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令和6年(2024年)第4回政策評価・行政事業レビュー有識者会議

概要

  • 日時:令和6年(2024年)8月30日(金)11時00分から12時00分まで
  • 場所:オンライン開催
  • 議事概要
    1. 開会
    2. 議事
      1. これまでの議論の報告
      2. 各事業の改善の方向性について
        1. 法人共通認証基盤(GビズID)
        2. ガバメントソリューションサービス(GSS)
        3. ベース・レジストリ事業
    3. 閉会

資料

議事概要

事務局から開会宣言の後、河野デジタル大臣より本会議開催にあたっての挨拶を行った後、事務局の司会により会議が進められた。
まず、有識者会議座長より、第2回政策評価・行政事業レビュー有識者会議において取りまとめた報告書および第3回政策評価・行政事業レビュー有識者会議(公開プロセス)での議論を踏まえ、事業改善に向けた提言について説明があった。その後、各事業担当者より、報告書および公開プロセスを踏まえた事業改善の方向性について報告があり、有識者より各事業担当者からの報告に対して所感が述べられた。最後に、河野デジタル大臣より全体に対しての所感が述べられ、石川デジタル副大臣より閉会の挨拶が行われた。

日時

令和6年8月30日(金)11時00分から12時00分

場所

オンライン開催

出席者

委員

佐藤座長、岩﨑委員、上村委員、神林委員、笹嶋委員、中空委員、堀川委員

議事

事務局:皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、開始させていただきたいと思います。

会議開始の前に、現在、台風10号の関係で各地で影響が出ております。万一、皆様がおられる地域で緊急避難指示等が出された場合は、躊躇せず避難行動に移っていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、第4回「政策評価・行政事業レビュー有識者会議」を開催いたします。

なお、本日はウェブ会議システムを用いて開催しております。

また、本日、マスコミの方々に冒頭を公開させていただきますので、有識者委員の方々はできる限りカメラをオンにしていただけますと幸いでございます。

まず、開会にあたりまして、河野デジタル大臣からご挨拶をさせていただきたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。

河野デジタル大臣:おはようございます。今日もお忙しい中、皆様にご参加いただきましてありがとうございます。また、これまで積極的にご議論いただきましたことに感謝申し上げたいと思います。

デジタル庁では、有識者の皆様に、政策評価と行政事業レビューを一緒の会議でご議論することをお願いしてまいりました。これまでの会議の議論におきまして、デジタル庁の取組について事業改善の方向性をお示しいただきましてありがとうございます。今日はこれまでの公開プロセスを含む3回の有識者会議の中でご議論いただいた取りまとめの報告書をお受けさせていただくとともに、個別にご指摘いただいたGビズID、GSS、ベース・レジストリの3つの事業について、事業を担当する者から報告書を踏まえた改善の方向性について報告いたします。その改善の方向性に対する皆様からの忌憚のないコメントをぜひいただきたいと思っているところでございます。

今日の会議の内容を踏まえた上で、この取組をデジタル庁全体に展開し、PDCAサイクルをしっかり回しながら、デジタル庁における更なる事業の改善につなげてまいりたいと思っておりますので、引き続きご協力のほど、お願い申し上げたいと思います。

(報道関係者退出)

事務局:それでは、本日の会議の流れについてご説明をさせていただきます。まず、有識者委員の皆様方に取りまとめていただいた報告書を、有識者会議座長からご説明いただきます。
続きまして、各事業担当者から事業改善の措置・検討状況について報告をいただきます。この報告を受けまして、有識者委員の皆様方から所感をいただき、最後に河野デジタル大臣からも所感をいただければと思っております。

この後、座長からご報告いただく報告書につきましては、デジタル庁の取組の中から、大臣の発言にございましたけれども、GビズID、GSS、ベース・レジストリの3事業をピックアップして事業改善の方向性について有識者の皆様でご議論をいただきました。6月の段階で一度暫定版の報告書を作成いただいておりました。その後、7月24日にGビズIDとベース・レジストリ事業に関しましては公開プロセスを開催いたしまして、そこで有識者の委員の皆さんからいただいたご意見をさらに報告書に加えて今回の最終版の報告書になっているということでございます。

