Web3.0研究会(第7回)
概要
- 日時:令和4年11月18日(金)10時00分から11時30分まで
- 場所:オンライン
- 議事次第:
- 開会
- 議事
- ヒアリング1(JP GAMES 株式会社:田畑端様)
- ヒアリング2(Next Commons Lab:林篤志様)
- 閉会
資料
議事要旨
日時
令和4年11月18日(金)10時00分から11時30分まで
場所
オンライン会議
出席者
構成員
國領二郎(慶應義塾大学総合政策学部 教授)
稲見昌彦(東京大学総長特任補佐・先端科学技術研究センター 身体情報学分野 教授)
河合祐子(Japan Digital Design 株式会社 CEO、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 部長、株式会社三菱UFJ銀行 経営企画部部長)
殿村桂司(長島・大野・常松法律事務所弁護士)
藤井太洋(小説家)
松尾真一郎(ジョージタウン大学研究教授)
デジタル庁(事務局)
- 河野大臣、 大串副大臣、尾﨑大臣政務官 、 楠統括官、野崎参事官
議事要旨
ヒアリング1につき、 JP GAMES株式会社の田畑様より説明。
JP GAMESは4年前に設立した会社で、ゲームクリエーターとしてゲーム開発の仕事と同時に、そのゲーム開発のノウハウや技術をゲーム以外の領域に拡張していき、メタバースという事業を推進すべく立ち上げた会社である。
「ゲームには、ゲーム以上のパワーがある」というメッセージを共有する。ゲームの遊び手視点ではなく、作り手から見たときのゲームの捉え方である。
ゲームの遊び手からすると、ゲームは遊びでしかないが、ゲームの作り手から考えると、多くの人が集まるための集客ツールであり、集まった人に長く滞在してもらうための滞在装置である。遊びは1つの体験の要素であり、それ以外にもホスピタリティーや時間を過ごすための体験の価値など、様々なものを組み合わせてデザインし制作している。つまり、ゲームは人に長く世界に滞在してもらうためのノウハウやテクノロジーの塊である。遊んで終わりのゲームという活用方法だけではなく、各種産業、各種企業のDXや課題解決などへの活用や、ユーザーを集め、その世界に長く留まらせるノウハウが社会課題の解決にも生かせるのではないかと考え、4年前からこの仕事を進めている。
キャリアの多くの部分は、独立前に在籍していたスクウェア・エニックス社で、ファイナルファンタジーという人気のロールプレイングゲームシリーズの開発と販売に費やした。日本のゲーム、日本のIPであるファイナルファンタジーを世界の多くの人たちに受け入れてもらい、世界的なIPに成長させるべく取り組んできた。
ゲームの作り方や販売方法と共に、ゲーム以上の価値をどのように盛り込むか仕事を通じて取り組んでいた。例えば、過去に開発したファイナルファンタジーXVというタイトルがあるが、ゲームの世界の中にヴェネチアの街を入れることで、ファイナルファンタジーを遊んだ人たちが、実際には行ったことがなくてもヴェネチアを楽しむことができ、実際にヴェネチアに行ってみたいという需要に繋がる試みや、「NHKスペシャル『人類誕生』」というドキュメンタリーがあるが、ファイナルファンタジーのテクノロジーと研究者、歴史学者の知識を組み合わせて、実際には再現不可能な人間の太古の歴史を映像として再現を試みた。
独立して最初に取り組んだのがパラリンピックの公式ゲームの開発する仕事である。
パラリンピックというIPは、知名度は非常に高い反面、関心度は極めて低い特性があり、興味が無い状態から少しずつでも興味を持ってもらえるのかが課題だった。
世界初のパラリンピックの公式ゲームに取り組み、ペガサスというプロジェクトコードネームを作り、ペガサスシティという街に健常者も障がい者も分け隔てなく、区別なくアバターとして集まり、バーチャルなパラリンピックにユーザーとして参加するイベントを実施した。昨年のオリパラの期間に約20万ダウンロードを記録して、ゲームの様子を配信した動画が1つのハッシュタグで3000万回以上再生された。ゲームの力をうまく活用することで、いろいろな社会課題に対するアプローチができると経験の中でもかなり蓄積している。当初は4年前に設立したJP GAMESというゲームスタジオで、ゲームの開発とその技術を活用したメタバースの開発を行っていたが、今は会社を分離し、メタバースやWeb3.0などの領域は専門の会社で進めている。以前は海外企業からの仕事依頼が多かったが、現在は日本企業からの依頼も多く、この2年ぐらいでメタバースやWeb3.0の分野に進出したい企業が増えていることを実感している。
ANAと仮想旅行のプロジェクトに取り組んでいる。仮想旅行は、現実の旅行の代替体験ではなく、旅好きたちの居場所となるべき仮想空間であり、同時に、まだ現実の旅行に行ったことがない人たち、もしくはいろいろな事情があって現実の旅行に行けない人たちの入り口の体験となるものを目指して制作している。来年リリースをして浸透させていく計画で現在進めている。
私は、メタバースは、1つ1つの世界が独立して存在するマーケットではないと考えている。ユーザーには属しているコミュニティーが多く存在する。SNSを中心としたユーザーが普段過ごしている場所がある。そのユーザーのアカウントIDがアバターという体を手に入れることで、様々な仮想空間に出かけていくイメージで、メタバース市場もそのように利用されていくことで成長していくと捉えている。
