モビリティワーキンググループ(第7回)
- 最終更新日:
概要
- 日時:令和7年(2025年)1月28日(火)16時00分から18時00分まで
- 場所:オンライン
- 議事
- 開会
- 議事
- 自動運転の社会実装に向けた取組
- 全国各地の自動運転サービス導入における状況や課題
- 株式会社ティアフォー 代表取締役社長 CEO 加藤 真平 氏
- BOLDLY株式会社 代表取締役社長兼 CEO 佐治 友基 氏
- 日産自動車株式会社 常務執行役員 土井 三浩 氏
- 全国各地の自動運転サービス導入における状況や課題
- 自動運転の社会実装に向けた施策の検討状況等
- 自動運転の社会実装に向けた課題
- 自動運転の社会実装に向けた施策の取組状況
- 意見交換
- 自動運転の社会実装に向けた取組
- 閉会
資料
- 議事次第(PDF/58KB)(2025年2月5日更新)
- 資料1:構成員名簿(PDF/156KB)
- 資料2:The Art of Open Source Reimagine Intelligent Vehicles 株式会社ティアフォー(PDF/1,371KB)
- 資料3:自動運転時代の市場創生 BOLDLY 株式会社(PDF/4,013KB)
- 資料4:自動運転の社会実装に向けた取組 日産自動車株式会社(PDF/1,017KB)(2025年2月5日更新)
- 資料5:自動運転の社会実装に向けた課題(PDF/1,722KB)
- 資料6:自動運転の社会実装に向けた施策の取組状況、及び、今後の検討スケジュール(PDF/11,445KB)
- 第7回 モビリティワーキンググループ出席者一覧(PDF/242KB)
- 議事録(PDF/482KB)
議事録
麻山参事官: 定刻を過ぎましたので只今から「第7回モビリティワーキンググループ」を開催いたします。本日はお忙しいところご出席ありがとうございます。本日司会を務めます事務局の麻山でございます。よろしくお願いいたします。ワーキンググループの開催にあたり森主査よりご挨拶をいただきます。森主査、よろしくお願いいたします。
森主査: お世話になります。お忙しいところ皆様方にはお集まりいただきましてありがとうございます。第7回モビリティワーキンググループを開催するにあたりまして一言ご挨拶を申し上げる次第でございます。本日は、「自動運転の社会実装に向けた取組」について集中的に議論いただければと思います。アメリカ・中国において自動運転の事業がかなり活発化しており、日本でも2027年には都市部でロボットタクシーが走るという報道もありまして、非常に期待しているところでございます。都市部でロボットタクシーが現実となるタイミングにあわせて政府がどのような取組をしていけばよいのかを考えていくのも、時間的なことを考えると、いよいよ正念場、デッドラインということではないかと思っております。あわせて都市部だけでなく、中山間地域の地方部におきましても、自動運転サービスの社会実装を早く実現していく必要がございます。そのためにも、今のままでは実験で終わってしまいかねない状況ですので、インフラ・車両・ソフト・データ・規制・サービスの面で、どのような戦略を練って連携していけば事業として成り立つのか、といった点もぜひ皆様にはご議論いただければと思います。本日は実際に自動運転の社会実装の取組を議論していただく上で3社の方々にゲストとしてお越しいただいております。現在、検討しておられる検討内容についてもご紹介いただいた上で議論をしていただきたいと思います。いずれにしましても自動運転は世界的に色々な分野で使われてきておりますので、これが実際日本でもどのようなタイプの事業になっていくのか、私たちとしてもしっかりと見定めた上で、本日お越しになっているプロチームの方々とも連携しながら議論を進め、早く日本でも自動運転を見たいと思っております。ぜひその実現に向けて皆さんのご協力、ご支援いただければと思います。私の方からは以上です。よろしくお願いいたします。
麻山参事官: ありがとうございます。本日の会議はオンライン開催となります。構成員の皆様におかれましては、会議中は常時カメラをオンで発言時にはマイクミュートを解除して頂けますようお願いいたします。なお、他の方がご発言されている際は、マイクをミュートにしていただけますようお願いいたします。また、傍聴者の方はカメラ、マイクともオフにしていただきますようお願いいたします。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。事前にお送りさせていただいた議事次第に記載の通りになりますが、資料は議事次第、資料1~6、出席者一覧となります。不足がございましたらteamsのチャット機能、もしくは事務局までメールにてお問合わせいただければと思います。本日の出席者のご紹介につきましては、時間の制約もありますので、失礼ながらお手元の出席者一覧の配布にて代えさせていただきます。
それでは早速ですが、議事に移らせていただきます。まず、「全国各地の自動運転サービス導入における状況や課題」をゲストスピーカーからご説明いただきたいと思います。最初に、株式会社ティアフォー社長の加藤真平様からご説明をお願いいたします。
加藤氏: このあと2件の自動運転の社会実装に向けた取組についてお話があると思います。私は少し抽象度を高くして今どういうレベルにあるのかという点を説明させて頂きたいと思います。
こちらの映像では当社の最近3、4年の取組をまとめています。自動運転の最初のイメージはタクシーが強かったため、長野県塩尻市において当社でもタクシーの運転席無人化を行いました。当時はレベル4の許認可というよりは、然るべき手続きを行うことで運転席を無人にするということができました。当社では、ロボットタクシー等を自社で開発・量産したいわけではなく、出来上がったシステムを自動車メーカーに全て設計を提供しています。当社が作成したシステムをコピーして、自動車メーカー様は得意とする製造能力を活かしていただくことを考えております。また、自動車メーカー様の独自技術につきましても、付け足すことができるようになっております。
こちらの映像は自動車メーカー様、パートナー企業様と連携してバス型の自動運転での走行に取り組んでいる様子です。こちらの映像は、北九州空港内において運行しているものです。最近では、市街地においても同じシステムで走れるようになっておりまして、こちらの映像は平塚で通常走行している路線のルートにおいて自動運転バスの走行を行ったものです。
バスについても運転席を無人にできる取組をしていますが、自分たちで取組をするうえで、最初から自動車メーカー様と先の長い時間のかかる取組をいきなり行うのは難しいです。そのため、自分たちで自由にカスタマイズすることのできるEVバスを仕入れております。このバスを株式会社ティアフォーの保証の下で各地を走行し、自動車メーカー様に設計を返していく取組を行っております。
自動運転について、今回の国土交通省のスコープでは今ご紹介した点までですが、自動運転は他にも利用されております。こちらは工場内の搬送ですが、車両法や道交法が適用されない領域のため、いち早くレベル4水準で365日24時間稼働しており、 100か所に到達する見込みです。こちらは自動車メーカー様と一緒に取組を行ったもので、実際の業務でも使っていただいているものですが、このような宅配ロボットだけでなく、最近では技術を争う面では、無人のロボレースでは時速が200キロを超えました。我々の周辺においてこのような自動運転システムが登場しております。全て同じソフトウェアで走行、機能しております。つい先日、自分たちで仕立て上げたバスで、自動車メーカー様が提供するような量産仕様ではありませんが、品質が担保されていて、イメージとしては10台から100台くらいであれば自分たちで作ることができるバスについて、国土交通省から昨年レベル4の認可をいただきました。また、今年には警察庁から特定自動運行の許可をいただきました。皆様ご存知の通り、一般に運転する際にはナンバーを取り、車検を行い、その後免許を取ります。同様に自動運転システムもナンバーを取り、免許を警察庁からいただくイメージで2つ認可・許可を取る必要がございます。
こちらの映像は市街地のもので、今走っている瞬間は交通量が少ないですが、長野県塩尻市の駅前ですので交通量が多い時もある環境です。歩行者がおり、ガードレールが一部しかない状況のため、かなりの評価・対策をさせていただき、運転席に人のいないレベル4の状況で、日本で初めて商用の運行ができました。1回1か所で行うことはできましたので、いかに他地域に同様の展開をできるか、コストを落とした事業モデルとできるか、という点が我々のチャレンジとなっております。国土交通省と警察庁の皆様には密な議論をさせていただきましたが、オールジャパンのチームワークで行っていけば50か所、100か所に展開するという目標が達成できるのではないかと思っている次第でございます。
我々としましてはこのような取組をオープンソースとすることによって、自動車メーカー様を中心とした他社のパートナーの皆様にもお使いいただくことを考えております。先ほど米国・中国で自動運転が進んでいるというお話もありましたが、我々以外のパートナーにも使っていただくことによって、先行している企業とも互角以上に渡り合えるのではないかと思っております。実際に経済圏だけを見ると我々の方が大きいのではないかと思います。
我々のようなプラットフォームを提供する企業がいると、自動運転システムを一から全部作るのではなく、資料2の5ページ左側の太い矢印で記載しているように、オープンソースで提供する当社などに自動運転システムを任せてしまい、最後のカスタマイゼーションやインテグレーション、アダプテーションにリソースを集中できるようになるので、より短期間でより品質の高い自動運転システムの開発ができるようになります。そういった価値を提供するのが当社の目指しているところです。