また、各事業担当者からの報告については、暫定版の報告書が作成された時点、つまり6月以降、各事業において指摘があった課題に対して現在までにその事業改善に向けて検討を行っておりました。その意味での現時点での事業改善の方向性ということですので、その点、ご認識をいただければと思います。

それでは、座長より報告書について概要をご説明いただきたいと思います。佐藤座長、よろしくお願いいたします。

1. これまでの議論の報告

佐藤座長:審議対象になりました3つの事業それぞれについてお話をさせていただきます。

法人共通認証基盤(GビズID)

佐藤座長:これは電子的な行政手続の対象者、特に法人に関して、認証するときに、法人ですので法人代表者、またはその従業員の方、いろいろ関わられる方がいて1人ではないわけで、そうした状況においてある種本人確認といいましょうか、法人確認的なことをする仕組みで、その後に各行政手続をしていただくというものですので、行政手続をするちょっと前の段階のサポートをしようというものでございます。このGビズIDはご存じのように2019年から、つまりデジタル庁ができる前から経済産業省で進められていて、それをデジタル庁に移管したというものでございます。

いわゆる評価の基軸の観点から言いますと、非常に順調に進んでいる事業なので、そういう意味では我々としては評価のしやすい対象なのですけれども、現状、このGビズIDを取得している法人数が目標になっています。これは非常に妥当なものなのですけれども、登録している法人数も、おそらく休眠している法人を除いてオンライン手続を利用している法人をさらにそこでフィルタリングしていきますと、かなりの充足数を持っていると考えられますので、そこは非常に順調なのだと思います。

ただ、登録数というよりは実際に行政手続においてこのGビズを使われているのかどうか、特に今、行政において窓口の手続もありますし、オンラインによる手続もあって、特にオンラインの手続の中でGビズIDを利用した件数がどれぐらいになるのかというところを目標に設定した方がいいのではないかということを中心に、我々の方で申し上げさせていただきました。

もう一つは、これを使ってどのぐらい時間が短縮できるのかという直接的な効果といったものを指標に加えることによって、国民にとってもこのGビズIDの事業が理解しやすくなるのではないかと提言させていただきました。

政策のアプローチに関しましては、まずはこの制度を啓蒙していただくことが求められるのですけれども、この会議の席上では、こういった法人の電子的な手続というものも頻度などが違うわけです。一方で、デジタル化によるコストを考えると、めったにない手続に関してコストをかけてGビズIDでするのがいいのか、もちろんやった方がいいと思うのですけれども、そこはコストを含めて考えた方がいいだろうとご意見をいただいたところです。

あと、予算面、またはステークホルダーに関しては、各府省庁のサービスの中で、ステークホルダーにGビズIDを使っていただく必要がありますので、そうしたところをうまく連携していただくことが大切ということを示させていただきました。

ガバメントソリューションサービス(GSS)

佐藤座長:以前、政府共通ネットワークというシステムがございました。これは府省庁間をつなぐネットワークでございまして、これに対してGSSでは府省庁間のネットワークだけではなく、府省庁内のネットワークに関しても一元化をするということと、いわゆるオンライン会議をはじめとするネットワークの上で動いているサービスに関してもサポートをするものになります。

実際に進捗といいましょうか、状況を見ると、目標設定は全府省庁が対象になるということになっています。府省庁間の方はもう既に完成しているのですけれども、府省庁内のネットワークにGSSを使っているところに関して言うと、必ずしも網羅されているわけではない、使っていないところもあるという状況です。これに関しては、各府省庁の省内・庁内のネットワークの更新時期の問題がありますので、すぐに置き換えられるわけではないですし、この会議でも結構意見が出たのですけれども、府省庁によってはネットワークに対する要件が違って、非常に守秘性の高いネットワークを求めるようなところもありますので、そうしたところを無理して一元化することによる問題もありますし、逆にそれを無理して一元化しようとすると、結局府省庁は別にネットワークを引かなければいけないということで二重投資になる可能性がありますので、そこは柔軟に考えていただいた方がいいのかなという意見が出て、報告書でもその旨は触れております。