ゲームも従来型のゲームとSNSユーザーの出張所のゲームに分かれている。例えば「フォートナイト」や「どうぶつの森」などのSNSで話題のゲームや、もしくはユーザーが配信をしてその配信を多くの人が視聴しているゲームは、従来型のゲームと特性が違い、SNSユーザーたちの遊び場、出張所として機能している。楽しむだけの場ではなく、趣味で集まって時間を過ごす場としてのオタク系や趣味系のメタバースが多く生まれてくると感じていた。更にそこに企業のサービスや社会課題の解決を取り入れたサービス系のメタバースあるいはビジネス系のメタバースが生まれてくるのではないかと推測していた。
しかし、サービス系やビジネス系のメタバースも、SNSのユーザーが出張して楽しむ場である必要があるため、集客力があり、ユーザーがその場に長く滞在できるような仕組みや、楽しみながら企業のサービスを受けたり、社会課題の解決に取り組んだりする必要があるだろうと考えている。
また、ゲームやメタバースに共通している点として、今のSNSのアカウントはまだ体がないが、キャラクターやアバターなど、ゲームやメタバースは体がある。体がある仮想世界で過ごすことに意味がある。読書や映像を見て取り込んだ知識は意外と忘れやすいが、ゲームの場合は知らない世界で何者かになり、その世界で人生を送るという疑似体験は自分の体験として刻まれる。
アバターを使ったメタバースや、更にビジネスモデルとして発展していくWeb3.0には同じ特性が生まれてくるのではないか。アバターの場合、ゲームのキャラクターの操作とは異なり、一人称に近いため自分自身の体験になると推測され、その体験が刻まれていく度合いが高まっていくのではないか。
ゲームのノウハウを遊びだけに活用するのではなく、教育への活用や、なかなか旅行ができない人に向けた旅行のサービスに活用、防災のための体験に活用など、様々な活用の仕方をゲームのノウハウと組み合わせることで作り出せるのではないか。
パラリンピックの公式ゲームに取り組んだ際、ロールプレイングゲームの技術をメタバースに転用しやすいように技術構築し、ペガサスプロジェクトを通じて作ったPEGASUS WORLD KITというメタバース用のフレームワークを開発した。この技術のフレームワークを使いANAの仮想旅行のプロジェクトも開発をしている。
「Metaverse as a Service」については、メタバースもクラウドネイティブになっていくべきではないかと考えており、アカウントがアバターという体を持つことで、自由に様々なコミュニティーに出かけることができる。都度アプリケーションをダウンロードせず、URLを入力すると直ぐにその世界に飛んでいける世界になるだろうと考えており、当初からPEGASUS WORLD KITという技術はクラウドネイティブ化することを前提に開発している。
User Generated Contentという言葉の略称であるUGCが、これからメタバースやWeb3.0が大きく普及していく上で重要なポイントになると考えている。
コンテンツやゲームの作り手がコンテンツを作り、遊び手に提供して終わる関係性は既にゲームの世界では変わっているからである。作り手から遊び手にコンテンツが渡った後、遊び手が自分自身で改良を加え新たな遊び手に届けるというCtoCのマーケットが広がっている。このとき重要になるのは、ユーザーによる拡張機能であるため、今手掛けているメタバースはユーザーによる拡張を重視した作りになっている。そういったことを取り組みの中心に据えて、このキットを多くの企業や個人に提供し、メタバースの世界を生み出したい。同時に、増やしたメタバースの世界を孤立したものにするのではなく、繋げていく取組みを進めている。現在はまだSNSのアカウントが体を持っていないため、アカウントをまとめて保有できる共通アカウントを作り、本人認証のシステムや課金のシステムを統合し、PEGASUS WORLD KITで作られた世界同士を自由に行き来できるシステムを開発するところである。個々の世界は独立したメタバースの世界だが、1つ1つの世界が繋がりユーザーが移動することで、経済的にも流動性が生まれ、かつ企業同士、サービス同士も相互の送客が可能になるため、プラットフォームとして成長性を持てると考え、メタバースを広げる戦略と繋げる戦略を同時に進めている。
実現したいのは、経済圏を作るというだけではない。ゲームやメタバースはキャラクターやアバターの体を使ってユーザーが行動するため、質の高い行動データを多く取れる。アカウント毎にユーザーは複数の人格を持ち複数の行動を取るため、人間1人の行動データではなく、より細分化された行動データを取得できる。取得したデータをこれからの企業のマーケティングのツールとして活用するべきだと考えている。
2点課題として共有する。
1点目は、「多産多死」である。現在の国内のメタバースの状況をこのように捉えている。メタバースの定義は幅が広いが、小さなメタバースが今多く生まれている状態である。ミニバースとも言われているが、小国の乱立状態は産業が生まれてくる段階においてはすごく望ましい。ゲーム産業も昔は良いものも悪いものも含めて多く生まれ、売れるものもあれば全く売れないものもあり、多産多死の時代があった。その後市場として洗練され今のような産業構造になっており、現在の国内のメタバースはまさにその最初の段階に見える。ゲームよりもメタバースの方が市場として立ち上がるのが難しいと感じているため、なるべく多死は防げるほうがいいのではないか。
多死を防ぐ方法は幾つも考えられるが、例えば多くの小さなミニバースを、様々なプラットフォームの技術を超えて集団化することで、孤立した戦略で行き詰まって死んでいくことを防ぐ方法が取れないのか。多死を防ぐような戦略、施策というものを考えてもらうことで、もっといいサービスを生み出すところに集中していけるということを感じている。2点目は、「個人活動ができない」ことに課題を感じている。