世の中の自動運転システムは資料2の6ページのようになっております。右下にAutowareと一つの箱で表現してしまっていますが、こちらがAI、あるいはロボットに相当するところです。そのようなAIやロボットのソフトウェアがあるだけでなく、どのようなコンピューターの構成にするか、センサーの構成にするか、ソフトウェアをどのように組み合わせるか、運行設計領域(ODD)をどのように走るかという点がノウハウ、技術アセットでして、当社としてすべてを公開しているわけではありません。また、すべてを一社で作り切るのは難しいため、オープンソースで進めております。このAutowareがオープンなことにより、サードパーティと記載しておりますが、たとえばものすごい技術を持つAI企業等と一緒にシステムを作ることができるようになっています。その結果、ビデオで示しましたように様々な車両への対応ができます。また、今後さらに知能化していくためにデータセットが必要でして、これも一社でできる話ではありません。大抵の自動運転企業はこれをブラックボックスとしておりますが、当社は、パートナーシップやオープンソースで当社自身が受け持つところはここですと明確にして進めています。走れば走るほど賢くなるということができれば、社会実装も進んでいくと思います。
ただし、オープンソースだけですと先ほども申し上げたように、最先端のAI技術が手に入るわけではありません。Waymoやテスラの持つ自動運転システムのように、たとえばWaymoは今2.5兆円投資し、ロボットタクシーが1種類だけできている状態です。そこまでキャピタルを使わずに幅広い自動運転システムを作り上げようとすると、このようにパートナーシップをうまく活用しながら進めていくのが良いのではないかと思っております。こちらが、当社が差別化しようとしている点です。
資料2の8ページは、社会実装ではなく、産業競争の観点から見たものになります。テクノロジーは無限ではありません。確かにWaymoやテスラはいち早く非常に高い水準のテクノロジーにたどり着いた会社ですが、オープンソースがまったく追従できないかというとそうではありません。大体3年遅れでオープンソースはトップの水準に追いつきます。その3年間の間に産業をどう捉えるか、マーケットをどのように確保していくかということが重要です。当社はオープンソースで3年後に追いつくということだけでなく、パートナー企業様とうまく連携してこのギャップを更に埋めています。イメージとしては、3年ビハインドとしているところを1.5年まで縮めることができれば、残りの1.5年の遅れに対策をするだけで事業モデルを構築できるようになります。その点につきましては工夫をしながら進めている点ではありますが、オープンソースはいずれ高い技術に追いつきますので、そこまでにどのように事業をしていくかがポイントだと思っております。この辺につきましては色々な支援をいただいております。こちらはグリーンイノベーションで、経済産業省から補助いただきました。最近ではスタートアップの支援等も経済産業省に補助いただいております。この甲斐があり、国土交通省の事業は我々の知る範囲では全国で99か所行われていると思いますが、うち42か所に参画させていただいております。当社が自らやっている箇所もあれば、隣にいらっしゃるBOLDLY株式会社に実施いただいている箇所もあり、うまく連携して進めているところです。
私としましては、自動運転やAI、デジタルというのは非常に重要ではありますが、それをオープンソースで進めるということが資源の限られた日本が取るべきアプローチなのではないかと考えております。それと同時にデジタル行財政改革についても、今回初めてレベル4の許認可が得られたということで連携を進めていきたいと思っております。また、スタートアップからの観点からではありますが、補助というのも非常にありがたいところではありますけれども、これが自治体からの公共調達となってきますと、スタートアップの会社としての事業としての売上が立つことになり、事業成長という意味でどんどん力をつけていくことができますので、より社会実装を加速することができると思っています。この3点を今後我々としては強く意識しながら進めていきたいと思っております。
麻山参事官: ありがとうございました。続きまして、BOLDLY株式会社社長の佐治友基様からご説明お願いいたします。
佐治氏: 2016年に起業してから9年、自動運転事業をしてまいりました。本当に日々ニーズが高まっています。市場をこれから広げていく、そして産業として確立していくには仕組み化が必要であると考えております。
モビリティロードマップというところに政府の非常にチャレンジングな取組が本当に集約されていると思います。その中で加藤様がおっしゃられた通り、2024年に掲げられている重点取組、技術や審査手続きの透明化・短縮化も含め、社会受容性の向上というのは各事業者がかなり取組んできたのではないかと思います。
当社では、車を作ることはできませんが、車を普及するための基盤をプロデュースしてきました。困っている自治体ほどお金がないため、資金調達を手伝うことや、住民の教育も含めた自動運転車が走りやすい環境の整備、さらに仕事として取組んでいく人材の育成も含め行っており、その中で遠隔監視をされた自動運転車が日々点検されながら走っております。
このようなところで当社も様々な領域でキャッシュポイントを作り、会社として黒字化に成功し、他社ベンダーなど、様々な方々と協力しビジネスモデルの構築に取り組んでまいりました。やはりインテグレーション領域では汗をかきます。地域に何人も張り付いて自治体と計画を作り自動運転車の設定を行い、ようやく動くようになったら月額で遠隔監視システムの料金をいただくというのが当社のビジネスです。
それを行うためには様々な仕事のパーツがあります。一地域に実装するにもこれ以上の様々な仕事がありますが、プレイヤーによって色づけるとこのような形となります。黄色い箇所については最初当社が行います。できる人がいれば地域に任せたいですが、自動運転車のマッピングや政府に提出する書類手続きなどは、最初は地域ではできません。しかしながら、運行を開始して地域役所職員やバス事業者の社員の方と対応をしていくと、仕事が移管されて社会実装としては自動運転を地域で回せる体制となってきたと思います。
そのおかげでようやく16地域で通年運行、実用化というものを達成しました。国土交通省、警察庁がやりやすい環境を構築してくれたおかげで日本では、世界でもまれにみる地域実装の推進体制が構築されたと思っております。特に2023年時点で導入された自治体に関しては本当にリーダーシップの強い首長の方がいらっしゃり、住民のために自動運転を導入いただきました。
さらに2024年に自治体に続々とレベル4が広がっております。車種も増え、実施することも高度化してきており緑ナンバーの営業運行が走っている地域もあります。こうした取組がより産業に繋がっていくためのロードマップを考えていただいておりますが、ロードマップに込められたメッセージを事業者として受け取っていかなければならないと思っております。
地域実装をこれからも実施していくという視点からレベルアップをするのであれば、産業化を考えなければなりません。この論点はどうやって実証から産業化へシフトチェンジするかだと考えております。例えば、自動車産業はこれからも日本を引っ張っていくと思いますが、AIや情報通信とも連携・融合しながら進化していくと思います。それらをどう成長産業として勝たせていくかが重要です。さらには交通産業として見たときにそこで働いている人々もいますので、何十年も地域の安全を守り、道を知っており、緊急時の対応も手慣れている人材を、抱えきれなくなってAI化するのではなく、ある程度安心して働ける人気の職場、キャリアアップできる構造を作っていかなければならないと思います。
フランクフルトでは2030年には1万台の自動運転モビリティを導入するというビジョンを掲げているなかで日本はどうでしょうか。当社のビジョンでは、左側の全国100台実装しようとした点については国が用意してくれた枠組みの中で充分に達成できるターゲットと思っております。既に当社でも50台ほど実装しておりますので、フランクフルトと同程度の100倍の1万台を目指します。そのために3つの重要なポイントがあります。国産比率を高め、品質を高めること、これが一地域当たりの苦労を減らすことに繋がります。また、デジタル公共財として、普及した車両が楽に導入できる基盤を整備していかなければならないと思っております。これが揃うことでキャズムを超える形となり、2030年までに産業としての可能性が広がっていくと思います。さらに、1万台は通過点であり、日本では8000万台という保有台数がありますがそのうち100万台程は自動運転のモビリティになっていくと思います。縦に動くエレベーターは90万台あるそうですが、プロダクトライフサイクルや価格の概念を少し広げて、定時定路線のバスや小型モビリティ、オンデマンドのシャトルなど様々なものに対して、自動運転モビリティがどのような売られ方、どういう作られ方をしていくかを考え直さなければならない時代になっています。
当社で1万台の自動運転バスを動かす場合、3000人の特定自動運行主任者を育成しようと思っております。今、数百名育成していますが、3000人が朝昼晩の3シフトで1000人ずつ交代すると常に1人あたり10台の運行管理としていきます。そうなりますと常に1万台運行しているという世界観が実現できると考えております。ただし、資料にてご覧のような車を1万台広げる考えはありません。このような車は1台ずつの個体差があり、同じ設定をしても同じ動きをしないことや、メンテナンスに1か月かかってしまうなど、苦労の連続でした。そのため、量産して品質を高めていくことが普及前の必要不可欠な条件となってきます。さらに、当社では2015年頃よりスタートアップや海外の自動車を自治体からの要求により広めてきましたが、突然APIの接続料をあげたいというメーカー側からの要求があったときに、交渉が決裂すると翌日から自動運転車が動かないといったリスクもあります。サイバー攻撃を受けるといった話だけではなく、ビジネス的にも日本の公共交通を安定的に動かすためには、国産比率を高めていくことが大事だということを、身をもって感じました。
さらに、一つの量産車両を地域によって全てゼロからのカスタマイズを行わなければならないとなると、品質が良くて量産ができても地域に広がっていきません。運行の仕方がカリキュラム化されており、共通の資格の元に教育を受けた人材がそろっている、緊急時には常に遠隔監視ができて何分以内にどういうサービスが行われる、というような基盤があると、品質の高い車両が安心して広まっていきやすいです。また、一地域当たりの導入コストも今より下がっていくと思っています。