政策アプローチに関しては、進めていただければいいと思いますけれども、やはり目標が定まっていて、例えば府省庁によっては非常に全国広域に拠点を持っていて、例えば農林水産省であればかなり広く持っている。そうしたところも含めてどうサポートしていくのか、ネットワークを接続していくのかというところは今後、見ていく必要があると思っております。

私は国立情報学研究所というところに勤めていて、ここはSINETという大学間のネットワークをサポートしている組織になりますが、その立場から言いますと、災害時などを含めたときに冗長性が大丈夫なのかなというところでちょっと疑問もありますが、今回ヒアリングしたところでは、担当の原課の方からはそれも含めて大丈夫というお話をいただいていて、この政策評価・行政事業レビューでそれ以上踏み込むこともできないのでそれを信じたいと思っているのですけれども、引き続き災害時などを含めたサービスの持続性といいましょうか、可用性に関してはより一層高めていただけることを祈っております。

予算・体制に関しては、結果的にこのGSSによって今まで府省庁で整備していたネットワークが国で一つになるということになりました。これによるメリットは、規模が大きくなるのでスケールメリットが出せますが、同時に、これだけ大きなシステムを構築・維持できる民間の事業者数が減ってくるという問題があります。したがいまして、スケールメリットを生かすことと事業者間の競争が働くというところがやや相反するところもありますので、それも含めて今後、考えていただいたほうがいいのではないかという意見も複数の委員から出ていたところでございます。

ステークホルダーに関しては、府省庁が中で利用していただくことが求められるので、引き続きGSSの利便性を伝えていただいて、もちろん府省庁の要件に合っていればですけれども、利用する府省庁が増えることを我々は希望しています。

ベース・レジストリ事業

佐藤座長:ベース・レジストリは、住所・所在地、法人の名称などを横断的に、最新かつ正確な情報を提供するというもので、デジタル庁発足時から挙がっている施策です。

ただ、順調にいっているのかといいますと、目標設定の観点から申し上げますと、当初の目標と比べるとやや対象を減らしている。例えば事業所に関するベース・レジストリ、法人ではなくて事業所ですけれども、これについては中止をするということになりました。これに関しては、そもそもの政策目標が妥当だったのかというところになってくる。この辺も引き続き精査をお願いしたいと思っています。

現状は、法人と不動産と住所の3分野のデータベースをつくるということで、国民のいろいろな活動においてもそうした情報を一般に使いますので、そこの利便性を上げることを目標にしていただければと思っています。

政策のアプローチについては、法人、不動産、住所といっても、デジタル庁が直接整理をするよりは、他の府省庁や自治体の協力を得なければいけないところもありますので、それぞれの自治体や府省庁の負担にならない形で、最新かつ正確なものを整備していただくことを求められるところでございます。

このベース・レジストリに関しましては、先の213回通常国会で公的基礎情報データベースの整備改善計画に関わる法律がもう成立されています。法律が成立したところで、今後、その整備計画を練って進めていただければと思っております。

この会議でご指摘を受け、ちょっと考えなくてはいけないのだろうなというところは、公的なデータベースというのはデジタル庁以外もつくっているわけです。例えば総務省の統計局では国勢調査に関わるデータベースをつくられていて、それは統計目的の国の状況を見るためのデータですが、ベース・レジストリは一件一件の問合せをするところが主体になるかと思うので、目的は異なりますが、データベースとしてはある種重なるところがあります。そうしたところはうまく整理をし、調整しなければ、国民からしてみると似たようなものがたくさんできてしまうということになるので、今まで以上に府省庁間での調整を進めていく必要があると思っております。