「個人活動ができない」という問題は、YouTubeやTikTokなどの動画プラットフォームの成長を思い浮かべてほしいが、個人が制作したものを発信でき、それを他のユーザーが興味を持ち見たり聞いたり広めたりしていくという、CtoCの構造に落ちていき、初めて大きくユーザーが参加してくる市場になっていくというのが、今のITの世代ではないか。ゲームの作り手が主権を持っていた時代から、遊び手に主権が完全に移り、遊び手が更なる二次創作の作成や一次創作物を配信してユーザーを増やす様子を見てきたため、メタバースも個人が入り込み、個人が楽しむ場、個人が自分の仕事として取り組める場になるかがポイントだと感じている。
今のメタバースは企業でないと取り組めない側面がある。これは環境の問題もあり、個人が取り組んだとしてもビジネスにできない段階だとも言える。いずれにせよ個人活動ができるようになり初めて活力を持つようになり、市場としても広がっていくのではないか。
メタバースやWeb3.0のモデルは、個人が活動領域を広げていく時に有効であると感じているため、メタバースとWeb3.0の私からの見え方は切り離されておらず、段階的に統合し、新しいITのプラットフォームになると考えている。2つの課題、多死を防げないものかということと、個人活動を推奨するようないろいろな制度設計や仕組みを作れないかという点を議論させていただきたい。
構成員からの質疑及び田畑様からの回答において、主に以下の発言。
構成員: 1点目はメタバースで個人活動ができないという話について、何が制約で個人活動ができないのかお聞きしたい。
構成員: 2点目は多産多死について、日本の産業の問題は廃業率が著しく低く、本来淘汰されていく企業が残っている結果、生産性が下に引きずられるという議論がある中で、多産多死の何が問題なのかが理解できていない。たくさん生まれた中で良いものが大きくなる一方で、他のものが潰れたとしても顧客や投資が集中することで成長していくことが恐らくあるべき姿であり、多産のままでは顧客も投資分散してしまい、結局成長しないのではないか。
構成員: 3点目は、政府やデジタル庁がフォーマットを決めるべきとあるが、デジタル庁では技術の良し悪しが分からない。本来マーケットが便利なフォーマットを選ぶべきであり、デジタル庁が指定した後、より良いものが出てきたら指定したものが見殺しになってしまうため、デジタル庁としてフォーマットを決めるべきではないと考える。
- 発言者: 多産多死における経済合理性という意味では、駄目なものが淘汰され良いものだけが残っていくことが重要だと思っている。一方で、メタバースという日本人の特性に合った空間を構築するサービス、あるいはその空間でユーザーが時間を過ごすサービスは、多死が進むことにより他国に対して発展が後れを取る懸念を抱いている。
- 発言者: 実際、日本のIPは国外からも人気を博しているが、一方で日本のIPや日本の空間構築技術を世界に提供していくには、まだ多死のフェーズに留まっていると感じている。出遅れてしまう懸念があり、多産多死のうち、多死はなるべく抑え、日本の様々なメタバースのよい部分が一体となり、世界で戦えるようになっていくのがいいのではないか。
- 発言者: 3点目の質問について、デジタル庁がフォーマットの構築をできるはずがないという意見には同意だが、メタバースやWeb3.0の市場形成や競争力を構築時に、国が主体的に関わることで、産業側は自信を持って乗っていくことができるため、方向性を示したメッセージだけでも発信していただきたいと思いお伝えした。
- 発言者: 個人活動をできない理由について、メタバースを単に世界の構築と捉えれば、個人でも活動できているが、今回メタバースを構築するに際して、ゲームで培った技術や集客・長期滞在のノウハウをメタバースに持ち込んでいる。ゲームの技術やノウハウを活用することにより、様々な企業のサービスや社会の課題に対するユーザーが楽しみながらの体験や理解に繋がると実感している。
- 発言者: 個人のレベルで取り組むのは難しいと感じているため、メタバースを開発しやすくするツールをなるべく多くの個人に提供し、個人がメタバースを制作しやすい環境を整えたい。それにより個人が環境を作れる問題は解消していくと思うが、クリエーター個人が企業のメタバースプロジェクトに参加しやすくなる環境も同時に必要だと考えている。
- 発言者: 現状、クリエーターも会社に所属しており、会社の仕事に取組む形が大半であるが、Web3.0のように個人を集めたコミュニティーで様々なものを作っていく取組みが発生することで、個人活動が広がっていくのではないか。逆に言えば、今は企業の取組みに個人が入っていく状況が限られているため、個人としてメタバースを手掛けにくくなっていると感じている。
構成員: 個人活動の支援について、制度面の部分と技術面があると思うが、生成系のAIをより活用できるようになると、世界もアバターも含めて作りやすくなると技術論としては想定している。自分と自己同一性を感じるようなアバターの権利がどのような権利なのか分からないが、複数のメタバース間でどのようにやり取りし、どのように権利を守っていくのか考えがあればお聞きしたい。
- 発言者: 個々のユーザーの体験をどのように構築するかということを考える時に、それに対するリスクも同時に発生することを課題として持っている。ゲームの世界でも、誹謗中傷など、キャラクター同士の嫌がらせは日常茶飯事で、この問題を解決できていない。それよりも面白さが上回るためユーザーが増加しているという現状。まだ明確に解を持っているわけではないが、メタバースやWeb3.0はアカウントと紐づくことで一定の抑止力は働くのではないかと考えている。
