第三弾:「法令」×「デジタル」ハッカソンを開催しました
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アイデアソン・ハッカソンシリーズ第三弾として、2025年2月5日(水)から3月6日(木)までの間、「法令」×「デジタル」ハッカソン(以下、「本ハッカソン」といいます。)を開催しました。本ページではイベントの詳細と受賞作品等を紹介しています。イベントのプログラム等、参加者の募集時点で公開されていた情報は「法令」×「デジタル」ハッカソンを開催しますをご覧ください。
目次
1. 概要
法制事務の効率化、より分かりやすい国民への法令データの提供、法令データを利活用した新たなビジネスの創出を目的として「法令」×「デジタル」ハッカソンを開催しました。
2025年2月5日(水)に開催した本ハッカソンの初日では、「法令」×「デジタル」の取組として、デジタル庁から事例等の紹介や、法令APIプロトタイプの説明を行ったほか、生成AIを活用した取組の発表をしました。また、デジタル庁で働く行政人材、弁護士、エンジニアを含む職員と参加者が交流し、開発内容のアイデア出し・ブラッシュアップを行うワークショップが実施されました。
本ハッカソンでは、総勢約130名の参加者が約1か月の間に短期集中で開発を行い、28チームから作品が提出され、2025年3月6日(木)に各チームの発表を行いました。
審査員
- 安野貴博 合同会社機械経営代表
- 本田深青 こども家庭庁長官官房総務課法令審査係長
- 八木田樹 株式会社Legalscape 代表取締役・最高経営責任者
受賞結果
各賞、作品名と括弧内にチーム名を記載しています。
最優秀賞
- Lawsy(Lawsy)
優秀賞
- リーガルカメラアシスタント(NPClouder)
- コモンズLawScopeAI プロトタイプ(ガバメントイノベーターズ)
- Legal Definition Finder(チームおとももち)
部門賞
- 法制事務効率化賞 法律文書 AI エディター(パンダ)
- 法令等データ提供賞 通知・通達Lawtext拡張(凝)
- 法令等データ利活用賞 建築基準法を遵守した建物生成AI(都市計画法と建築基準法、2つの法律を遵守した最適建物を独自のAIで自動生成)
2. イベントの詳細
【1日目】
- 開催日:2025年2月5日(水)
- 開催方法:対面会場・オンライン会場のハイブリッド形式
- 当日の内容:詳細は以下のとおりです。
デジタル庁統括官の冨安からの開会の挨拶で、本ハッカソンは幕を開けました。
デジタル庁企画官の中野が、「法令」×「デジタル」の取組を説明しました。
法令を機械可読な形式で記述することで、政策立案や行政運営の効率化や合理化などを目指す概念は、“Rules as Code”(RaC)と呼ばれ、現在、諸外国でも研究や実証がされています。現在の日本ではどのように法案が作成されていて、法令等データがどのように提供されているのか、デジタル庁が提案する「デジタル法制ロードマップ」を含め説明しました。
「法令」×「デジタル」の取組については、2024年3月8日(金)に実施された「法令×デジタルワークショップ」で使用した資料をご参考ください。
デジタル庁弁護士の上田から、デジタル庁が実施している生成AIを利用した条文案生成に関する取組について紹介をしました。国家公務員が法案を立案する際の、どのような場面で生成AIを活用することができるのか、生成AIの最新モデルを用いて条文案を生成した場合に工夫がなされた点、出力結果、今後の課題などについて言及がありました。
デジタル庁の事業を受託する株式会社Kieiから、生成AIを活用した法制事務補助ツールの開発に関する報告をしました。デジタル庁が提供するアナログ規制点検ツールβ版に生成AIを利用する実証など、令和6年度にデジタル庁と実施した開発について説明しました。
デジタル庁システムエンジニアの廣野から、ハッカソンでの開発に向けて、デジタル庁が現在提供している法令等データ(e-Gov法令検索)」、法令APIプロトタイプ公開テスト(第3回)や「法令」×「デジタル」ハッカソンの参加者に試行いただける「法令APIプロトタイプ」に関する説明をしました。(法令APIプロトタイプとは:法令APIプロトタイプ公開テスト(第3回) 3.利用方法参照)
