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アナログ規制見直しに関する取組について語る「RegTech カフェ」~アナログ規制の見直し先進事例を紐解く~(第1回)

デジタル庁では、規制が求める目視や巡回等のアナログな手段を代替するテクノロジーの総称を「RegTech」ととらえ、規制の見直しに取組む関係者の意見交換や情報共有を目的とした活動をRegTechコンソーシアムとして実施しています。

今回、 RegTechコンソーシアムの交流イベントとして、RegTechコンソーシアムコミュニティ(Slack)に投稿された質問を受けながら、アナログ規制見直しに関する取組について語るオンラインイベント「RegTech カフェ」~アナログ規制の見直し先進事例を紐解く~を開催しました。

※2024年10月22日より「RegTechコンソーシアム」から「RegTechコミュニティ」へ本活動の名称を変更しました。

イベント概要

プログラム

1. 先進自治体の取組「アナログ規制の見直しに向けた福岡市の取組みについて」

窓口に来なくても手続ができるような「ノンストップ行政」の推進に取組む福岡市におけるアナログ規制の見直しの取組について紹介がありました。

登壇者:河津真樹子 福岡市総務企画局DX戦略部部長(サービスデザイン担当)

取組内容

行政手続きのオンライン化に関する共通事項を定めた通則条例である「オンライン化条例(福岡市情報通信技術を活用した行政の推進に関する条例)」の中で新たに書面掲示の手法(ルール)を定めて、複数の見直し対象条例を一括で見直しました。この見直しは、令和5年(2023年)6月に成立した「デジタル規制改革推進の一括法」の「書面掲示規制」の見直しにおける考え方を参考にしています。

また、市民目線での不断の見直しも重要であることから、令和5年(2023年)1月に「デジタル改善目安箱」を設置し、条例などに明文化されていないアナログ的な手続や運用を市民目線で改善していく取組みについても紹介しました。

登壇者コメント

「アナログ規制を見直した経験から、アナログ規制見直しを推進していくためには、方針を示すこと、代替できる技術を示すことが大切である」と意見を述べました。

最後に、今後の展望について、「ビジネス環境や市民の感覚は時代によって変化し、特にスタートアップというものは新たな製品・サービスを創出するものなので、古いルールが障壁になりうるということを認識し、このアナログ規制の見直しの取組みに終わりはなく、不断の見直しを進めていきたい」と述べました。

質疑

  • 質問者: 「福岡市で実施されている通則化におけるメリット・デメリットにどのようなものがありますか」
  • 河津氏(回答): 「メリットは、通則化により個別の改正が不要ということです。まとめて対応することで各所管局の負担を軽減できます。デメリットとしては、通則条例で対応できる範囲には限界があるということや、通則条例所管の担当者の負担が一定発生することが考えられます」
  • 質問者: 「自治体として技術に対して求めたいものは何でしょうか」
  • 河津氏(回答): 「持続性や汎用性についての情報があれば行政として判断しやすいと思います。行政の事業は10年・20年と続きますし、管理する対象が非常に幅広いため、導入したものが末永く運用できるか・アップデートを適宜行えるのかといった視点を持っています。1つの施設の実証事業でうまくいっても、条件の異なる他の現場で使えるのかという点まで明らかになれば導入の判断がしやすいのではないかと考えます」

資料

2. 技術検証事業の報告

2-1. ウェアラブルデバイスを活用した施設等の遠隔検査実証

高圧ガス保安法第59条の35及び第62条 に係る立入検査の実証事業に取組む「ウェアラブルデバイスを活用した施設等の遠隔検査実証」の取組について説明がありました。

登壇者:竹崎雄一郎 Fairy Devices株式会社 取締役 CSO/CFO

取組内容

「高圧ガス取扱施設での法定検査について、ハンズフリーのウェアラブルデバイスを活用し、現場の作業者を通じて遠隔地からでも施設/設備/帳簿等を検査できるかを確認するとともに、その検査状況を動画や静止画保存する等の実証を行った。その結果を踏まえると、検査に用いるデジタル機器の通信環境を確保することに加え、こうしたデジタル機器の導入時の教育コストを小さくすること、また、検査対象の施設は複雑な構造のものもあるため、移動の邪魔にならないようなウェアラブルデバイスを用いる等して実現場での安全性が確保されることが重要であることが把握できた」との解説がありました。

登壇者コメント

「遠隔支援自体が大きな価値を持っており、熟練工の移動時間や作業時間の短縮、並びに画像や音声データを記録することで、いつでもどこでも過去状況を確認することができる等、様々な効果が期待できます。それとともに、日本が誇ってきた現場の知見、経験、ノウハウといった無形資産がAIのモジュールとして海外に輸出され外貨を稼ぐような、『匠の技が外貨を稼ぐ時代を作る』ことができるのではないか」と将来の展望について述べました。

質疑
  • 質問者: 「遠隔支援について、通信環境が悪い現場での運用についてどうしたらよいでしょうか」
  • 竹崎氏(回答): 「例えば、ローカル5Gの敷設や、Starlink等の衛星通信を活用することが考えられます。また、通信環境が全くない場合は、リアルタイム遠隔支援では無くデバイス自体で録画を行うことで現場エビデンスの収集を行うことが可能です」
資料

2-2.ドローン等を活用した自然物の実地調査の実証

自然環境保全法第28条 等の実地調査に係る実証事業に取組む「ドローン等を活用した自然物の実地調査の実証」の取組について説明がありました。

登壇者:山崎颯 KDDIスマートドローン株式会社 プロジェクトリーダー

取組内容

「国立公園等の現地で実施している動植物や自然環境等の調査を、ドローンやトレイルカメラにより情報を取得し、4G LTEやStarlink(衛星通信)を活用し取得したデータを解析・分析する実証を行った結果の一例として、大きなドローンを飛ばすと十分に高い高度を飛行させてもハクチョウが気づいて逃げてしまうことが判明した」と解説がありました。

登壇者コメント

「ポート付ドローンを常設することで、離陸から着陸、着陸後の充電までポートでできるため、現場に人がいる必要はなく、省人化や業務の効率化につながるのではないか」と述べました。

質疑
  • 質問者: 「ドローンで自然物の実地調査を行ううえで難しいと感じる点はどんなところでしょうか」
  • 山崎氏(回答): 「防水ドローン等、雨への対応は進んでいるが、ドローンは風には強くないため、留意が必要です。また、データを取得した後の解析の自動化について、オオハクチョウのような定量的に判断できるものはいいが、植生や葉の活性度等のような定性的な判断が求められる調査はまだ難しいと感じます」
資料

3. テクノロジーマップについて

規制所管省庁等が技術動向を踏まえて自律的にデジタル実装や規制の見直しを推進していけるよう、デジタル庁が2023年10月に公開した規制と技術の対応関係を整理・可視化したテクノロジーマップの利活用方法について解説がありました。

登壇者:高橋久実子 株式会社三菱総合研究所 研究員

質疑

  • 質問者: 「1万条項の法令を1つのテクノロジーマップに表現する時に工夫した点を教えていただえけませんか」
  • 高橋氏(回答): 「該当する条文だけではなく、法令の趣旨、関連する法令から、管理対象は何で、どのように判断しているのかを1つ1つ埋めていく形で1万条項の分析を実施しました。今回は人海戦術で実施しましたが、将来的には、ChatGPT等も用いて自動化していくことが、この活動を更に進めるポイントになると考えるます」

資料

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