなりますよとか、簡単なシミュレーションもその中に入れていくみたいなことも十分可能になって、それのモデリングの考え方とか、操作性の考え方とか、合意形成の考え方はすごく変わっていると思うのです。変わらなければならない状況にありますので、そういう観点から、今日のご発表は非常にありがたかったですし、参考になったし、さらにそれを実際のKGIみたいなところに、あるいはガバメントというか、そういう上に実践していくかということを我々の報告でもぜひ主張したいですし、そのためのアイデアも皆様からぜひ伺いたいなと。すごく変わって事例が開けてきたなと思います。
宮代構成員: KGIとはまだ、そこまではいかないとは思うのですけれども、移動、モビリティをやっていて、本当にフックしたいなと思うのは、健康寿命とか健康度との関連で、例えばどんどん人が活発に外出をして、いろいろ活動することによって、健康寿命が延びましたと。今までは平均寿命の世界で見ていましたけれども、健康寿命や健康度合いがどんどん出て、そのうれしさは逆に言うと、自治体から見れば医療・介護のかかりがどんどん減っていくことになりますので、経済的なプラスサイドも見えてくるのですけれども、それとさっきの自分で運転したいというのは、例えば運転寿命みたいなものをつくって、運転寿命がどんどん延びていけるようなまちにするのだみたいなものは一つの在り方だと。
割と健康は見えないのだけれどもフックしやすいなというのがありまして、すごく象徴的なエピソードをいうと、ある中国山地の田舎のほうに行ってみると、92歳のおばあさんとお話をしていて、最近何が楽しみですかと聞いたら、月1回、30代ぐらいの若いお母様方と料理対決をやるらしいのです。地元素材を使って。そのときは前の日から眠れないぐらいわくわくすると言うのですけれども、ある種の朝起きてわくわくしている状態みたいなもの、そういうものが一つのKPIっぽいなと。でも、それが行ってきたゴールが何だろうみたいな、もしかしたらその地区の健康指標みたいなものが一つのゴールっぽいことになるみたいなものがいいのかなというのは、伺いながら思い出して考えました。
日高構成員: 川端委員からのご質問で、実際のまちのKGIでどういうものがあったかだと思うので、皆さん事例をお持ちだと思うのですけれども、我々が石川県の加賀市でやらせていただいたときには、消滅可能性都市というどんどん人口が減っていくと。それはどんどん人が亡くなっていくのもありますし、若い人がどんどん移り住んでしまうと。そこの要因を調べて、Mobility as a Serviceもサービスではあるので、住民の人に交通に乗っている人ではなくて、乗っていない人も含めてどういう課題があるかとしたときに、甲田さんからご発表もあったとおり、働く女性や子育てをしている方々の特に夜の時間とかの送迎、親ごさんの送迎と子供たちの送迎に、200キロ平方メートルぐらいあるまちなので、駅まで行くためにも30分ぐらいかかりますと。そうすると、正社員になれなくて、パートタイムでも残業ができないというところは、結構大きな原因としてあったので、まずはそこから、高齢者向けのデマンド交通もいいのだけれども、そこからやっていけると若い人も移り住んでくれるかもしれないし、人口流出が止まるのではないかと。それは首長の判断でもあるとは思うのですけれども、そのようなKGIに対してのアクションが積み重なっていくと、先ほどの南雲さんのWell-Beingを上げるための施策として、アクションが返ってくるといいなと思うので、さっきの事例はそんな特殊な事例ではないかもしれませんけれども、いろいろな地域からそういうものを集めていくのは有効だなと思いました。
甲田構成員: 多分、KGIを1つに決めるという考え方自体が昭和的な考え方で、KPIは恐らく首長レベルの誰の課題を解決するのかという、例えば先ほどのお話ではないですけれども、子育て世帯の課題を解決するためにはこんなKGIがあるといいねとか、高齢者の課題を解決するためにはこういうKGIがあるといいねという、その課題をきちんと分析するというところは、今、デジタルが使える。昔は多分、アナログ的な交通社会を考えるとなると、マジョリティーに対するサービスを提供するのが公共かと思うのですけれども、デジタルできちんと分析をすれば、物すごく細かくターゲットを定めて、そのターゲットごとのKGIを設定して、それが達成されたことによってWell-Beingが実現できたかというところが、そのまちの住人の暮らしやすさだったり、子育て世帯の流入だったり、健康寿命が延びることだったりにつながってくるので、本当にこれからの時代、国が大きな施策を考えたら、民間がそういう多様なサービスを提供して、そこに対して国がきちんと予算をつけていくとか、自治体の首長の判断でそういった民間サービスを取り入れるとか、そうなっていかないと、オンリーワンモビリティサービス、MaaSというところでは、もう暮らしやすさは達成できないのだろうなと思います。
川端構成員: 自動車業界の目線でいうと、MaaSを満遍なく提供しようと思うと、全くもうからなくなって、関わっている方もご存じだと思うのですけれども、そうすると、そういったターゲティングというか、どの課題からどう解決していくという、要は優先度合いというよりは時間軸でどう見ていくかとか、解決の順番だったりとか、それを解決することで次の課題にどう影響するかを分析していくべきではないかと。
甲田構成員: 橋本町長みたいな方がいらっしゃらないと、スピード感を持って住民ニーズに応えていくのは難しいのではないかと。
川端構成員: あと、先ほどのお話の中でいただいたように、健康寿命は体の健康だけではなくて心身の健康ですね。心の中のやりがいというものが大きなキーワードだと。例えば私は車が好きだから、運転できないと言われたらそこから私の人生は終わったなとかと、今、免許返納と聞いて、既にそう思ってしまったりしているので、そういったところのバランスは、フィジカルなことだけではなくてメンタルの部分も加味されるべきかと。
葛巻構成員: いろいろなKGIやKPIがあるのではないかという話で勇気づけられてお話をするのですけれども、昔のデータで、かつ国レベルのデータなのですけれども、人1人当たりの移動距離と国のGDPが非常にきれいに相関、並んでいるようなグラフを見たことがあって、移動がそこの不満にのってこない。実をいうと、結構移動している人は満足度が高い。不満もない。移動できていない人は、手段がないから移動できない。今はスマホとかいろいろあるので、そういう都市の人たちがどれぐらい移動しているのか。東京のさっきの人たちは、年間当たり何キロぐらい移動していて、地方の人はどれぐらい移動していて、その方に不満とかそういうものもあるのではないかと。単純にそういう数字が出てこないかと私はずっと前から思っていましたけれども、特に最近物流が、eコマースとか物が移動して人が移動しなくなっていきつつある。コロナになってそういう傾向があります。ちょっと不満なところはあると思います。自分はもっと移動したいと。その辺りのデータがもう少し取れるのではないかと。
南雲構成員: データの観点でいうと、いわゆるオープンデータで取れるものは限界があることを含めて、基礎自治体単位で取っていて、村上さんに各省庁に全部当たってもらっているのです。このデータはないのかと。あと、オープンデータで、もう一つ、今回新しいディメンションを加えたのは、サブジェクティブ、アンケート結果をオープン化するというところに踏み切っているのです。あと、残っているのは民間のレベルなのです。民間のデータでオープン化されていないものをみんなで拠出し合えると、もっときめ細かい面白いものが出てくると。
川端構成員: あと、しなければいけない移動としたい移動ですごく幸福度が違うのではないかと。例えば通勤したくないのに移動させられても、1時間かかってもハピネスは上がらないけれども、大好きなコンサートに行くのだったらハピネスは高いよなみたいな、そういうことはきっとありますね。
石田座長: 随分前に筑波大でつくば市の高齢者を対象に、移動と健康度と生活満足度と幸福度の相関を見る結構ちゃんとした調査をやったのです。それで意外だったのは、移動の距離や移動の範囲、移動の頻度はあまり相関がなかったのです。一番相関が高かったのは何かというと、移動の目的の種類の多さ。それは関係があったのです。だから、義務的移動以外の移動をどれだけ自由にできるか、そういうモビリティの提供は大事だと思いました。
それと、当時、老人の健康度、活発度を測定するチームが東京都の老人研究所の老研式という判定の仕方があるのですけれども、そういうちゃんとした尺度でも決まらなくて、本当に重症な人しか検出できなくて、その辺はもっといいものがあればいいなと。どなたかご存じでしたら教えていただくとありがたいと思います。
アドバイザー伊藤氏: どうしても具体的な分かりやすいことにこだわってしまうのですが、東京への一極集中が進み過ぎていて地方への分散が一向に進んでいない日本の現状は、アメリカなどと比べると相当かけ離れているように思います。アメリカは確かに資本主義が基本ですが、かつて大きく発展したシリコンバレーやシアトルも、今では地価が上がり過ぎて住みづらくなっており、その結果として別の街に人が集まるようになり、スタートアップも大企業もそういう新しい街にオフィスを置き始めています。それに対して、コロナで多少の変化が生まれたとはいえ、日本では東京でなければ人も資本も集まりにくいのが実態です。大阪府にある私が生まれ育った町に久しぶりに戻ると昔とほとんど変わっていません。これまで投資がほとんど行われてこなかったということかと思います。