予算・体制に関しましては、ベース・レジストリのようなデータベースというのは整備にお金がかかりますので、先ほど言った重複がないということと、データを整備する側の自治体や府省庁の負担にならないことも求められると思っております。

ステークホルダーに関しては、ベース・レジストリの構築の観点から、文字の表記にノウハウのある国立印刷局なども一緒になって進めていただけるということなので、より広く専門性のあるところと一緒になって進めていただければと思っています。

事務局:ご説明ありがとうございました。続きまして、事業担当者から報告書を踏まえた事業改善の方向性の措置・検討状況について報告をいたします。

2. 各事業の改善の方向性について

法人共通認証基盤(GビズID)

事業担当者:整理の内容としましては、今回、5つの論点をいただいております。まず、GビズIDを利用した行政手続の割合や実際の効果を把握した上で利活用を進めていくべきであるという点ですが、我々デジタル庁の方で今後、事業者向けの行政手続のオンライン化がどれぐらい進んでいるかということを調査で把握していこうという取組を考えてございまして、その中でGビズIDがどれぐらい利用されているかというところについても調査を進めていきたいと考えております。

また、事業者連携サービス担当者に対してアンケート、インタビューというところを実施する中で、実際にGビズIDの利用により利便性が高まっているかというところも評価していきたいと思っておりますし、実際に郵送等と比較したときにどれぐらいの費用削減効果があるかについても試算をしていきたいと考えております。

GビズIDの利用実績や利用状況に関して公開していくべきとのご指摘については、現状、利用状況を把握するためのダッシュボードを内部では構築しておりますので、公開可能な情報を整理して、年度内にもダッシュボードを公開していきたいと考えてございます。

接続できる行政サービスを増やしていくべき、その利用状況等も踏まえてサービス改善の見直しをしていくべきとのご指摘ですが、行政手続の電子化の状況というところを調査する中で、まだGビズIDを使っていないところを把握しながら、連携先にお声がけをしていく中で伺っていきたいと考えております。

ユーザーである事業者の方々や既に接続している利用担当者の方々からフィードバックをいただいて、機能改修も進めているところでございますので、これを継続して進めていきたいと考えているところでございます。

必要な体制の整備や維持をしていくべきであるというご指摘でございますが、デジタル庁全体のリソースとの兼ね合いというところもあるかと思いますけれども、現状においてもGビズIDの担当もプロダクトマネージャーもいますし、それをサポートする行政官の体制というところもあるところです。今後、利用がさらに拡大していく中で、庁内でもよく議論した上で必要な体制というところを維持していきたいと考えております。

最後の普及啓発・広報活動というところを各種行政サービスと連携して進めるべきであるというところ、あとはメリットを公表していくべきであるとのご指摘ですが、これまでも例えば社会保険の手続であれば厚労省に、補助金であれば経産省の関係部署にGビズIDを宣伝していただくという形で、各省庁の担当者と連携して宣伝を進めてきたという実績がございます。この取組自体は今後も継続するとともに、今年度については予算の中でもそういった広報事業というところを立てておりますので、そちらの方でさらに訴求をしていきたいと考えております。

ガバメントソリューションサービス(GSS)

事業担当者:まず、ご指摘いただきましたGSSの移行に対する各省庁へのサポートについての改善提案でございます。各省庁のGSSへの移行については、次期ネットワークの更改のタイミングを踏まえて検討しているという状況です。デジタル庁からは積極的に勉強会、各省に対する情報共有、協議を重ね、円滑な移行の支援に着手しているところですが、今後、関係省庁との情報共有の場を持つ等、さらなる支援に取り組んでまいります。

それから、大規模災害でも確実に運用できるようにといったご指摘ですが、利用省庁が拡大しており、重要なインフラとしての役割が求められていくということですので、ネットワークの冗長化、データセンターも分散して立地するといったことも進めております。災害発生時においてさらにこの円滑な対応が可能となるように、職員、それからそれを構築・運用していく事業者側の体制も順次整備していくこととしております。