その後、デジタル庁の職員が、ハッカソンの参加者の各テーブルを回りながら、開発する作品のアイデア出しやブラッシュアップを行うワークショップを実施しました。
ワークショップも対面会場とオンライン会場のハイブリッド形式で行われ、特に対面会場では、デジタル庁の職員と参加者同士の活気あふれる、意見交換の様子が見られました。
アイデア出しのヒントとして、デジタル庁が用意したワークショップ用シートを使い、現状の課題やニーズ、法令等データと組み合わせた場合にどのようなことが可能になるのか意見を出し合いました。
【2日目】
- 開催日:2025年2月10日(月)
- 開催方法:オンライン形式
- 当日の内容:
デジタル庁職員等が、希望するチームとオンライン面談を実施し、参加者から寄せられた開発方針のお悩みなどに対して、既存サービスの紹介や、法制執務の経験等を踏まえたアドバイス等を行いました。
【3日目】
- 開催日:2025年3月6日(木)
- 開催方法:対面会場・オンライン会場のハイブリッド形式
- 当日の内容:詳細は以下のとおりです。
各チームが約1カ月の開発期間を経て開発した作品について、作品について紹介する1分間の動画を流し、作品について審査員である安野氏、本田氏、八木田氏がコメントを述べました。
(合同会社機械経営代表 安野貴博氏)
(こども家庭庁長官官房総務課法令審査係長 本田深青氏)
((株)Legalscape 代表取締役・最高経営責任者 八木田樹氏)
表彰式には、平デジタル大臣も出席しました。平デジタル大臣は、冒頭の挨拶として、参加者に対して作品を開発に対する感謝の意を表した後、日本の人口が減少し、人手不足になっていく中でのデジタル化・AI実装の重要性や、社会課題解決のために、このハッカソンのコミュニティーを通じて、今後も参加者同士で親交を深めてもらいたいこと等を述べました。
その後、最優秀賞1点、優秀賞3点、部門賞(法令事務効率化賞、法令等データ提供賞、法令等データ利活用賞)各1点ずつについて受賞結果を発表し、受賞理由について審査員からコメントが述べられました。
最後に、平大臣から、閉会の挨拶として、今回のハッカソンは、非常に有意義なハッカソンであり、提出された作品について、政府で採用できるものは、安全性を確認したうえで是非採用していきたいことや、今後もデジタル庁が中心となって、政府全体でデジタルとAIの実装を迅速に進めていきたいこと等の話があり、本ハッカソンは幕を閉じました。
対面会場には約100名の参加者が来場しました。結果発表後も審査員に個別にフィードバックを求めるチームもあり、終始、熱気に包まれたイベントとなりました。
本ハッカソンのイベント期間を通じて、「法令」×「デジタル」ハッカソンを開催しますのイベントページで公開していた意見フォームや、イベント後に実施した参加者アンケートでも、法令APIプロトタイプ等に関するフィードバックを集めることができました。デジタル庁では、今後、皆様から頂いたご意見も参考にしながら、引き続き、法令等データの整備を促進していく予定です。
3. 作品紹介
作品についての留意事項
- 参加者が開発した開発物、提出物等については、デジタル庁、審査員のいずれも、性能、品質等の保証を行うものではありません。
- 本事業を通じて完成したサービスについて、デジタル庁が公式サービスとして公認、公開、頒布などを実施するものではありません。
- 作品紹介文は参加チームから提出のあった作品説明資料等を参考に事務局にて作成しました。作品の画像は作品説明資料等から抜粋したものです。
受賞作品
最優秀賞
Lawsy(Lawsy)
- 作品の開発画面イメージ(チーム提出の作品説明資料より抜粋)
- 作品の概要
- 法令に詳しくない民間事業者・公務員・政治家等のための法令特化型Deep Researchツール。法令情報を政策・判例・国会等の関連情報と統合しつつ、情報収集・整理・解説を容易にし、法令調査業務を効率化。
ユーザーのクエリーを受け取ると、検索クエリーを最適化し、Web検索・法令検索を実行。リランキング処理で関連度の高い情報を整理し、レポートを出力。OSSとしても公開済み。 - Lawsy · GitHub
- 法令に詳しくない民間事業者・公務員・政治家等のための法令特化型Deep Researchツール。法令情報を政策・判例・国会等の関連情報と統合しつつ、情報収集・整理・解説を容易にし、法令調査業務を効率化。