- 発言者: 特にメタバースは独自のアカウントよりも、いろいろなサービスを統合しているSNSのアカウントがアバターと紐づくことで、一人一人のマルチアカウントであっても、その人格はそれぞれ社会性を持たなくてはいけないといった方向には行くのではないかということと、Web3.0においては自分の人格が可視化されているため、個々の構造がガラス張りになっていて望ましい。
構成員: メタバースにおいては、恐らく人格は個人に紐づくのではなく、コミュニティーに紐づくこともあると思うが、その辺も踏まえて今後も議論を行っていきたい。
構成員: アカウントについて、インターネットやWebの世界とメタバースの世界をどのように繋ぐかという時に、一番重要な論点であるアカウントをどのように考えるか。あるいは結局ビジネスモデルと関係するため、メタバースの世界にビジネスを持ち込むのか、持ち込む場合はどのような形で持ち込むのかということで、アカウントの議論が密接にリンクする。
シリコンバレーでInternet Identity Workshopというアイデンティティーの世界ではトップのワークショップが開催されているが、プラットフォーマー、アイデンティティープロバイダーが、クッキーの使用や個人をトラッキングし、ターゲティング広告で儲けていることが問題だと議論されている。私は、そこで同じ言葉を別の角度から見る「悪魔の辞書」を作るというセッションを主催した。そこでは、例えばログインというのは、allow us to track your across session and create your behavioral profileと言い換えることができるという提案があったが、ログインは人をトラッキングするいい機会なのである。構成員: つまり、アカウントをどうするかというのは、個人をトラッキングするということと極めて密接に関係しており、インターネットができて以来これまでのビジネスモデルは、基本的に広告でお金を徴収するか、サブスクをするか、物販をするか、この3つになる。トラッキングすることは、広告を引っ張ってくるという従来のビジネスモデルだったが、果たしてメタバースで必要なのか。メタバースの世界においてエコシステムを構築するために、アカウントを作ってトラッキングしやすくするのがいいのか。今までは、アカウントを作成・管理してきたビジネスエンティティはトラッキングできた。そのため、今回メタバースを構築する時に、既存のアイデンティティープロバイダーのアカウントを持ち込むことが逆にいいのか、どのようなビジネスモデルとアカウントのモデルがあると望ましいのか、アイディアがあればお聞きしたい。
構成員: 共通フォーマットについて、世界的な動きとしては、メタバース・スタンダード・フォーラムがアメリカ主導で動き出したりしているが、日本独自の規格を推し進めていくのが望ましいのか。あるいは、世界の規格作りに参加したほうがいいのか。日本はガラパゴスになりがちだと言われているが、メタバースの動きとしてどのように考えているかお聞きしたい。
構成員: 関連して、ユーザーを囲い込む従来型のプラットフォームビジネスのビジネスモデルで進める場合、全てを共通化しアカウントも自由に移動できてしまうと理に適わないと思っており、規格を共通化していく話と、囲い込むビジネスモデル、そもそも両立させるのか、させないのかということについて、考えがあればお聞ききしたい。
構成員: メタバースを作ったことがあるため、肉体を持って没入すること、その中で行動することが実際の体験に積み上がっていく、パーソナルなものであると理解しており、ゲームの優れたコンテンツから発信していくことを応援したい。
構成員: ビジネスモデルとアカウントの問題、プライバシーの問題と強く関係するが、ユーザー行動の蓄積により得られる情報は、現状広告しかマネタイズの方法がない。この現状を打破することができる可能性について、気配でも感じていればお聞きしたい。
構成員: 実際、広告モデルから脱却できるかどうかが、Twitterの大混乱の一部も関係している。トラッキングされない、特定の大企業に全てのデータが集約することがない将来について考える1つの方法ではないか。
- 発言者: アカウントの問題を突き詰めていくと、GAFAが全てをデザインしている問題や、今の広告モデルにしか繋がらないという問題と認識している。実情としては、SNSのアカウントがメタバースやゲームに出張してくるようになると思う反面、決して広告モデルに行かない方法としては、日本が得意なコンテンツの作り方を取り入れ、コンテンツに対してマネタイズしていくことがいいのではないか。
- 発言者: ゲームや映画、テーマパーク、旅行を経た感動という目に見えないものを体験化するようなテクノロジーやノウハウというのは、日本人が優れている。
アメリカ型のゲームと日本型のゲーム、もしくはアニメや漫画の大きな違いはそういう点にあるのではないか。そのため、日本の独自性を世界に向けて発信していくことが、広告モデル以外のビジネスモデルを大きくしていくポイントだと考えている。私が手掛けるものは、メタバースであっても感動体験というものをしっかりと作って、その世界に長く滞在したい、その世界を好きになることにマネタイズのポイントを持っている。 - 発言者: 更に、先ほどの2番目の質問にも関係するが、世界に対して日本人のブランディングをしていくことが重要である。日本人の仕事の確かさや品質は、世界的に見ても圧倒的に高いが、日本製品や日本のアニメが人気の一方、その担い手に対してはさほどブランド力が高まっているように感じない。この点を解決していくことで、日本や日本人に対する需要が国際的に高まっていくため、様々な現状の問題の活路にも活用できるのではないか。