コストの削減効果を高めるため、業務の標準化へもしっかり取り組んでいくべきといったご指摘については、ネットワークの機器、それから敷設する回線を集約していくことで効果的な展開を進めてまいります。回線の選択を適正化することによって、コストもしっかり削減しているところです。引き続き、勉強会や協議、各省との円滑な情報共有を通じて各省庁の業務標準化への取組を進めてまいります。

GSSの保守運用の体制をしっかり確保していくべきといったご指摘ですが、利用省庁、ユーザーが増加してまいりますと、運用体制を強化していく必要があります。まずは、どう取り組んでいくかという点を、実績を踏まえた上で、しっかり検討を進めてまいります。私どもだけではなかなか難しいところもございますので、実際に統合していく、または利用している各府省庁の協力を得て体制強化をしていくことが重要ですし、外部事業者への委託等も適切に活用し、引き続き安定稼働を確保してまいります。

ベース・レジストリ事業

事業担当者:検討状況につきまして、今後の拡張の余地があるのかといった話や、そもそもデータベース整備にあたってのコストとその効果をきちんと評価しながら進めてまいりますということで発言を申し上げております。

今回、アウトカムの指標、政策の効果の評価におきまして、別添資料を作成し、国民、これは事業者側の手続する人ということですが、それと行政職員を分けた形で精査したものをお示ししておりますので、適宜ご覧いただければと思います。

あわせて、コストにつきましては、システムのコストがどれだけかかるのかということに加え、データベースのデータを取得する実現可能性、これはお金だけではなく、例えば理念上はデータがあるとしても、それを実際に集めようとすれば関係省庁や自治体、あるいは申請者に大きなご負担をかけてしまうということがあれば、データベース構築の実現可能性は低くなってしまいますので、その辺りも加味しながら、今後、費用対効果を含めて検討してまいりたいと思います。

2点目のところで、データベースの重複について検討しております。こちらも別添の参照資料の中で最終ページに関連するページを一部つけておりますので、そちらを適宜ご参照ください。基本的に登記の情報を集めて、それを各省あるいは自治体に閲覧ないしお配りできるような状態にシステムを組み、必要なデータのクレンジングを施してお配りしてまいります。この中で例えば議論に出ておりました事業所母集団データベースなどにつきましては、当然のことながら重複する登記の情報から取れるようなところは先方にこちらのベース・レジストリの仕組みをお使いいただくようにお話をしてまいりたいと思いますが、データベースそのものについては先方のデータベースは売上げといった活動状態を示すような指標をお集めになっているかと思いますので、データベースそのものとしてはそれぞれ必要な項目を集めるデータベースとして存在するとは考えてございます。

また、データベースを運用していくに当たっては、官報の事業を通じてデータベースの運用に知見、ノウハウをお持ちの国立印刷局のお力をお借りして効率よく運営をしていきたいと思っております。

また、地方自治体等に特に住所関係の情報の収集や確認をしていただく必要もある程度ございます。それに当たってはデジタル庁のほうでなるべく作業を進めた上で、例えば最終確認だけお願いするといった形で今も進めておりますし、その時々に応じてヒアリングや自治体の調査を行った上で、実態にそぐわないことが起きないように、作業が実務に即して行われるように検討を進めてまいりたいと思います。

事務局:ありがとうございました。それでは、有識者委員の方々から事業担当者の説明に対する所感を、一人2分以内ぐらいでいただきたく存じます。

有識者会議委員:各政策の事業課題が非常に明確になり、方向性が明示されて有意義で示唆に富む意見交換が行われたと思っております。例えば利用率とコストメリットの関係性については電子政府の要となる課題でもあります。また、府省庁間のネットワークを一元化させていく上での重複性や有事の際の可用性、自治体との連携、既存の統計データの重複性、そして手続に伴う負担感の解消といった点に基づきまして、各施策事業の共通課題であるKPIの設定や、国民や利用者視点のサービス改善の視点など、事業改善に向けてもご報告いただきました。今後、大変かと思いますけれども、期限を設けていつまでに推進していくべきかのロードマップに基づいてPDCAで事業改善に努めていただければと思います。