その時に完全無欠のレベル4のような車両が必要かと言う点につきまして、今までの感触から多くの自治体がレベル2でも良い、はじめは中に人がいた方が親切であるため、初めから無人で量産することは求めないという意見もあります。
ここからは当社が数字を試算した話になります。青いグラフは一地域当たり初期費用であり、車体価格、ワンマン機器の設置、ラッピング、人材育成、マッピングルート設定に1億円以上かかっている状況です。これに対して、ランニングコスト、維持費は人件費やメンテナンス、メーカーに払うシステム利用料があります。見ていただきますと、青い部分は非常に高額です。これをどこまでリーズナブルにすると自然と広がっていくのかというと、今の公共交通のコストが参考になると思います。例えば、EVバス、手動運転のディーゼルバスを導入したらどうか、小型のハイエースクラスのオンデマンドバスを導入したらどうかといったことに対して、それぞれ初期費用とランニングコストがあるかと思いますが、1日12時間運行等の条件をそろえて試算しました。なかなか今のコストが3分の1になったり、5分の1になったりしないと右側の手動運転のモビリティにはなかなかコスト面では勝つことができません。特に初年度に1年間運用した場合のコストはそうなります。
先ほどの上下を合算しますとこのようになります。どのようにしたら下がっていくのか長期で見てみましょう。10年運用した場合、初期費用が3分の1や5分の1となった場合のコストが、手動運転のバスに匹敵するように見えるかと思います。並び変えるとわかりやすいのですが、今の車両が量産され、初期費用が3分の1になったときに10年間運行すると、実は手動運転バスのEVを同じように10年間導入したときのコストよりも安くなる可能性があります。そうすると経済合理性がでて1000台程度置き換えできるかもしれません。まだEVバス自体の普及がそこまで多くなく1000台ほどです。手動運転の市場はもう少し多く、数万台ありますので、初期費用が5分の1になると置き換え可能性が出てきます。仮に10分の1に下がっても小型のオンデマンドバスほど安くはなりませんが、人手不足なのでこの程度コストが迫ってくれば置き換えは起きていくと思います。このように段階的に量産を実現することで、市場では必ず自動運転が普及していきます。
では、どのように1台当たりのコストが2億円、維持費が0.6億円かかっているものを3分の1から10分の1に軽減するか、その方法がないとこの時代は来ません。輸入やベンチャーから供給している車両をかき集めても1年間50台ほどしか手に入りません。なんとか1000台、あるいは3000台、年間生産できる供給ペースを実現していきたいと思います。これを国産でやりたいとしたとき、2025年から27年に量産開発を国策としていかに推進できるかということが重要であると考えています。社会実装では本当にニーズがありますが、これから産業化していくという観点でお話しさせていただきました。
麻山参事官: ありがとうございました。最後に、自動運転を国産技術で取り組まれている日産自動車株式会社常務執行役員の土井三浩様からご説明をお願いいたします。
土井氏: ありがとうございます。加藤様と佐治様の話を自動車メーカーとして受けるような流れになりましたが、車を提供する側から、自動運転を実際に展開するために必要なことは何かという視点でお話しさせていただきたいと思います。
ポイントは3つです。一つは基本的には駅前などの複雑な場所、街中においては人が多いためシンプルなシーンしか走れない自動運転はビジネスになりません。幅広いユースケースに対応できるような、車を動かす技術が必要です。また二つ目に24時間、先ほどの佐治様の話のように何千台という数の自動運転を無人で走らせようとすると、相当なシステムの信頼性がない限りリアルワールドでのオペレーションは困難です。つまり、無人化に耐える量産レベルの信頼性がないと展開は無理だと思っております。実際、安全においても車だけで担保するのではなく、その運用をするためのエコシステム全体で安全を維持管理するための仕組みが必要です。三つ目はコストです。実際に走行している自動運転のほとんどが一品仕上げの試作車両です。これを増産すると、試作車両なので高いためビジネスモデルは成り立ちません。量産を目指さないとビジネスモデルや安全性についても成立しないと思っております。
資料4の3ページ目のように、アプローチを自動運転を縦にレベル2・レベル4、横に走行ケースがシンプルなケースと複雑もしくは高度なケースと分けて考えます。アプローチとしては、まずレベル4を簡単なところで行い、複雑な方へ動くタイプAとレベル2で走れるケースを増やし、そこから信頼性を上げてレベル4に向かっていくタイプBの2つのアプローチがあります。当社は縦に下に降りてくるタイプBというアプローチを取りました。横浜で毎日のように自動運転が走っていますがみなとみらいで完全な混走状態で停止車両とかも自分でよけながら走っています。ほぼほぼ抵抗感なしで走れる状況にはなっていますが、レベル2で行っております。
自動運転では右に曲がる、信号で止まる、歩行者をよけるという話が出ますが、車屋としては、自動運転は上半身と下半身に分けて考えられます。上半身とは、ある場所からある場所まで目的Aから目的Bまでどのルートを通り、ルートの中ではどの車線を通り、車線の中ではどういった軌跡を通り、といったところまで決めるのが自動運転のソフトウェアです。ただし、指示した通りに車が動かないということがポイントです。バスや特にトラックが顕著ですが、乗っている人の数や積載している荷物の重さにより車の挙動は全く変わります。重いと止まりづらい、曲がらないということが起きます。上の指令に対していかに車が動くか、従来の車屋の技術そのものですが、こちらもセットで設計しないと安全を保障できる自動運転というのは難しいです。極端なケースではなく、例えば雨の日に時速60キロで曲がればタイヤは滑ります。安定して走ることがお客様の安心につながるため普及にも寄与します。
極端な例になりますが、ビデオをご覧ください。雪の上でご覧の通りドライバーがハンドルやブレーキに触れない状態で時速100キロを出して走行し、コーナーを曲がったりしています。なぜこのようなことができるかと言いますと、車が自動運転のため、タイヤの状況を把握しているため、その状態に応じてハンドルの切れ角やアクセルの踏み方等を全て調整しながら安定して走っています。私がこのような状態で運転しますとスピンすると思いますが、自動運転では運転することができます。再三申し上げますが、このぐらいの安定がないと24時間何万台もの車を走らせるのは難しいと思っております。
もう一つ、コストに関わる話をいたします。佐治様より1台当たり1.5億円ほどとの数字がありましたが、なぜそのような金額がかかるのか。こちらは我々の自動運転のコントローラーですがご覧の通り汎用のコントローラーが無数の配線でつながっております。1台ずつこちらを積み、車を改造します。ドライバーレス走行をしようとすると、パイチャートで示していますように約3分の1がこの改造費にあたります。また、ベース車両とその上にあるセンサーやシステムで約3分の1となります。また、地域を走行しようとすると、高精度地図が必要です。その地図に適合させるためのヘッドカウントに追加で3分の1かかります。車両改造費が非常に重いですが、量産になればこの数字がなくなりますので、先ほど佐治様が言った数字に近づいていきます。よく自動運転の話ではLiDARのコストが高く、実用化が難しいという方もいますが、全体として見たときにはそこまで大きくありません。普通に車を作るようにもし量産ラインに乗せて数が作れるようになれば、世界が変わるのではないかと思っております。量産イコール信頼性でもあるため、コストと信頼性含め、量産の車両設計をしていくことが展開のために必要です。
もう一つ、安全は車だけでは担保できません。なお、横浜にて20台程度お客様に乗っていただくモビリティサービスを行おうと思っております。その時に当社が、車両を作り、配車システムを担いますが、遠隔監視や車の故障時におけるレスキュー、日々のメンテナンスといったオペレーション、地域行政の皆様と運行計画を立てるという点では縦の座組で安全を担保することになります。すべてのプレイヤーがwin-winになるビジネスモデルを作らなければなりません。車ではコストを下げる努力をします。また、遠隔監視や駆けつけも、1地区に多くの人数を配置すればビジネスとしては成立しません。このような縦の座組においてどのように分担をしていくかを論議する必要があります。また、日常の点検やお客様の対応で気を付けなければならない点もあるため、マニュアルも必要です。横展開に向け、横浜をスタートにして縦の座組モデルを作ろうとしています。
最後になりますが、この先2点検討をお願いしたいです。一つ目は無人化に耐えるような安全と信頼性、サービス展開可能なコストを実現するための量産技術にフォーカスを当てていただきたいです。もう一つは、安全を担保する縦の座組というエコシステムを確立するというところにフォーカスを当てていただければと思います。以上になります。ありがとうございました。
麻山参事官: ありがとうございました。この後、自動運転の社会実装に向けて、意見交換をさせていただきますが、最初に、自動運転の社会実装に向けた課題について、デジタル庁の村上統括官からご説明をお願いいたします。
村上統括官: 資料5の1ページ目をご覧ください。人口増加局面では、どんどんとモノが売れていくので、ものづくり産業が日本経済全体を牽引していくことになります。これがモビリティ分野でいえば、自動車産業という強力な産業があり、自動車というものを支える道路インフラとその整備当局があり、車載OSなどのソフト産業があります。地域公共交通に目を転じるとタクシーなどのサービス事業や交通協議会が地域にあり、そのサービスを支える規制・ルールとその整備当局があり、さらに、そのサービスを支えるデータが必要となります。