ここで前半が終了。続いて、ヒアリング2につき、Next Commons Labの林様より説明。
- 10年近く、日本の地方や、過疎が進んでいる地域や限界集落に入り、人口減少問題への対策に取り組んできた。全国各地の地方でプロジェクトを立ち上げている。課題解決という悲観的なものではなく、新しい社会の形を実装する上でのフィールドとして、地方に可能性を感じている。
- 「デジタル村民」という新しい概念が生まれ、NFTを使って新しいプロジェクトをスタートしており、その舞台が旧山古志村という地域である。人口800人足らず、高齢化率が55.9%の、文字どおりの限界集落である。幻想的な風景の中、棚池では錦鯉が泳いでおり、錦鯉発祥の地と言われている。
- 2004年の中越震災から18年経ったが、山古志村は全村避難で数年に渡り村に戻れなかったことで全国に名前が広がり、山古志という地名を聞いたことがある人は多いのではないか。当時2,200人だった人口は800人まで減少した。
- プロジェクトが始まったきっかけは、震災復興の補助金を活用し、地域おこし・地域活性と言われるようなものに多く取り組んできた地域だったが、結果として人口減少の波に抗うことができなかった。このままだと村の存続が難しいという危機的な状況が明らかになってきた中で、地域の方々から物理的な山古志村への居住関係なく、デジタル空間も含め山古志村を存続させる方法を考えたいと相談を受けた。ちょうど1年半ほど前に相談を受けて、提案したところからプロジェクトが始まっている。
- 仮説として、NFTを使ってデジタル住民票という新しい概念を作れないか、「デジタルアート×電子住民票」を発行することによるNFTを接点とした新しい共同体の形成、ネットワーク経由で世界中からの知恵や資源を収集できないか、また、山古志という地域は行政区としては存在せず長岡市の一部となっているが、独自の資金調達ができないか、というような見立てからプロジェクトを始めた。
- 「The New Digital Village」という英語のサイトを作り、世界中の方々に、山古志が置かれている現状を説明し、山古志の未来を存続させるために一緒に考え行動してくれるデジタル村民の証として、錦鯉をモチーフにしたジェネラティブアートを購入いただけないか伝えてきた。
- デジタル村民について、このプロジェクトは「山古志DAO」と呼んでいる。リアル村民は減少していくが、地域の脈々と受け継がれた精神性や地域の資源について理解している人々である。
一方、この山古志村に共感し、NFTを購入されたデジタル村民が世界中にいる。彼らは、彼ら自身が非常に貴重な人材であり、アイディアを持ち、資金を提供してくれる存在である。通常のNFTのプロジェクトとは違い、オンライン完結ではなく、デジタルとリアルが融合したところに可能性を見いだしたいと考えている。リアルとデジタルの交わるところを「仮想共同体」として、山古志DAOと呼んでいる。 - 結果的に、今800人のリアル人口に対して1,000名を超えるデジタル村民がおり、リアルな人口をデジタル村民が超えた状態である。初期のNFTの売上げで41イーサほど売上げがあり、当時のレートで大体1,500万円程のお金が暗号資産を経由して世界中から集まった。その予算と、実際に集まってきたデジタル村民の力を借り、様々なプロジェクトを仕掛けている最中である。予想以上の反響があり、伊藤穣一氏をはじめ様々な方々に国内外から参画をしていただいている。
- このNFTのユーティリティー機能の1つ目は、Discordを使い、日々プロジェクトのディスカッションや、毎朝の挨拶や日常会話を共有するSNS的なものである。プロジェクトを進行するためのツールとしてDiscordがあり、Discordは基本的にオープンになっているが、デジタル村民でないと入れない部屋がいくつか存在する。
- 2つ目は、アイデンティティーの象徴として機能している。
山古志村に一度も行ったこともない人たちがNFTを購入し、山古志デジタル村民と名乗り始めるが、その仮想共同体の証、繋ぎ役としてデジタルアートはワークしていると推測している。Apple WatchのデスクトップやTwitterのアイコンに設定するなど、デジタル村民ということを外に向けて発信する人が増えている。 - 3つ目は、ガバナンストークンである。
独自のFTなどは発行していない。NFTを投票権として使っているため、意思決定や予算分配の際にガバナンストークンとして機能している。 - 他のNFTと同様、OpenSea上で二次流通しているため、当初0.03ETHで販売していたフロアプライスが0.14ETHとなっている。5倍から10倍のフロアプライスで移行しており、デジタル資産としての価値も上がってきている。
- 基本的にはリスト率3%と一度購入したら売却するつもりがない人が多い状況ではあるが、二次流通で売買されることにより新たなデジタル村民が入り、当初複数枚購入されている方々などは、プライス上昇に伴った収益を得ることが現実として起きている。
- 実際の取組みを紹介していきたいが、リアルとデジタルの融合が重要であると申し上げた。立ち上げた当初から運営側が想定していたわけではないが、デジタル村民側からリアルな山古志村の方々にもDiscordでの議論や、予算の分配方法についても意思決定に参画してほしいと意見が出たため、リアルな山古志の住民にNFTを無償で配付していいか投票を行った。その結果100%の方が「ぜひ配ってほしい」ということだった。山古志村のコミュニティーセンターや公民館では、MetaMaskを入れてNFTを使ってみるという講座が開かれている。実際にMetaMaskやNFTについて学びながら、実際に自分のスマホへの導入や、Zoomを介したデジタル村民とのオンラインでの会話などが日常的に行われている限界集落である。