最後に、今回の選定事業以外にも、これまでの実績や教訓を生かしながら、他の府省庁との連携を進め、国民やユーザーから理解を得られる政策立案や行財政改革に寄与できるように、引き続き広報活動の徹底とガバナンスの向上、そしてAIなども活用した新世代のデジタル政府戦略全体に期待したいと思っております。

有識者会議委員:デジタル庁の事業は、社会の共通基盤をつくるものが多く、うまく社会実装ができれば非常に大きな社会変革ができると思います。そこで大切なことが幾つかあるように思いましたので、3つ述べます。

第1に、社会のニーズに合わず社会実装に失敗するとコストが大きくなる事業がありますので、そこの社会的損失を被ってしまう可能性があるという点が重要です。独りよがりにならないように、社会的なニーズに常に敏感になる必要がありますし、他の事業との二重投資の危険性もあります。一つ一つ丁寧に事業を見ていく事業レビューですけれども、この二重投資に関しては、他の事業に関わる情報が必要になることから、より広い視野が必要になるということでやや課題があるかなと思いました。

第2に、デジタル庁の事業は、全て手段が目的化しやすいということです。GビズIDもGSSもベース・レジストリも導入することが目的ではなくて、利用してもらうことが目的であるはずですが、今回の行政事業レビューによってそのようなアウトカム指標の設定に利便性や利用度合いを意識したものが入っていくということで、良い改善になると思います。多くの事業は、その時点の局面に応じて適切なアウトカム指標を変更していくことが重要だと思いますけれども、この3つの事業はそういう局面に入っていると思いますので、特にGビズIDについてはアカウント数よりも利用度合いや時間短縮効果ということに移っていくということだと思います。

第3に、今回の良い取組だと思ったのは、GビズIDのダッシュボードの活用です。公開をお願いしたのですけれども、公開されるということでこれはよかったと思います。ダッシュボードですけれども、成果を国民と共有するという意味で非常に重要な取組になっていると思います。この事業にかかわらず、他の事業についても同様だと思いますので、ぜひこれを契機として他の事業へ横展開していただきたいと思います。

有識者会議委員:この種のシステム化に関しましては、もちろん今使っている人、現在利用が想定されている人との間のフィードバックをきちんと設けることが必要かと思います。

ただ、それに加えてこういったインフラストラクチャーの場合には、今は使っていなくても将来的に使う可能性がある人が必ずいます。そういった方々の利便性をどのように取り込んでいくのかということについて、少し冷静に一歩下がって、今使える人だけをターゲットにするわけではないということを意識していろいろなことを推進していっていただければと思います。

有識者会議委員:2点だけ所感を述べさせていただきますと、まずこのように利便性を広げていくということになりますと、必ず現状を維持したいという声が大きくなってまいりますので、そういうものに負けないようにぜひ進めていっていただきたいなと思います。データサイエンスの学部教員をやっておりまして、そういう教育をやっている立場から申しますと、これからそういうデジタル化をどんどん進めていかないと他の国との競争に絶対負けていきますので、そういった勢力に負けないようにぜひ進めていっていただきたい。特に最近、SNSなどは批判的な意見を集めやすいような形になっておりますので、尽力されている職員の皆様も元気をなくされることがあると思うのですけれども、そういうものに負けないようにぜひ進めていっていただきたいなと思います。