将来に向け、ロボットタクシーをはじめ新しいモビリティサービスという産業を作る観点で考えていきますと、こうしたサービスの規制、データの生成・共有、ソフト、ハード、インフラまで様々な関係者が階層的にいる中で、地域のサービスが起点となって、これらの階層を越えて一気通貫で検討を進めていかなければなりません。
本日ご紹介いただいた3社からも、既に国土交通省、警察庁などの関係省庁にも綿密に連携いただいているというご紹介がございましたが、改めて、この一気通貫の対策を複数の所管省庁や産業界横断的に一気に話せる環境を整えなければ、それが政府の号令一下進められてしまう国や、強力な金融市場の支持を得て一挙に投資資金を動かせる国から、我が国がどんどん劣後していくことになりかねません。
まさにこのモビリティワーキンググループが各府省庁・各事業者の立場を横断的にどうやって政策連携をしていくかということをテーマとさせていただいておりますが、この縦串の取組をロードマップも含めて皆様と手を携えてやっていけるかということが重要な視点になると思っています。
3ページ目をご覧ください。地域では、公共ライドシェアをはじめ様々な交通空白地を支える取組が動き出していると思いますが、これらの取組と、完全な自動運転の間には、まだ多少の距離があるのが実態だと思います。アメリカで既に事業をしている事業者が用いている対外的プレゼンからエッセンスを抽出してみると、やはり、右側に示している有人運転がある世界から、左側に示している自動運転の世界に徐々にシフトしていく絵が考えられています。
例えば、まずは配車・予約アプリが、ライドシェアに限らず乗合タクシーや様々な公共交通に地域の共通の道具として入ってくるのではないか。次に、それと連動するように有人であってもAIによる経路検索、さらにはドライブサポート等のオペレーションが徐々に入ってきて、最終的に自動運転に切り替わる、そんな状態遷移をするのではないか。少なくとも、そうした全体像を見ながら、自動走行の産業化の道筋を考えていかなければならないと思いますし、現に、海外のロボタクシーの有力事業者も、投資家向けにそう説明しているようです。
概念的なもので恐縮でございますが、協調領域と競争領域を少し強調させていただきました。BOLDLY株式会社からコストを例示いただきましたが、誰が作っても同じソフト、誰が提供しても同じ機能であるものを、これまでのように販売エリアで分割しシェア争いをするといった産業の作り方では、人口減少下の市場で誰も採算が合わず産業化できないという事態に陥ることを心配しております。透明性をしっかり確保しなければなりませんが、誰が作っても共通の機能、例えばMaaSの基本機能の一部、配車予約や基礎的なオペレーションにおいては、小さな自治体まで含めて全国で必要となるデジタル公共財として、財政力の強弱にかかわらず広く導入が進むような市場の設計がますます重要になるのではないかと考えております。
その観点から協調領域とすべきデジタル公共財については官民でできるだけ安く普及できるような座組を考え、その上でその基盤を活用して、どのように高齢者向け福祉サービスメニューを強化していくのか、新しい子育てメニューや放課後教育をどう育てていくのか、AIなども積極的に活用しながら競争領域における新しいサービスのフロントをどんどん広げていただきたいと考えております。下から協調領域がせり上げていくので投資が不要になった分をサービスのフロント開拓に回す、そういった協調領域と競争領域の好循環を生み出すような投資循環を、国全体として作れると良いなと考えております。
資料5の6ページをご覧ください。例えば道路は簡単にコピーできません。道路インフラのような専有性が高く非競合性がはたらくものは、純粋に公共財として定義できます。国連ではこれを「デジタル公共インフラ」と呼んでいます。確かに、東名高速道路が混んでいるからといって、新東名高速道路をすぐ作れるわけではありません。しかし、ソフトやデータとなると、コピーが簡単にため、そこまでの専有性がありません。これを本当に公共財と呼ぶかどうかという公共経済学的な議論はありますが、しかし、現実には、民業に任せると、結果として誰も採算性が見込めず、よって普及しないという課題が残る。これをどうやって普及させるかという問題意識も含めて、国連は、みんなが共通に必要とするソフトやデータを、「デジタル公共財」と呼んでいます。
この点が論点①「地域内外において共同で整備・活用すべきもの」があるのではないかという点です。だからといって、国が全額支援するというわけではありませんが、例えばリース等のスキームを用意することによって廉価に導入できるような枠組みを民間と共同整備できないか、国が一時的に買い取り、ある程度市場性が出るまで普及したら事業者に売り戻すなど、何からの官民連携が必要なのではないかということです。
株式会社ティアフォーからのお話にもありましたが、無償のオープンソースで提供しても、その導入と運用はしっかりとコストをかけて行わなければなりません。そこをどうすれば進めていくことができるのか議論が必要だということにもなります。協調領域として進めていく上で大事なのは、関係者間の合意です。公共財だと思って安くしたら他が儲けているという話になってしまうと問題となりますので、どの部分を協調領域的に、公共財的に整備していくのかということを少し議論しながら整理を出来ると良いと思います。
その上で論点②として、そうした共通ツールを使ってもなお、それぞれの地域に適したレベル2なのか、いきなりレベル4を目指すのか、あるいはどのような需要形態に対して事業をしていくのかについては、それぞれの地域の性格が出てくるのではないかと思います。どのようなバリエーションがあり、地域の実情に即した事業の展開に対して国などがどのように支援するのかというドメインがあるように思います。
最後に論点③としまして、おそらく都市部では、2027年の東京都心部をはじめとして、国等の財政的支援がなくとも事業化の動きは始まると予想されます。一方で、交通空白地で自動運転技術を使いたいという地方部では、採算性が低いため、このような事業化の動きはなかなか期待できません。これを、論点①と論点②でどのようにカバーしていくかという問題意識をもちつつ、さらに、路車協調のベースとなる基本技術や、様々な演算処理に使える汎用計算機若しくは、汎用ではなく特定の分野に特化したCPUを育てていくための産業育成など、都市部まで共通する公共財・公共インフラ的議論もあるだろうと思っております。
今後、このようにフォーカスを整理しつつ、各府省庁に現在ご検討いただいている政策を整理できればと思います。具体的に事象が始まりそうなケースも徐々に見えてきておりますので、それに間に合う形で政策メニューが整理できるか、皆さんのご協力をいただきながら冒頭にもありました産業構造の縦串化も見据えつつ、整理できればと思っている次第です。
麻山参事官: ありがとうございました。資料の説明は続きますが、甲田構成員はこの後ご予定があるとお伺いしておりますので、ここまででご意見がありましたらお願いいたします。
甲田構成員: 本当に示唆に富んだご説明ありがとうございました。佐治様にお伺いしたいのですが、桁を2つほど上げて自動運転を普及させたいというお話があったと思いますが、村上統括官からのお話にもありましたように都会と地方、既存産業が十分に行き届いているところ等もあるかと思いますが、優先順位的にどういった地域のどういった時間帯から広げていきたいと考えられているのか、ぜひご意見いただきたいと思っています。
麻山参事官: 頂きましたご意見への回答につきましては、この後の各府省庁との議論にも関連するかと思いますので、後ほど議事録等でご確認頂きたいと思います。
続きまして、施策の検討状況ですが、最初にデジタル庁から概要を説明し、各府省庁からサブワーキンググループの検討項目の状況も含めて具体的なご説明をいただきたいと思います。
資料6の3ページから4ページに、ワーキンググループで、各府省庁に実施していただくことになった施策のうち、短期中期から始めるものを記載してございます。また、資料6の5ページがサブワーキンググループ関係で自動運転の社会実装に向けたルール、その他について取りまとめた施策を記載しています。これらの施策は、資料6の7ページのとおり検討を進めておりますが、特に、社会的ルールの在り方は重要でございまして、この表のうち緑の網掛けのあるものについては、本年6月までに検討するということで、現在、各府省庁の会議体等々でご議論をいただいております。内容についても。ご説明させていただくところですが、資料の右欄にホームページのリンク先を記載しておりますので、こちらでご確認いただければと思います。また、各省庁から検討項目をご説明いただく際には、5ページの施策についても検討状況を触れていただけるとありがたく存じます。それでは、府省庁ごとに、2分以内でご説明をお願いします。まず、デジタル庁の施策について、企画官の鈴木からご説明させていただきます。
鈴木企画官(デジタル庁): デジタル庁では今投影されている4つの施策について現在実施しておりますのでそれぞれご説明いたします。
まず①「需要を推定する方法の検討」です。モビリティロードマップ 2024 では、需要側からのアプローチの重要性を打ち出しておりまして、本施策はそれを受けたものになります。資料6の10ページをご覧ください。右上に記載の3エリアで、現在、移動需要の調査を進めております。調査は顕在需要と潜在需要に分けて実施し、潜在需要により重きを置いております。物理的な制約や家族への遠慮などにより我慢している移動需要、地域とつながることで創発される移動需要などをディープインタビューやワークショップを通じて明らかにする予定でございます。さらに、並行して対象の市町でウェルビーイング向上のためのロジックツリーを作成し、キーとなるプロジェクトを選定すべく検討しているところです。
資料6の9ページをご覧ください。④「資金調達の支援方策の検討」と⑩「自動運転車両のリース・レンタルを促す仕組の検討」は同時に検討しております。こちらは主に自動運転の初期費用をいかに抑え、継続的な運行につなげていくかといった観点で自治体、自動運転の運行事業者、リース会社、金融機関等に広くヒアリングを実施し、その結果をもとに現在、関係府省庁と対応方針について検討を行っているところです。最後の ⑲ 「複数モビリティの協調制御技術の検討」では、車の自動運転技術ではなく、サービスロボットを対象とした分散協調運行基盤の普及に向けた論点を関係団体、関係府省庁と連携し、対応方策を分析しております。具体的には同一空間で異なるベンダーの複数のサービスロボットが各々運行した場合に問題となる事項を抽出し、必要となる共通ルールなどを特定するとともにフィールド実証を予定しております。