- 第1弾の売上げの一部を共通バジェットということで考え、山古志デジタル村民の方が中心となり、山古志村を盛り上げていくためのプロジェクトを幾つか起案いただいている。全てのプロジェクトに予算配分することは難しいため、Snapshotという分散型投票ツールを活用し、議論して決めている。Yamakoshi Digital Villagers General Electionに実際に12個のプロジェクトが上がっている。全てデジタル村民から上がってきた山古志を盛り上げるためのプロジェクトアイディア企画書である。Discord上で議論し、投票権であるNFTを保有しているデジタル村民が投票し、上位4つのプロジェクトに予算を分配することを行っている。
- もう1つは、Discordだけでコミュニケーションを取るのではなく、実際に山古志村を訪ねるデジタル村民がこの1年間で増えている状況である。デジタル村民は「帰省した」と言う。初めて山古志村に訪れた人も「ただいま」と言う。
この状況は面白く、感覚的には、山古志という名前、地域の無形資産がデジタル空間に出ることでコモンズ化され、山古志デジタル村民の証として錦鯉NFTを自分のスマホで保有し、一度も山古志村に行ったことはないが、山古志村という精神や概念をデジタル空間上で共有している。そのような人たちが実際に山古志村に訪れることは聖地巡礼の感覚に近く、山古志村という村でリアルな村民とデジタル村民が出会い、初めて対面での会話を経て、自分たちの帰属意識が更に強まっていくサイクルが起きつつある。 - これまではデジタル中心だったが、デジタル村民の1名の山古志村への就職や、公共交通の今後の在り方、複式学級が進んでいる小中学校の今後の対応など、リアルな山古志村の課題に対してデジタル村民がアイディアを出し、解決するためのプロジェクトの立ち上げなど、デジタルとリアルの融合が少しずつ起きていると感じている。
- 12月に一周年記念のパーティーをできないか検討しており、自発的にデジタル村民の方々がアイディアを出し、自らがプロジェクトオーナーとなって様々な人が手助けをし、山古志デジタル村民という看板を背負いながら多岐に渡る活動が始まっていることが興味深い。
- 今後、可能性を感じていることとして、山古志がファーストペンギンとして取組みを行ったが、同様の市町村や地域からの相談が増えている状況である。特に多いのは、過疎化が進んでおり今後自治体の財政的にも厳しい自治体や、山古志村のように平成の大合併で吸収合併され自分たちの行政区が存在しないが、自分たちの行政区の精神を持った地域の方々である。クリプトを活用し、自分たちの枠組みを作るとともにボーダレスに仲間や資金を集めていくことにブロックチェーンの技術はフィットしてきているのではないか。
- 市町村レイヤーで様々なことが起きていく中で、山古志の取組みを参考にし、ネットワークを広げていきたい。
- Web3.0と限界集落や地方は距離感があるように感じるが、逆にうまく組み合わせることにより、突破口が開けると思っており、議論させていただきたい。
構成員からの質疑及び林様からの回答において、主に以下の発言。
構成員: 端的な質問だが、エンジニアとして、技術者として関わる方は何名程度いるのか。また、その方々への費用はどのように捻出しているのか。
- 発言者: 錦鯉NFTを立ち上げるに当たり、私はプロジェクターの立ち位置である。山古志側は、山古志住民会議という震災の復興から取り組んでいる地域の団体がある。エンジニアリングに関しては、NFT文脈ではトップランナーであるTARTの高瀬氏のチームと組んで進めている。
- 発言者: プロジェクト自体を立ち上げるのに、エンジニアリングのコストや労力はそこまで掛かっていない。NFTのコントラクト自体もシンプルであり、DiscordやSnapshotなど、パブリックブロックチェーン上の既存のツールを組み合わせることで実現できているため、継続的にエンジニアリングが必要ということではない。
- 発言者: 一方で、ジェネラティブアートをNFTとして展開をしているため、アーティストの方々とのコラボレーションがある。デジタルアーティストとのコラボレーションを2名の方と行っており、来年予定されている3rd Saleでも新たな仕掛けも展開していく予定である。
- 発言者: 一方、デジタル村民として興味のあるエンジニアの方が関わっているため、デジタル村民が仕掛けるプロジェクトとして、山古志村のVR空間の作成や、様々なツールが独自に開発されている。多くのエンジニアがこのデジタル村民のコミュニティーで関わっていると言えるのではないか。
構成員: DAOの持続性について、例えばDAO上で英語と日本語の翻訳をする人の固定費は必要である。一度山古志DAOを開始した場合、3か月や1年で終わりではなく、10年、20年あるいは50年、100年続けなくてはいけないものだとした時、どのように持続させるのか。エンジニアリングコストは掛からないとのことだが、例えばソフトに脆弱性があった時の改修など細々と経費が掛かるのではないか。