KGIは地域ごとに設定されるべきというのは甲田さんのおっしゃるとおりではありますが、地方分散が全然進まない現状に向き合い、どのようにして地方分散を進め、それぞれの街がしっかりと発展してグローバルに競争力を持つという視点を持たないといけないように思います。現状維持のままでハッピーになりましょうというメッセージでは説得力が生まれないのではないでしょうか。国の権限も中央へ集中し過ぎていると思いますので、権限も分散化させて、例えば大阪はエンタメ、札幌は食品や農産物など、街ごとに色付けしやすいようにしていくべきではないでしょうか。そういう色づけができれば、その分野の人や企業が集まるようになり、投資も行われるように思います。
石田座長: 時間になりましたので、それでは白坂先生、ご発表をお願いしてよろしいですか。
白坂構成員: 慶應義塾大学の白坂と申します。
自己紹介としては、今、まさに私の隣にいらっしゃる齊藤センター長の下でアーキテクチャを考えるということをやっています。もともとアーキテクチャが専門でして、前半部分はアーキテクチャの話をするのですけれども、後半部分では事務局から、「第1回のときに橋本委員から発表のあった境町を分析して、成功事例を活用してもっと日本中でできるようなベースができないか」というので、事例の分析をやりました。なので、どんな感じかは後ほどお話しさせていただきます。
アーキテクチャの話をするときに、”アーキテクチャ”という言葉はどこから来ているかというと、もともとはもちろん建築物としてのアーキテクチャなのです。しかし、今、我々が言っているアーキテクチャは、それをもうちょっと一般化して、いわゆる複数のものから出来上がっているものをシステムと呼びますと。システムというのは、複数のものから出来上がっていて、そこに関係性が存在するからシステムになっているので、その関係性をアーキテクチャと呼ぶということで、システムアーキテクチャのことをアーキテクチャと言っています。なので、システムがITだったらITアーキテクチャになりますし、システムがビジネスだったらビジネスアーキテクチャになる。街だったら街のアーキテクチャになるという原理だと思ってください。
では、システムって何というと、複数の要素から構成されているのですけれども、結局何でそういうことをやらなければいけないかというと、我々はシステム的にアプローチを取らなければいけなくなってきているというのがもともとにありまして、あんまり小さい範囲だけで見ていても、周りの影響を結局は受けてしまうので、思ったとおりにならない。なので、ある範囲を全体を捉えていくことが必要であるというのがシステム思考というものです。全体を捉えるということと関係性を捉えるというこの2つの観点を持つことがシステム思考であるという定義です。ある目的に向かってそれを使うのをシステムアプローチと言うと。これが言葉の定義になります。
ここで実は難しいのが、全体を俯瞰するということです。言葉で言うのは簡単ですけれども、やるのがめちゃめちゃに難しい。では、それが世の中的にはどう言われているか。これはオントロジー論の研究から出てきているのですが、大きく3軸で見ると、大体大きくは外さないと言われています。一つはまさに今日話に出た時間俯瞰というもので、時間を捉えていかなければいけない。あるタイミングだけを切り取ってしまうと駄目で、最初から終わり、特に廃棄までちゃんと考えていくことです。もう一つは空間俯瞰ということで、対象だけを見るのは駄目で、その周りも見ないと、結局周りの影響を受けるので、周りとセットで考えましょう。もう一つ、これはまさに南雲さんのところにつながるのですが、意味俯瞰という言い方をしているのですけれども、何のためにそれをやるのか、何をやるのか、結局それをどう実現するのか、これをセットで考えましょうと。なので、手段だけを言っても駄目だし、何をやるかだけを言っても駄目で、何を目指してやるのかが必要ということで、まさにここが先ほどの南雲さんの発表されたところは目的、Whyを何にするかにつながってくるところだと思っています。
では、アーキテクチャとは何かというと、JISとかいろいろ書いてあるのですが、すごく単純に言うと、何か目的があるときに、それをどうやって実現するか。単純にそれだけです。なので、どう実現するかというものがアーキテクチャであるというイメージを持ってもらえると、細かく言うといろいろあるのですけれども、そのように思ってもらうと分かりやすいです。ですから、目的を実現するための仕組みだとか、メカニズムだという言い方を私はよく言います。本当はその原則をどのようにするとか、どんな性質とか、いろいろなことが出てくるのですが、基本的には仕組み、メカニズムという概念で捉えてもらえれば大丈夫だと。
要するに、何か目的があって、それを実現するメカニズム、そのために必要な手段がある。手段は私は通常四角で書いているので、丸、三角、四角という言い方をするのですけれども、目的が丸であって、それを実現する三角のところ、仕組みやメカニズムがアーキテクチャである。それで、そのための手段が必要。もちろん何か手段を使わないとそれが実現できないので、何らかのものを組み合わせてそれを実現していく。ただ、この手段というのが、どんどん時代によって変わってきている。この手段が変わると、結局実現できる目的が変わっていく。今までできなかったことがどんどんできるようになる。すごく単純に言うと、例えば料理の素材が増えればレパートリーが増えるみたいなものです。ですから、肉という素材を持っていない時代と肉という素材を持った時代では、全然作れる目的が変わってくるという形になります。
ここで議論になるのが、デジタルというものを我々は今、持っている。なので、よくDXという言葉はありますけれども、丸、三角、四角で見ると、デジタルがない時代だってもともと我々は何らかの目的を何らかの手段を使って実現していた。デジタルへのトランスフォーメーションという、あまりいい例ではないのですけれども、例えば紙を電子で置き換えるとか、メールで置き換えるとかというすごく単純なものもある。けれども、DXの本質はそうではなくて、新しいデジタルというものが出てきたので、今までできなかった目的が設定できるようになって、そこを実現できるようになるから目的が全然違うことができるようになった。これがトランスフォーメーションであって、これをデジタルで使っているのがデジタルトランスフォーメーションである。
ただ、難しいのは、今のもともと存在していた右下のようなことであれば、今あるものがあるので、例えばそれを紙からメールに置き換えたら、今のやり方、仕組みを持っているので、この仕組みをメールにしたら何を変えなければいけないだろうということを考えれば済んだものが、新しい目的を設定すると、そもそも何の手段をどう組み合わせたらこれが実現できるのかみたいなことから考えなければいけない。そこはアーキテクチャというものが、新しい目的を実現する仕組みをどうするかを考えるのがすごく難しくなってくる。このためアーキテクチャという概念が重要になります。ここのアーキテクチャを考えるというのも、目的を設定してアーキテクチャを考えるということをDADCでやったりとか、いろいろなところでやっているのです。
では、今、デジタルが出てきたという話なのですが、Society5.0がどういう時代なのかというと、アーキテクチャ側の話からすると、これが内閣府が言っているSociety5.0なのですが、人間中心の、つまり、目的設定として人間中心というものをすることによって、これを新しいサイバーとフィジカルの高度な融合で実現するようにするのだという目的と手段をセットで書いてあるのがこの定義になっています。
実際には、Society4.0の時代でもサイバーもフィジカルもあったわけで、別になかったわけではない。では、何が違ったかというと、4.0時代はその間に人が介在していたと言われていて、フィジカルの情報をサイバーの世界にインプットをするのが人であり、そこで計算される、例えば経路が検索されたときに、その経路を検索されたとおりに運転するのは人である。ですから、サイバーからフィジカルに働きかけるのも人である。それが5.0時代になると、人を介在する必要がなくなる。センシングで自動的に取り込んで計算した結果を自動的に車が移動する。これは人が要らなくなってくる。そうすると、その間でぐるぐる繰り返すことができるようになり、さらにサイバー側にAIがあるので、どんどん学んでいくというので、勝手に進化するというものが一つ。
もう一つあって、もともとサイバーというのはつながっていたわけですね。もともとつながっていた。そこにフィジカルが融合すると何が起きるかというと、まるでフィジカル空間が勝手に連動しているかのように見える。例えば、病院を予約すると予約時間に間に合うように車が迎えに来てくれて、車に乗って病院に向かう途中に事故渋滞が起きると遅れ時間が病院に伝わって、病院の待ちの順番が自動的に変わる。そうすると、後ろの人が先に行けるようになる。そうすると、社会として無駄がなくなっていくみたいなことができる。これは、一見、我々が生きているフィジカル空間が連動して見えるのですけれども、これはサイバーがつながっていたおかげで、サイバー、フィジカルを融合させるとできるようになってくる。このようなモビリティとヘルスケア、病院みたいなものは今だって存在しているわけですけれどもつながっていない。このように全然違う人たちが作り上げたシステムがつながってまるで一つのシステムになることをシステム・オブ・システムズといいます。