麻山参事官: 続きまして、内閣府から、ご説明お願いいたします。
柿田統括官(内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局): 資料6の13ページをお願いいたします。内閣府はSIP戦略的イノベーション創造プログラムという枠の中で4件進めております。ここでは民間企業、大学、関係団体等が参画をして、基礎研究から社会実装まで見据えた研究活動を進めております。
1件目、資料6の14ページをご覧ください。⑧「自動運転サービス等の導入に向けた指針の策定」でございます。ここでは自動運転サービスの導入など、地域のモビリティ課題への取り組みが進むようにSIPでの研究開発の成果を盛り込んで、自治体などの参考となる指針策定を進めております。今年度は、開発したツールの一部について限定的な公開も始めております。
2件目、資料6の15ページをご覧ください。⑨「主要技術の低コスト化」でございます。ここでは自動運転における障害物の検知などに使われるLiDARシステムの低コスト化、高度化、性能向上に向けた研究開発をしております。今年度はピンポイントにレーザー照射と受光を行う技術、あるいは多角的にレーザーを照射できる技術などを進めております。今年度末には、来年度に試作するLiDARシステムの仕様を確定する予定であります。
3件目、資料6の16ページをご覧ください。⑯「データの統合・相互利活用基盤の検討」でございます。モビリティの再設計の検討に役立つようデータの統合・相互利活用の基盤となるJapan Mobility Data Space(JMDS)の構築を進めております。今年度はデータを検索できる統合データカタログサービスや、サイバー空間でのシミュレーションなどを行うデジタルサンドボックスなどの一部の機能について提供を試行し、ユーザーの意見を聞きながら改善しております。
4件目、資料6の17ページをご覧ください。㉔「モビリティサービスをけん引する人材の育成」でございます。地域交通のリ・デザインの検討やモビリティサービスの運営が持続的に取り組まれるように、牽引する専門人材やコミュニティの育成に関する研究開発を進めております。様々な事例をわかりやすく物語化し、一部はモビリティ知恵袋として一般公開をしております。今後とも関係省庁と連携をしながら研究開発を進めてまいります。
麻山参事官: ありがとうございます。警察庁、お願いいたします。
永井参事官(警察庁 長官官房参事官(高度道路交通政策担当)): 続きまして、警察庁の取組につきまして2点ご説明申し上げたいと思います。
1点目、⑳「信号情報提供技術の検討・確立」でございます。資料6の19ページをご覧ください。令和8年度から令和9年度にかけて予定している多様なモビリティによる信号情報活用の総合実証実験に向けまして、令和6年度は、実証環境に関する各種要件等を策定いたしました。具体的には、実証対象となる交差点の選定、実証舞台となる茨城県警に設置する装置の要件策定を終えまして、本年度内には装置の設置が完了する見込みであります。令和7年度にはこの実証実験環境において、交通管制センターと接続していない信号機の信号情報を、回線を敷設せず低コストで配信する方法を検証するなど、令和8年度から令和9年度における総合実証実験に向けた検証を予定しております。
2点目、③「交通ルールに係る検討」でございます。資料6の7ページをご覧ください。令和6年度自動運転の拡大に向けた調査検討委員会において検討を進めております。1月30日には、4回目の検討委員会を実施する予定でございます。こちらの検討委員会では、日本自動車工業会など開発者サイドの皆様が、自動運転システムを開発する上で課題となりえると認識されている様々な交通ルールについて、意見交換、議論を行っております。その際、自動運転車を含むすべての交通参加者の安全とその円滑を確保する観点から検討を深めております。本年度3月中に調査報告書を取りまとめる予定でございます。
麻山参事官: ありがとうございます。総務省、お願いいたします。
荻原部長(総務省 総合通信基盤局 電波部): 資料6の 21 ページからになります。総務省としては短期的施策として2点進めております。
1点目として、⑬「V2Xの通信規格の検討・策定」を行っております。令和6年度において5.9GHz帯V2X通信の導入・本格実証に向け、電波の干渉検討や電波伝搬試験といった技術的な試験・検証、それから通信機器の開発・準備を行っております。来年度はその結果を踏まえ、新東名高速道路の一部区間で、関係府省庁をはじめとして道路車両関係者の方々と連携・協力して、自動運転トラックの合流支援情報提供や先読み情報提供等のユースケース実証および有効性の検証等を実施する予定としております。
2点目として、⑭「V2N通信環境の検討」を行っております。資料6の22ページをご覧ください。本年度、新東名高速道路の一部区間において、携帯電話事業者4社のネットワークによるV2N通信に係る車両走行中の通信状況の実力値の測定・評価や、V2N通信で有望なユースケース、システムアーキテクチャー等の整理・具体化を進めております。そして来年度、その結果を踏まえまして、関係省庁の方々をはじめとした道路・車両関係者の方々との連携協力の下で、公道でのV2N通信のユースケースの実証と有効性の検証等を進めていく予定でございます。
麻山参事官: ありがとうございます。経済産業省 製造産業局、お願いいたします。
田中審議官(経済産業省 製造産業局): 資料6の23ページに大きく5つ書かせて頂いております。例えば、ロボットタクシーを想定した自動運転サービスの標準的なモデル開発支援、高精度3次元地図の更新技術の実証、自動走行システムの安全性評価基盤構築、混在空間におけるレベル4に向けた実証、さらには社会受容性向上のための手引きの作成などについて、関係府省庁と連携して実施しております。
③「自動運転システムの開発支援」について、資料6の24ページで詳しくご説明します。デジタル庁からもありましたが、協調領域と競争領域を適切に区分けし、コスト削減をしながら、全国に広げていく取組をしたいと考えております。令和6年度補正予算70億円で実施する内容をご説明します。今回の補正予算事業は、「『自動運転標準モデル』の構築」、「『オープンデータセット』の構築」の2つで、協調領域に係る事業でございます。1つ目の「『自動運転標準モデル』の構築」では、別々の事業者が開発した車体・ソフトウェア・センサー等をうまく組み合わせられる、標準的な指標を作り上げるとともに、安全性評価手法等の開発ツールも整備していきたいと思います。2つ目の「『オープンデータセット』の構築」では、車両、開発周辺環境のリアルデータを生成AIに学習させ仮想データを作成することで、各事業者の自動運転シミュレーションなどに活用していただきたいと考えております。それを協調領域で提供しながら、コストを削減して、競争領域で活用していただきつつ、日本全国に広がっていくことを目指したいと考えております。
麻山参事官: ありがとうございます。経済産業省 商務情報政策局、お願いいたします。
奥家審議官(経済産業省 商務情報政策局): 二つほど取り上げておりますけれども、一気通貫でご説明をさせていただいた方がいいと思うので資料6の27ページをご覧いただきたいです。関係府省庁と連携し、2024年6月にデジタルライフライン全国総合整備計画をまとめております。アーリーハーベストプロジェクトとして、⑮「自動運転サービス支援道の整備」を行っております。先行地域でのサービス実証に向けた取組を進め、特に新東名高速道路の沼津・浜松間においては、関係府省庁の皆様に強力に推進いただいており、すでに様々な実証が開始されています。年度末にかけて、自動運転優先レーンのサービス実証をする予定です。アーリーハーベストプロジェクトの検討を行う、自動運転サービス支援道普及戦略ワーキンググループにおいて、モビリティハブの必要性を指摘されております。年度末にかけて、どういう機能を持たせていくのか、整備方法はどうなのか等について調査を進めていく予定です。関係府省庁の皆様と進め方について議論を深めてまいりたいと思います。
次に、資料6の5ページにありますサブワーキンググループおける⑩「報告・共有すべきデータ範囲、目的、方法等に係る検討」でございます。安全性向上に向けた検証分析に関するデータ収集を試験的に実施しております。特にニアミス情報の使用方法について関係府省庁の皆様としっかり検討していきたいと考えております。これらの取組はデジタルライフライン全体でまとめていこうと考えており、自動運転サービス支援道ワーキンググループで今年の春頃までに目標や必要なアクションをまとめたロードマップと、事業者や地方自治体の方々が参照できるガイドラインに向けた成果物をお示ししていく予定でございます。
麻山参事官: ありがとうございます。国土交通省 総合政策局、お願いいたします。
土田課長(国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課): ⑤「地域リソースを最大限活用するための地域の関係者の共創(連携・協働)の推進」を行っております。資料6の29ページをご覧ください。2024年5月に関係する 12 省庁の皆様にもメンバーとして参画していただきまして、地域の公共交通リ・デザイン実現会議を開催し、取りまとめを行いました。地域交通の取組について、交通分野のみならず、教育・医療・介護福祉等の様々な分野と連携して対応していく方向性を取りまとめいたしました。これを踏まえて、関係12府省庁の連名で政府共通指針として「地域の公共交通リ・デザイン連携・協働指針」を策定し、全都道府県の皆様に通知をさせていただきました。さらに教育・子育て・スポーツ・介護福祉・医療等の各分野において、関係府省庁の皆様と議論をしながら、個別の取組についてどのように進めるのかについて指針をまとめ、各自治体の皆様に通知いたしました。例えば、車両の空き時間活用をどう進めるのか、送迎業務の交通事業者への委託や集約をどう進めるのかという点が含まれております。その際、交通の担当部局だけではなく、教育や介護等の交通以外関係する担当部局を通じて、周知もしっかりと図ってきました。支援制度については、もともと共創・MaaS実証プロジェクトにて、共に創る取組の支援制度を設けておりました。現在、交通空白の解消について省を挙げて取り組んでおり、それを後押しする補正予算等も獲得をしているところです。これらの支援制度も合わせて地域交通の維持を図って参りたいと考えております。