構成員: リアル村民とデジタル村民と真ん中に山古志DAO、仮想共同体があるという話について、地方創生で人数が少ないため、デジタル村民を増やすことがKPIになっていると捉えている。しかし、実際には産業を起こしていかないと持続せず、デジタル村民は増加し、お金を出してトークンを購入し、なおかつ資金やアイディアや時間を無償で提供するように見え、ギブ・アンド・テイクが成立していない。山古志の中で産業を起こし、デジタル村民とギブ・アンド・テイクする産業化ができることが次のステップではないか。
構成員: 山古志DAOを100年続ける、尚且つ固定費も支払える、あるいは収益が出るためのアイディアがあればお聞きしたい。
- 発言者: KPIとしてデジタル村民を増やすことに関しては、現在デジタル村民はまだ1,000人足らずである。山古志DAOのKPIとして、来年の3rd Saleのタイミングで1万人まで増やす計画を立てており、仲間の数を増やすことを最重要視している。
- 発言者: 現状は、山古志デジタル村民の方々を中心に、日英の翻訳や日中の翻訳など、その他細々としたことが行われている状況である。彼らが明確なインセンティブを求めているかは難しい。通常のNFTであれば、フロアプライスが上昇していくことに力学が働き、そこに対して貢献し上昇分のインセンティブが得られるシンプルな構造だが、山古志の場合は、インセンティブをさほど気にしていないというのが正直な感覚である。
- 発言者: ただ、一方で、山古志デジタル村民のコミュニティーに入ったことにより、自分の仕事が進めやすくなった、仕事が増えた人が出始めている。また、山古志デジタル村民での活動をきっかけに新たな仕事を始めたなど、ブロックチェーン業界で働いている方がデジタル村民としての活動を進めることにより、アプローチがしやすくなった、様々な話を持っていきやすくなったということが多いため、今のところ、個人がデジタル村民という証を活用し、自由に働けるという結果が出ている。
- 発言者: しかし、これだけで山古志村の持続性が担保されるとは考えておらず、山古志村というリアルな地域を存続させていくため、その他様々なことに取り組んでいく必要があり、山古志DAOの役割は、基本的にはその他様々なことに取り組み、産業を持続させるための人材プールという位置づけと考えている。
- 発言者: 今年の12月に発表するが、今様々な地方がファーストペンギンの山古志村を参考にしたいと相談が来ている。山古志村が単体で生き残っても意味がない。他の地域も含め、日本のディープなカルチャーや地域性を世界に見せ、世界中の人たちにアクセスしてもらうプラットフォームを作っていかなくてはいけない。山古志DAOが、1レイヤー上の日本の地方や日本の有形無形の文化にアクセスでき、それを保存し残していくためのプラットフォームに進化し、ハブ役になっていくことで、山古志村としての持続性や立ち位置を当面担保し、その立ち位置でチャレンジしてみたいと考えており、試行錯誤しながら取り組んでいる状況である。
構成員: 山古志村というフィジカルな地域に対して、デジタル村民であるエンジニアや海外の方が参加し、そこからリアルの人たちに波及していくような提案もあるし、リアルな村民の中でのデジタルコミュニティーができることもあると思うが、デジタル村民が考えていることとリアルな村民が考えたいことに乖離があるような印象を受けている。果たしてこのデジタル活動が、リアルな村民のサポートになるのかどうか、そこが大きく乖離した場合、このDAOは一体どのような意味を持つのか、あるいはそのリアルな村民の妨害になるようなことはないのかなど、そのような観点で、山古志DAOとリアルな村民の関係性をもう一度お聞きしたい。
- 発言者: 現状は、パラレルに進んでいると捉えている。徐々に交わっていきたいが、急に交わることは難しいため、それでよいと考えている。
今までの地域の問題は、地域のことを何とか地域の人間だけで解決しよう、存続させようというモチベーション、確固たるものが少なくとも10年前まであった。この10年間で地域の衰退が加速している。地域のことを地域の人間だけで解決することは無理という状況である。徹底的に開いていくべきだが、徹底的に開いていく手法として、今回のデジタル村民というやり方は望ましいと考えている。 - 発言者: パラレルに進んでいくが、デジタル村民の意識としても、山古志村に関われば関わるほど、自分たちの聖地である山古志村の見え隠れしていた問題が、自分事化していく機会が増えている。実際に山古志村で議論されている議事録に目を通し、公共交通の大変さ、小学校の廃校問題に対するアイディア出しや、一緒に取り組めないか考え始めている人が出てきている。
- 発言者: 今後資金調達の額が増えていき、意思決定に関わる人が増えていった時、山古志村の中枢に関わる問題に対して意思決定をする時、デジタル村民を経由した資金注入や、ステークホルダーにリアル村民だけではなく、デジタル村民の割合が増えていった時、どのように意思決定をしていくか、これからルール作りやガイドライン作りはしていかなければいけない。現時点では、乖離しているというより、お互い利用できる良好なパートナーという感じで捉えていると認識している。
- 発言者: 現状は、パラレルに進んでいると捉えている。徐々に交わっていきたいが、急に交わることは難しいため、それでよいと考えている。
構成員: 今回、山古志村だから上手くいった点と、他の市町村に展開する際に、一般化できる点と個別として問題を解くべき点について、意見があればお聞きしたい。
- 発言者: 1点目は、コーディネーターの存在である。