これは何が普通のと違うかというのを、INCOSEというところが出しているハンドブックを例に紹介しますと、この図では左側にキヤノンのEOS、右側がHPのプリンターがあります。キヤノンのEOSもシステムです。HPのプリンターもシステムです。では、キヤノンのEOSで写真を撮って、HPのプリンターで印刷するということを考えると、これは何かというと、これはシステムなのですけれども、その中でシステム・オブ・システムズという特殊なシステムの形態なのです。何が違うのかというと、すごく簡単なのは、それがうまくいかなかったときに、誰に文句を言えばいいのかが分からないのです。つまり、キャノンんのEOSとHPのプリンターをつなげて印刷したときに、うまくいきませんでした。この場合、キヤノンが悪いのか、HPが悪いのか、その間をつなぐケーブルが悪いのか、ユーザーはパッと分からないのです。つまりシステム・オブ・システムズでは、全体の品質を保証してくれている人がいないのです。
普通のシステムというのは、誰かがちゃんと責任を持って品質を保証してくれている。カメラはカメラでちゃんと動きます、モビリティはモビリティでちゃんと動きますというのが当たり前です。それが、つながる社会はどうなるかというと、全然違う主体がつくったものをつなげていて、しかも、そこを全体の品質保証をやっている人がいない。このようなシステム・オブ・システムズは最近多くなっています。つながるシステムの間には標準インターフェースというものが規定されていて、インターフェースに合うものは勝手につなぐことができる。そんなものが実はスマートシティもそうなのですが、スマートグリッド、インダストリー4.0などです。これらのシステムは全部そういう特徴を持っていまして、結局、我々はエンド・ツー・エンドでは品質保証されていない仕組みを使う時代に実はなってきている。ですから、これでいろいろなことをやらなければいけないのですけれども、これが駄目だというのではなくて、これを最大限活用して我々は人間中心の新しい価値を生み出そうと。もちろんマイナスなところは何らかの手でうまく埋めていこうというのをやろうとしているイメージです。
イメージでいいますと、さっきの病院を予約して、車が迎えに来て、車で行って、終わったら今度は薬局にその情報が行って、薬局まで取りに行くみたいなことを考えたときに、今までも個別ではもちろんみんなしっかり考えて、病院をなるべくよくしようとか、体験をよくしようとか、ジャーニーという言い方をしますけれども、ユーザーのことを考える。モビリティはモビリティで人のことをさんざん考えてつくっている。ファーマシー、スーパーみたいな物売りでもそれをやっている。けれども、そういう単体のシステムではなく、つながるということは何かというと、結局人というのはこれを横断的に使っているのでそれに合わせてあげることです。例えば、先ほどの例のように、人は病院とモビリティと薬局をばらばらで使うのではなくて連続して利用しているのだから、ここをつなげてあげる。そのような体系にして、価値をつくってあげるということをやってあげると、よりその人たちの人間中心のものができるようになる。
ですから、これはまさに人によって動き方が違うので、その人に合った形で何と何をつなげるかみたいなことをやっていかなければいけないし、いろいろなものがつながる。まさに先ほど石田座長がおっしゃったみたいに、いろいろな目的にこのモビリティは使えるので、いろいろなところにつながるということになってくると、結局、これを実現しようとすると、今までは縦割りでみんな自分たちを最適にやっていたのですが、そうではなくて、お客さんは横に移動するのだから、横で切らなければいけないとなってきたときに、産業の仕組み自体を変えていかなければいけない。
物のつくり方を、今までは例えばモビリティだったら道路という協調領域があって、その上で走る車というもので競争したのだけれども、これからはモビリティを使って、誰にどんなサービスを、どこに連れていってあげようか、何を効率化してあげようかみたいな全然違うところで勝負をするようになってくると、この上の部分の競争領域というところと協調領域、まさにデータビジネスみたいな、これが変わってくるので、これまでと協調と競争を切り替えていかなければいけないというのがまさに課題認識で、それでDADCというところではこの競争領域、協調領域を設計し直すというのをやろうとしている。これがアーキテクチャという議論でされていて、まさに新しいデジタルのつながる時代のまちというのは、このように前とはちょっと違う切り口で全体を考えていかなくてはいけなくなっているという話なのです。
今までがアーキテクチャの一般論です。ここから無理やりつくった事例の分析になります。本当に勝手にしています。ただ、すごくうまく境町では実装が進んでいて、あれを少しでもほかでできるようにするには、何がうまくいっている原因なのかというのを勝手に想像しながら、そのときに、アーキテクチャ的な観点を入れながら分析しています。公開情報と委員会の情報のみなので、不正確なところがあると思います。ただ、他の地域で実証の参考にできるのではないかというイメージを持っております。これは一事例の分析だけなので、本当はいろいろな人の専門的な、まさにここにいらっしゃる方々の意見をちゃんとそこに反映していくと、もっといろいろな知見が実は入っていけるかなと思っているのと、今回はまだ実証レベルなので、実装に行ったときに、さっきのSociety5.0とかこれから起きる社会みたいなことを考えたときにどう発展していけそうかというところまで考えています。
一番左側にあるのが、四角はありませんが、丸、三角です。まず、これがすごくうまくやっているのは、「早く小さく実施する」という、宮代さんが初回に海外でこうやって実際にやっているのだよと教えてくださった。まさにこれをやっているところが大きいかなと思っています。
その中で一つポイントでいいなと思ったのは、実は「ユースケースの選定」がうまい。さっきの南雲さんの3階層ぐらいに分かれていたものの一番下から押さえている。つまり、マイナスの欲求、潜在欲求に近い欲求というのは、絶対に満たさなければいけないとみんなが思っているので、やったらプラスになるよりもこのマイナスを解消しなければいけない誰もが同意する目的設定をやっているように感じていまして、説明でもありましたけれども、高齢者の方々が免許を返納するとその地域を離れなければいけない、これを何とかするといったら誰も反対できないような、すごく重要な課題設定をうまく最初にやって、それをしかも中心部の主要拠点を循環するという、小さい範囲なのだけれども、すごく重要なユースケースを選べている。
次にコンテクスト分析を説明します。この分析手法は、アーキテクチャで対象システムと外部の何が関係しているかということを分析した図を描いているものです。「早く小さく実施する」ことと「ユースケースの選定」がうまいという2つのポイントがどう影響するかということをこの分析手法を使って説明します。今回の周りにいる人たちで反対派、賛成派はいると思うのですけれども、うまいユースケース選定をやってうまい事例を選んでいるので、反対しようがないというか、反対がすごくしづらいし、賛成しやすい。しかも、これがうまくいけばいくほど賛成の割合が絶対的に増えてくるものが選ばれているので、そこからスタートしているのがうまい。さらに、保険を入れることによってまさにネガティブの必ず出てくるところを押さえるというところもセットでやっていて、反対派にはこういうものを進めていくのはすごくきつくなるので、そこをうまく押さえるのと、賛成を増やすのをうまく仕組みとして入れているなと思います。
さらに、価値、お金のほうは収入は今、補助金とふるさと納税みたいな形でうまくバランスをするというか、うまくそれで運営をしているわけですけれども、ユーザーからお金を取っているかどうか分からなかったので、価値循環は今、点線で描いていますが、今は実証なのでこういう形になっています。これを第1ステップとしたときに、第2ステップで何をやったかというと、「ユーザーの増加」、つまり、ユースケースを増やしているのですね。ですから、これもうまくて、絶対にみんなが合意するところからスタートして、何かいけそうじゃんと思ってくると、これにも使える、あれにも使えるというすごくユーザーを増やしてユースケースを増やすという、これがどんどん進んでいく。これは将来的に絶対的に必要になってくるもので、ユーザーが増えれば増えるほど、もちろんこれも賛成、反対のところの影響が明らかに出てくるので、ユーザーを増やして、賛成を増やして、反対を減らす、これもうまくやっている。
さらに、それが増えていくと、今はお金はもらっていないのかもしれないですけれども、将来的な利用者収入が増加するイメージがすごく湧くので、これでお金を払って利用してくれる人も増える。このユースケースの増加のやり方もすごいなと思ったのですけれども、東京経路というすごく主要なものもそうなのですが、世界大会レベルの施設みたいな話もありましたが、確かにあれがあったらそこに移動する人たち、来た人たちが移動するみたいなものでも使うだろうなと想像がつきますし、そういった面でうまくできるなと思います。
規制緩和の話は、これはどちらかというと運営費の削減の方向につながっていく。結局、この手のものの最後のキーになるのは、皆さんご存じのとおり、これは地域でやるととにかくお金がバランスしないので、最後はここが崩れてうまくいかなくなるのを、いかに仲間を増やしていきながら収入を増やす方向に行くのかと、いかに支出を減らす方向に持っていくかというのは常に考えていかなければいけない。ここがうまく連動していっているというところが、うまくいっているなと。ですから、選び方と広げ方のすごく参考になるなと思います。