麻山参事官: ありがとうございます。国土交通省 物流・自動車局、お願いいたします。
髙本参事官(国土交通省 物流・自動車局): 三つの項目がございます。②「事業の採算性検証」、⑪「自動運転がもたらす効果の評価方法の検討」㉓「審査手続きの透明性・公平性の確保」についてご説明させていただきます。株式会社ティアフォーの加藤様、BOLDLY株式会社の佐治様からお話がありました通り、今年度、全都道府県で99カ所の事業を採択させていただきました。2025年度も、特に通年運行の計画策定や実施を目標にしておりますので、引き続きしっかりと支援してまいります。
続きまして、㉓「審査手続の透明性・公平性確保」でございます。2024年6月に「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」を取りまとめました。関係府省庁の皆様と連携し、特に審査期間の短縮に取組んでまいりました。今後の具体的な手続きにおいても、審査期間の短縮は引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
最後に、自動運転ワーキンググループでの取組状況でございます。資料6の35ページをご覧ください。認証基準等の具体化による安全性の確保、事故原因究明を通じた再発防止、被害が生じた場合における補償の3つに加えて、ビジネスモデルに対応した規制緩和等について、ワーキンググループを開催しております。委員の皆様、オブザーバーとして関係団体、関係府省庁の皆様にもご参画いただいております。2024年にすでに第1回、第2回と開催し、2025年2月に第3回を開催する予定でございます。多岐に渡るボリューミーな項目を取り扱うため、第3回、第4回と2回程度開催した上で、さらに第6回や第7回まで続けるかもしれません。いずれにしても5月での中間取りまとめを目指しております。
麻山参事官: ありがとうございます。国土交通省 道路局、お願いいたします。
橋本審議官(国土交通省 大臣官房審議官(道路局担当)): インフラにおいては、特に安全性と円滑性を高める観点からも、支援をしなくてはならないと検討を進めているところでございます。
1点目、高速道路についてです。新東名高速道路における自動運転トラックの実証実験の準備を進めており、先読み情報の提供や、合流支援情報の提供も含めてしっかり検討を進めております。実験協力者として公募により2団体を採択し、現在はインフラ機器の通信確認等の準備を進めております。来年度以降には東北自動車道等にも拡充し、より多くのデータを取る予定です。
2点目、一般道路についてです。安全性を高める観点で技術基準やガイドラインを策定するため、車両側の事業と連携して実証実験を進めています。令和6年度には22自治体で路車協調システムの検証をしており、走行空間についても9自治体と協力しています。来年度も、補正予算を活用して取組を加速させたいと考えています。
最後に、自動運転インフラ検討会についてです。国土交通省だけでなく総務省・警察庁とも連携して検討会を進めており、様々な有識者のご意見を聞いております。ワーキンググループでいただいた意見を踏まえながら、議論を活発に進めたいと思っています。
麻山参事官: ありがとうございます。残り30分ほどになりますが、これから意見交換を行いたいと思います。最初に、本日ご欠席の岡本構成員、須田構成員からご意見をいただいていますので、ご紹介させていただきたいと思います。
まず、岡本構成員でございます。事業展開をしていく上で、エコシステムの構築と各プレイヤーに利益がどう出るかというのは大きな課題です。そのためには、既存のインフラや人材とデータを上手に活用して、簡単にシステムを作っていくことから始める必要があるのではないかというご意見をいただいています。また、モビリティを地域の課題の一部として捉えてシェアをしていく考え方が重要だというご意見、村上統括官からご説明のあった論点③については、既存のアセットを利用することが重要であり、論点①ではそのアセットのオーナーの人材を有効活用してオペレーションを行っていくのが良いのではないかというご意見をいただいております。
続きまして、須田構成員でございます。協調領域といっても、立場によってその捉え方が異なり、サプライヤーにとっては一部競争領域ともなりうるところがあるため、エコシステムを十分に考えて、どの分を協調領域として捉えるのか十分検討することが望ましいというご意見をいただいています。また、自動運転については、海外からの参入が報道されているが、日本としての優位性をどのように保つのかが非常に重要で、海外の事業を参考にするだけではなく、日本ならではの取組も進めていくことが重要だというご意見をいただいています。また、路車協調等、公共として整理すべきものについてはしっかり実施してほしい。特に、ルールを作ることに留まらず、費用面についてもしっかり検討をいただきたいというご意見をいただいております。なお、インフラ協調による効果を客観的に評価できるように、研究を進めているので、機会があれば紹介をさせていただきたいとのことですので、次々回、もし時間が取れれば、そうした場も設けたいと思っています。最後でございますが、各府省庁で自動運転のルールに着目した検討が行われているが、どうしてもルールに着目した検討になっていて、自動運転をどうやったら実現できるのかというところを念頭に置きながら検討をお願いしたいというご意見をいただいております。以上になります。
次に、各府省庁、それから本日話題提供いただいたお三方を含めて、皆様からご意見をいただきたいと思います。時間が限られておりますので、まず2分以内の挙手制でお願いします。足りない部分につきましては、最後に、ご意見をいただくか、後日、事務局にお知らせいただきたいと思います。ご発言の際は、Teamsの挙手ボタン、もしくはチャット機能でお知らせいただき、発言時にはマイクのミュート解除をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。それでは、山本構成員、よろしくお願いいたします。
山本構成員: 敢えて一言を付け加えさせていただくと、日本らしい自動運転の導入が大事だと思います。何が日本らしいかというのを考えるタイミングに来たような気がします。自動運転には、いろんなタイプがあると思います。ロボットタクシーみたいな自由にどこでも行ける自動運転もあればシャトルバスみたいなものもありますし、軌道上を走るタイプのモビリティも自動運転の対象になると思います。ただ、株式会社ティアフォーの加藤様が言及されたように、自律型の制御の技術開発は歩みに差があるものの進んでいくと思います。ただ、自律型を究めたとしても事故を完全になす状態での自動運転の導入ができるかというと大変難しいと思います。そのため、構成員の方々が指摘するように、インフラ協調という考え方が必要になります。ただ、インフラ協調のインフラを作るうえでも、どの自動運転を対象にインフラを作るかによって、インフラに対するコストや必要な予算、敷設に関わる時間も変わってくるわけですから、自動運転の山の上り方はいくつもあります。何を優先して進めるかというところも議論に加えて、それと合わせてインフラの整備計画も一緒にお考えいただくといいのではないかと思いました。
麻山参事官: ありがとうございます。石田構成員、よろしくお願いいたします。
石田構成員: 特にプレゼンをいただいた加藤様、佐治様、土井様のプレゼンには感銘を受けました。お三方の立場は異なるものの、技術面での着実な進歩と実績が確認でき、安心いたしました。しかしながらお三方のプレゼンは純技術に重心があったようにも思います。モビリティワーキングにおける大きな課題は、これらの技術をどのように実装していくかにあります。普及のコストをどう削減するかや安全保障の観点から国産化をどう進めるかについては、国が積極的に普及策を考えることはもう非常に大事だと思います。過去に大型計算機や高度医療機器の普及において取られた手法ですが、国策としてリース会社を設置し、ユーザーには安価にかつ大きな初期投資なしに使える環境を整える。サプライヤーには大きなマーケットをある意味では提示し投資を催促することを試みたのではないかと思います。ぜひ力強くご検討いただければと思います。
また、本日のお三方の説明では、自動運転を走らせる技術に焦点が当てられていましたが、究極的には提供するサービスが重要です。地域や都市にとっての真のニーズを探ることが必要であり、このワーキンググループやSIPで取組む必要があると思いました。
さらに、競争と協調についても大きな論点です。日本らしい自動運転、地域でのサービス、国が果たすべき役割を考えるにあたり、すでにある競争と協調についての区分けを一から見直し、深く議論することが喫緊の課題であると考えます。
麻山参事官: ありがとうございました。秋本様、よろしくお願いいたします。
鈴木構成員(代理:秋本氏): 自動運転を実現するための環境整備がどんどん進んでいるなと感じております。自動運転の社会実装における主要な課題として、車両の信頼性の確保と量産開発による低コスト化が挙げられます。この2つが解決しなければ、社会実装は進みにくいと感じております。例えば、ドローンでは消防庁が公共財として大量発注し、自治体への配布、またトレーニングの提供も消防庁が行うことで社会実装を促進しています。自動運転車両においても、信頼性を高めるための車両の標準化と型式認証が必要です。さらに、量産に必要な資金の調達は大きな課題です。標準化され、型式認証を取得した車両を量産調達する際には、公共交通機関として使用する場合、公共調達が有効な手段となり得ます。例えば9割補助のような補助金を活用して自治体への導入を加速させることも一つの方法であります。補助金の交付と引き換えに、政府が地域での走行データを得られれば、研究開発に役立ち、経済安全保障の観点からも国にとって重要なデータを確保することにつながります。これは、最終的には産業競争力の強化にも寄与すると考えています。