Discordで上手くいっているのは、NFTがテクノロジーとして面白い、新規性があるということだけではなく、半分は、山古志村のリアルな地域やリアルな住民の方とデジタル村民を繋ぐブリッジ役が機能しているという、人的リソースの話である。そのリソースが山古志側にいるということが大きい。かつ、日本語だけではなく、様々な方と連携しながら日本語でやり取りでき、地域のこともよく理解し、クリプトのカルチャーも勉強しながら理解するスタンスを持っている人が、日本全国の地域にどれ程度いるのかというのが1つの課題になる。 - 発言者: 2点目は、グローバルなリーチである。
山古志村のプロジェクトも、デジタル村民のおよそ2割から3割が外国人である。グローバルリーチという意味では道半ばだと考えている。
日本全体の人口が物理的に減少していく中で、日本人だけでパイを取り合っても仕方がないと思っている。日本の地方こそ世界に出ていかなくてはいけないと思っているが、こういった取組みをどのように海外の人に共感してもらえるかである。 - 発言者: 山古志村は一定の共感を得たが、想定していた以上に渋かった。日本の限界集落を存続させたいということは、刺さる人には刺さるが、課題設定自体がハイコンテクストだったと分析している。グローバルで見たら、クリプト、NFTを使った様々なソーシャルの取組みや、例えば、国際機関による、女性の権利の日に女性をモチーフとしたNFTの発行や、世界中でインターネットが接続できるようにするための資金調達など、どの国、文化圏でも共感し得るようなローコンテクストなものが多い。日本の文化が好きな人や、東京や京都ではなく、今まで聞いたこともないような日本の地域や文化や伝統にアクセスするための手段、それが結果的にその地域を存続させていくというコンテクストを再発明する必要があるのではないか。
- 発言者: 3点目は、NFTという概念とデジタルアートが、フィクションを信じる力を誘発していると感じている。ユーティリティーのみを考えたら、静止画の会員証で、山古志デジタル住民票、シリアルナンバー001でもいいわけだが、それを採択していたら上手くいかなかった。美しいデジタルアートが、共同体性を誘発しているのではないかと考えている。デザインを他の地域でも真剣に取り組まないと不発に終わる懸念がある。
- 発言者: 1点目は、コーディネーターの存在である。
構成員: デジタル村民に一部の予算執行権限を付与という話があったが、今のデジタル村民の方々の認識として、NFTの売上げとして集まりプールされている資金が自分たちのものだという感覚なのか、どのような感覚で運営されているのか、資金の取扱いのルールが決まっているのか。
構成員: また、現在山古志DAOという法人格はない理解だが、法人格があったほうがいいのではないか。逆に必要ないのではないかという点について、山古志DAOとしての活動をされている文脈と、今後、JAPAN DAOという形で束ねる形での動きをされていく文脈でどうなのかお聞きしたい。
- 発言者: 全体の雰囲気だが、NFTの売上げはデジタル村民の共通のお財布であり、且つ、基本的には山古志村の発展に資するために使う予算という感覚である。必ずしもその予算の使い道として、デジタル村民が使い手になる必要もなく、リアル村民が本当に必要だと思うことに対し、予算の限りはあるものの、デジタル村民としては、一緒にプロジェクトが仕掛けられるのであれば取り組みたいという感覚を持っているのではないか。
- 発言者: 法人格について、いずれ作らなければいけないと考えており、LLC型DAOや、議員立法の検討されているようなところに対して期待をしているが、今後この山古志DAOの運営や予算管理を、責任を持って対応していく法人として、来年早々に山古志に住所を置いた新たな法人を立ち上げる予定である。
- 発言者: 現状、DAO的な働き方は試行錯誤の段階だと思っている。プロジェクトオーナーに対して予算分配をするが、大きければ日本円にして100万円程度のお金をどこの誰かよく分かっていないプロジェクトオーナーに渡してプロジェクト進めてもらう。アカウント名とウォレットアドレスだけ共有され、乱暴な言い方をすると逃げられてもおかしくないという感じではあるが、現時点ではそういったことは起きていない。
- 発言者: ただ、アノニマスなデジタル村民に対して資金を分配し、プロジェクトが生まれ進んでいるという、多少のリスクを感じながらも、インクルーシブな働き方、今まで山古志村に関わりようもなかった多種多様多彩な人たちが働き、予算を執行してプロジェクトを進める。それがその人の収益や、あるいはその人がやりたいことの予算になっている。山古志という無形の資産を、NFTで広げることにより、多様な働き方や、多様な自己表現を支援することに繋がっていると思うため、法律や法人のスキームのような、より安定したものになってくると更に推し進められるのではないかと考えており、その必要性を強く感じている。
構成員: 法人化する時にLLCとあったが、LLCの制度で行けるのか。それとも更に変えたほうがいいことあるか。足りないことは何か。
- 発言者: 恐らく国でLLC型のDAO、LLCのような形態を持ったDAOについて一定の方向で議論されているため、可能性は期待しているが、それまで待てないため、株式会社を立ち上げてやっていく状況である。
- 発言者: 足りないことというのは、DAOというのが一体何なのかというのが定義されていないということと、税制面の話や、いくつかのポイントで、既存の法人格ではやりにくいということがある。不可能ではないが、思想に忠実にプロジェクトを進めようとすると、既存の法人格というのは形としてフィットしていないと考えている。
次回の研究会は、11月24日木曜日開催予定であることを事務局より説明。
議事要旨は、構成員の皆様に内容を確認いただいた後に公表させて頂くことを事務局より説明。
以上