- 社会に対して生み出す価値
- 専門家に依存せずとも適切な法令の情報収集・整理・解説が可能に。法令調査が必要な事業推進、政策立案、法制執務、規制改革等が円滑化され、社会変革のスピードの加速化にも貢献。
- 新規性等
- 一般的なDeep Researchよりも速く、高い精度での分量のあるレポートを生成する点で革新的である。
高度な検索機能とドメイン知識を活かした生成AIを利用し、法令データをセマンティック検索やレポートの自動生成において活用している。
- 一般的なDeep Researchよりも速く、高い精度での分量のあるレポートを生成する点で革新的である。
- 審査員コメント
- 大量の法律等、多数の文章がある中で、それらをまとめてレポートにする必要があるという世の中のニーズを解決する便利なツール。
- 法制執務等における、信頼できるソースをより深く調べたいというニーズを捉えており、様々な課題を解決できそう。実際に使ってみたがクオリティの高い結果が得られた。
- 既にオープンソース化されていることも高評価。今後カスタマイズされていくことにも期待。
優秀賞
リーガルカメラアシスタント(NPClouder)
- 作品の開発画面イメージ(チーム提出の作品説明資料より抜粋)
- 作品の概要
- 弁護士の法令検索を支援するAIサービスを提供する作品。依頼人とのヒアリングメモをアプリに共有するだけで、AIが、調査すべき法令を考察・提案し、e-Govに掲載されている該当条文へのリンクを提示してくれる。
- 社会に対して生み出す価値
- 弁護士の法令検索にかかる負担を軽減し、弁護士はより多くの時間を本来の専門業務に充てることができ、法務サービスの質向上につながる
- 新規性等
- ヒアリングメモの受け渡しはテキストファイルやExcelファイル、画像、画面キャプチャなどを問わず、複数の媒体から可能。法令情報はe-Gov法令APIで取得するため、最新の法令データを参照できる。
- 審査員コメント
- 弁護士にとっても馴染みのない法令に気づけないことがあることから便利なツールだと思われる。
- 手書きのメモにも対応しているという点で、法令にたどり着くまでの手間を減らすという特徴が高評価。
- 弁護士向けの作品として提出されているが、弁護士以外にも法的論点に接する人たちにより拡張できるはずである。誰であっても、何かメモを書いたときにそれがどのような法令に関連しているのかサジェストできるようになると、さらに可能性が広がると思う。
コモンズLawScopeAI プロトタイプ(ガバメントイノベーターズ)
- 作品の開発画面イメージ(チーム提出の作品説明資料より抜粋)
- 作品の概要
- 一般市民や法制に関わる行政職員などのため、現行法令の課題を可視化し、具体的な改正案を提示する作品。 AIと公式法令データ、最新の世論データを統合することでユーザーの入力内容から社会課題を表示し、関連する法令の特定、法令の改正案などを提示。
- 社会に対して生み出す価値
- 合意形成から実際の法改正に至るまでの「一歩先」の段階を自動化・効率化することで、より実効性のある法令改善提案を実現し、社会課題解決のスピードを高める。
- 新規性等
- APIやRAGやトピッククラスタリング技術を利用しe-Gov法令APIの条文内容取得APIを最新の条文全文を取得し、当該法令の問題点、民意との乖離度、改正ポイント、改正案の提示において活用。
- 審査員コメント
- 意見を取り入れたところから法改正案までの一気通貫のプロセスを示しているのは高評価。
- 民意と条文がどれぐらい離れているのかを生成AIを使って比較するという点は特徴的であり、素晴らしい取組。
- さらに、誰にどういう風に働きかければこの仕組みが実際に実現できるのかという戦略部分が今後のキーになると思うので、是非その点も踏まえて、より発展させていってもらいたい。
Legal Definition Finder(チームおとももち)
- 作品の開発画面イメージ(チーム提出の作品説明資料より抜粋)
- 作品の概要
- 法制執務担当の国家公務員や企業の法務担当、弁護士等の法曹関係者のため、法令における定義規定を素早く閲覧できる機能を提供する作品。
- Legal Definition Finder
- 社会に対して生み出す価値