麻山参事官: ありがとうございました。川端構成員、よろしくお願いいたします。
川端構成員: 海外での自動運転の実証・実装が急速に進んできておりますが、本日の説明で、世界基準に照らしても、日本は技術単体で非常に進んできていると思いました。加藤様、佐治様、土井様からのご説明は、日本として非常に心強く感じました。しかし、自動走行を社会実装し、データを出している国々との差は、走行環境をどれだけ提供できるかによって生じております。加えて、収集したデータをどうシミュレーションに活かしていくかも重要なポイントです。標準化に関しては株式会社ティアフォーの強みと思いますが、ハードウェアのリファレンス標準化が必要であり、データの標準化やデータの共通的な利活用も今後の議論で重要になると考えています。自動運転においては、大量のシミュレーションを行うことが重要でありますし、リアルワールドでの実証やリアルワールドのデータを活用したシミュレーションも同様に重要です。海外の競合他社は、リアルワールドのデータをシミュレーションに活用し、ユースケースを作り出している点において非常に進んでおります。これらの点についても、今後さらに議論を深めていければと思います。
麻山参事官: ありがとうございました。若菜構成員、よろしくお願いいたします。
若菜構成員: 私はMaaS周りの、地方のいわゆる公共交通のリ・デザインをやっている立場から1点ございます。境町や陸前高田を訪問した経験から、ハードウェアや交通ルールの面で実装が間近である希望を感じています。しかし、事務局が出された論点①と論点②について、地方での自動運転への期待は高いものの、金銭的な制約で導入が難しい現実もございます。地方で自動運転を導入する際には、高齢者や子供を運ぶ旅客輸送だけでなく、農産物の出荷や宅急便、新聞、郵便など、多機能的に1台の車両を利用することが経営を成り立たせるために重要と考えています。そのためには、運営ビジネスモデルに関する議論が、社会実装を次の段階に薦めるために不可欠です。また、地方部では広い生活圏を考慮したエリアマネジメントが求められ、何台の自動運転車が必要なのかという議論が出てまいります。ニーズを掘り起こして多くの方に乗っていただきうる都市部とは異なり、地方部では複数のサービスを一台の車両で提供する多機能化が必要で、誰を乗せ、何を載せるのかを選ぶ必要が出てきます。適切な経営主体を決めて、多機能化を実現することが重要です。地方部では、総務省や農林水産省が掲げる地域運営組織(RMO)が運営主体となる可能性があります。地方での自動運転の実装には、誰が担うのかという具体的な研究と議論が必要と感じています。
麻山参事官: ありがとうございました。日高構成員、よろしくお願いいたします。
日高構成員: 今回のモビリティワーキンググループは特に自動運転の話がメインだと思っております。全体を俯瞰すると、自動車業界の産業政策としての考え方、具体的には海外のプラットフォームや自動車製造における競争にいかに勝つかという考え方、さらには地方部でのモビリティサービスに自動運転技術をどう社会実装していくかという議論が混在していると感じています。例えば、経済産業省が提供する自動運転の開発支援の70億円を地域の課題解決に活用する場合、アメリカ、中国、海外で競争力を持つ技術とは異なる可能性があります。社会実装と産業政策の議論を分け、それぞれの取組のポートフォリオを構築することが重要です。
石田構成員が指摘されたサービス水準と費用負担については、MaaS、モビリティサービスの文脈では、負担の方法としては、税金で出すのかユーザーが出すのか、ユーザーから出すのであれば運賃政策や、税で出す場合には道路か地域交通全体かなど、解像度を上げることが必要と思います。それに応じて技術開発も実績のある会社に任せるべきものもあれば、必ずしもそうはないものもあるため、計画にはこの点を組み込むことがよいかと思います。
麻山参事官: ありがとうございました。村松構成員、よろしくお願いいたします。
村松構成員: ロボットの観点からいくつかコメントさせていただきます。路車協調に関連して、ロボットの領域においてはロボットフレンドリーという取組を進めており、自動運転と似た状況にあると感じています。現在、ロボット単体でのビジネス展開が進められています。例えば床面清掃ロボットのルンバのような製品があります。ここに路車協調の要素が加わると、できることが増えてまいります。例えば、複数フロアを移動する清掃ロボットが実現し、人手が必要なく清掃が可能になります。しかし、エレベーターやフラッパーゲート等のインフラの改造にはコストがかかり、費用対効果の面で課題があります。人手不足が顕著な中でロボットの活用が求められており、初期投資に関しては行政の支援や共助の仕組みが必要だと考えています。最終的には、費用対効果を重視しながら、人手不足への対応策を検討していく必要がありますが、現状は初期投資を抑えた活用が普及している状況になります。
麻山参事官: ありがとうございました。波多野構成員、よろしくお願いいたします。
波多野構成員: 本日プレゼンテーションいただきました各社の皆様、政策・取組を説明していただいていた関係府省庁の皆様には、本当に多岐にわたる検討をいただきまして、非常に成果が見えてきているということで、心より敬意を表したいと思います。自動車業界として、懸念している点をお伝えしたいと思います。一定の成果を伴い、自動運転の社会実装に期待が持てる状況になっていることは、本日確認した通りです。しかし、2030年から2050年にかけての長期にわたり公共交通を持続的に提供するという観点で見ると、日本は制度的には進んでいるものの、テクノロジーの面で国際的な競争力がまだ十分でないのではないかと危惧しています。モビリティを提供し続けるためには自動化技術による事業性の確保に大きな課題がある一方で、必要な技術の獲得にかかる大きな負担を減らせていない状況が背景にあります。個々の企業が得意な分野を追求し、パイを分け合うだけでは、公共交通の持続的な提供が困難になると考えます。データの共有から始まり標準化モデルの構築を検討いただいている点は非常に好ましい方向ですが、枠組みだけでなく、内容についても協調して進め、オールジャパンとしての競争力を維持する仕組みを検討する必要があると考えます。国際競争に打ち勝つためには、官民連携で主体的責任をもって推進できるリーダーを伴ったオールジャパンの取組をすることが重要です。それにより、社会実装がさらに進展すると考えています。
麻山参事官: ありがとうございました。齊藤構成員、よろしくお願いいたします。
齊藤構成員: 進んでいるところがよくわかり大変安心しました。量産に際しては、多くの人が利用する良質なサービスの構築が求められます。サービスコストを下げるためには、サービスの観点から相互運用性を重視することが重要です。これには、事業者間や自治体間の相互運用が含まれます。システムアーキテクチャーを統一し、サービスを含めたレファレンスアーキテクチャーのモデルを一つ構築し、相互運用を含めたアーキテクチャの整理が必要です。そこで競争領域と協調領域を線引きしていくようなことが必要だと感じました。土井様がサービスエコシステムの話をされましたが、インフラを含めた相互運用がなされない場合、個々の企業の取組がバラバラになり、自治体間の連携も困難になります。モビリティワーキングで扱っております自動運転は、本来、ITSシステムの文脈の延長線上にありますので、ITSシステムとしてエッセンシャルサービスを含めたレファレンスアーキテクチャーの検討を進めることが望ましいと思います。
麻山参事官: ありがとうございます。様々なご意見をいただきましたが、時間が限られておりますので、全体のご議論をお聞きいただいて、加藤様、佐治様、土井様から、各府省庁でこういう取組をもっとやってほしいというようなご意見がありましたら、いただきたいと思います。特に、山本構成員から、どこにプライオリティをつけていくべきかという話もいただきました。これは、これから各府省庁が行うべき施策に繋がっていくと思いますので、その点についてもご意見をお願いしたいと思います。また、佐治様におかれましては、甲田構成員からの質問で、都会と地方で既存産業が行き届いているところと届いてないという違いがあるが、どのようなところから、事業展開を進めるべきなのかお伺いしたいという話もありましたので、その点も含めて、ご意見をいただければありがたいと存じます。では、加藤様からお願いできますでしょうか。
加藤氏: 本日は私もとても勉強になりました。いろいろなステークホルダーもいらっしゃいますし、ステークホルダーの観点でまた違った意見があると思いますが、私は日本の自動運転の社会実装について決して悲観的になることなく、しっかり進展している部分がかなり多いと感じています。技術だけでは解決できない問題もあり、日本ならではのアプローチが重要だと考えています。ソフトウェア開発は非常に重要ですが、通信インフラやハード面も同様に重要です。ガードレールのような既存のハードインフラの整備や、走行しやすい環境を整えること、路面駐車の取締り等を通じて、技術の導入が容易になることもあります。自動運転の社会実装の加速には、ソフトウェアだけでなくハードウェアの側面も含めてインフラ整備を進めるべきだと考えています。
麻山参事官: ありがとうございます。佐治様、いかがでしょうか。
佐治氏: ありがとうございます。自動運転を普及させるにあたっては、サービスとして使いやすく、またサービス間の互換性も作りながら行っていく必要があるということは大変勉強になりました。この普及を見据えた場合、弊社は自動運転の交通商社として、大量の需要を取りまとめ、メーカーへの大量発注を行う流れを作り出したいと考えております。ファイナンスの面では、有識者の方々からヒント頂きました大型計算機が普及した際のようなスキームを再度作っていく動きもしていきたいと考えています。自動運転をどこから普及させていくかについては、なかなか解が見つかりませんが、結果的に、ふるさと納税で財源が豊かな地域や、都会で首長が決断し予算を確保した地域、運よく国土交通省の事業を獲得した地域が先行しています。次に取組みたいのは、財源や人材が不足している交通空白地域に、まだ高コストな自動運転を持続可能な形で実装を進める仕組み作りです。財源を含めた取り組みを進めていく所存です。