2つ目に、このように大規模化していきますとセキュリティの穴を使われやすくなってまいりますので、実は私どももいろいろな会社様などと協力しながら研究活動をやっているのですけれども、表に出ていないだけで実はセキュリティのインシデントなどがたくさん起こっております。そういったこともありまして、データを活用する、それから事業者の方たちに啓蒙するということもさることながら、そういったセキュリティの側面に関する教育などもこれからしっかりやっていかないと、大規模に国民みんなで支えていくようなデジタルソサエティというのはなかなかできないのではないかと思いますので、そういったところについても啓蒙を進めていただけたらと思いました。

有識者会議委員:一点は、データというのをつくるときには必ずリンケージが必要だということです。実は私の父が病気になって途中で障害者になりまして、障害者手帳が出るという話があるのですが、障害者になると認定をするのは病院で、私が市役所に行かないと障害者手帳が認定されないという事態で、私が市役所に行き、病院の先生からもらい、これっておかしいなと思うのですね。データというのはリンケージしてようやく力を発揮するので、病院から市役所になぜ行かないのかと思いました。データというのはどれだけ立派なデータができても一個一個林立していると意味がないと思うのですね。使い手は誰か、それが地方自治体なのか、市役所同士なのか、省庁同士なのか、あるいは先生が使うのか、でも、最終的には国民が日々の生活で便利にならないといけないので、それがちゃんとリンケージの中で達成できているかということを常に見ていく必要があると思います。

これは河野デジタル大臣のリーダーシップでマイナンバーカードのペネトレーションも8割になってきていますので、今回指定したようなGビズIDと例えばインボイスの制度、それからマイナンバーは全部平仄が合わないでしょうかと思います。なので、目指すべき姿は結構遠いので、リンケージに関してはもっともっと深めていく必要があるのではないか、これが一点です。

もう一点は、このデジタルの世界ではEBPMは測りやすいので、ぜひこれは今までやったから、データを取ってきたからということではなくて、このデータは取ってきたけれども要らなかったということを大胆にチェックしていきたいという思いです。そういう仕組みをつくってこそ、データというのは生きてくるのではないかなと思います。

有識者会議委員:過去の国のシステム開発の歴史を振り返りますと、各省庁がまず個別にシステムを構築し、その後、統合を試みる。その際には異なるベンダーによって開発しているシステムが結果的に障壁となり、既存のシステムのデータ等の資産がほとんど使われないまま新たにつくるという無駄な投資が繰り返されてきました。デジタル庁が今回、積極的にいろいろな分野や目的別にシステムをまた構築していくことと存じますが、その先には統合・連携というのがあると思うのですね。したがって、将来の統合を見据えた設計をデジタル庁が自らやるのであれば、できるのではないかと期待しておりますので、その点、よろしくお願いいたします。

もう一点、ベース・レジストリの構築においてですが、中長期のアウトカム指標として国民や行政職員の負担軽減を考えている点は非常に意義深いものだと感心しております。ただ、それに至るには様々な課題を解決することが鍵となります。既に住所表記の揺れなどの課題が明確に見えていることは大変評価できると思います。ただ、これはシステムをつくるだけでは解決できない、まさに行政側の整理と共通化が重要になる。このことは何もベース・レジストリに限らない、設計前の行政の調整や国のシステム開発において最も重要な、どの国のシステムにおいても重要なポイントであるということが、今回、ある意味再確認できた良い事例だと私は評価しております。

最後に、これらのポイントを踏まえて、デジタル庁は専門家集団ですので、ぜひその専門家の知見を反映したレビューシートを作成し、EBPM上で効果的に評価することでシステム開発全般におけるベストプラクティスをつくることを私は期待しております。他省庁でも開発しているようなシステムの参考になるものをつくっていただきたいと思います。

有識者会議委員:まず1点目ですが、事務局も含めてちょっと苦言的なことに聞こえてしまうかもしれませんけれども、政策評価・行政事業レビューを生かして予算を獲得するという観点で言いますと、来年度予算の概算要求の前にやっておかなくてはいけないし、もっと言うと、いわゆる重点計画の策定前にしておかないといけないところがあるので、来年度はもう少し早い時期に実施するとより効果的だと考えています。

