アナログ規制見直しに関する取組について語る「RegTech カフェ」~アナログ規制の見直し先進事例を紐解く~(第2回)
デジタル庁では、規制が求める目視や巡回等のアナログな手段を代替するテクノロジーの総称を「RegTech」ととらえ、規制の見直しに取り組む関係者の意見交換や情報共有を目的とした活動をRegTechコンソーシアムとして実施しています。
今回、 RegTechコンソーシアムの交流イベントとして、RegTechコンソーシアムコミュニティ(Slack)に投稿された質問を受けながら、アナログ規制見直しに関する取組について語るオンラインイベント「RegTech カフェ」を開催しました。
※2024年10月22日より「RegTechコンソーシアム」から「RegTechコミュニティ」へ本活動の名称を変更しました。
イベント概要
- 開催日時:2024年1月25日(木)13時00分から14時30分まで
- プログラム:
- 先進自治体の取組「アナログ規制の見直しに向けた大分県の取組みについて」(麻生氏:大分県)
- 技術検証事業の報告
- カメラを活用したアナログメーター遠隔点検自動化の実証(古川氏:株式会社モルフォAIソリューションズ)
- ドローン等を活用した自然物の実地調査の実証(中内氏:九州電力株式会社)
- リモート監査システム等を活用した施設・設備等の遠隔検査の実証(川野氏:株式会社オーイーシー)
- テクノロジーマップについて(高橋氏:株式会社三菱総合研究所)
プログラム
1. 先進自治体の取組「アナログ規制の見直しに向けた大分県の取組みについて」
データとデジタル技術を活用して、行政サービスや施策、組織文化・風土の変革に取り組む大分県におけるアナログ規制の見直しの取組について紹介がありました。
登壇者:麻生柳太朗 大分県DX推進課主査
取組内容
大分県では、デジタル原則に照らした規制の一括見直しプランを参考に、アナログ規制の洗い出しを実施し、該当条文をいつ頃改正するのかの見通しを立てました。令和5年(2023年)度中にその一部について改正を行い、令和6年(2024年)4月以降施行する予定となっています。
大分県の改正の方向性として、アナログの手法をデジタルに一気に変えるのではなく、両論併記の形でデジタルツールの活用を可能にすることで選択の幅を広げることを主眼にしてる点について説明を行いました。
登壇者コメント
「アナログ規制の洗い出し、条例や規則を変えることは非常に手間と時間がかかる作業のため、トップダウンで関係課を巻き込みながら進めることが重要である。」と意見を述べました。
紹介の最後に、「デジタルツールの導入については、コスト面も含めて様々な課題があるため、デジタル庁の技術カタログ等を参考にしながら検討を進めていきたい。」と述べました。
質疑
- 質問者: 技術の安全性や実効性について、どのように確認しているのでしょうか。
- 麻生氏(回答): まずはデジタル技術を使えるように法令を変えて、実際にスモールスタートとしてやってみる時に費用対効果も含めて使えるかどうかを判断していく方針です。
- 質問者: アナログ規制の見直しに際して、現時点で実装できている事例はありますか。
- 麻生氏(回答): 現場に行き名簿等を確認するような作業の一部に技術が導入されています。今後、改正等を実施し、技術導入をどんどん推し進めていきたいと考えています。
資料
2. 技術検証事業の報告
2-1. カメラを活用したアナログメーター遠隔点検自動化の実証
大分県企業局事業用電気工作物保安規程第11条及び第12条のアナログ計器の巡視に係る実証事業に取組む「アナログ計器の巡視に関して、カメラを活用した遠隔点検自動化の実証事業の取組について説明がありました。
登壇者:古川 祐督 株式会社モルフォAIソリューションズ事業管掌執行役員
取組内容
大分県では水力発電所のアナログ計器の監視を月に2回実施しており、カメラを設置することでメーターの監視を遠隔で実施できないか、さらに画像解析/AIでメーターの計測ができないかという今後実施予定の実証計画や、実証のためのシステム環境構築の過程で把握できた課題について紹介しました。
登壇者コメント
「現場で使いやすい機能/インターフェイス/システム構成、ROIの観点から必要なカメラ台数など、導入に向けた課題等についても実証事業で検討を進めていきたい。」と述べました。
質疑
- 質問者: 技術の安全性や実効性について、どのように確認するとよいでしょうか。
- 古川氏(回答): 技術を導入した後の業務フローまで含めて、どの部分を自動化し、どの部分を人が確認するのか、運用に関して問題がある箇所をどのように人が気づけるようにして改善につなげるのかということを設計し、最終的に費用対効果、ROIを比較する形で進めるとよいのではないかと考えています。
- 質問者: 実証事業において、カメラの電源は必要でしょうか。また、クラウドは何を利用しているのでしょうか。