この先は勝手に私が考えたことで、それをさらに実装に進めていくときに、まさに今回、共助というものがキーワードになっているのですけれども、共助とデジタルというものがすごく使えるのではないかと今回分析をしながら思いました。何かというと、まず、ユーザーを増やす、目的を増やすというところで考えると、共助というものが、まずユーザーを増やす方向に一つ使える。これは何かというと、先ほどの免許返納の話があるのですけれども、選択肢として免許返納は結局みんなしたくないところがすごく多いです。免許を返納する前でもちょっと使ってみようかという、このまちのモビリティをみんなでちゃんと使ってあげようみたいな、自分もユーザーになってあげようみたいな、これはもう完全に共助なのですね。ですから、必要があるからお金を払って使うというよりは、わたしたちのまちのモビリティみたいな感じにしてあげると、結局これを使ってあげようなっていきます。さらに、それが進んでいくと、もしかするともう免許を返納しても自分が使いたいように使えるだろうと。これは利用のユースケースが増えていないといけないですが、ユースケースが増えていると、結局これだけで大丈夫じゃんとなれば返納してくれて、これを使うことが当たり前になる。
では、使うほかのユースケースを増やすというのは、先ほどの例で、アーキテクチャの説明のときにモビリティとヘルスケアの説明をしましたが、ああいった形で結局はいろいろなものとの連接というものがデジタル連携できるようになってきたので、まさにSociety5.0で目指すようなデジタルの連動というものをちゃんとつくってあげると、ほかのところで使えるみたいなことがどんどんできるようになる。ですから、それをやっていく。共助とデジタルで目的を増やすことによってユーザーが増え、ポジティブが増え、ネガティブが減り、もちろんそれが下に行って、価値循環でユーザーから運営者側にお金が入るという仕組みになるので、そうすると、価値バランスのところで利用料が増えていく、収入が増加していくというところにつながっていくので、これは一つ絶対的にやっていくところでいいだろうと。
もう一つは、この仕組みのところ、アーキテクチャのところで、ここは今度は減らしていくみたいなことができればいいかなというところもあるのですけれども、例えばシェアはこの一つだと思うのですが、シェアを活用してインフラの構築費用が減る、あるいは運営をシェアすることによって運営費用が減るみたいな形で、ここをうまくシェアを、シェアを使うということはデジタルを使うのですけれども、デジタルでインフラ連携をさせるとか、デジタルを使って横串をつなげていくことによって、共助をすることによって、この支出というところを支出減にしていく。
結局、最後は価値バランスをいかに持っていくかというところを私はずっと考えていったわけですけれども、デジタルと共助で、まず、収入増と支出減がいけるだろうと。もう一つは、実は今まで出てきていないのですが、競合がいる場合が多くて、地域にもともとあるモビリティといいますか、移動を担っていたバス業者だったりとか、タクシーの業者だったりとか、そういう人たちが生き残れなくなってしまうと、これもまた問題になるので、その人たちをどうするか。この上では競合と書いているのですが、競合を競合ではなくする。つまり、これも共助なのですけれども、結局競合会社を運営母体としてあげると彼らの雇用を守ることができるので、実装のときは自治体主導でもいいのですけれども、それをどんどん地元のモビリティ、移動を支える会社みたいな形で一緒につくっていこうよということで、彼らにどんどん入ってきてもらって、雇用の継続性を確保することによって競合を競合ではなくしていくみたいなことをやっていくと、そこの運営のところもできていくだろうと。
最後は、ここはジャストアイデアに近いのですけれども、結局利用料だけだと回らない気がしていて、いかに利用料ではないお金を持ってくるかというところで、もちろんふるさと納税みたいなものもあるのですけれども、全然違うのが、ここはいろいろな例がありそうで、皆さん知見を知りたいなと思ったところでもあるのですが、例えば今回の例でいうと、境町さんではさっきの世界レベルの場所、運動施設みたいなものを持っていて、そこを本当にPFI的にお金をかけずに運営ができている。あれの運営母体とこれの運営母体が一緒だったら、向こうのもうけとこっちのもうけを相殺することができる。
似たようなことを民間でやっている人たちが地方でいて、ヤマガタデザインという会社が庄内でやっているのは、彼らは学童の子供たちが遊べる施設をつくっているのですけれども、そこの施設の運営費を、売電会社ですね。電気の仲介会社をつくって、同じ会社にして、そこの利益で補っているのです。それはどうなっているかというと、要は、電気を直接東北電力と契約するのではなくて、その会社経由とするだけです。そのとき、地域の人たちは何と言っているかというと、「あそこは地域のためにいいことをやっているから、ここの電気を入れてあげて」という紹介をしている。ですから、営業を一切していないのですけれども、どんどん地域でその電力会社と契約する人が増えて、実はそこの利益が学童の運営の半分のお金を担っています。ですから、たった半分の料金でいい。そう考えると、各地域にはインフラと呼ばれている電気、ガスみたいなものがあるので、仲介会社を地域ごとにつくって、そこが仲介したときに入る利益を地域のインフラ的な運営に回せれば、利益の底上げには必ずなる。ですから、そういった知恵みたいなものは地方でいろいろな人たちがやっていると思うので、そこを集めてあげると、利用料だけではないもので、いかに地域で支えるインフラ、地域で支えるビジネスと言っていいのか分からないですけれども、本当にそういった共助ビジネスみたいなところをうまくつくっていけると、こういったものも将来に向けてやっていけるのではないかと考えました。
ということで、それが定常的売上げになるというイメージで、そこがなってくると、この利用料だけでカバーしようというすごく難しい地域で起きている問題が、少し解決しやすい方向に行くかなということで、最後のまとめはまさに説明したような、アーキテクチャとはどんなもので、境町がどのようにうまくやっているかというのと、実装に向けてどんなことをやっていったらよさそうかという話をさせていただきました。
以上です。
石田座長: ありがとうございました。
橋本町長、ご感想等、何かありますか。
橋本構成員: ありがとうございます。
本当に白坂先生、ありがとうございます。
今日は先ほどの南雲さんのものも、白坂先生のも、自治体としては、しかも小さな自治体としては、非常にすばらしい指標だと思います。今回のこういう話を例えば、境町にはいつもいろいろな視察が来ると言っているのですけれども、首長が全国で1,741いるわけですが、前例踏襲の方が多いですから、そこが実は自治体は課題があるのかなと僕は思っています。
僕は2月に選挙だったのですけれども、自分のいつもの選挙のときもマーケティングでデータを取りますので、ついでに自動運転も取ってみたのです。自動運転の賛否を取ってみたら、50対50でしたね。意外に反対が多い。でも、これは実は分析していくと、分からないからというのが多いのです。要は、最初に5年間で5億円というお金ばかりが出てしまうと、年間1億なのだけれども、5億円投資をして何のものか分からない、そういう人たちがいっぱいいたので、実際に恩恵を受けていた人たちはいいと。恩恵を受けていない田舎の地方部の方たちが何だか分からなかったので反対だというところで、逆にそれを打ち消すために、僕は打ち消す資料をいつもつくるのですけれども、どれだけ効果があって、今、どれだけまちに費用対効果が出ているかとか、補助金はどれだけ取れたというチラシを新たにつくって全部まいたのです。そうしたら、随分自動運転に対する反対がぐっと下がったのです。ですから、知らないから反対するということが多かったので、非常にしっかりと説明していくと、住民の皆さんも自分たちの利益になるのでいいのかなと。
先ほどのお金が回るところのアイデアは、すごく先生、ありがたくて、実際に僕らはいつも株式会社をつくるのです。例えばソーラーの株式会社も2メガやっていて、株式会社をつくって、まずは公共施設の屋根の上に2メガ全部貼ったのです。それが大体7年前ぐらいです。今は2000万ぐらい毎年町へ寄附しているのですけれども、僕が社長になっていますが、そういう株式会社もありますし、まちづくり公社という公社をつくったのですけれども、普通、第三セクターをつくって失敗するのですね。うちの場合は観光協会にいろいろな道の駅の運営とかを任せていたら、売上げが上がり、まちづくり公社をつくったのです。3人で7年前に始めた会社が今は147人ぐらいいて、売上げは33億ぐらい出ているのです。ですから、2万4000いる自治体で70億ぐらいの予算規模の自治体ですから、そこでそれだけ売上げを上げる会社になっている会社が2つある。
今、地域電力の会社もいろいろありますね。みんな回る仕組みが難しくて、ぜひ参考にさせていただいて、早い段階で今の補助金やふるさと納税依存プラス、こういった地域で認知されていく中で、その中の利益をこの会社に入れていくと。ですから、新会社をつくったほうがいいのかなと思いましたけれども、そういうことを早い段階でやっていければと思いました。