2点目に、僕も技術屋なので技術屋の視点で言うと、デジタルに関わるものというのはやってみないと分からないものが結構多い。EBPMというのはエビデンスがないからやらせない方向に行くことが多々あって、それよりはまずは試してみて、うまくいかないものはやめる。また、民間みたいにABテスト的に複数いろいろやってみることも重要なので、臨機応変にやっていただくといいのではないかと思います。

3点目に、デジタルに関わる施策というのはその施策の目標や内容は合っていても、その手段である技術を間違えると効果が出ないことが多々あります。ただ、政策評価にしても行政事業レビューにしても、デジタル庁が使う技術に関しては評価し切れないところがあります。その技術のよしあしに関しては、第三者が中立的に技術を評価する仕組みをつくられた方がきっといいのだろうなと思いながら座長をさせていただいておりました。

事務局:ありがとうございました。それでは、報告書やこれまでの議論を踏まえて、河野デジタル大臣から所感をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

河野デジタル大臣:有識者の皆様におかれましては、デジタル庁の取組につきまして本当にいろいろと良いアドバイスをいただきました。本当にありがとうございます。デジタル庁の取組についてはまだまだ課題があると思っておりますし、霞が関全体のシステムについても、先ほど、取りあえずつくってから統合というお話もありましたが、まだ統合されるべきものがばらばら走っていたり、例えば今年、令和6年に問題提起すると、令和8年や令和10年にシステム対応を行うといった結構先の時間軸になったりするものもあります。そういう様々な課題がある中で、先ほどEBPMの話もいただきましたし、技術についてもどうするというお話もありましたが、今回の3事業につきましては、各担当もしっかり皆様の議論を受け止めて改善をしようと一生懸命やっているのが見てとれました。この3事業に限らず、デジタル庁の中でやっていると、どうしてもそちらの方向を前提として様々な改善を考えるところがありますが、一歩離れたところからご指導いただいて、立ち止まって考えることは非常に有意義だと思っております。

今回の政策評価・行政事業レビューは、やることになっているからやりますというものではなく、様々な場面で皆様のご意見を伺いながら方向転換しなくてはいけないもの、もっと詰めなくてはいけないもの、あるいは立ち止まって考えなくてはいけないものが出てくると思います。デジタル庁が様々なことを進めていく中で、皆様方の知見をどう有効に取り入れていくことができるのか、ただサイクルの一環でやりますというだけでない活用の仕方というとちょっと上から目線かもしれませんが、皆様のご意見をもっとデジタル庁の取組に取り入れさせていただけるところがあるかと思っております。様々なことをデジタル庁として考えながら、次に向けて進めていきたいと思っております。

今後とも引き続きのご指導のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

事務局:ありがとうございました。それでは、最後に石川デジタル副大臣から閉会のご挨拶をよろしくお願いいたします。

石川デジタル副大臣:有識者の先生方、この台風の大変な中、ご出席をいただき、そして様々なご意見をいただきましてありがとうございます。

明後日、9月1日でデジタル庁発足から4年目に入ります。これまで短期間でいろいろなことを突っ走って進めてまいりまして、アジャイルで河野デジタル大臣の突破力で様々な事業をやってまいりましたけれども、今日いただきましたご指摘として、関係者に対して過度な負担にならないようにという点や、あるいは重複したシステムにならないようにすべきといった点など、全くごもっともだと感じております。

今日頂きました報告書を踏まえまして、デジタル庁で様々な事業の改善に取り組んでいきたいと考えております。

今後とも、有識者の先生方にはデジタル庁の事業に対しましてご指導、ご鞭撻を賜れれば幸いでございます。

以上でこの会議を終了させていただきます。誠にありがとうございました。

事務局:ありがとうございました。有識者委員の皆様、それから各事業担当の皆さん、今日の円滑な議事運営にご協力いただきまして本当にありがとうございました。

これにて第4回「政策評価・行政事業レビュー有識者会議」を終了させていただきます。

以上