- 古川氏(回答): カメラの電源は必要です。近くから電源をとれない場所に設置するケースもあるため、モジュールを組み替えてネット回線からPoE給電できないか等の検討を進めています。クラウドは、AWSのサーバーを使っています。
- 質問者: 実証事業において、データをどのように格納していますか。
- 古川氏(回答): コスト削減やセキュリティの観点からクラウドではなく、現地のオンプレサーバーにデータを格納しています。現地のオンプレサーバーからクライアントPCへ映像をP2Pで直接転送する仕組みを採用しています。
資料
2-2. ドローン等を活用した自然物の実地調査の実証
大分県環境緑化条例第23条の実地調査に関して、ドローン等を活用した自然物の実地調査の実証事業の取組について説明がありました。
登壇者:中内美晶 九州電力株式会社大分支店 技術部通信ソリューショングループ長
取組内容
保護樹木や保護樹林の指定等に係る実地調査について、ドローンによるレーザ測量・撮影やそのデータを用いたAI分析、地理情報システム(GIS)情報等を活用することで現地確認を代替できないか、IoTセンサー、カメラで保護樹木や樹林を継続監視できないか、得られた情報をWeb-GISとして公開し多面的に活用できないかという実証内容について紹介しました。
登壇者コメント
「ドローン機体の技術進展や効率的なドローン飛行が可能となるような法改正、3D・画像処理技術の向上等により、現在よりも効率的な調査が実施できるようになるのではないか。」と意見を述べました。
質疑
- 質問者: 技術の安全性や実効性について、どのように確認するとよいでしょうか。
- 中内氏(回答): ドローンは、写真や3Dモデル等で高精度に「今」を切り取ることができ、後から振り返ったり比較もできるため、非常に有用な技術であると思います。ドローンは飛ばすだけでなく、飛行計画や飛行申請、機体選定といった事前準備、飛ばした後のデータ処理も必要なため、そのようなコストを含めた上で、導入の検討を進めた方がよいと思います。
- 質問者: ドローン技術を活用する際、風力や湿度等、使用環境に関して、どのような課題がありますか。
- 中内氏(回答): ドローンは雨や風が強いと飛ばせませんし、温度が高くても低くてもバッテリーが使用できずに飛ばすことができません。このような課題に対して、予備日の設定やバッテリーを温冷庫に保管する等の運用でカバーしていますが、ドローン機体の技術進展で解決されることを期待しています。
資料
2-3. リモート監査システム等を活用した施設・設備等の遠隔検査の実証
火薬類取締法施行細則第8条の実地調査に関して、リモート監査システム等を活用した施設・設備の遠隔点検の実証事業の取組について説明がありました
登壇者:川野芳樹 株式会社オーイーシーDX・海外連携推進室次長
取組内容
大分県では火薬類を取り扱う企業等などに対して、現地で火薬類がの安全にな貯蔵状況を確認していましたが、リモート監査システム等を活用した施設・設備等の遠隔検査の実証を行いました。その結果、独自のWeb会議システムは目視と同等以上の操作性と精度があり、音声にも特に問題ないことが評価されたため、移動に係る時間や労力等のコストを削減できるといった観点から、従来よりも効率的に審査業務が行えるという示唆が得られました。
登壇者コメント
「リモートでの審査自体は特に問題はなく、移動時間の削減等に伴い審査に係る時間は大幅に削減されるため、従来よりも効率的に審査できる。毎日使うようなシステムではないため、同様の実地調査を行っているような規制など他事業と共同で使えるようにしたほうがいいのではないか。」と意見を述べました。
質疑
- 質問者: 技術の安全性や実効性について、どのように確認するとよいでしょうか。
- 川野氏(回答): カメラの映像を人が見て審査するというシンプルなもので、スマホの性能向上により、リモートの撮影などに活用可能なスマホのカメラもあるため、導入しやすいシステムであると考えています。リモートにすることで移動のための費用は減りますが、頻繁に使うシステムではない場合、どのようにコストを抑えて効率よくシステムを使えるかということがポイントになると思います。
- 質問者: Web会議形式は他の分野でも活用できそうでしょうか。
- 川野氏(回答): 今回の実証事業に使用したWeb会議システムは、元々オンライン診療用に開発したものを応用したため、リモートで対応可能な業務であれば様々な分野に活用できるのではないかと思います。
資料
3. テクノロジーマップについて
規制所管省庁等が技術動向を踏まえて自律的にデジタル実装や規制の見直しを推進していけるよう、デジタル庁が2023年10月に公開した規制と技術の対応関係を整理・可視化したテクノロジーマップの利活用方法について解説がありました。
登壇者:高橋久実子 株式会社三菱総合研究所 研究員