非常にお二方の分析、さらにはいろいろなお金の回し方、非常に参考になりましたので、ありがたいと思います。本当にありがとうございます。
石田座長: 桃田さん、どうぞ。
桃田構成員: ありがとうございました。
システム・オブ・システムズの観点、モビリティの話と似ているのかなと感じました。一つは、自動運転でいうところのサービスカー、公共交通とオーナーカー、乗用車で、サービスカーは目的設定しやすいというのは当たり前なのですね。オーナーカー、共助の話をしていただきましたけれども、それ以上に、そもそも先生がおっしゃるように目的が増えている。ライフスタイルの変化が特にコロナ禍はすごく多いので、アーキテクチャといってもなかなか難しいなと。目的自体の設定が難しい面はあると思っています。特にこの共助という話でモビリティをやると、基本的にオーナーカー前提の話はシェアリングなどで多いので、複雑なのか、それとも社会でコンセンサスが取れれば動くのかなと。
もうひとつは、モビリティの産業構造みたいなお話がありました。どうしてもこの産業界で一番大きいのは、よく言っている製販分離、今日は自工会の方は皆さんいらっしゃいますけれども、自動車は製造業、メーカーは製造業と卸売までであって、普通の民間の地域の方々が自動車会社と思っているのは、全て地場の販売会社であると。このMaaSの議論だと、システムの話のときに、事実上、販売店の方が入ってこないのですね。一部神奈川とかいろいろなところで独自にインパクトの強い事業を地方でやっている人たちはいるのですけれども、こういう議論をするときに、もっと自動車販売店を巻き込んで、トヨタとかいろいろな個別の戦略はあるのですけれども、もっとそれをつくろうと思うと、余計に販売店同士の協調領域と競争領域の区分けがまた難しくなります。システム・オブ・システムズもいろいろな縛りが、実際に落とし込もうとすると、現場をさんざん見てきている人間としては、本当に難しいなと。だけれども、やらなければいけないなという感想を持ちました。ありがとうございます。
白坂構成員: ありがとうございます。
1点目は、おっしゃるとおりだと思います。ですから、基本的にはアーキテクチャで目的という設定をするとある固定化されたもの、がちがちのものをトップダウンでつくるようなイメージにどうしてもなってしまうので、そうではなくて、今回の場合はいろいろな人たちが参入してつなぎやすいという目的を設定して、いろいろなものがどんどん出てくるようなつくり方だと思っています。そうでないと、おっしゃるとおりで、目的も増えますし、ステークホルダーも増えますし、そこの辺りの難しさがあるので、アーキテクチャをがちがちタイプではない、いろいろなものが生まれ出るタイプにしないといけないと私は思っているのです。おっしゃるとおりだと思います。
2点目は、そのとおりだと思うのですが、ただ、私はあまり分からないので、その辺りはもうここには専門家の方とか関係している方々がたくさんいらっしゃると思うので、実際にやるとなると、そういう方々も含めながら議論してやっていく形が必要なのだと思います。ありがとうございます。
石田座長: 目的設定というのは、アポロなどは非常に明確ですね。それから随分世の中が変わっていますけれども、目的そのものが訳が分からないというようになっていますね。そういうときに、南雲さんのWell-Beingの向上、共感できる目的で共有されやすいと思うのですけれども、そういうものを据えたときに、白坂先生のシステム・オブ・システムズではどんな特徴がありますか。
白坂構成員: ありがとうございます。
まさにそれはすごくいいやり方だと思っていまして、実は南雲さんともずっと話しているものなのですけれども、南雲さんの指標を使って、まちごとにどういったまちにしたいかが違ってくると思うのです。ですから、どの指標をどうしたいみたいなセットが目的になると思います。ただ、それも抽象度が高いので、それに向かってこれをつくりますというのをやるのは一つのアプローチですし、これに向かって人々がいろいろなことができやすくしますというのも一つだと思います。
ですから、目的設定として、私がスマートシティでやるときは、そっち側にするのですけれども、結局、多様な人たちが多様なアイデアを持ち寄って、いろいろなサービスが雨後のタケノコのように出てきて初めていろいろな人を取り残さない形でいろいろな生活ができるようになる。まさに選択肢が増え、バラエティーが増えるみたいなことが必要だと思っていまして、そういう仕組みを設計することができるのです。ですから、そっち側のつくり方なのだろうとは思っています。ただ、その中で施策としてこれにつながるキーとなるものをトップダウン的につくるというのもできるので、それとのセットみたいな感じでやるのかなとは思っています。
南雲さんと話をしているのは、まさにこの南雲さんの指標を使って、我々がワークショップをやって、いろいろな人たちがそれに向かってどんなことができそうかを考えるということを、みんながいろいろやっていくみたいなことを、今、一緒にやろうとしているのですけれども、多様なアイデアが市民レベルでも出ますし、自治体レベルでも出る。それがたくさん出てくるような仕組みにしていきたいなと。
石田座長: なるほど。その人たち自体もよくするものを持っているでしょうと。
白坂構成員: それに近いです。
石田座長: そうしたほうが、これからスマートになっていくということと、自治体の境目はどんどん溶けていっている気がするのです。
白坂構成員: おっしゃるとおりです。
石田座長: そっちのほうへの対応だと理解していいですか。
白坂構成員: これからはそっちのほうにしないといけないのだと思います。
川端構成員: まず、白坂先生の発表の真ん中に当たるところだと思うのですけれども、あらゆる地域で将来横展開ができるかというところかと思います。お伺いしている中で、ユースケースの選び方とこの横展開できるできないがすごく影響すると思うのですが、このユースケースの選び方が難しいと思って聞いていたのですけれども、まさに先ほどおっしゃった後者のほうを選ぶことでユースケースをたくさん提案できる形になって、それが実装しやすく、しかも、大変だったらやめてもいいやみたいな参入障壁の低い形でユースケースを選んでトライアルできる設計が最もいいのではないかと思って伺ったのです。
白坂構成員: そうですね。それとさっきの南雲さんの指標の中で、このまちはどこを目指すのかというのに対して、委員がさっきおっしゃった、分析してこれを目指すのにこんなじゃん、ここがめちゃめちゃひどいことになっているねみたいなことがあるのだったら、それを選んであげるのが、みんながそれはやらないといけないねという納得感がすごく高いのだと思うのです。境町がすごく話を聞いてうまいなと思ったのは、高齢者の方が出ていかなければいけなくなっているというこんなペインはないので、こんな大きなペインは、さすがにもうまちとして何とかしなければというときに、すごくいいターゲットを選んでいるなと思っています。
川端構成員: その部分が本当に明確になったなと思って伺っていました。何が足りていないかというのは、結局のところ、ゴールが足りていないということかと思っていて、ゴールの設計とか、目的の設計が非常に難しいことも分かりました。
石田座長: どうぞ。
日高構成員: 白坂先生、ありがとうございました。
いわゆるコロナ前にMaaSが出てきて、自動運転が出てきてということと、現状でいうと乖離があるので、逆に言うと、今だからこそアーキテクチャの活用性は見直しになってきているのかなと思って、なぜかというと、今までと違うやり方をしなければいけないという補強するいい話もあれば、今回デジタル交通社会の交通の話をするので、自動車産業についてもあると思いますが、交通でいうと人口が減り、コロナでインバウンドでもうけていたものを地域コストに回すことが成り立たず、鉄道もマイナスの収支が発表されますし、バスも廃線申請が出ている。そうすると、交通を産業として発展させてきた部分を、そのアーキテクチャ自体を交通産業として見直さなければいけない時期に来ていて、国交省の中でも地域交通のリデザインの検討会と、バスの上下分離とかもろもろと自動車と。交通はバスや鉄道だけではなくて、カーシェアとか、自家用車を提供するという話も含めてモビリティ、移動ができることをどう担保するかというのは、特に日本の中では緊急に議論しなければいけないかと思います。ここの座組みの中なのか、また深い話になるので別なのか分かりませんが、そこをやっていきながらWell-Beingとつなげていくと、非常に意義深いタイミングかと思いますので、その観点も入れていけるとよいのではないかと思います。
白坂構成員: ありがとうございます。
大切なことで、実は今日はあまり明確にないところがありまして、それはアーキテクチャを設計するときに、設計のための前提条件みたいなものも実は置いていまして、これは結構無意識的に置いている場合が多いのですけれども、まさにご指摘いただいたのは、そこの前提が実は変わってしまったと。コロナで例えばインバウンドがたくさん来るのが当たり前だと思っていたのが、急にがくっと来なくなってきたという、その前提をちゃんと明確にして、その影響を分析、設計し直すというのは、本当はやらなければいけないことなのですけれども、今日は確かにそこは入れていなったですが、すごく重要なところで、ふだんはすごく重要視して言っているところではあるのですが、今日は入れていなかったです。
須田構成員: 東京大学の須田ですけれども、今日はお二人の非常に面白いお話をお伺いして、ありがとうございました。