- 法令の定義規定が、定義語の初登場時にのみ記載されており、定義規定がどこに設けられているのか分からず、定義語の検索に無駄な時間や労力がかかっているという現状がある。本作品の活用により、「e-Gov法令API」で提供されている各法律の定義語を瞬時に表示し、上記の無駄な時間や労力の削減が可能となる。
- 新規性等
- 本作品は、法令名検索によって、条文中の定義箇所を集中的に抽出・表示するという点で革新的な作品。
- 審査員コメント
- 定義規定は、極めて重要であり、その定義規定の調査に長時間費やして苦労している国家公務員もいるので、その部分に明確にアプローチして解決していることが素晴らしく、評価が高い。
- 解決したい課題が明確であって、それに対するソリューションも非常に使いやすいものになっている。
部門賞
法制事務効率化賞
法律文書 AI エディター(パンダ)
- 作品の開発画面イメージ(チーム提出の作品説明資料より抜粋)
- 作品の概要
- 「法令AI」、「事例AI」、「パブリックコメントAI」「webリサーチAI」など、異なる能力・専門性・立場をもつ複数のAI と人間が協力しながら質の高い法律文書を作る機能を提供する作品。
- 社会に対して生み出す価値
- 本作品により、法令 API や大規模言語モデル等、最新のデジタル技術を活用した AI 達の力を使いながら法律文書作成が可能となる。
- 新規性等
- RAG(検索拡張生成)を利用し、法令データを、実際の法令を引用しながら専門的な発言ができる AI、「法令 AI」において法令APIを活用。
- 審査員コメント
- 非常に2025年らしい工夫の凝らされた作品。それぞれ強みを持つAIエージェントと人間とが協調しながら議論させるエディタという発想が大変良かった。
- 様々な立場の意見をすり合わせる行政官の業務にイメージが近く、事例を収集するAIについても精度が高いと感じた。政策立案の際に欠けている点を補ったり、事例の積み上げを行ったりできるような補助ツールとして活用可能。
法令等データ提供賞
通知・通達Lawtext拡張(凝)
- 作品の開発画面イメージ(チーム提出の作品説明資料より抜粋)
- 作品の概要
- 法令データの整備者のため、 通知・通達のXMLスキーマを定義。さらに通知・通達をテキスト形式の文書からXMLへ構造化する作品。
- 社会に対して生み出す価値
- オープンソースソフトウェア「Lawtext」は法令標準XMLスキーマ準拠の法令をXMLに変換できるが、通知・通達をXML化することはできないところ、これに対応したもの。
- 新規性等
- 本作品はLawtextに続き、公的文書を汎用的に自動でデータ化。Lawtextを利用し、法令データの拡張性の強化において活用。
- 審査員コメント
- 社会現場での実際のルールを規定している通知・通達についてXML化を試みる点で新しく、素晴らしい作品。
- 通知・通達自体の構造化されたデータがない現状に対して、統一的なフォーマットで提供できる点で高評価。
法令等データ利活用賞
建築基準法を遵守した建物生成AI(都市計画法と建築基準法、2つの法律を遵守した最適建物を独自のAIで自動生成)
- 作品の開発画面イメージ(チーム提出の作品説明資料より抜粋)
- 作品の概要
- 不動産開発事業者が土地の価値を見立て、事業性を検証するため、 建築基準法を満たした最適な建物を瞬時に生成する建物生成AIを提供する作品。地図上の地番をクリックするだけで、当該地番に適した(建築基準法を遵守した)建物を自動生成するとともに、平面図や日影規制を守った日影図なども出力される。
- 社会に対して生み出す価値
- 土地の価値は、そこにどのような建物が建てられるかで決まるが、その検証には建築基準法や建築設計に関する高度専門知識が必要。本作品により、土地の価値を瞬時に見立てることができるほか、不動産流通の透明性の向上も期待。
- 新規性等
- 本作品は、建築基準法を一から読み込み、さらに、斜線や日影・天空など、複雑な数学処理を用いた独自の建物生成AIを搭載した点で革新的な作品。
- 審査員コメント
- 複雑な処理がバックエンドでなされており、実際のユースケースを捉えられている、完成度の高い作品。
- 専門家が人手で行っていた作業を自動化し、ルールを文書からビジュアライズするという点でも有意義であり、社会的インパクトが大きい。
その他の作品
作品一覧(PDF/7,659KB)からご覧ください。