麻山参事官: ありがとうございます。土井様、いかがでしょうか。
土井氏: 様々なサジェスチョンありがとうございます。皆様のご意見はごもっともだと思いながら聞かせていただきました。特に「日本ならでは」の取組や「サービスからのデザイン」の重要性については、まったくその通りだと思います。我々は技術開発のための技術開発をしているわけではなく、実際に社会に実装されるモビリティとして自動運転を考えております。本日は触れる機会がございませんでしたが、福島県浪江町で実施している有人モビリティプロジェクトでは、地域のニーズや必要とされる移動手段、地域を活性化する移動手段についても取組んでいます。地方では、高齢者の移動支援が注目されがちですが、移動手段を必要とする子供たちもおり、家と家が離れた地域での移動手段が大きな課題となっていると聞きます。その辺りも含めて地域の取組を進めていく必要があります。一方で、量産に関しては、日本国内および海外での長期的な需要量が保証されなければ、コスト競争に敗れる可能性があります。どのようにして実装プレイヤーと協力し、量を確保していくかという議論を今後も深めていきたいと考えています。
麻山参事官: ありがとうございます。本来、意見交換ですので、各府省庁からいろいろお答えもいただくべきところですけれども、お時間が少なくお答えができないかと思います。その中で、石田構成員から安全保障上の観点から今後どう対応するかというご意見、波多野構成員から2030年から2050年にかけて公共交通をどう担保していくためには、テクノロジーも全体で検討するということも考えていかなければいけないというご意見、日高構成員から、産業政策としてどう対応するのかというご意見をいただきました。経済産業省製造産業局から、何かコメントできることがあればお願いしたいと思います。
田中審議官(経済産業省 製造産業局): ありがとうございました。我々はこれまで様々な実証事業を行ってきております。先ほどご説明したように、協調領域としての自動運転標準モデルやオープンデータセットの推進を進めていきます。しかし、これが全ての地方に行き渡るというよりは、どちらかと言うと都市部を中心としたサービス提供となっていくと考えています。標準化とコスト低減の領域にどれだけ踏み込めるかは、事業者や専門家の意見を参考にしながら、関係府省庁との連携を図りながら進めていきたいと思います。
麻山参事官: ありがとうございます。時間が超過しておりますが、本日の議論を通じて、デジタル庁の村上統括官からコメントをお願いします。
村上統括官: 長時間ありがとうございました。今回、事務局としては、今回は産業の見方を少し変えて、縦から横串を刺してサービスを起点に一つのエコシステムを作っていくというところについて、共通の理解ができると良いと思っていました。しかし、実際には、既に皆さんの方で同じ考えを共有していただいていたことがわかり、意を強くしたところです。本日、多くの意見を頂いて、かなり材料が出揃っていると思いますので、改めてこれをどうしっかりと戦略に編んでいくのか、事務局としてもよく検討したいと思います。
その中で、事務局として新たに感じた課題を3つ挙げます。1つ目は、山本構成員の言葉を借りれば日本的自動走行とは何かということで、標準化を超えて、出口を絞ってオールジャパンということを考えたらどうかという意見が比較的多く出ました。そういう視点から改めてどういうふうにまとめていけるか考えていければと思っております。
2つ目は、地域の実需の明確化です。やはりサービスの需要からバックキャストするべきではないかという点が明確にならないと、技術のための技術論になるというご懸念も頂きました。ここは次回の交通商社についての議論でも出てくるので、この点も掛け算していきたいと思います。いずれにせよ、サービスからバックキャストできるエコシステムやリファレンスアーキテクチャーという宿題が二つ目であったと思います。
3つ目は、自らに課するという意味でも、これらを加味しつつ、改めて春の時点ではタイムフレームに落とし込みながら、それぞれ誰がどの役割を担うのかというプレイヤーのマッピングをはっきりさせなければなりません。やることが決まっても、誰がやるかというところがもう少し明確になっていないといけないと思います。
どこまで書けるかについては限界があるかもしれませんが、日本的自動走行とは何かという点の絞り込み、地域の実需の明確化、タイムフレームと役割分担について高い解像度のロードマップにたどり着けたら良いというメッセージを頂いたのだと理解しております。引き続き、時間が足りなかった分、追加のコメントを事務局としてもお待ちしております。各府省庁については丁寧な説明をいただきながら、コメントをしていただく時間を作れなかったことについてお詫び申し上げます。引き続きご協力をいただければ幸いです。本日はありがとうございました。
麻山参事官: ありがとうございます。森主査からワーキンググループの総括をお願いいたします。
森主査: 本日は長時間の会議であるにも関わらず、活発にかつ効率的にご発言いただき感謝申し上げます。特に本日話題提供いただきました株式会社ティアフォーの加藤様、BOLDLY株式会社の佐治様、日産自動車株式会社の土井様、ありがとうございました。また各府省庁からも、現在の取組状況というのをご報告いただきまして、ありがとうございます。
冒頭でもお話しました通り、この1年2年が自動運転の事業化に向けて極めて重要な時期であるということ、またお集まりの皆さんに課題をお互いぶつけ合っていただいたということで、貴重な機会だったと思っております。自動運転に関する各府省庁の施策を改めてまた次々回のワーキンググループで整理をしていくということになっておりますので、各府省庁の施策の内容のアップデートをぜひお願いしたいと思います。
少し私としての意見を言わせていただきますと、自動運転を考えていくにあたり、ありとあらゆるシーン、ありとあらゆる利用者を考え出すと、きりがなくなってしまいます。BOLDLY株式会社が扱っておられる20キロの町バスのような遠隔監視による実現、あるいはシニア人材が同乗するような20キロバス等は地方部で実施し、町部はロボットタクシー的なことを実施していく。あるいは高速道路上ではトラックの自動運転をやっていくのだというように、自動運転を実現させていく舞台とそれを使っていく利用者を明確に分けて議論をしていくことを考えた方がよいと思います。そして自動運転が、ありとあらゆる事象に対して自動で操作できるようなことはもうあまり考えない方が良いのではないかと思います。実際、中国やアメリカの自動運転や無人タクシーもそうはなっておりません。路地の手前で止まれば良いだけの話であって、その路地の狭いところまで、ギリギリまで入っていくことまで考える必要もないのではないかと思います。これも私から何度もここでお話をしたとこでございますが、そういうところを目指していただければと思います。
また、各府省庁から検討状況、あるいは研究状況をお話いただきました。本日、その最先端を行っていただいております株式会社ティアフォー、あるいはBOLDLY株式会社、あるいは日産自動車株式会社におかれても、ぜひ各府省庁で実施している研究の修正点、あるいはこの研究はいらないというようなところがありましたら、この場ではなかなか言いづらいと思いますので、私か事務局にお話をしていただければと思います。先のバスの調達に関しましても、1台1.5億円かかるとおっしゃっておりました。今までのこの自動運転に関わる研究開発費用を考えれば、集中すれば、実際に国が調達をして、各自治体にリースするというようなことも実際できると思います。私自身も県知事等に話をしていますと、リースだと短期間過ぎて単なる見せ物として終わってしまうが、県だったら買えるとおっしゃる方もいらっしゃいます。さきほどの境町のように実際買える自治体もあるということでございますので、ぜひ様々な入手の仕方も考えていただければと思います。一方で、国土交通省が取り組まれておられます公共ライドシェアで交通空白を解消していく700地域と、今回地方部で無人バスを取り組まれようとされているところがマッチングをされているかも、次回以降お話を聞かせていただければ幸いと思う次第でございます。いずれにしましても、このタイミングでぜひ具体的な、空港のグランドハンドリングや工場内の荷物運搬といった実際できるところをどんどん自動化していただきたいと思います。また、世界の中でも日本が特殊な事情として置かれている人手不足の中でも、ぜひ今回のこういうサービスが実現できることを祈念してやまないところでございます。
次回は交通商社機能を、そしてそれを支えていくための交通基盤のあり方、共通基盤のあり方を議論させていただきたいと思っております。構成員の皆様方には引き続き、それぞれの専門分野を生かした積極的な討議をお願いしたいと思います。本日は非常に長い間、皆さんの熱心なご討議ありがとうございます。これをもって私のご挨拶とさせていただきます。
麻山参事官: ありがとうございました。本日時間が短かったのですが、森主査、村上統括官からの発言の通り、意見が追加でございましたら、事務局にいただけるものは事務局に、そうでないものは、直接、補佐官、統括官にご連絡いただければと思います。また、本会議資料はデジタル庁ホームページで公表させていただきます。議事録は、有識者の皆様に内容をご確認いただいた後、同じくデジタル庁ホームページで公表させて頂きます。今後の予定につきましては、ご挨拶で触れていただいた通りでございますので、詳細は資料6の46ページをご覧いただければと思います。次回、第8回ワーキンググループはご連絡をさせていただきました通り、2月25日に開催させていただく予定でございます。本日はこれにて閉会とさせていただきます。ありがとうございました。
以上