私は技術、特にハードにも関わっていますので、そういう観点から一言話すと、技術のよしあしによって、モビリティの質やサービスの質は影響があるのだろうなと思っていて、ただ、それを技術だけに限って議論するのではなくて、まさに今回のデジタルモビリティということで、デジタルでカバーをしていく。そういうストーリーをつくっていくことが必要かなと思ったところです。
さらに、技術の中で、どちらかというと、今、ここにいるメンバーだと関係するのは交通事業者とか、あるいは製造ですね。自動車産業でも、モビリティ全体ですと、例えば整備工場だとか、ガソリンスタンドとか、EVだと充電スタンドですね。そういうところも含めた議論をしていかなければいけないのかなと思った次第です。
白坂構成員: 本当にご指摘のとおりで、今日は本当はコンテクストというのと、あとは時間軸でそこの整備とか、本当は全部入れなければいけないところを全然議論していないのですが、おっしゃるとおりで、そこも本来はちゃんとセットで考えていかないと、抜け漏れるとがら空きになってしまうところだと思います。ありがとうございます。
山本構成員: ITS Japanの山本でございます。
1つ前のスライドに戻していただきたいのですけれども、ユースケースというのが、我々、実は1年ちょっと前までトヨタ自動車さんにお世話になっていたのですが、事業でやる場合、ユースケースを意識するのです。これはなぜかというと、モビリティのサービスだからです。サービスというのは何ですかといったら、お客様にいい価値を与えるということですかと。その目的は何ですかと。1つ前の南雲さんのページですと37ページなのですが、健康とかいろいろな目的のところにこういうユースケースがあり、そのために交通のモビリティのサービスが問われると。このユースケースをいかに選ぶかというのは、川端さんが非常に難しいとおっしゃいましたけれども、それが伊藤さんのおっしゃる、東京の一極集中、地方を助ける、子育てをする、こういう大きな方針の下に、健康、こういうところに焦点を当てて、ユースケースはここでこの地方はこうだというような形の設計をしていくと、第1回、第2回、第3回、このようなところで、官民ITS構想・ロードマップというのか、デジタル交通戦略というのか、戦略という限りはどこにリソースをやってとプロセスをつくっていくものですから、そんな感じのことなのではないかと。自分の頭を整理してみました。
白坂構成員: おっしゃるとおりだと思います。今日、私はある一定の範囲だけをしゃべったわけですけれども、これまでのお話の中から全体をうまくつなげていくと見えてくるところがあるので、そこからどこに、最終的にはまさにおっしゃるとおり戦略なので、どこに手を打っていくのかを決めていくというか、重点を置いていくのかを決めていくことになるのだと思うのですが、それは今日はまだ結論は出ないと思いますが、そういった議論をしなければいけないと思います。
齊藤構成員: スマートシティというのは、私が日立のときに最初にいろいろ始めて、結局、結論は、それぞれの自治体に合ったようなまちを選んで、そこに向けて住民を活性化していく。それがインフラにもつながっていく。そういうまちづくりだと思って、どちらかというと先ほどおっしゃったQOLのところがメインでしたけれども、Well-Beingではなくて、そこで始めたのですね。しばらくたつうちに、今のGAFAの話ではないけれども、SNS、フェイスブックのような話の中で、人間の中で孤立する人たちがいて、その人たちも救わなければいけないという話が出て、最近は人間中心でという話をしていろいろ考えているので、今日のお話は非常にいいお話だと思います。
ただ、私はそれをEBPM的な政策に反映していくという意味では、どのようにデータを集めるのかなというのをずっと考えていて、こういうものを併せて設計していかないと、結局それぞれのまちの橋本さんのようないい首長がいて、そこでやっていくにもファクトをつかまえないといけないのかなと。それをどうつかまえるのかが一つの課題かと感じたというのが最初の話です。
後半の白坂先生の話というのは、私も一緒にやっているので、システム・オブ・システムズをやらせていただいて、私もよく分かっていますけれども、先ほどあったように、システムというのはレイヤー構造で、ベースにあるものからだんだん積み上がってくるのですね。最終的にはユーザーに対してどういうサービスを提供するのかというのが、それぞれのサービサーの人たちが出てくる。恐らくそこに自治体の人たちも出てくるので、足元の構造自体は共通のレイヤーが足元には出てくるのです。
そういうものを考えていかなければいけないという話が私の頭にあって、何で必要かというと、結局いろいろな自治体やいろいろな事業者が個別につくり始めると、結果としてはいろいろな独自路線でつくってしまうと横ではつながらないし、ばらばらになってしまう。そうすると、そういうものをレイヤーの例えば今、トランスポーテーションの話でいくと、本当はグリーンの話があると、EVの話とか、水素のさっきのステーションのような話が出てくるのですね。そういうものを併せてどうしていくのかがないと、結果的には個別最適になっていって、最終的にうまく出来上がらない。そんなことをイメージしながら、何となくまずはユーザーのニーズを聞いていって、さっきのユースケースの縦の軸をきちんと捉えながら、縦の軸を考えていわゆるレイヤー構造を想定して、それぞれを切っていくみたいな、そんな話が必要だなと捉えながら聞かせてもらいました。
村瀬構成員: 本当にすばらしいお話をどうもありがとうございました。
うちの会社もWell-Beingというのを言い出して、うちはメーカーなので、顔認証で血流を測って、その人の個人の幸福度を測るみたいなことをやってまずが、血流とかを測って、なかなか難しくて、こういうちゃんと統計学的な手法できっちりとした論理的にいこうというのは、すばらしいなと。
今日のお話を聞いていて、この37ページですか、先ほどから言っている絵の中で、それぞれの市や町、自治体でそれぞれの要望があって、さっき言った移動の手段の一番生理的な欲求を満たしていないところもあるし、自己超越を欲求されているところもあるので、その場所にあった、それぞれを設計していくことになるのだろうなというのは分かったのですけれども、さて、これはロードマップに落とし込むと言われたときに、どうやってロードマップに書くのでしょうか。今日、白坂先生のお話を聞いてよかったと思ったのは、やり方だけを決めると。先ほどありましたように、インフラ的なシステムの共通のところをどうやってどれぐらいでつくっていくかとか、そういうことをやって、橋本委員みたいな立派な方が出てきて、そのツールを使いながら、各地方というか地域、エリアでどんどん新しいものができていくという、そういうものがロードマップなのかなと勝手に思っておりました。このままだとどこへ行くのだろうかと少し不安に思っていたましたが納得感がありました。今日は大変ありがとうございました。
アドバイザー伊藤氏: 1個だけシステム・オブ・システムズに関する事例をご紹介したいと思います。MaaSというとフィンランドばかり見ていたのですが、石田先生に誘われてITFという国際機関の取り組みに参加したところ、デンマークがかなり先進的なことに取り組んでいることを知りました。主要な5つの地域交通事業者が連携して会社を設立し、オンデマンド交通の共通プラットフォームをつくって、550以上の地域交通事業者がそのシステムを使ってサービス提供しているようです。この仕組みの何がすごいかといいますと、一般のオンデマンド交通だけではなくて、病院送迎、学校送迎、介護送迎などの交通もすべてこのシステムでカバーしていることです。交通事業者が病院送迎をすると、そのコストは医療費から補填されますが、その補填の精算もこのシステム上でできるようなのです。
加えて、地方だとどうしても病床が足りなくなりますが、そのために病床を増やすのは大変なので、そういう人たちが都会の病院で診療を受けられるように大きなバスを手配して何人かをまとめて輸送するといったこともこのシステム上で動かしています。こういう仕組みこそ白坂さん、齊藤さんがおっしゃっていたシステム・オブ・システムズの共通化の事例ではないかと思い、ご参考までに共有されていただきます。
石田座長: ありがとうございます。
最後に簡単にまとめようと思います。今日、モビリティのシステム構築をどうしていくか、アーキテクチャをどうしていくかということで、実際に実行するときのツールという言い方をすると失礼な言い方に当たるかも分かりませんけれども、非常に重要なコンポーネントだと思います。それについて、皆さんある種の共通認識が形成されたというのも非常に大きかったなと。
デジタルは、齊藤さんがおっしゃいましたけれども、どう政策に関与していくか、実装していくかというのはまさに問われていて、システムアナリシスは、かつて社会資本とか、総合計画とか、失敗していますので、やり方そのものを目的にする、目的の向上を目的にするという非常に柔軟な新鮮なアイデアをいただきまして、非常によかったなと。そういった形での新しい時代のデジタルを活用した、あるいはグリーンをベースにしたアプローチ、システムアナリシス、あまりまだ明確ではないですけれども、そういうものがぼんやり私自身も見えてきたような気がします。ありがとうございました。
お二人のプレゼンを終わらせていただいて、もう一つ大事なものがございまして、この研究会からレポートを出すということで、デジタル交通社会推進戦略の骨子案というものがございますので、それについてもぜひご意見を賜りたいと思っております。
この骨子について、簡単にお願いします。
事務局: 簡単にご紹介させていただきます。
これまでの2回の議論と今回いただいたお話、資料などを含めてまとめています。
まず、最初に「はじめに」のところですけれども、先ほど齊藤センター長からもありましたし、もともと村上からも申し上げていますが、人間起点で物事を考えていこうということを基本にしつつ、いろいろなものがちゃんと同期して動いていくような、そういった形の方向性にしたい。今までのサプライサイド、技術サイドではなく、デマンドサイドから考えていきたいという最初のこの研究会の課題設定を述べつつ、今まで2回にわたってご紹介をいただいた事例をまとめていくというところ、最初の具体的にこんな話が進んでいるよ、世の中がこうなっているよという話を最初にしていくというように考えております。
その上で、水平展開を念頭に置いた具体的な取組というところで、今日も大分議論いただきましたけれども、どういった形で工夫がされているのか、横展開するときにどういう学びがあるのかというところを少し抽出できればと。
その上で、Ⅲのところですけれども、これからどうしていくのか、ゴール設定を何にするか、戦略というからには何をフォローするかという議論が今日もありましたけれども、今日の議論を踏まえていくと、いろいろなものができるようにベースをつくっていくということでもありますし、ユースケースから見ていってインフラの交通部分をつくるということも同じ話だと思うのですけれども、そういったことをやっていく。そういうことをしようと思うと、Well-Beingみたいなことを念頭に置きながら、何を自分たちがゴールにするかということを決めるための仕組み、ゴールをちゃんと決めなければいけないということだと思っていますので、そういったところはこのⅢに書かれていると。先週、これをドラフトしたときと今日の議論と大分違いますので、私なりの理解で、今日の話を踏まえると、そういうことが今日のご議論で、ありがたいと考えています。
その上で、Ⅳのところは、今、政府でいろいろなところで取組がされています。デジタル田園都市国家構想とか、国交省でやられている取組、経産省でやられている取組、いろいろありますので、それぞれがどのレイヤーで何の議論をしているのかは整理をしたいと思っています。
そうしたところを全体として見た上で、具体的に何をするかを最後は書ければいいなと思っているのですけれども、それよりも、どのように我々は考えていくのかというメタな話をここで決めるということでも、冒頭に村上から申し上げたとおり、上半身と下半身をつなげていく最初の一歩はそこだと思っていまして、そこをゴールにしたらいいのかなと思います。
そのような構成で考えておりますので、いろいろなご意見や、この要素は入れてほしいとかということをお寄せいただけると大変ありがたいということです。
石田座長: どうぞ。
葛巻構成員: 白坂先生への質問にもなるのですけれども、別の国のデータについていろいろなものを分析して、今までフィンランドのデータなど、いろいろあるのですけれども、小さなものですね。あまりMaaSとかも発達していなかったところをつなげていってということに成功している例はあるのかなと。日本では結構いろいろなことができてしまっていて、オンゴーイングでいろいろな企業がかなり入ってきていて、そこを接続で協調領域で横連携していく、そのときの政府の役割がどうなるのかが正直まだ理解できていなくて、1社だけをサポートしてしまうと競合他社を駄目にしてしまうことになるので、多くの場合は2つぐらいの競争でとか、そういう話になってくると、何をやっているのか分からなくなるということも含めて、時間軸を俯瞰で見なければいけないというのが、時間軸の中でどのように接続を実現させていくかというのは、何かアイデアがあるのかお聞かせください。
白坂構成員: ありがとうございます。
私が具体的にこうすればいいというアイデアは残念ながらあるわけではないのですけれども、まさにそここそ皆さんの知見でつくるしかないと思っています。どうするのが本当にいいのか。それは仮説になるので、その仮説をどう検証していくかになるのだと思うのですけれども、本当はこのようにしたいというものを皆さんでつくった上で、そこに向かっていくときに、では、どこからというのが、先ほどの選ぶところだと正直思っています。ユースケース選びとかというものも、結局、遠い将来の目指すところをやろうと思うと、もっとたくさんのいろいろな人たちがいて、いろいろなものがつながってという先ほどのデンマークの例みたいな感じのことができたらできると考えたときに、でも、それが本当にいいかどうかというのが、ロジックではそう思うのだけれども、本当にそうか分からないので、そこに至るときに、この地域で、この地域だったらこの何社で、これでやっていこうと。ただ、先ほど齊藤センター長がおっしゃったみたいに、これは縦のユースケースに切っているので、これを本当は2か所とか3か所やって、そこを横目に見ながら、これらがつながるというのはどういう形になるのだろうかみたいなことをこの横でレイヤーで切っていくみたいな、縦側でユースケースドライブでつくることと、それをつなげるときの横はどのようにやっていくのかを考えて、それを部分部分でやっていく形になるのかなと何となく感じています。
葛巻構成員: 実際にあまり最初から頭の中でアーキテクチャのほうを進めても、時間ばかりたって、そのうちどんどん進んでしまう。
白坂構成員: おっしゃるとおりです。
葛巻構成員: この議論でいくと、小さな成功事例をユースケースとしてつくっていく、それは非常にいいなと思うので、それを誰が横串でこうしようと声をかけてやっていくのかというのが。
白坂構成員: デジタル庁なのか、DADCの役割なのか。どうですかね。
齊藤構成員: 基本的にはDADCはどこかからの要請でつくったものを、別に自分たちが決めるわけではなくて、有識者を集めてという話と、世の中の一般の企業に出して、そこでまた意見をもらってというアプローチをしますから、さっきのデンマークのような事例をユースケースにして、例えばある集合体においてそれができるアーキテクチャを具体的にそれぞれのサービス事業者がいて、それができるアーキテクチャを考えてみようぜみたいな話は、一つのモデルにはなると思うのです。
だから、ある意味で、こういう社会を目指したいという中に、こういう集合体がいるね、プラットフォームがいるねみたいな話は、仮定するのだったら仮定をして、そこに必要なサービスが、それぞれのサービサーがいろいろいると。別に固定するわけでもなくて、それをいろいろな人たちが入れるようにしてあげるというのが我々がつくりたいアーキテクチャなのです。ある意味で、区切るようなイメージではなくて、いろいろな人たちが参加して、そこが発展系ができるような、そんなアーキテクチャを目指すというのが我々の基本的な発想で、そこだったら別に、ユースケースを取るかもしれないけれども、どこかに肩入れするわけではなくて、オープンな形でみんなが活用できるということで実現できるのではないかと思いますが、それをどう考えていくか。
甲田構成員: まさにAsMamaがやっているのはこの協調領域というところなのですね。地域の、多分地域ごとなのですけれども、まさに病院は病院だけのことを考える、駐車場は駐車場だけのことを考える、ファーマシーはファーマシーのことだけを考えるというところを、人が媒介して、協調領域で、あそこにも薬局はあるよ、あそこには助産師さんがいるよと、Society5.0というより4.5に近いのですけれども、いろいろな選択肢を口コミとデジタルで伝えてあげると。協調領域はしっかり成熟すれば、それはチャンネルになるので、チャンネルとしてメディアとしてビジネスになるので、さっきの白坂先生のお話にあった協調領域のところがビジネスになるのかというと、これはビジネスになりますというところです。
ただ、この協調領域のところで、一番最初は誰にとっての得なのかといったときに、その地域にとっての共通得なのですね。ですから、どこかの産業の得というのが一番最初に分かりづらいので、まさに皆さんがおっしゃっている、ここのコスト負担やここの時間軸の負担を誰が覚悟して持つのか、まさにそこを議論するのが今回のデジタル交通社会の在り方の国の役割かなと考えます。
石田座長: 宮代さん、どうぞ。
宮代構成員: 拝見していて、特に住民の受容性とか、よく言う言葉が少し気になり始めていて、もっと本当は自分事と捉えて、自分が関係する、自分にとって得になるとか、自分にとって大事だからやっているみたいなものは、受容性とは違う気がしています。例えばスウェーデンでご紹介した「One Minute City」なども、道路は住民の自分のものだよと言った瞬間から、小学生も自分事として捉えるというのもあるので、自分事と捉えるレベルが、その人の立ち位置だとか、これまでの生活の習慣とかでまた変わるので、でも、自治体や事業者がやらなければいけないのは、ターゲットにどうやって自分事と捉えてもらうか。だから、受容性からもっと踏み込んだ形で書いていくことによって、むしろ各地を元気づけるというか、そういうことが出てくるのかなということで、受容性の表現のところだけは少し気になって、もう少し現場間の表現でいいのかなと思います。
石田座長: 自分事はすばらしいことだと思うのですけれども、ウクライナも自分事、福島も自分事、モビリティも自分事、高速道路も自分事、何でもかんでも自分事になると、市民としては体が幾つあっても足りないと。そういう問題はちょっと気がかりですね。
宮代構成員: だから、暮らしの中の自分事なのだと思うのです。まさにここでWell-Beingとかと言っている中に含めてきて、その中の自分事というような捉え方にすると、結構身近に入ってくる。
石田座長: 強制される自分事ではなくて、湧き上がってくるようにするためのアプローチはどうあるべきかとか。
事務局: それは行政の役割ですね。南雲さんの奥様に関係があるのだよということを説明しないと自分事にならないけれども、自分事だから考えろと言っても、考えていただけないですよね。
甲田構成員: おっしゃるとおりで、コンソーシアムをつくるときに、モビリティ産業の数が多いところばかりに入ってもらうという考え方自体が、宮代委員がおっしゃったように違っていて、生活者の方を中心に置くのであれば、生活者の方がよく利用されるファシリティーや産業が、きちんとこのモビリティを考えるというコンソーシアムに入ってこないとという感じかと思います。
石田座長: そういう意味でいくと、資料7の1枚目で項目が7つぐらいありますね。そこに甲田さんにおっしゃっていただいた、あるいはメールで出していただいたコミュニティーをどうつくっていくかという論点が、自分事ということからするとすごく大事だと思っていて、ぜひそういうことを書き加えていただければと思いました。
川端構成員: 共助という言葉が危険な部分があって、共助だと誰かがやってくれると思って、私が主体にならない可能性があるので、共助という言葉自体はすごくよくて使っていくべきだと思うのですけれども、同時に誰が得するかを明確化するというのも非常に重要だと。例えば銀行が得と書いても、私が銀行を使っていれば、銀行が得ならば私も得とか、そのように落としどころとしてあるので、身近な産業まで含めて、モビリティというと車関係だけだねみたいになってしまわないかというので、例えばこういった中で社会受容という言葉に最終的に落ちていくのだと思うのですけれども、モビリティをデジタル化して、システムが変わっていってとか、そういったことを再設計するというときに、例えば自分が使っているもの、コンビニも得かもしれない、銀行も得かもしれない、こういう人も得かもしれないみたいな誰得の明確化をしていく。それをナラティブにちゃんと語ってあげることで、最終的に住民の受容性が上がって、主体化していって、住民のモラルではなくて結果的に得が分かっているからと。
基本、日本は政府でいろいろ検討して、産業で積み上げていって数字が出るけれども、足りないところは国民のモラルで解決しましょうとした数字を出しがちなので、それでみんな先生がおっしゃったように疲れてしまっているのですね。最後、国民のモラルかよという反応は絶対に出てくるので、そういった意味では、企業体であったり、個人であったり、自治体のコミュニティーであったりの誰得を明確化をした上で、ナラティブなストーリーをつけていって、その結果として、得なのだからやろうよという心理状況が、モラルではなくて、例えばCO2を減らすみたいなところも全くもってモラルでということがすごくいろいろあると思うのですけれども、モラルには訴えないというのが最後はベストではないかと思います。
桃田構成員: 2ページ目のポツの「スピード感を持った社会実装にあたっては実施単位を適切に設定し(広域連携~自治体単位まで)、中間支援組織のような役割が産官学民を、継続性をもって取りまとめることも有効」というときの、中間支援組織とは何ですかという話で、例えば地域交通会議などは、公共交通の古典的なバス停はどうするみたいな議論が多かったり、ほとんど開催されない地域も多い。武蔵野市とか非常に中身が濃い議論をしているところもあれば、ほとんどやっていないところもあったりする。僕がやってきている永平寺町MaaS会議は、MaaS会議なので、交通だけの会議ではなくて、甲田さんがおっしゃるようにいろいろな先生方に入っていただいてやるのですけれども、交通の話は難しいのです。最初は楽なのですけれども、深掘りしていくとどこかで議論が終わりやすかったりするので、これを継続的にどうやるのというのは、例えば今回の研究会のようなものがオンラインで、もっとみんなで気軽に入れるような場があるとか、検討会のワーキングみたいな小さいものとか、そこが具体的にならないと、継続的に取りまとめるのか、議論は地域では回りづらいので、これが大きなキーになると。実体験からはそう思います。
南雲構成員: インフラ系の共助は特に難易度が高いのだと思うのです。交通、道路みたいなものはね。さっきの白坂先生の議論で来たなと思ったのは、ドイツのシュタットベルケが出てきたかなと思ったのです。あれが近いなと思うのだけれども、日本でやると第三セクターかよと言われるのですね。だから、組織論のところで、日本的なうまい共助は何なのかというところが、解が出ないと多分他人事という形になってしまい、もし自分事になれば自己実現になってWell-Beingに近づけるのだけれども、逆の方向の回転がかかってしまうということ、囚人のジレンマになっていってしまうということなので、ここをどうするかが最大の肝のような気がします。
石田座長: そういう意味でいくと、今、石油等の高騰で厳しいことになっていますけれども、電力会社はシュタットベルケ的には非常に可能性があるなと思っていて、そういう意味で、モビリティとエネルギーの重ね合わせということも考えられる。
南雲構成員: 日本は多分そこだと思うのです。ユーティリティー系とモビリティのプラットフォームをつくるというのが解だと思うのです。プラットフォーマーになれるのはそれ以外にないのだと思います。そういうときに自分事化というか、庶民感覚に近いところに落とし込めるかというところがないと、独立行政法人なのか、第三セクターなのかみたいなのりになっていってしまう気がちょっとするということですね。
事務局: 旧国土庁の全国総合開発計画の中にローカルマネジメント法人みたいな新たなものをつくらないといけないという議論があったりして、そこは意思決定がみんなでできるし、ある程度自立的に運営できる主体が必要だなと。ずっと冨山さんが推奨されていますね。
齊藤構成員: いずれそういうものが必要になってくると思いますけれどもね。今はないけれどもね。でないと、今はデジタルを活用して、そういう形で実現できるかというと、できないですね。今のままでは。ないかもしれないけれども、そういうものを提案しながらやっていくしかないのではないかと思いますけれどもね。
南雲構成員: 僕はPlatform Cooperativism、プラットフォーム協同組合とかと訳されていますけれども、それとシュタットベルケと、BIDとよくエリアマネジメントの一つでありますね。地権者が自前のところをきれいにすると。この辺のハイブリッドみたいなものをデザインしないと、主体がないという感覚だと思うのです。
宮代構成員: FDCがすごく人を巻き込み、いろいろな当事者を巻き込み、つなげ、何かを新しく起こしていくエージェントのような役割をしていて、プラットフォームも必要なのですけれども、そういうエージェントや触媒的なことをやることの組合せみたいなことが、日本の場合はちょっと要るのかなというのは実際に地方でやっていても感じることが多くて、プラットフォーマーだけいても全然動かないし、エージェントだけいても全然システム化しないみたいなね。でも、それを両方できる主体がつくれるかというと多分難しいので、もしかしたらそれぞれ別々でもいいのかもしれない。トランジションかもしれません。とにかく現場を動かしながらシステムを動かしていくのを同時並行でやるやり方は、1主体だけが中間組織になっても難しい。少なくともあと数年はあるような気がするのです。
石田座長: 私から資料7に関して2つお願いがありまして、「デジタル交通社会推進戦略骨子案」とタイトルに書いてありますが、これはこういう方向、この文言をぜひ残していただければありがたいと。端々で出てきましたけれども、2ページの下のほうの官民ITS構想・ロードマップが実は前身としてあるわけですね。ITSはIntelligent Transportation Systemなのですけれども、日本語の正式訳というのは、高度道路交通システムと。これはそれなりの理屈があってこうなっているのですけれども、ITSというと、自動車の道路という感じを色濃く引き継いでいて、これまでの議論の在り方で、人の暮らしやWell-Being、そういったものを視野に入れて総合的にやっていかないと駄目なので、そういう意味では、デジタル交通社会、新しい感じがするかと思ったので、そういう方向でいいかどうか、皆さんにお考えいただきたいなと思います。
それと、例えば3ページの一番上の医療・福祉、買物、教育、通勤・勤労と書いてあるところなのですけれども、いずれも人の行動で、モビリティといったときに、物の流れというのは我々の生活を支えてくれるための産業のために絶対に必要なので、物流はまだ議論していないので書けないのですけれども、そういったことがほかにもいっぱいあると思うのです。そういうことをこれからの議論のためにも、今、想像し得る範囲で残しておいたほうがいいと思います。次回、もう一回やるのですね。
事務局: はい。やります。
石田座長: こういうものが抜けているとか、ああいうのがあるとか、そういうものをぜひお寄せいただければ、この戦略がうまくいくのではないかと思いますので、今日はあまり時間がなくて申し訳ないのですけれども、お持ち帰りいただいて、ぜひ次回にと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
長時間ありがとうございました。
事務局: 次回、第4回もよろしくお願いいたします。
(以上)